SDGs2「飢餓をゼロに」|飢餓の現状と未来のために私たちができること

世界では今も約6億7,300万人(人口の8.2%)が飢餓に直面しており、2030年には約5億1,200万人が慢性的な栄養不足に陥ると予測されています。一方、日本でも相対的貧困率は15.7%に達し、食品ロスは年間464万トンと深刻な課題です。
SDGs目標2「飢餓をゼロに」は、すべての人が安全で栄養ある食事を得られる社会を実現するための重要な目標です。本記事では、飢餓や栄養不良の現状と課題、世界と日本での取り組み事例、そして私たち一人ひとりができる行動も紹介します。
SDGsとは?

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月に国連サミットで採択されました。2030年までに達成を目指す国際的な目標で、世界の持続可能な発展に向けて17の大きな目標と169の具体的なターゲットで構成されています。国連に加盟している193か国が参加しています。
SDGsの主な目的は以下のとおりです。
- 貧困や飢餓、健康、教育、ジェンダー平等、気候変動、環境保護など、地球規模のさまざまな社会課題の解決
- すべての国や地域、あらゆる人々において、豊かで持続可能な社会の実現
- 「誰一人取り残さない」という理念に基づき、発展途上国だけでなく先進国も含めた普遍的な取り組み
SDGsの17の目標には「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「質の高い教育をみんなに」「気候変動に具体的な対策を」などがあり、2030年までにこれらを達成することが世界共通の課題となっています。
参考:SDGs COMPASS「SDGsの目的とは?作られた背景や目指す未来をわかりやすく解説」
SDGs目標2「飢餓をゼロに」が意味すること

世界では、8億人を超える人々が慢性的な飢餓状態にあり、特に子どもや貧困層、社会的に弱い立場の人々の命と健康が脅かされています。異常気象や環境破壊、干ばつなどの影響で食料の生産や供給が不安定になり、多くの人々が十分な食物を得られない状況が続いているのが主な原因です。
SDGs目標2「飢餓をゼロに」は、「2030年までに、世界中のすべての人々が飢餓や栄養不良から解放され、安全で栄養のある食べ物を一年中安定して十分に得られるようにする」ことを目指しています。
具体的な内容は以下のとおりです。
- 持続可能で環境に配慮した農業システムを構築し、小規模農家への支援を含めた生産性と収益性の向上
- 食料の安定供給と栄養バランスの改善(特に子どもや妊産婦などの栄養不良の解消)
- 食料システムを強化し、食品ロス削減や効率的な食料供給能力の向上、廃棄物の削減
SDGs目標2は、命の源である食の安全保障と栄養状態の改善を通じて、すべての人々の健康と持続可能な発展を支えるために不可欠な取り組みです。
関連記事:「SDGs2『飢餓をゼロに』|世界と日本の現状・取り組み・私たちにできることを解説」
参考:gooddo「持続可能な開発目標・SDGsの目標2「飢餓をゼロに」のターゲットや現状は?」
参考:スリーエーコンサルティング「SDGs目標2「飢餓をゼロに」とは?企業の取り組み事例も紹介」
飢餓や栄養不良はどのような状況を指すか

