児童労働の原因とは?世界の子供の10人に1人が働く現状
今、着ている服を作るために、綿花農園で手を真っ赤にしながら、ひたすらに綿花を紡いでいる子供がいるかもしれない。
そんな馬鹿なと思うかもしれませんが、世界の子供の10人に1人が働いているというのが現状です。
毎日の自分の消費行動が、大きな問題に繋がっているかもしれません。
遠い国の話と考えてしまいがちですが、実は自分にも直結している可能性は高いのです。
この記事では、世界に蔓延する児童労働という大きな課題の原因をご紹介していきます。
そもそも児童労働とは?定義や取り組み
児童労働という単語は聞いたことがあっても、具体的にはどのような子のことを指すのでしょうか?
児童労働の定義
国際労働期間(ILO)によると、児童労働の定義は以下の二つです。
「15歳未満(就業最低年齢及び義務教育年齢)の労働」
「18歳未満の危険で有害な労働」
幼いうちから仕事をすることは、子供の健全な成長へ影響を及ぼすとされています。
子供たちの教育の機会を奪うだけでなく、重労働で体を壊してしまう子や、心への影響も計り知れません。
現在、世界が一丸となって児童労働撤廃に向けて取り組みを進めている最中です。
児童労働が発生している産業としては、農業が断トツで、全体の70%を占めています。
「労働」と「家の手伝い」の境目が曖昧であり、コーヒー農園やカカオ生産地では、学校に行かずに家の農園を手伝う子どもが多いというのが現状です。
そのほかには、鉱山などでの危険な作業を子供にさせていたり、製造業でも幼い子がミシンや機械を前に仕事をしているケースも多くみられます。
また「最悪の形態の児童労働」としては、人身売買や子供兵として働かされたり、売春やポルノ製造、薬物の生産や取引に関わることもあります。
信じられないかもしれませんが、実際にこれらの産業で働かざるを得ない子供たちが沢山いるというのが現状です。
児童労働者の数
2020年のデータによると、世界中で1億6000万人の子供たちが児童労働をしていると、国際労働期間が発表しました。
参照:「Child Labour: Global estimates 2020, trends and the road forward」(ILO)より
あまりにも数字が大きすぎてイメージが湧かないかもしれませんが、これは世界の子供の10%に当たる数字です。
つまり、世界の子供の10人に1人が児童労働をしているという事態です。
多くの国際機関や国際NGO団体が取り組みを進めていて、2000年時点から着々と減っていた児童労働者数。
しかし、2016年から2020年の4年間で、840万人も増加してしまったという悲しい統計が明らかになっています。
SDGs目標8「働きがいも経済成長も」
2015年に実施された国連サミットにて、持続可能な開発目標(SDGs目標)が採択されました。
その中に、児童労働撤廃に関する取り組みが盛り込まれています。
SDGs目標8「働きがいも経済成長も」には、
というターゲットが含まれています。
2016年から児童労働数が増えてしまっていて、さらには新型コロナウィルスによる影響を受けて、数がグッと加速していると想定される中で、2025年までの撤廃はかなり厳しい目標と言えるかもしれません。
児童労働の原因を探りながら、具体的にはどのようなことが出来るのか見ていきましょう。
児童労働が発生する原因
本来は学校にてのびのびと学ぶ時期を楽しんでいるはずの子供が、仕事をしなければいけない現状。
なぜそのような状況になっている原因を見ていきます。
現地の原因①貧困
児童労働が起きる1番大きな原因は貧困だと言われています。
貧しいからこそ、学校に行っている暇はなく、家族一丸となって労働力とならなければいけない。
そんな家庭はたくさんあります。
その背景には、貧しい地域で暮らしていること、紛争や自然災害などで移動を余儀なくされたことなど、それぞれ複雑な歴史が絡んでいることが多いです。
貧困の現状について、下記記事で紹介しています。
現地の原因②社会・文化的背景
日本で暮らしていると「児童労働=悪いこと」と考えますが、地域によっては
「女の子は家で仕事をするのが当たり前」
「男の子はある程度大きくなったら力仕事をするもの」
などと、教育よりも仕事を優先するのが当たり前という家族もあります。
親世代が教育を受けていないと、子供に勉強をさせる必要性を感じず、働く方が良いと考えてしまい、何世代にもわたって教育が受けられないという負の連鎖が続くこともあります。
現地の原因③脆弱な教育制度
農村部に暮らしている子供は、そもそも家の近くに学校がなかったり、通うのが果てしなく遠いということもあります。
または、建物として学校はあっても、先生が足りなかったり、必要な資材がなかったり、カリキュラムが存在しないということも多いです。
たとえ学校があったとしても、教育費を払うことができず通えなかったり、家計の都合から「長男だけ学校に行き、他の子供は家で仕事」という家庭もあります。
現地の原因④政策不足
