生物多様性

生物多様性ホットスポットとは?注目される原因や日本のホットスポットも紹介

生物多様性ホットスポットとは?注目される原因や日本のホットスポットも紹介

地球には認知されているだけで約175万種の生物がおり、未確認の種を含めると3000万種以上の生物がいると考えられています。

地球上に生命が誕生してから約40億年の間に、生物はさまざまな生物とつながることで独自の生態系を作り上げてきました。

しかし近年、人間の活動により生物の絶滅が加速しています。

そんな、さまざまな生物が生息しているにもかかわらず、絶滅の危機に瀕している生物が多い地域を「生物多様性ホットスポット」と呼びます。

今回は、生物多様性ホットスポットとはどういうものなのか、簡単に分かりやすく解説していきます。

生物多様性ホットスポットとは?

生物多様性ホットスポットとは?

「ホットスポット」とはもともと、火山の活動地域を指す言葉です。

生物多様性においては、「多様な生物が生息しているが絶滅危惧種が多いため、早急に保全すべき地域」を指します。

生物多様性ホットスポットに選ばれるには、2つの条件を満たしている必要があります。

  • 1,500種類以上の固有植物が生息していること
  • 原生の生態系の7割以上が失われている場所であること

つまり、豊かな自然や生態系がいて危機に瀕している地域です。

その中でも、原生の生態系が9割以上失われている場合は「Hottest of the Hotspots (最も危機的なホットスポット)」と呼ばれます。

絶滅の可能性がある野生生物種は4万種以上

国際自然保護連合 (IUCN)が公表する「IUCNレッドリスト」では、現在41,000種以上の生物が絶滅の危機に瀕しているとしています。

この数字は、評価されている種の約3割に相当します。

また、2019年の国連による報告では、今後数十年で約100万種の生物が絶滅する可能性があることを発表。

調査結果を通して、世界に警告を出しました。

参考:国際連合広報センター「国連報告書が世界に「警告」:100万種の生物が絶滅の危機に」

環境省のデータからは、日本の絶滅危惧種の数値が分かります。

2020年3月に公表された「環境省レッドリスト2020」では、74種のカテゴリーで合計3,716種が絶滅危惧種とされています。

カテゴリの中で絶滅危惧種が多かったのは、動物だと貝類、植物では維管束植物でした。

参考:環境省「環境省レッドリスト2020の公表について」

生態系をまもるための「生物多様性ホットスポット」

なぜ、生物多様性ホットスポットというものが作られたのでしょうか。

地球上の生物は、それぞれバランスを取りながら生息しています。

それは人間も同じ。

人間も多様な生物の一種として生活することで、私たちの生活は成り立っています。

しかし環境汚染や乱獲など、人間の勝手な活動により生物のバランスが崩れかけています。

バランスを戻すには、時間やお金をかけて改善する必要がありますが、一度に全ての問題を解決するのは難しい…。

そこで「生物多様性ホットスポット」を認定し、順位付けを行うことで効率的な保護を行うことにしたのです。

生物多様性が脅かされる4つの原因

生物多様性が脅かされる4つの原因

多くの生物が絶滅の危機にあることをお伝えしましたが、なぜそのような事態になってしまったのでしょうか。

生物多様性が脅かされる原因は、大きく分けて4つあります。

  • 人間活動によるもの
  • 気候変動によるもの
  • 外来種が持ち込まれたことによるもの
  • 自然の質が低下したことによるもの

人間活動によるもの

人間活動が生物多様性を危機にさらしています。

人間活動とは、以下のものが挙げられます。

  • 都市開発
  • 農地開発
  • 乱獲

都市開発や農地開発により、森林が切り開かれることで、そこに住む生物たちの住処が減っています。

森林の伐採だけでなく、河川の改修や埋め立て、コンクリートによる埋め立てなども当てはまります。

また商用利用のため、過剰に採取したり乱獲したりすることも種・個体数の減少につながります。

自然の質が低下したことによるもの

人が自然に手を加えることで生物たちの生育環境を悪化させていますが、逆に手入れ不足でも生物多様性の危機につながることがあります。

過疎化や高齢化、農林業の低迷により、竹林が放置されたり、雑木林や草原の雑草が放置されることで、昔から人の手入れによって保たれていた生態系のバランスが崩れてしまうのです。

