実はあなたも持っている!最近耳にするアンコンシャスバイアスとは?
「アンコンシャスバイアス」という言葉を聞いたことがありますか?
「体育会系でやってきました」と聞いたら、歯を食いしばって営業し続けられるような若手がチームに加わったと安心しませんか。
「幼いころに海外暮らししていました」と聞いたら、英語が得意な人だと思ってしまいませんか。
過去の経験から「たぶんこうだろうな」と勝手に決めつけてしまう癖。
それがアンコンシャスバイアスです。
アンコンシャスバイアスがなぜ最近話題になるのか。
そして、それがどのようなものなのかを、具体例を交えながらご紹介します。
また、アンコンシャスバイアスがどのような影響を与えるのかも、合わせて確認していきましょう。
アンコンシャスバイアスって何のこと?
「アンコンシャスバイアス」という言葉を、少しずつ耳にするようになってきました。
また新しいカタカナか…と思う方もいるかもしれません。
具体的にはどのようなものなのか、ご紹介していきます。
アンコンシャスバイアスとは
「アンコンシャスバイアス」とは、直訳すると「自分が気づいていない思い込み」「無意識に持っている偏見」です。
「自分は偏見なんて持っていない。
物事をフラットに見ることができる」と思っていたとしても、本当にそうでしょうか。
どれだけ偏った見方をしていないつもりであっても、実は誰の中にもアンコンシャスバイアスはあるといわれています。
- 「A型です」と聞いたらこつこつ頑張れるタイプだと考える
- 「体育会のアメリカンフットボールを4年間やっていました」と聞いたら、ムキムキな青年を想像する
- 「ワーキングマザーです」と聞くと、子どもがいるから海外出張は無理だろうと仕事を配慮する
これらはすべてアンコンシャスバイアスに当てはまります。
自分が育ってきた環境や文化的背景によって身についた考え方。
それらは自分にとっては「当たり前」かもしれませんが、他の人からみると「偏見」かもしれません。
アンコンシャスバイアスが話題の理由
2010年以降「男女平等」だけでなく、「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉が叫ばれるようになりました。
男と女という軸だけでなく、性別はもちろんのこと、国籍や文化的背景の違いについても考え、お互いを尊重しましょうという考え方です。
それに伴って、アンコンシャスバイアスが話題になるようになってきました。
みんなが同じような考え方をしている環境では、「自分の当たり前」は「相手の当たり前」かもしれません。
でも、それぞれが違うバックグラウンドを持ったうえで、チームを組んだり、一緒に働く場合、「自分の当たり前」は「相手からすると全く当たり前ではない」ということにぶち当たることがあります。
アンコンシャスバイアスによって引き起こされる摩擦は、単なる勘違いだけでなく、ハラスメントに繋がったり、不祥事に繋がることも。
そんな齟齬を理解するために、アンコンシャスバイアスという言葉が登場しました。
アンコンシャスバイアスによる問題を減らすためにも、それがどんなものであるのかを理解することが求められています。
2021年内閣府もパンフレットを作成
ダイバーシティ&インクルージョンの推進に伴って、アンコンシャスバイアスについて言及しているのは、一部の企業だけではありません。
2021年には内閣府が国を挙げて「アンコンシャスバイアス」について説明をするパンフレットを作りました。
このパンフレットの冒頭に、日本における男女共同参画の進捗が十分でない要因の一つとして、アンコンシャスバイアスが存在していると掲げられています。
性別による役割分担の考え方が相変わらず根強いこと、また固定観念として染みついていること。
この点を男女ともにそれぞれ理解し、意識を変えることが、日本におけるダイバーシティ&インクルージョンの推進に繋がっていくとされています。
【具体例】とても身近なアンコンシャスバイアス
アンコンシャスバイアスなんて聞きなれない言葉を掲げられると、なんだか難しいことのように感じてしまいます。
しかし、程度の差こそあれどどんな人の中にもあるといわれています。
具体的にはどのような考え方が、アンコンシャスバイアスに当たるのかを、タイプ別にご紹介していきます。
ステレオタイプバイアス
- ナースと聞くと白衣を着た、若いお姉さんをイメージする
- 毎日定時で着たくする新入社員は、やる気がないやつだと思う
- 「それって常識でしょ?」「普通こんなことやらないよね」と言葉に出してしまう
ステレオタイプ(固定観念)によって引き起こされる偏見は、自身のこれまでの経験や学び、文化的背景によって作られます。
例えば「いくら定時を過ぎても上司が帰るまでは席を立つべきではない」と思い込んでいたり、過去に先輩から言われて社会人としての人生を過ごしてきた人にとって、「定時で帰る新入社員」とは信じられないかもしれません。
正常性バイアス
- いつもと違う音がするけど、まぁ大丈夫だろうと車に乗り続けてしまう
- 血液検査の結果が芳しくなかったけれど、今回だけだろうとみて見ぬふりをする
- 景気悪化が叫ばれているけれど、「うちの会社は大丈夫」と根拠なく考えてしまう
