ESG

オフィスは企業価値を映す鏡に。広がる自然共生型オフィスの潮流【PR】

社員が働くオフィス空間に求められるものは、時代とともに変化してきました。

パンデミックでリモートワークが広がり、一時は縮小が進んだものの、その後出社回帰に合わせて再びオフィスを拡大する動きも見られます。

近年のオフィスデザインのトレンドのひとつに、持続可能性を高めるための環境配慮型の設計があります。実際にエコ素材の什器が注目を集め、オフィス家具や備品のリサイクル、リースサービスも浸透してきているのが特徴です。

オフィスのあり方は単なるトレンドの変化にとどまらず、「株主中心経営」から「ステークホルダー経営」への移行とも深く関わっています。

今回は、米国を中心に広がりを見せる、ステークホルダー経営を体現する新たなオフィスの形、「自然共生型オフィス」を紹介します。

提供:大日本印刷株式会社

自然共生型とは?企業価値は”語る”から”示す”へ

そもそも「自然共生型オフィス」とは一体どういうものなのでしょうか。

一般的な定義は定まっていませんが、本記事ではオフィス空間を設計・運用する際に、経済活動と自然環境(生態系・気候・資源など)が共存し、相互支援する関係を築くことを目的とした新しいオフィスのあり方と定義します。

「自然共生型オフィス」が注目される背景には、企業経営が「ステークホルダー重視」へ移行しているためです。

企業は株主だけでなく、従業員、顧客、地域社会、さらには地球環境など、多様なステークホルダーに価値を提供することが求められています。

かつて、こうした理念は、統合報告書やESGレポートなど、“言語的”に語られるものでした。

※ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス(企業統治))を考慮した経営活動や投資、事業活動を指します。ESGレポートとは、その3つの観点から企業活動を報告するレポートです。

しかし近年は、オフィスビルや企業キャンパスといった“空間”そのもので表現する動きが広がっています。

特に環境への配慮という観点では「自然共生型オフィス」は複数の指標で捉えることが可能です。

オフィスは、その建物の原材料から解体時に発生する廃棄物、運営中のエネルギー消費、建設における地域の自然への影響など、多方面で環境負荷が生じます。

これらのインパクトを評価する基準として、2つの主要な認証が存在します。

環境面で重視したい2つの認証

◉「LEED (Leadership in Energy and Environmental Design)」
世界で最も広く採用されている、米国グリーンビルディング協会による認証制度です。

◉「Living Building Challenge (LBC)」
世界で最も厳格な基準とされています。 LBCは単なる認証ではなく「哲学」であると自らを定義し、建築が環境負荷をゼロにするだけでなく、水やエネルギーにおいて「ネット・ポジティブ(Net Positive)」、すなわち環境を「再生(Regenerative)」することを求めています。

ステークホルダー経営が求めるオフィスには、上記の認証が厳格に評価する「環境配慮」に加え、地域社会の強靭性(レジリエンス)の向上に寄与する「社会インフラ」としての役割が期待されます。

その観点に立つと、次の4つの要素を備えたオフィスが「自然共生型オフィス」と呼ぶにふさわしいと言えるでしょう。

自然共生型オフィスの特徴

01.生態系の再生:地域の原風景を取り戻し、生物多様性を育む。
02.資源の再生:消費する以上のエネルギーや水を生み出す。
03.地域コミュニティとの融合:公共空間や社会インフラとして機能する。
04.健全な素材と適応的再利用:人と環境にとって「無害」であり、既存資源を「再生」する。

それぞれどのような内容なのか、具体的な事例とともにご紹介します。

01. 生態系の再生

「自然共生」の第一歩は、ただ緑を増やすことだけではなく、その土地本来の生態系を取り戻すことです。

開発によって失われた在来種の植物を呼び戻し、地域の生物多様性を育む生息地としてオフィスを機能させます。

好例 (1):Google (カリフォルニア州マウンテンビュー)

Googleは、マウンテンビューのBay ViewおよびGradient Canopyキャンパスにおいて、LBC認証の取得にも取り組んでおり、シリコンバレーのかつての生態系を大規模に復元しようとしています。

◉「オークの森」の復活
「Re-Oaking Silicon Valley(シリコンバレーにオークを取り戻す)」という研究に資金提供し、その成果を自社キャンパスで実践。かつての原風景であったオークの森を再生しています。

◉生物多様性のハブ
再生された森や湿地、草原は、渡り鳥の休息地になるだけでなく、絶滅が危惧される「モナーク蝶」のために特定の植物を植えるなど、地域の野生生物の生息地として設計されています。

