気候変動・脱炭素

【世界と日本】温室効果ガス削減の取り組みと個人でできること

2019年7月から11月にかけてアマゾンで、2022年2月にはアルゼンチンで、さらには2022年5月にカリフォルニア州で大規模な森林火災が起き、広大な土地が焼き尽くされました。

被害が拡大した要因は、異例ともいえるほど猛暑と干ばつが続いたことでした。乾燥によって火の手が一気に広まったとされています。一方、インドネシアでは記録的な大雨によって大規模な洪水が発生しました。

これらの異常気象は温室効果ガスによって引き起こされたとも考えられています。今回は、温室効果ガスを削減する意味や各国の取り組みについて詳しく解説していきます。

温室効果ガスがこのまま増え続けると平均気温は5.7℃上昇する

温室効果ガスの増加によって、地球全体の平均気温の上昇が懸念されています。

世界的な気候変動の調査機関であるIPCCは、今後予想されるシナリオをいくつか発表しました。地球温暖化を引き起こす効果の高さを表すRCPの数値の大きさごとにシナリオが想定されています。

各シナリオにおいて気温変化の範囲は異なりますが、いずれの予測でも「地球の平均気温は1.5℃以上上昇する」という結論を出しています。その中でも、最悪のケースでは「2100年には平均気温が5.7℃上昇する」と予測されています。

気温上昇はエリアによっても影響に違いが見られます。たとえば北極の場合、世界平均に比べると2倍以上の早さで気温が上昇する可能性があり、2050年までの間に少なくとも1回は海氷のない9月が訪れるといわれています。

人口が爆発的に増加している中で、海氷がなくなると地球全体に以下のような影響が及ぶと考えられます。

  • 水位上昇で水際の平地 (住めるところ)が減る
  • 作物が育たなくなってより食糧危機が進む
  • 生態系が変化して様々な産業に大きな影響が起きる
  • 人の移動が起きて紛争に繋がる

それでは、地球の気温が上がるとどのような危険性があるのでしょうか。

まずは温暖化によって海や地表の水分が蒸発しやすくなり、地球上の水の循環が活性化することで降水量や豪雨が増え、高潮や洪水の発生率が高まるといわれています。

近年は日本でも毎年のように水害や土砂崩れが発生しているため、すでに温暖化の影響が出ているといえるかもしれません。

都市化が進むと人工的な建物によって輻射熱が生じたり、風通しが悪くなったりします。熱がこもりやすくなることで、都市部の気温が上昇するヒートアイランド現象が発生しやすくなります。

また排熱が妨げられることにより、熱波(※)が起こる危険性も高まるでしょう。

※熱波…4~5日以上にわたって、広範囲に著しい高温をもらたす現象のこと

温暖化は人への健康被害だけでなく、生態系や農作物にも強い影響を与えます。

地球上に暮らしているすべての生き物を守るためにも、1日でも早く、温室効果ガス削減への取り組みを実施しなければなりません。

出典:「AR6 Climate Change 2021:The Physical Science Basis」(IPCC)

温室効果ガスとは?組成と割合

温室効果ガスとは、太陽の熱を地球上に止まらせ、地表を暖める作用をもつ気体のことです。

代表的なものとして二酸化炭素が挙げられますが、ほかにもいくつか種類がありますので、JCCCA(※)のデータを元にそれぞれ解説します。

※JCCCA…全国地球温暖化防止活動推進センターの略称。地球温暖化対策に関する普及啓発など地球温暖化防止に寄与する活動を促進することを目的とした組織。

二酸化炭素:76%

地球上の温室効果ガスのうち76%という大部分を占めるのが二酸化炭素です。

二酸化炭素は物を燃やすことで発生するため、国内でも産業部門や運輸部門、業務部門、家庭部門などあらゆる場面で排出されています。最も多いのは工場(製造業)などの産業部門で、全体の35%を占めます。

石炭や炭素などの化石燃料が使用されるようになって、地球上の二酸化炭素は急増しています。木材や紙、プラスチックなどを焼却処理する際にも発生するため、廃棄物の増加も課題です。

日本から排出される温室効果ガスの割合としては、約92%を二酸化炭素が占めています。

メタン:16%

メタンは、全体の16%を占めています。割合としては少なめですが、二酸化炭素の25倍もの温室効果があるため、決して影響は少なくありません。

メタンの発生には有機物の腐敗や発酵、化石燃料の大量消費などが関係しており、アフリカやアジア、米国などのエリアの排出量が特に多いです。

日本の排出割合は2.4%となっており、世界に比べると少なめの数値といえます。

一酸化炭素:6.2%

一酸化炭素は、全体の6.2%を占めています。一酸化炭素の温室効果はメタンよりもさらに強力で、二酸化炭素の298倍にも上ります。少ない割合でも大きな影響があるでしょう。