日本の義務教育のように、基本的には無償で学校に通えるような制度がない地域では、どうしても貧富の差によって学校に「行ける」「行けない」が決まってしまいます。
通わせることが出来ない世帯へのサポートがあれば良いですが、腐敗した行政の牛耳る地域では、未来への投資として子供にお金をかけることは考えにくいでしょう。
外部の原因①大量生産
児童労働を生み出す理由は、現地側の問題だけではありません。
児童労働が発生している現場の多くは、農業や生産業となっています。
とにかくたくさん作って、どんどん海外に売ることがお金儲けになるというサイクルが存在するからこそ、労働力として子供も駆り出されているのです。
大量生産・大量消費への見直しが始まったとはいえ、今もなお先進国を始め、世界では経済を回すべく物を作り、売り続けています。
このしわ寄せを受けているのが、アフリカや東南アジアの子供たちと言えます。
外部の原因③安い方が良いという考え方
私たちの暮らしの中の問題は「大量生産」だけではありません。
どうせ買うなら安い方が良いと思って、値段を比較して物を買ったことがありますよね。
この「安ければ安い方が良い」という考え方も、児童労働に結び付いています。
原料となる素材を作ったり、商品を加工している現場側は、とにかく安く買いたたかれることに慣れています。
だからこそ、できるだけ安い給料で働いてくれる幼い子供を労働力として雇っているのです。
外部の原因②サプライチェーンの情報意識
もし自分の着ているTシャツを、どこかの国の幼い子が作ったと知ったら、どのような気持ちになるでしょうか?
消費者は、自分が買うものがどこからきて、どのように作られたのか知らないことが多いです。
調べたとしてもMade in China(中国製)なのかVietnam(ベトナム製)かどうか、程度ではないでしょうか。
原料の調達から生産のプロセスがブラックボックス化しているため、サプライチェーンに関して関心を寄せることが少ない状況です。
そのような情報不足によって、児童労働に加担している現状もあります。
児童労働について私たちができること
児童労働と聞くと、遠い国で起きている問題と考えてしまうかもしれません。
児童労働が起きる原因をかみ砕いていくと、確かに現地側の複雑な背景もあります。
しかし、自分たちに出来ることもあるのです。
-
- まずは児童労働についての知識を蓄えること
- 物を買うときには適切な値段かを考えること
- 物がどこからきて、どのように作られたのか意識すること
昨今のSDGs推進を受けて、企業はブラックボックスだったサプライチェーンの見える化を進めています。
大手ファッションブランドであるZARA(ザラ)は、商品一点一点ごとにどこの国の、どの工場で作られたかを表示するようになりました。
買い手の意識が変わるからこそ、作り手の意識も変わっていきます。
こうやって、少しずつ遠く離れた国の児童労働という問題に、世界が一丸となって対応を進めています。
最新レポート|拍車のかかる児童労働の原因
2015年以降SDGs目標にも児童労働撤廃が掲げられ、世界全体での取り組みが加速しました。
2021年は児童労働撤廃国際年と制定され、2025年の完全撤廃に向けたマイルストーンとなる1年でした。
児童労働撤廃に向けてスタートダッシュを切っている中で発生した新型コロナウィルス。
先進国においても、不景気が騒がれ、多くの人の暮らしに影響を及ぼしていますが、貧困地域へのインパクトはとても大きく出ています。
2021年6月に国際労働期間とユニセフが共同で発表した最新の報告書によると、新型コロナウィルスの影響で、児童労働者の数は2022年末までに約890万人ほど増えると想定されています。
その増え幅のうち、半数以上は5~11歳の低年齢の子供たちが占めています。
参照:「Child Labour: Global estimates 2020, trends and the road forward」(ILO)より
2025年の児童労働撤廃に向けて、残りわずかというタイミングですが、残り3年間で成果を出すのは簡単なことではありません。
データによると2020年から2020年までの20年間で進めてきた取り組みを、18倍の速さで動かす必要があるそうです。
いかに厳しい戦いかが分かります。
まとめ
「児童労働は良くない」ということは頭で理解していても、実際に身近に働いている子供がいるわけではなく、なんとなく他人事と捉えてしまう人も多いのではないでしょうか。
児童労働が起きる原因を探っていくと、大きく分けて2つの理由があります。
- 現地側の問題(貧困、文化的背景、教育の欠如、政策不足 等)
- 他国側の問題(大量生産、安さを追い求める姿勢、知識不足 等)
このうち、後者は今すぐにでも自分がアクションを起こすことが出来る問題です。
2025年の児童労働撤廃というSDGs目標は、かなり大きなハードルとして立ちはだかっています。
だからこそ、毎日の自分の買い物が、児童労働に繋がる恐れを理解し、より賢い選択の出来る消費者となるように意識してみませんか。
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