◉都市農業の実践
LBCの「都市農業」要件に合わせ、敷地内には栽培園が設置され、在来種のハチと外来種のミツバチの共生を研究するフィールドになっています。

参考:
https://big.dk/projects/google-gradient-canopy-16167
https://realestate.withgoogle.com/bayview/
https://visit.withgoogle.com/stories/urban-ecology/
https://blog.google/outreach-initiatives/sustainability/restoring-native-habitats-silicon-valley/

好例 (2):DNP 大日本印刷(新宿、市谷の杜)

DNP市谷の杜

大日本印刷株式会社(以下、DNP)は本社のある新宿区市谷地区で「都市における新しい森づくり」を推進し、総敷地面積の約3割に当たる15,000㎡を緑化する「市谷の杜」を創出・育成しています。

◉「武蔵野の雑木林」の再現

地域固有の在来種で武蔵野の雑木林を再現

「市谷の杜」は「明るく親しみやすい落葉広葉樹を中心としながらも、荘厳さと静けさが感じられる常緑樹が織り交ぜられた多様性あふれる自然の森」をコンセプトに、かつて同じ場所に広がっていた森を復活させました。

土地の起伏が豊かであった市谷地区の特徴に合わせ、「市谷の杜」でもあえて谷部や斜面などの起伏に富んだ地形を設け、それぞれの地形に合わせた植栽を行うことで、植物や生物の多様化の向上を図っています。

02. 資源の再生

オフィスが消費するエネルギーや水の量よりも多くを自ら生み出し、余剰分を地域に「還元」する、資源面で「ネット・ポジティブ」であることです。

好例:Architectural Nexus (カリフォルニア州サクラメント)

建築設計事務所「Architectural Nexus」のサクラメントオフィスは、この「資源の再生」を最も分かりやすく実現した事例であり、LBCの最高位である「フル・リビング認定」を達成しています。

◉ネット・ポジティブ・エネルギー
屋上と駐車場のソーラーパネルにより、ビルが年間で消費するエネルギーの170%を生産します。余剰電力は地域の電力網に供給され、文字通り地域にエネルギーを「還元」しています。

◉ネット・ポジティブ・ウォーター
この建物は、サクラメント市の下水道網に接続されていません。飲料水を含むすべての水需要は屋根で集めた雨水で賄い、排水はコンポストトイレや壁面緑化による蒸発散によって、現地で100%処理されます。

参考:
https://living-future.org/case-studies/arch-nexus-sac/
https://worldgbc.org/case_study/arch-nexus-sac-headquarters/
https://capital-engineering.com/projects/commercial/arch-nexus-sac-office-remodel/
https://engagesac.org/blog-civic-engagement/2020/1/24/tvdcd57yxblxp9vyvvifip3ciz3nr3
https://www.nationalstoragetank.com/blog/arch-nexus-living-building-challenge-project/

03. 地域コミュニティとの融合

最も先進的な企業は、オフィスを自社専用の閉ざされた空間としてではなく、地域住民と共有する「社会インフラ」や「コミュニティ資産」として位置づけ直しています。

好例 (1):Salesforce (カリフォルニア州サンフランシスコ)

Salesforceは、サンフランシスコの自社タワーに隣接する交通ターミナルの屋上に、5.4エーカー(約2.2ヘクタール)の広大な公共公園「Salesforce Park」を整備しました。

◉完全な公共開放
この屋上公園は、従業員だけでなくすべての市民に無料で開放されています。

◉地域アメニティの提供
13の異なる生態系エリアがあるだけでなく、円形劇場や子どもの遊び場も完備しています。さらに、無料のヨガ、フィットネスクラス、ライブ音楽、子ども向けの読み聞かせ、野鳥観察ツアーなど、地域住民向けの多様なプログラムが年間を通じて週に数十回単位で開催されています。

参考:
https://www.sfcta.org/projects/salesforce-transit-center
https://www.wsp.com/en-us/insights/salesforce-transit-center-opening
https://www.tjpa.org/salesforce-transit-center/salesforce-park
https://www.tjpa.org/salesforce-transit-center/activities
https://www.sftravel.com/article/guide-to-san-franciscos-salesforce-park

好例 (2):Amazon (バージニア州アーリントン)

Amazonがバージニア州アーリントンに建設した第二本社(HQ2)の「Metropolitan Park (Met Park)」は、レクリエーションの提供を超え、地域の「社会的セーフティネット」そのものと機能的に一体化しています。

◉公教育インフラの提供
HQ2のキャンパス内に、アーリントン郡の公立高校「Arlington Community High School (ACHS)」のための恒久的な校舎を設計・提供しました。長年、恒久的な校舎を持たなかった同校は、多様な背景を持つ生徒が学ぶ、公教育における重要な拠点であり、Amazonは地域の公教育と継続的に協力するパートナーとなりました。