人間は変化を嫌う生き物です。
だからこそ、何かトラブルが発生したとしても、できるかぎり「正常である」と信じたり、過小評価することで、心を落ち着かせようという働きがかかるものです。
せっかくリスクを事前に回避できるヒントに出会っても、正常性バイアスが効いてしまうと、見て見ぬふりをして、手遅れになることも。
特に、組織やグループの人数が多いほど、「みんなもそう思ってるから大丈夫」と正常性バイアスが働きやすいといわれています。
確証バイアス
- やっぱり今の若い世代はぬるま湯につかっているなと感じる
- 体にいいらしいからとあれこれサプリや健康食品に手を出してしまう
- 中途採用の人は育てにくいと聞いたから、中途採用に力をいれていない
確証バイアスとは、これといった明確な根拠がないのに、自分の考え方に沿った意見だけを拾い集めていくことです。
実際どうなんだろう?と考えることなく、都合のいい意見だけを取り入れて、自分の考え方を固めていくことほど危ないことはありません。
権威バイアス
- お医者さんが言っていたから、これらの薬を服用しないといけない
- 上司が言ってたから、この方針で間違いないんだろう
- 子どもの話はくだらないから話半分で聞いておこう
権威バイアスとは文字通り、権威のある人の言葉を盲目的に信じてしまうことです。
医師や弁護士、社長などの話は確かに威厳があります。
でも、100%正しいと過信するのは間違いです。
権威ある人はこういってるけど、本当にそうかな?と自分の力で考えることも大切です。
集団同調性バイアス
- 信号無視をしている人が多いから、本当はダメだけど自分も渡っちゃって大丈夫
- 会議の結果がいまいち不明確だけど、みんなが頷いているから良いことにしよう
- 地震を感じたけど誰も机の下に入ってないから、自分もそのまま仕事を続けよう
集団同調性バイアスとは、周りの人がやっていることを一緒にすれば大丈夫と考えてしまうこと。
たとえ「ちょっと違うな」と感じていても、自分の意見を大切にすることなく、周りに合わせることを意識するケースが多いです。
穏便な方法に感じられますが、危険を察知したのに逃げ遅れる、自分の意見を持つことをやめてしまうなどの弊害に繋がります。
その他のバイアス
アンコンシャスバイアスの種類は多岐にわたっていて、上記で紹介したほかにもいろいろとあります。
- 過去の成功体験や経験に引っ張られて、新しい視点を無視してしまう「アイシュテルング効果」
- 過去の意思決定に引っ張られて、引き際が見えなくなってしまう「コミットメントのエスカレーション」
- 自分への過小評価からやってくる「院ポスター症候群」
- 好意的に見えて勝手な思い込みである「慈悲的差別」
アンコンシャスバイアスについて考える時は、この問題はとにかく幅が広く、誰にでも当てはまるものだという点を理解するところから始めないといけません。
アンコンシャスバイアスはなぜ起こる?
どれだけ視野を広くして物事を考えたいと考えている人であっても、やはり誰にでもアンコンシャスバイアスはあるものです。
どのような時に、なぜ心の中にアンコンシャスバイアスが生まれてしまうのでしょうか。
感情がトリガーになりやすい
こればかりは残念なことですが、誰でも「自分の思い通りにいかない」とイラッとしてしまうことがあります。
もしくは、自分よりも上手く物事に対処できる人に会った時に「自分を守るためのエゴ」が発動することも。
このように、自分の心の中がザワついた際に、アンコンシャスバイアスが出てくることが多いです。
自分の考え方は間違っていないよね?と自己防衛のために、過去の考え方や経験にしがみついてしまうのです。
個人の育った環境や経験
悪意をもって相手に接しているつもりでなくても、むしろ、良かれと思って相手に接していることが、実はアンコンシャスバイアスであることもあります。
自分が育ってきた環境では「良い」とされていたことが、相手にとっては「ネガティブ」なこともあり得るからです。
よく取り上げられる例として「まじめだね」というコメントがあります。
こつこつと勉強をしていい大学に行くのが良しとされる家庭で育った子にとって、「まじめだね」というのは大きな誉め言葉に聞こえます。
一方で、「まじめだね」と言われて「面白みがない・地味である」とネガティブに聞こえる人もいます。
このように良かれと思っていったことが、相手の育ってきた環境によって、捉え方が180度変わってしまうのです。
習慣や慣習などの文化的背景
ダイバーシティ&インクルージョンが掲げられるようになって、文化的背景の違いについても意識する必要が出てきました。
個人だけでも育ってきた環境によって考え方が大きく左右されますが、国が変われば慣習がますます異なります。
「取れるだけ休みを取ってリフレッシュして、仕事へのモチベーションを高めるのが良い」と考える人と、「休みなんか取らずに猛進することが、良い仕事をする方法だ」と考えている人が一緒に働いていたら、衝突するのは当たり前です。
どちらが良い悪いではありませんが、文化的背景が違うのだと理解するところが最初の一歩と言えるでしょう。
アンコンシャスバイアスはなぜ良くないの?
