生物多様性

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)とは?TCFDとの違いは?

TNFDとは(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)の略称で「自然関連財務情報開示タスクフォース」のことを指します。

本記事ではTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の生物多様性版、自然資本版とも言われるTNFDについて解説します。

TNFDの概要を解説

TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、2019年1月世界経済フォーラム年次総会(ダボス総会)で着想され、2021年6月、国連環境計画・金融イニシアティブなどによって正式に発足された国際的な組織です。

生物多様性が社会や企業にもたらすリスクや機会を知るため、TCFDに続く自然に関する情報開示を企業に促すことを目的とし、情報開示におけるフレームワークの構築を目指すとしています。

TNFDは生物多様性関連のリスクと影響を評価して開示するためのフレームワークを開発しています。(2023年2月時点では設計段階)

TNFDには、LEAPアプローチと呼ばれる発見、診断、評価、準備(Locate・Evaluate・ Assess・Prepare)という4つの評価アプローチがあり、自然との接点を発見し優先地域を特定し、企業活動との依存関係や影響を診断した結果を元に重要なリスクと機会の評価をし、それらに対応し報告するためのガイダンスです。

TNFD設立の背景とは?

TNFD設立の背景には、2022年12月に開催された生物多様性条約締約国会議(COP15)があります。

生物多様性条約(CBD)とは、生物多様性を保護するための国際条約のことで、COP15は生物多様性条約の締結国で行われた15回目の会議を指します。

2010年にCOP10が開催され、2020年までの国際目標であった「愛知目標」と言われる生物多様性に関する世界目標が採択されましたが、目標達成度は1割程度という結果に終わりました。

これを受け、2022年12月に開催されたCOP15において「愛知目標」の後継として、2020年以降の新しい枠組み「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。

これは「ポスト2020生物多様性枠組」と言われています。

この枠組みでは「生物多様性の損失を食い止め自然を回復させるための緊急行動を取る」という2030年のミッション及び「自然と共生する世界」という2050年ビジョンを掲げており、生物多様性を保全し生態系を回復させる「ネイチャーポジティブ」の概念を取り入れた目標達成を目指しています。

「ポスト2020生物多様性枠組」において採択された、2030年ターゲット(行動目標)は、1~23のターゲットがあり3つのパートから構成されています。

ターゲット1~8:「生物多様性への脅威の低減」について

ターゲット9~13:「持続可能な利用及び利益配分による人々のニーズを満たすこと」について

ターゲット14~23:「実施のためのツールと解決策および主流化」について

の目標として構成されています。

ターゲット3「2030年までに陸と海のそれぞれ30%以上を保護・保全(30by30)」は主要な目標のひとつとして採択されました。

参照:外務省「生物多様性条約第15回締約国会議第二部等の結果概要」

TNFDとTCFDの違い

TNFDとTCFDの違いについて解説します。

それぞれ、

  • TNFD(Task Force on Nature-related Financial Disclosures):自然関連金融情報開示タスクフォース
  • TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):気候関連金融情報開示タスクフォース

を意味します。

両者は、環境関連情報開示に関するグローバルなイニシアチブであり、企業や金融機関が環境変化のリスクや機会について開示することを促進することを目的としています。

主な違いは、対象となるリスクの種類です。

TNFDの対象となるリスクの種類

気候変動に加えて、生物多様性の喪失や水不足、土地利用変化など、自然環境に関連するリスクに焦点を当てています。

また、企業が自然環境に関連するリスク評価を行い、自然環境に対するビジネスモデルの依存度を評価することを推奨しています。

参照:https://tnfd.info/

TCFDの対象となるリスクの種類

気候変動に関連するリスクに焦点を当てており、企業が気候変動に関連するリスクと機会について開示することを推奨しています。

また、TCFDは、企業や金融機関に対して、気候変動に関するリスク評価やシナリオ分析を行うことを推奨しています。

参照: https://www.fsb-tcfd.org/

企業を対象にした目標採択と企業のメリット

「ポスト2020生物多様性枠組」において企業に影響を及ぼす目標も採択されています。

例えば、ターゲット15「ビジネスによる影響評価・情報公開の促進」は、ビジネスに対して直接的に言及しており、企業や金融機関などに対して、生物多様性への影響や依存、リスクをサプライチェーンなどにおいても評価及び開示することが求められています。

企業活動を対象とした目標が採択されたことにより、企業活動と自然資本との関係性を意識することが求められ、企業が生物多様性に与える影響について情報開示の重要性が高まっています。

TNFDの対象企業は公表されていないが、TCFD提言の内容と整合されることを考えると、TCFD提言の対象企業と同様、社債または株式を発行している全ての組織体に情報開示が求められると想定されています。

TNFDフレームワーク構築の支援を目的とした、TNFDフォーラムが2021年9月に設立され、民間企業や団体および金融庁、環境省などが参加しました。

また世界中から500以上の機関がTNFDフォーラムの一員となり、さらに130以上の組織がTNFDフレームワークの試作版を使用し、実証的な開示(パイロットテスト)に参画するなど、積極的に関与する組織が増えています。

TNFD賛同企業は公表されていないが、日本国内においてTNFDフォーラムメンバーであるとウェブサイト上で公表している企業や団体もあり、例を挙げるとキリンホールディングスは2022年7月、TNFDフレームワークに沿った情報開示を自社の環境報告書において公表しています。

参照:キリンホールディングス『「環境報告書」2022』

TNFDに賛同する企業のメリット

TNFDに賛同するメリットとしては、TCFDと同様、非財務情報を考慮して行うESG投資に注目が集まっており、

  • 融資を受けられる機会につながること
  • 持続的な経営や社会的評価が高まること

などが考えられます。

TNFDにおける今後の動向

これまで、TNFDフレームワークのベータ版v0.1〜v0.4が公表されて来ましたが、2023年9月18日に「TNFD最終提言v0.1」が公表されました。

最終提言v0.1では、TCFDやISBBやISSB(International Sustainability Standards Board:国際サステナビリティ基準審議会)など他の基準との整合性について明記されており、気候変動や自然環境リスクへの統合的な報告が可能としています。

また、v0.4までに公表されていたTNFD提言に加え、組織による自主的なTNFD提言を支援するための追加ガイダンスが補足として付けられました。

追加ガイダンスのうち「Getting started with TNFD」は新しく公表されたものですが、それ以外はベータ版を統合した内容です。

今回のTNFD最終提言v0.1は、ベータ版の内容を包括しつつ、開示提言や追加ガイダンス、ディスカッションペーパーなど一部追加されたものもあります。

これらにより、TNFD開示を行う上での必要情報が揃ったことになります。

TNFD提言は組織が任意で利用するものであり、強制ではありません。

しかしESG投資の判断材料になったり、サステナビリティ経営が注目されていたりすることを考えると、今後企業が対応を求められる可能性は大いにあります。

ますます、TNFD提言に沿った開示が増えるでしょう。

参考:TNFD「自然関連課題に関するTNFDの最終提言が発表され企業や金融機関が採用を開始」

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