燃料や窒素肥料の使用などが発生の要因で、日本の排出割合は1.6%です。

フロン:2.0%

フロンは全体の2%を占める割合で、冷蔵庫やエアコン、発泡剤に用いられていました。

二酸化炭素の1万倍以上もの強力な温室効果があることと、オゾン層の破壊につながることから、現在はフロンを使用した製品の生産は規制されています。

日本は有害なフロンを規制したことによって大幅な削減に成功しており、現在はほとんど排出されていません。

出典:「温室効果ガス総排出量に占めるガス別排出量」(全国地球温暖化防止活動推進センター)

【世界】温室効果ガス削減への取り組み

世界各国では、温室効果ガス削減の目標を掲げてさまざまな取り組みが現在も行われています。

どのような目標と取り組みが実施されているのかを国別に紹介しましょう。

世界各国の削減目標

国名 温室効果ガス削減目標
ドイツ 2050年までに80~95%削減(1990年比)
フランス 2050年までに75%削減(1990年比)
イギリス 2050年までに80%以上削減(1990年比)
カナダ 2050年までに80%削減(2005年比)
アメリカ 2050年までに80%以上削減(2005年比)
中国 2030年までに60~65%削減(2005年比)
インド 2030年までに45%削減

世界各国の取り組み

それでは、各国の代表的な取り組みについて紹介します。

ドイツ

ドイツでは化石燃料の代替となるグリーン水素の製造を強化する方針です。化石燃料は製鉄所、化学系プラント、航空機などの動力になっており、多くのCO2を排出していました。

水素はCO2を排出しないため、エネルギー源を切り替えることで大幅な削減が見込まれています。

また、2050年までには交通システムを整備して脱炭素化できる取り組みを行い、運輸に関するエネルギー消費量を抑えて大幅な温室効果ガス削減を目指しています。

フランス

 

目標達成へ向けて、エネルギー消費の削減と、エネルギーミックスの多様化を進めています。とくに、CO2を排出しないエネルギーとして重要視してきた原子力発電の比率の引き下げを検討しており、発電電力量におけるシェア率71%を50%まで引き下げる方針です。これにより、再生可能エネルギーの大幅な導入を推進しています。

環境への負担の少ない電動自動車やバイオ燃料、天然ガス自動車、バイオガスなどの普及を支援し、交通関連で排出される温室効果ガス削減に取り組んでいます。

2050年までには、すべての建物を省エネ基準にリノベーションして、日常的に排出される温室効果ガスを全体的に削減する方針です。

イギリス

イギリスは、2000年頃から洋上風力発電に注力してきました。2020年時点の洋上風力による累積導入量は世界1位を誇ります。イギリス国内における発電電力量は9.8ギガワットで約1割を占めています。2030年までに40ギガワットに拡大する目標を立てています。

2019年にはエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合が40%に拡大しており、そのうち24%が洋上風力発電によるものとなっています。 

あわせて、温室効果ガスを発生させる火力発電などを調整し、将来的には電力部門からの排出をほとんどゼロの状態にする予定です。エネルギー関連では、バイオマスなどの燃料に転換を行いつつ、2040年までにはガソリンやディーゼル車の生産終了を目指しています。

また、家庭用暖房は脱炭素化し、家庭からの排出量も削減する方針です。

カナダ

現在80%低炭素化できている電源のさらなる普及を目指しつつ、電化や廃熱の利用を推進することでエネルギー効率を向上させる取り組みが行われています。

乗用車は電気自動車化を目指し、貨物輸送でも環境負荷の少ない燃料への移行や、天然ガス自動車の普及を推進中です。

アメリカ

効率的なエネルギーを目指して、新しい材料や技術の導入を推進しています。

電化しにくい航空や船舶、長距離トラックなどの分野では燃費を改善する開発も進められています。特に、輸送部門におけるすべての小型・中型車のEV化を目指す方針です。

技術革新については、蓄電技術や水素エネルギーなどの開発を公約に掲げて推進しています。

【日本】温室効果ガスの削減への取り組み

世界の二酸化炭素排出量は335億トンで、日本はそのうち3.2%を占めています。

割合としては少ないように見えますが、日本の人口の10倍以上の人々が暮らすインドが6.9%であることを考えると、日本の排出量は比較的多いと考えられます。

ひとり当たりの排出量をみても、日本は8.4%であり、インドの1.7%に比べて5倍以上の割合を占めています。

このまま対策が遅れると、日本は人口が増えれば増えるほど二酸化炭素排出量が大幅に増えることになります。地球温暖化を促進させるリスクがかなり高い状況であり、温室効果ガス削減に向けた取り組みは重要です。