◉食料支援システム
キャンパス内の「食用庭園(Edible Garden)」は、地元のNPOと協力して野菜を栽培し、収穫物を地域の食料支援NPO「Kitchen of Purpose」に寄付するという、食料支援のサプライチェーンの一部を担っています。

参考:
https://www.enterprisecommunity.org/impact-areas/resilience/green-communities
https://www.apsva.us/post/hq2-prepares-to-welcome-arlington-community-high-school-to-metropolitan-park-in-2026/
https://www.aboutamazon.com/news/community/amazon-arlington-virginia-news
https://www.thinkwood.com/construction-projects/amazons-hq2-creates-community-while-crunching-carbon

好例 (3):Google (カリフォルニア州マウンテンビュー)

Google本社ビル「Googleplex」は、Google社員がいかに快適に、また良いアイディアを出せるかを意識して設計された建物であり、約4.7万平方メートルの広大な敷地内には、オフィスや公園、社員向けの無料食堂のほかに、Googleらしい遊び心あふれるものがたくさんあります。

◉歴史
Googleは、1998年にカリフォルニア州のメンローパークで創業しました。そして、2006年にシリコングラフィックスの本社を買収し、改装工事を行い、現在の本社になりました。Google本社はアメリカ建築家協会賞を受賞しています。

◉地域企業支援
オフィスのある敷地内は社員でなくても立ち入って散策でき、中に入ると、ビーチバレーのコートや恐竜のオブジェなどがあり、一般向けの施設としても「Google Visitor Experience」を提供しています。この中にあるカフェでは、地元企業から仕入れた商品を販売するなど地域支援を行っています。

参考:
https://about.google/intl/ja_ALL/company-info/our-story/
https://bayareainus.com/241007-2/

04. 健全な素材と適応的再利用

真の「自然共生」は、完成した建物が自然とどう関わるかだけでなく、その建物が「どのように作られたか」というプロセスにもおよびます。

好例 (1):Etsy (ニューヨーク州ブルックリン)

ハンドメイド作品を中心に売買できるオンラインマーケットを運営するEtsyのブルックリン本社は、LBC認証を取得しています。その達成において中心となったのが「マテリアル(材料)」の選定です。

◉有害化学物質の排除
LBCの「Red List(レッドリスト)」に基づき、何千もの建築材料や家具を精査し、環境や人体に有害な化学物質を含むものを徹底的に排除しました。

◉地域経済の活性化
Etsyの理念を反映し、オフィス内のアートや家具の多くは、LBCの厳格な基準を満たした地元のアーティストやEtsyセラー(出品者)によって製作されています。

参考:
https://living-future.org/case-studies/etsy-headquarters/
https://www.gensler.com/press-releases/etsy-headquarters-achieves-living-building-challenge
https://www.etsy.com/news/etsy-achieves-major-certification-for-new-hq-commits-to-zero-waste
https://gbdmagazine.com/etsy-workplace/

好例 (2):DNP (新宿、市谷の杜)

樹木がしっかりと根を張れる土壌がつくられている

「市谷の杜」は、設計の段階から「再生」と「循環」が意識されており、2025年に環境省の「自然共生サイト」に認定され、第33回地球環境大賞「特別賞」も受賞しています。

◉社員による管理
「この森から出てきたものは森に返すこと」を基本として、敷地内で出てきた枯れ木や枯れ枝はコンポストに集めて堆肥にし、植物たちの養分にしています。

枯れ木や枯れ枝を乱積みにして、地上生物や小動物のすみかや隠れ家としても活用。こうした管理は緑地を創出した当初から、DNP社員により行われています。

DNP「市谷の杜」の落ち葉や小枝が溜まったコンポスト

◉街全体の循環も意識した設計
都市の中で森林を作ることで、クールスポットとして機能し、ヒートアイランド現象を緩和を目指しています。

「市谷の杜」に降った雨水が土壌に浸透することで洪水のリスクを抑え、野鳥が生息できる場も創出しています。

未来のオフィスは、企業の価値観を映す鏡そのもの

企業が取り組む具体的な事例とともに、自然共生型オフィスを紹介しました。

紹介したこれらの企業は、自社のオフィスという物理的な空間を通じて、地域社会や地球環境というステークホルダーに対するコミットメントを提示しています。

これらの事例が示すのは、「自然共生型オフィス」が単一のトレンドではなく、企業の哲学そのものを体現しているということです。

未来のオフィスは、企業が社会と、そして自然とどのように共生していくかを示す「鏡」そのものになっていくと考えられます。

提供:大日本印刷株式会社

※キャプション無の写真:iStock
iStock.com/DianeBentleyRaymond/runna10/okugawa/jamesteohart/Unaihuiziphotography/DianeBentleyRaymond/SpVVK/Pressmaster/

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