生物多様性

SDGs目標14 海の豊かさを守ろう|海洋汚染の現状に目を向けよう!

「海のプラスチックの量は、2050年には魚の量を上回る」という驚くべき予測が2016年に開催された世界経済フォーラムで発表されたことをご存知でしょうか。

レジ袋の有料化やプラスチック容器使用廃止など、環境保護に向けた取り組みが各所で進んでいる一方で、使い捨てプラスチックや生活排水による海洋汚染は深刻化しつつあります。

海洋汚染は決して他人事ではなく、私たちの生活に直接的な影響を与えるものです。

この記事では、海洋汚染の現状と日常生活で取り組める対策について紹介していきます。

海洋汚染が及ぼす影響

海洋汚染の現状をより身近に理解するために、まずは汚染によってどのような影響があるのかを具体的に確認してみましょう。

海洋生物への影響

海が汚染されることで最も直接的な影響を受けるのは、その海を生活の場とする海洋生物です。

海洋汚染の大きな原因のひとつとされているのが、私たち人間が出す膨大な量のプラスチックごみです。

プラスチックは人工的に作られたものであり、自然界で分解されることはありません。漂流することで劣化したプラスチックは、細かく砕けて「マイクロプラスチック」と呼ばれる直径5mm以下の破片となり、ダイオキシンをはじめとする海中にある有害化学物質を取り込んでいきます。

肉眼では見えないほど小さくなったプラスチックを、海の生物がエサと間違えて摂取し、食物連鎖により海の生物全体に有害物質が蓄積され、魚が大量死するなど生態系の破壊につながっているのです。

人体への影響

海洋生物の生態系への影響は、私たち人間の体にも影響を及ぼします。有害物質をもつ魚の数が増えると、必然的に人間が食事で口にする可能性も高まるからです。

通常はマイクロプラスチックが体内に入っても、1日程度で排出されますが、体内に留まっている間に体に吸収される懸念もあります。

マイクロプラスチックの人体への影響は現状では解明されていない部分が多いものの、肺組織への影響も示唆されており、人体への悪影響が危惧されています。

経済への影響

もうひとつ深刻な影響として挙げられるのが、経済への影響です。

海洋汚染の原因には、プラスチックごみだけではなく、漁網や釣り糸といった漁具が海に流出していることも挙げられています。

流出した漁具が航行する船のスクリューに絡むなどの漁業者への被害を生むだけではなく、海洋を漂流する漁具が魚を捕獲し続ける「ゴーストフィッシング」といわれる事象が起き、漁業資源を減少させているのです。

ごみによる環境破壊や生態系の破壊により、漁獲量が著しく減少し、漁業者が廃業に追い込まれる事例も増加傾向にあり、経済的損失が生じ始めています。

海洋汚染の現状

海洋汚染の解決策を考えるには、海洋汚染が引き起こす問題を理解した上で、実際に今どのような状況にあるのかを確認していくことが重要です。

ここでは、海洋汚染の現状を具体的な事例を通して紹介します。

日本における海洋汚染は過去10年間でワースト

令和4年に公開された海上保安庁の「令和3年の海洋汚染の現状(確定値)」によると、日本国内で発生した海洋汚染事例は493件と過去10年間で最多となっています。

そのうち最も多い事例が、油による海洋汚染です。

具体的には、漁船や作業船そしてプレジャーボートといった船舶から排出される油が汚染の原因となっています。驚くべき点は、油が排出された原因の4割以上が「取扱不注意」によるものであることです。

日本における海洋汚染は、人為的な要因で深刻化しているのが現状です。

環境問題に対する意識が高まっている一方で、いまだに海洋汚染事例が増加傾向にあるということは、問題解決に向けた具体的な行動が取れていないことを実証しています。

出典:「令和3年の海洋汚染の現状(確定値)」(海上保安庁)

世界で毎年800万トン以上のプラスチックが海に

日本では2020年7月にレジ袋が有料化されました。

これは、2018年に開催された主要国首脳会議(G7)で採択されたプラスチックごみがおよぼす各国の海洋汚染問題への対策を集約した「海洋プラスチック憲章」をもとに、海洋汚染の原因となるプラスチック廃棄量を減少させることを目的としています。

世界全体で回収されるプラスチックごみのうち、約8割がリサイクルされることなく埋め立てられるか海に投棄されているのです。これは、量にすると毎年800万トン以上のプラスチックが海に排出されているということになります。

