生物多様性を守る取り組みは?個人や企業による保全活動
生物多様性とは、生き物や生態系の豊かさを意味します。
地球上には3,000万種以上の生物が互いに繋がりあり、協力しあって生きており、私たち人間も生物多様性の恵みを得て生活しています。
しかし、都市化による森林伐採や、地球温暖化、外来種の増加、乱獲、化学物質汚染など人間活動により、生物多様性が脅かされています。
生物の多様性を保全するために、市など 行政や企業など団体が行う取り組みから、個人が出来ることまで、私たちに出来ることを見ていきましょう。
生物多様性の重要性や保全が脅かされる原因について詳しく知りたい方は、下記の記事をあわせてチェックしてみてください
政府や地方自治体の取り組み!教育と連携を
生物多様性条約をご存じですか。
知らない方がほとんどではないでしょうか。
生物多様性の認知度が低い理由の1つは、生きものとふれあう機会が少なく、生物との繋がりを実感できないからです。
政府や地方自治体の役割は、生物多様性を保全する重要性について理解を広め、自然と触れ合う機会を創ること。
また、自然環境への影響力が大きい企業など民間レベルを巻き込み、技術指導の連携をしながら、生物を保全する働きかけが必要です。
具体的な取り組みを見ていきましょう。
生物多様性を楽しむ原体験
原体験とは、その人の生き方や考え方に大きな影響を与える幼少期の体験のことです。
河川や田園地域などで、子どもが身近に生きものと接して遊びながら学ぶことは、原体験として生物多様性の重要性を理解する機会になります。
なごや生物多様性センターが実施している河川の観察会では、亀や小魚の観察を通して、在来種と外来種の違いを学びます。
実際に、亀の甲羅の模様をみたり、触ることを通して違いを理解して、地域の環境を守るために必要な行動を学ぶ機会になっています。
福岡県の越前市でもアベサンショウウオの保全活動が行われていたり、日本全国各地で、地方自治体が積極的に生物多様性保全の取り組みが行われています。
エコファーマーの認定を促進
自然環境を守るために、農薬や肥料など化学肥料を極力おさえた農業の実践が必要です。
農林水産省が発表している生物多様性戦略では、農家さんが最低限取り組むべき規範の普及に取り組んでいます。
たい肥による土づくりや化学肥料・化学合成農薬を使わない取り組みをする農家さんは、都道府県知事により「エコファーマー」と認定をうけることができます。
環境負荷をさげて、生物多様性を保全するために、こうした認定制度を設けて推進する活動も行政の大事な役割ですね。
外来種の被害を防ぐ三原則
マングースやアメリカザリガニなど、ごく普通の生きものですが、生きる環境によって、その場で生息している生物やエサを食べてしまう、など、侵略的外来種と呼ばれる生きものがいます。
人間の活動が原因で、他地域からはいってきた生物をさし、場合によっては、在来種を絶滅危機に追い込んでしまいます。
環境省の公式ホームページでは、外来種の被害を予防する三原則が紹介されており、
「入れない」
「捨てない」
「拡げない」
の三原則の理解を普及することで、生物多様性を守る取り組みをしています。
外来種だから、と安易な理由で排除する考えは危険です。
どんな生物も十人十色の価値があります。
それぞれが補い合って平和に暮らせる環境を実現できるようにサポートしていきたいですね。
参照:環境省の公式ホームページ
企業や団体の取り組み!社会的責任を
企業の経済合理性を達成しながら、生物多様性を守る取り組みが必要です。
環境への負荷や影響を減らしたり、資源の循環、適切な土地利用、調達での配慮など民間事業者には大きな影響力があります。
クボタの取り組み
クボタグループは、2009年から環境基本行動指針に生物多様性に配慮した企業活動を取り入れています。
エコファーストを理念に掲げ、環境負荷や生物多様性への影響を最小限にするよう取り組まれており、耕作放棄地の再生支援や里山・森林の保全活動も積極的に行っています。
クボタのような、環境保護や生物多様性を守る取り組みは、影響力の大きい企業のお手本となります。
CSR活動をするとコストがかかる…という視点ではなく、CSR活動の一貫で生物多様性を守ることが企業の繁栄につながる、という視点をもつと良いですね。
言うだけではなく、実際に手を動かす姿勢が企業に求められています。
東芝グループの取り組み
東芝グループも、公式ホームページにて環境保全や生物多様性をまもる取り組みの活動報告がされています。