出典:「世界の二酸化炭素排出量(2018年)」(全国地球温暖化防止活動推進センター)

日本の削減目標

 

2020年10月に、日本の温室効果ガス削減の目標として「2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことが宣言され、長期目標として2050年までに温室効果ガスを80%削減することが掲げられました。

さらに、2021年4月に開催された気候変動サミットでは、中期目標として2030年までに2013年度比で46%を削減し、50%の削減も視野に入れて挑戦することを宣言しています。

日本の取り組み

 

日本では、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。この戦略は、成長が見込まれ、かつ温室効果ガスの削減に取り組むべきとされる産業を担う民間企業を支援することが狙いです。

「エネルギー関連産業」「輸送・製造関連産業」「家庭・オフィス関連産業」に当たる14の重要分野が設定され、以下の支援策が実行されています。

  • グリーンイノベーション基金を創設する
  • 脱炭素化の効果が高い製品への投資を優遇する
  • ファンド創設などで投資をうながす
  • 新技術の導入を進めるための規制緩和・強化を行う
  • アジア新興国への技術的支援や国際連携

産業関連のほかにも各企業がさまざまな取り組みを実施しています。たとえば、自動車通勤による環境への負荷を軽減するために、時差出勤やリモートワークを推奨しています。

高速道路においては、自動車の走行速度低下による環境負荷の増大を避けるために、首都高の料金を交通状況に応じて変動させる、ETCを必須化する(サポートレーンの導入)などの取り組みが行われています。

そのほかにも、二酸化炭素の吸収を促進するために道路空間の緑化や分散型エネルギーの実現のためにガスコージェネレーションシステム(※)の導入などが進められています。

※ガスコージェネレーションシステム…都市ガスを燃料に発電し、発生する熱を再利用するシステム 

温室効果ガス削減に向けて家庭でも取り組みを

日本の温室効果ガス排出量の特徴としては、二酸化炭素の排出が約92%を占めていることです。非化石電源比が高い割合を占めるフランスの排出量が68%であることに比べると非常に高いことが分かります。

家庭で二酸化炭素が発生する要因は、電化製品の使用や自動車によるものが多く、少しでも削減する心がけが重要となります。

家の中でできること

家の中では、主に電気の使用を抑える取り組みを実施することになります。

結果的に、地球にも財布にも優しいアクションを紹介しましょう。

  • エアコンの設定温度は冷房時の室温は28℃以上、暖房時の室温は20℃以下に保つ
  • 電力プラン(会社)を見直してバイオマス発電に切り替える
  • 家電の購入時はエコ家電を選ぶ
  • 電球はLED電球に替える
  • 湯たんぽを使用して暖房器具の使用を抑える
  • 固形シャンプーを使用してプラスチックゴミを削減する
  • 窓ガラス発電を導入する
  • 断熱シートや遮熱シートを利用してエアコンの使用を抑える
  • サステナブル素材を使った製品を利用(アップルレザー、トライウォールなど)
  • スマートフォンの電力使用量を可視化する 
  • 外出先でできること

    自動車を多用すると二酸化炭素の排出が増えるため、外出時にはできる限り以下のことを意識しましょう。

    • 徒歩や自転車、交通公共機関を利用して自動車の利用を控える
    • 自動車はハイブリッド・EV車への更新を検討する
    • 自動車に乗る際は、急ブレーキ、急発進をしない
    • 一時停止の際はアイドリングストップをする
    • 移動は渋滞の少ない時間帯に行う 

    まとめ

    温室効果ガスは地球温暖化の原因になり、熱波や豪雨などで私たちの生活を危険にするだけではなく、地球上の生態系にも強い影響を与えます。

    このまま対策を行わない場合は、最悪のシナリオとして平均気温が5.7℃上昇するといわれており、現在の豊かな暮らしが失われるかもしれません。

    改善のためには一人ひとりが意識を持ち、まずは身近な節電や自動車の使用を控えるところから始めていくことが大切です。

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