ダイバーシティ&インクルージョンを推進するにあたって、アンコンシャスバイアスをしっかりと認識し、出来るだけ減らそうと取り組むことが求められています。
なぜアンコンシャスバイアスを除去していく必要があるのでしょうか。
個人レベルでの悪影響
アンコンシャスバイアスがはびこっている環境で過ごしていると、一人一人が尊重されないため、あきらめや遠慮が目立つようになります。
- 無気力や思考停止
- モチベーションの低下
- 疎外感や孤独感
- 職場へのあきらめや遠慮
- ストレスが増える
「あれこれと自分で考えたところで、誰も聞いてくれない」と投げやりな気持ちになったり、「どうせ〇〇なやつって思われている」と孤独感に襲われていると、無気力状態に陥ってしまいます。
最悪のケースでは、精神的にまいってしまったり、鬱を引き起こすこともあります。
職場における悪影響
職場におけるアンコンシャスバイアスの悪影響は、個人のやる気の低下だけにとどまりません。
- コミュニケーションの停滞
- チームワークの欠如
- ハラスメントの増加
- 個人&組織のパフォーマンスの低下
お互いを尊重したコミュニケーションがとれない環境では、チームワークやイノベーションなんて起こるわけもなく、ぎすぎすとした雰囲気が漂ってしまいます。
それに伴って、仕事への責任感が持てなかったり、さらには離職率も上がるかもしれません。
そのような状況に陥った会社は、周りの会社からの信頼感も落ちてしまいます。
教育現場における悪影響
アンコンシャスバイアスが広がっているのは、職場だけではありません。
教育現場においても、「女の子だから」「男の子だから」という考え方は、いまだに残っているというのが正直なところではないでしょうか。
- 知的好奇心の低下
- チャレンジ精神がはぐくまれない
- 思考停止や無気力
- 学ぶ意思を持ちにくい
子どものうちにアンコンシャスバイアスを浴びせられていると、それらが「慣習」となってしまい、大人になった時にほかの人に対してもアンコンシャスバイアスを持って接してしまうというリスクもあります。
具体的には「男の子だけが学校に行き、女の子は家で家事手伝い」という環境で育った場合、自分の子どもに対しても同じように考えてしまうケースは、世界のあちこちで起きています。
アンコンシャスバイアスを理解し改善するには?
個人レベルにおいても、会社や学校などの組織レベルにおいても、アンコンシャスバイアスは悪影響を及ぼすものだということが分かりました。
それでは、どのようにしてアンコンシャスバイアスを解きほぐしていくことができるのでしょうか。
アンコンシャスバイアスを知ること
「自分は偏見の塊だ」と言う人は滅多にみたことがありません。
多くの人は「自分は偏見なんてない」と考えて生きているものです。
だからこそ、まずはアンコンシャスバイアスとはどんなものなのか?を理解するところから始めましょう。
アンコンシャスバイアスはそれぞれの頭の中にあるもの。
だからこそ、目で見える弊害と比べると、意識しにくいというポイントがあります。
だからこそ、このような記事や本を読んだり、研修などを通じて、アンコンシャスバイアスとは何なのか?について知ることから始まります。
自分の中のアンコンシャスバイアスに気づくこと
アンコンシャスバイアスが誰の心の中にでもあるということを知ることができたら、次は自分の行動を振り返ってみましょう。
あまりにも「当たり前」に考えていたことが、もしかするとアンコンシャスバイアスだったかもしれない。
目の前の人に対して少しカッとなった自分がいたら、自分の中に偏見がないかを考えてみる。
自分自身の中のアンコンシャスバイアスの偏りに気づいたり、どんな時にアンコンシャスバイアスが強くでるのかを理解することが大切です。
アンコンシャスバイアスに対処すること
「自分は大丈夫」と思っていたけれど、実は自分の中にもアンコンシャスバイアスがあるなと気付くことができたら、次に向けて一歩踏み出しましょう。
例えば、似たようなシーンに直面した際に、今までは感情にスイッチが入ると同時に「普通こんなことしないでしょ」と考えてしまったかもしれませんが、グッと留まること。
「自分の当たり前は、相手の当たり前ではない」ということを理解すれば、感情的にならずに、より適切なコメントが口から出てくるようになるでしょう。
少しの変化を積み重ねていくことで、常に相手視点も捉えながら考えられるように意識が変わっていきます。
まとめ:アンコンシャスバイアスを理解することがまず第一歩
2010年以降のダイバーシティ&インクルージョン推進に伴って、「アンコンシャスバイアス」という言葉を耳にする機会が増えました。
「アンコンシャスバイアス」とは、直訳すると「自分が気づいていない思い込み」「無意識に持っている偏見」という訳になります。
「私は偏見なんてもっていないし…」と考えている時点で、アンコンシャスバイアスの罠に陥っています。
誰の心の中にでもあるものだということを理解し、自分自身の考え方の癖を知るところから。
お互いを理解し、尊重しあいながら暮らせるように、自分の中のアンコンシャスバイアスを探してみませんか。
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