自然と共生するビジョンを掲げた愛知目標をベースに、東芝グループの関連性が高い10の目標に絞って環境アクションをきめて、 グループ全61拠点で活動が行われています。
2020年に報告された実施率をみると、71%でまだまだ改善の余地があります。
目標に対してどこまでが出来ていて、もっと努力しないといけない項目はどこなのか、 この透明性が環境活動を行う企業や団体に求められている姿勢です。
生物多様性について、自社事業との関連性を考え、出来ることは何か、 そして目標設定をすることが、企業の環境活動の第一歩と言えるでしょう。
途上国の豊かな生物保全活動を
海外における生物多様性を守る取り組みを紹介します。
開発途上国への国際協力を行うJICAは、急激な開発で都市化と人口の増加が進み、経済的に自立するために、自然資源に依存した生活をおくる貧しい人びとと一緒に、生物多様性の重要性を考え、技術指導を行っています。
パーム油の輸出のために激しい森林伐採が行われるボルネオ島では、豊かな生態系を守るプログラムが実施され、国立公園の管理方法を指導するところから、行政機関やNGO、企業と協力、実施した効果を図るモニタリング指導など、「体制」「人材」「技術」の3つの観点から取り組みを行っています。
現地の人たちが自立して行動をおこせるように、啓発活動による意識向上にとどまらず、 現状を把握し、分析する力や企業など事業者とのパイプをつくる、等の持続可能な取り組みが世界各国で行われています。
私たち個人ができる取り組み
生物多様性を守る取り組みは、誰かがやってくれるだろう、ではなく、1人1人が意識をもって行動することが大切です。
本記事の最後に、私たちが日頃から出来ることを考えてみましょう。
有機JASマークの食品を探してみよう
化学肥料を使わずに作られた「有機」や「オーガニック」と名乗れる食品を探してみましょう。
お野菜や食肉、油など、自然環境にやさしい方法で育てられているので、マークがついていない食品と代替するだけで、生物多様性を守ることに繋がります。
私たち人間の体にとっても化学物質のない有機食品のほうが健康的ですし、良いことづくしです。
とはいえ、有機食材は高いからなかなか手が出ないのが正直なところではないでしょうか。
全部を有機食材に変えようとすると大変なので、まずは1食から変えてみてはいかがでしょうか。
植物性代替肉として話題の大豆ミートは、技術向上も伴って、最近では本物のお肉と区別がつかない美味しさだそうです。
美味しい有機食材はないかな?という視点で楽しみたいですね!
耕作放棄地で作られた野菜やお肉を
1年以上作物が栽培されていない畑などの土地を耕作放棄地と呼びます。
少子高齢化の影響もあり、日本で増え続けている耕作放棄地を農地に変えて、食材を栽培している企業や団体のひとを応援することも私たちにすぐ出来ることです。
宮崎県新富町に農場を構える「みらい畑」では、ミニ野菜とぬか漬けのコラボレーションで栄養価たっぷりの腸活ミニ野菜が作られています。
耕作放棄地が緑に変わるので環境に良し。
農地に住む微生物のような生きものに良し。
そして、私たち人間の健康に良しの三方良しの関係性は気持ちがいいですね。
消費は投票です。
生きるための食事に、なにを食べるか、考えるキッカケにしてみてください。
生物多様性を守る楽しいボランティアへ
ボランティア掲載サイトから、生物多様性に関する全国各地のボランティア募集をみることができます。
富士山がみえる里山で森づくりをしたり、長野の大自然で畑を開拓したり、国内希少野生動植物の移植作業など、非日常的で楽しいアクティビティになること間違いなしです。
生物多様性を守るために、楽しむことはとても大切です。
自然との関わり合いが薄い現代だからこそ、ボランティアへ参加することで、多くの気づきがあるでしょう。
まとめ
世界中の一人ひとりが、地球市民として生物多様性を意識し、配慮した行動をとることが生物多様性を危機から防ぐ一番の近道です。
中華料理の食材の1つである八角の成分がインフルエンザの特効薬となったり、ナマケモノの体内に生息する虫の成分がガンの予防薬になったりと、知らないところで私たち人間という生物の繁栄に恵みをもたらす生きものがたくさん存在します。
知って、行動して、周りに伝える、という意識をもって、あなたも生物多様性を守るための取り組みをはじめてみませんか。
『GREEN NOTE(グリーンノート)』は環境・社会課題をわかりやすく伝え、もっと身近に、そしてアクションに繋げていくメディアです。SDGs・サステナブル・ESG・エシカルなどについての情報や私たちにできるアクションを発信していきます!