飢餓や栄養不良とは、長期間にわたり十分な食事を摂れずに必要な栄養素やカロリーが不足することです。健康の維持や生命の存続、さらには社会生活や活動的な日常を送ることが難しくなる状態を指します。
飢餓や栄養不良は、単一の要因によるものではなく、主に以下のような原因によって発生します。
| 飢餓の種類 | 解説 |
|---|---|
| 突発的な飢餓 | 干ばつや洪水、紛争などによって食料が急激に不足し、多くの人が栄養不足に陥る緊急的な状態。迅速な支援が必要。 |
| 慢性的な飢餓 | 低賃金や農業生産性の低さなど、経済的な要因によって継続的に食料不足に陥る状態。安定供給や生活改善など自立支援が必要。 |
| 栄養不足の種類 | 解説 |
|---|---|
| 発育阻害 | 慢性的な栄養不足が原因で、年齢に比べて身長が十分に伸びず、認知機能の発達も遅れている状態。 |
| 消耗疾患 | 急性または重度の栄養不足により、生命の危険に直面している状態。 |
これらの飢餓や栄養不良は、単なる食料不足にとどまらず、健康や社会にも大きな影響を引き起こす深刻な問題です。そのため、緊急的な食料支援や持続的な生活基盤の改善が求められています。
参考:hunger free world「飢餓とは? 「飢餓をゼロに」の現状や取り組みを知ろう」
参考:E-SQUARE「アフリカを今も悩ます課題「スタンティング(発育阻害)」と日本企業の取り組み」
飢餓の現状と課題について

世界には、飢餓が改善しつつある地域もある一方で、依然として改善が十分に進んでいない地域も一定数存在します。また、日本では飢餓がないと思われがちですが、実際には潜在的な飢餓に陥っている家庭も少なくありません。
ここでは、世界と日本の飢餓の現状を紹介します。
世界の現状
2024年の統計によると、世界で約6億7,300万人、つまり世界人口の約8.2%が飢餓に直面していると推定されています。2023年や2022年に比べてやや減少傾向にはありますが、依然としてパンデミック以前の水準を上回っており、特にアフリカや西アジアでは飢餓が深刻です。
南アジアやラテンアメリカでは状況の改善が見られるものの、アフリカでは人口の20%を超える約3億700万人、西アジアでは約3,900万人が飢餓の状況に置かれています。この傾向が続けば、2030年には約5億1,200万人が慢性的な栄養不足に陥ると予測されています。
参考:WFP「国連報告書:世界の飢餓は減少するも、アフリカと西アジアで増加」
参考:PR TIMES「世界の飢餓人口は減少傾向にあるものの、アフリカと西アジアでは増加:国連報告書」
日本の現状
日本でも飢餓経験者は一定数存在し、国内の相対的貧困率*は15.7%で、約15人に1人が何らかの理由で十分に食事が摂れなかった経験があるとされています。特にひとり親世帯の貧困率は50%を超えており、他の世帯と比べても非常に高い水準です。
食料自給率は2020年時点で約37%と低く、農業従事者の減少や後継者不足が影響し、食料供給の安定確保も大きな課題です。さらに、日本の食品ロスは年間約523万トンと非常に多い一方で、生活困窮者が約613万人存在し、こうした人々の飢餓・栄養不足問題が社会課題となっています。
国内での飢餓率を減らすためには、食品ロスを防ぐための啓蒙活動やフードバンクの活用、持続可能な農業や地産地消の促進などを通じて、食に対する意識を高めることが求められています。
*相対的貧困率:所得が集団の中央値の半分にあたる貧困線に届かない人の割合を指す
参考:ロスゼロ「日本にも飢餓は存在する?飢餓人口とその背景」
参考:World Vision「SDGs目標2「飢餓をゼロに」|現状と取り組み、私たちにできること」
引用:日本経済新聞「相対的貧困率とは 日本15.4%、米英より格差大きく」
SDGs目標2「飢餓をゼロに」向けて、世界と日本での取り組み事例