技術の発展により、今まで使われていたものが不要になることで人の出入りが無くなるケースもあります。

気候変動によるもの

生物多様性は、気候変動による影響も受けます。世界中で問題になっている気候変動、特に地球温暖化は多くの種の存続に関わる環境問題です。

南極や北極に住む生物は、氷が溶けることで住処を失います。

森林に生息する動植物は、熱波や砂漠化により住処が失われる可能性もあります。

また環境の変化により新たに優勢となった動植物に、食料や生息地を奪われる可能性があります。

その結果、絶滅したり個体数が減ってしまうのです。

外来種が持ち込まれたことによるもの

外来種とは、もともとその地域に生息していなかったのに人間が持ち込み、繁殖してしまった生物です。

日本だとアメリカザリガニやアライグマなどが外来種になります。

外来種と聞くと動物を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、植物などにも外来種はいます。

例えば、四つ葉のクローバーでおなじみのシロツメクサは、もともとヨーロッパで牧草として使われていたものでした。

外来種はその国固有の種を食べてしまったり、住処を横取りします。

また近い種の交配により雑種が生まれ、遺伝子が汚染されてしまう恐れがあります。

関連記事:生物多様性の重要性は?危機を理解して私たちにできることを

日本の生物多様性ホットスポット

日本の生物多様性ホットスポット

国際NGO団体、コンサベーション・インターナショナル(CI)が生物多様性ホットスポットを選定しています。

その数は2017年時点で世界36カ所。

そして2005年に、日本は生物多様性ホットスポットの一つとして追加されました。

日本に生息する脊椎動物のうち、約4分の1は固有種です。両生類においては4分の3が固有種だといわれています。

そんな多様性豊かな日本ですが、都市開発や外来種の持ち込みなどにより生物多様性に大きな影響を与えています。

最後に、日本の生物多様性ホットスポットを3カ所紹介します。

鹿児島県:小笠原諸島

鹿児島県:小笠原諸島

日本では、本州などの山頂部と小笠原諸島などの離島に固有種が多いことが分かっています。

特に、小笠原諸島にはさまざまな起源の種が混在しています。

例えば、植物ではオセアニア系、東南アジア系、本州系などの種が混ざり、小笠原諸島独自の進化を遂げており、ここでしか見られない生態系が多いです。

他にもオガワサラコウモリやシマアカネ、メグロ、などIUCNレッドリストに記載されている生物が住んでいます。

小笠原諸島には1830年ごろまで定住者がおらず、無人島であったため生物多様性のほどん状態は良いとされてきました。

しかし開発や外来種の持ち込みなどにより、固有生物は急激に減少しました。

鹿児島県:屋久島

鹿児島県:屋久島

1993年に世界自然遺産に登録された屋久島

屋久島は海岸部は亜熱帯、山頂部は亜高山帯であり、多様な生物分布が見られる場所です。固有植物は50種、それらを含むと約1,500種の植物が生息しています。

しかし近年ではヤクシカの個体数が増え、森の下草を食べ尽くす被害が出ています。

これにより、植物が減少。

さらにヤクシカが樹木の新芽を食べてしまい、枯れたり病気になったりしています。

ヤクシカが増えた原因は、人間の極端な保護規制です。

生物の保護は必要ですが、過剰な保護は個体数の急激な増加を引き起こし、結果的に生態系のバランスを崩す可能性があります。

長野県:八ヶ岳

長野県:八ヶ岳

長野県にある八ヶ岳は、日本の生物多様性ホットスポットの中でも重要な地域の一つです。

本州中部の高山にいるライチョウ(雷鳥)は氷河時代から生き残っていると言われ、かわいらしい姿から登山家に人気の鳥です。

ライチョウは寒さに非常に強く、昔の日本では山が信仰対象となっていたことから「神の鳥」と呼ばれることもありました。

そんなライチョウですが、現在の推定生息数は2,000以下で、絶滅危惧種に指定されています。

ライチョウは寒い場所を好むため、地球温暖化により平均気温が上がると住む場所を失ってしまうのです。

また登山者がゴミなどを放置することで、カラスやキツネなどを呼び込んでしまい、捕食されることもあります。

まとめ

日本には、いくつもの生物多様性ホットスポットがあります。地球上の生物は複雑なバランスの上で暮らしています。

そして地球上の長い歴史の中で、気候や土地に合わせて独自の進化を遂げてきました。

もちろん生物が絶滅したり、種の優位性が変わったりすることは人間活動がなくても起きたでしょう。

しかし近年の生物多様性の崩壊は、人間の過剰な活動によるもので、そのスピードは凄まじいものです。

また生物多様性ホットスポットに指定されている地域以外でも、環境保全に努めることは非常に大切です。

もし「生物多様性を守りたい」「地球環境をなんとかしたい」と思ったら、まずは日頃の行動が自然にどのような影響を与えているかを考えるところから始めてみてみましょう。

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