環境省が公開している「プラスチックを取り巻く国内外の状況」に引用されているUNEP国連環境計画の報告書「シングルユースプラスチック」によると、日本での1人あたりのプラスチックごみの量は世界第2位と報告されています。

レジ袋の有料化だけではなく、プラスチック容器使用廃止を決定する企業も増えてきており、日本国内でも変化してきているものの、依然としてプラスチックのリサイクル率も先進諸国内と比較して低いのが現状です。

出典:「プラスチックを取り巻く国内外の状況<第3回資料集>」(環境省)

廃棄物による海洋汚染事例は減少傾向に

海洋汚染事例の全体数は増加傾向にあるものの、日本国内における廃棄物が原因となる事例数は減少傾向にあることが、海上保安庁の報告書からわかります。

一般市民による廃棄、漁業関係者による廃棄双方とも前年より事例数は減少しており、各地方自治体等が実施しているごみ拾いやSDGs(持続可能な開発目標)に対する意識向上が一助になっていると考えられるでしょう。

国内外の現状を多角的に把握することで、より身近に海洋汚染を体感することにつながります。

海の豊かさを守ろう!今私たちにできること

刻々と海洋汚染が進むなか、SDGsの目標14にある「海の豊かさを守ろう」を行動に移す必要性が高まっています。

最後に、私たちが日常生活ですぐに始められる海の豊かさを守るための対策を紹介します。

使い捨てプラスチックを減らす工夫をしよう!

日本全体、そして世界全体のプラスチックごみ廃棄量を減らすためには、私たち一人ひとりが毎日の生活スタイルを変えていくことが近道です。

水筒やタンブラーを持ち歩くようにしたり、買い物の際にマイバックを使ったりといった、使い捨てプラスチックの使用量を意識的に減らす工夫を積み重ねることで、確実にプラスチック消費量そして廃棄量を減少させることができます。

また、プラスチック包装の製品を使用した後に、ごみとして廃棄せず、スーパーなどにあるリサイクルボックスなどに入れるなど、積極的にリサイクルすることも重要な工夫のひとつです。

MSC「海のエコラベル」を手にしよう!

MSC「海のエコラベル」とは、MSCMarine Stewardship Council:海洋管理協議会)の厳格な規格に適合したMSC認証取得漁業で獲られた水産物にのみ認められるラベルです。

水産資源と環境に配慮した持続可能な漁業によって獲られていることが証明されている水産物を選ぶことで、海洋生物そして海を守ることにもつながります。

また、MSC漁業認証の規格では、海に流出または廃棄された漁具の流出の防止とその影響を軽減するために、認証漁業に対して主体的な管理を求めています。

2022年3月現在、日本国内でMSC認証を取得している漁業は、北海道のホタテガイ漁業など12件で、世界で認証されている漁業の539件の中では多い方ではありません。

しかし、消費者が意識的にMSC「海のエコラベル」がついた水産物を選ぶことで、需要が高まれば、今後MSC認証を取得する漁業も増えていくことが期待できるでしょう。

画像出典:MSCウェブサイト

清掃活動に参加してみよう!

海洋汚染の改善に向けた方法として、海の清掃活動に参加することは非常に重要な取り組みです。

環境省と公益財団法人日本財団が共同事業として推進している「海ごみゼロウィーク」一斉清掃など、さまざまな団体や地方自治体が海洋ごみ削減に向けた清掃活動を展開しています。

海岸に漂着しているごみを実際に目にすることで、世界の海で大量のごみが漂流していて、海洋生物の生活の場とその命を脅かしていることを現実問題として認識することができるでしょう。

清掃活動を通して、個々が海洋汚染の現状を知り、解決に向けた行動をする意味を理解し、それを周囲に伝えることで、その意識を普及させることにもつながります。

まとめ

海洋汚染は、都市部に住む人を含め今や世界全体が注視すべき環境問題のひとつです。

私たち人間の生活が原因となって、海の生態系は着実に破壊されていることがあらゆる統計からも証明されています。

今回紹介した海洋汚染が引き起こす影響、そして私たちが直面する現状をまずは「知る」ことから始めましょう。

海洋汚染と向き合うことが、未来のために海の豊かさを守る行動の第一歩です。

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