SDGs目標2「飢餓をゼロに」を達成するために、世界規模だけでなく、日本国内でもさまざまな取り組みが行われています。ここでは、その中から主に3つの事例を紹介します。
国連世界食糧計画(WFP)
国連世界食糧計画(WFP)は、世界中で多岐にわたる活動を展開しており、主な内容は以下のとおりです。
| 支援内容 | 解説 |
|---|---|
| 緊急食糧支援 |
|
| 栄養改善プログラム |
|
| 学校給食支援 | 横浜、大阪、名古屋で開催されたチャリティイベントで集まった、約550万円の寄付金を活用し、途上国の約18万3,000人の子どもたちに学校給食を提供 |
さまざまな活動を通じて、2023年には主に途上国を中心に1億5,200万人の命を救い、SDGs目標2達成のための取り組みを推進しています。
参考:WFPウォーク・ザ・ワールド「届けよう!子どもたちに栄養と希望を」
プラン・インターナショナル
プラン・インターナショナルは、毎年800社以上の企業・団体とパートナーシップを結び、さまざまな活動を行っています。
| 支援内容 | 解説 |
|---|---|
| 地域主導型の小学校給食プロジェクト | 子どもたちの栄養状態を改善し、教育の機会を広げるために給食支援を実施 |
| 食料危機下の子どもの栄養改善 | スーダンのキャンプでは、妊産婦や子どもに対し栄養治療食の提供や栄養治療のサポートを実施 |
| 緊急食料支援と現金・バウチャー支給 | 紛争や自然災害によって被災した人々に、食料配給や現金支援を行い、安定した食料確保を支援 |
プラン・インターナショナルでは、現地での栄養改善と食料支援を軸に飢餓問題に取り組みながら、特に女児や子どもたちを中心に支援の輪を広げています。
参考:プラン・インターナショナル「『経過報告』カンボジア「地域主導型の小学校給食」プロジェクト」
参考:プラン・インターナショナル「飢餓問題に対して私たちができることは?世界の現状や飢餓の原因」
参考:プラン・インターナショナル「10月16日は『世界食料デー』国際NGOプラン・インターナショナルが、世界的な未曽有の食料危機に警鐘」
むすびえ
むすびえは、主に「こども食堂」への支援を通じた取り組みを展開している日本のNPOです。「子どもたち」「こども食堂」「支援する人々」の三者をつなぐ「むすびめの場」として機能し、地域の子どもの食の安全・安心を支えています。
主な活動内容は以下のとおりです。
- 全国各地の地域ネットワーク団体とともに、こども食堂を支える社会を目指す
- こども食堂を支援したい企業・団体とこども食堂をつなぎ、資金や食材、サービスの提供を仲介
- こども食堂の意義や実態を伝え、社会的な理解を広げるための啓発活動を実施
むすびえは、こども食堂という地域の食支援の場を活性化し、子どもたちが安全で栄養のある食を得られる環境づくりに貢献しています。
参考:むすびえ「活動紹介」
参考:gooddo「NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえとは?全国こども食堂支援センターの活動などについて紹介」
SDGs目標2「飢餓をゼロに」達成のために個人でもできること

SDGs目標2「飢餓をゼロに」の達成に向けて、私たち一人ひとりでもできることがたくさんあります。まずは、身近で実践しやすいものを紹介します。
| 取り組み事例 | 内容 |
|---|---|
| 食品ロスの削減 |
|
| 地産地消を意識 |
|
| 支援活動への参加や寄付 |
|
こうした小さな積み重ねが、国内外における飢餓問題の解決につながります。まずは身近なことから始めてみましょう。
関連記事:「フードロスからSDGsを考える!自分たちができる取り組みを知ろう」
参考:acccel「SDGs目標2「飢餓をゼロに」の現状と問題点、取り組み事例を解説」
参考:SDGs MAGAZINE「【解説】SDGs目標2『飢餓をゼロに』とは?解決すべき課題や現状」
参考:みんなのちきゅう「『飢餓をゼロに』SDGs第2項目を理解しよう」
まとめ

世界では今もなお、数億人が飢餓や栄養不良に苦しんでおり、日本においても相対的貧困や食品ロスが深刻な課題となっています。SDGsの目標2「飢餓をゼロに」は、誰もが安全で栄養ある食事を得られる社会を目指す、重要な目標です。
国際機関やNPOの取り組みに加え、私たち一人ひとりの意識と行動も欠かせません。食品ロスや地産地消に協力するなど、まずは身近なことから始めてみましょう。それが、未来の子どもたちの命と希望を守る一歩となるはずです。
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