リサイクルだけじゃない!一人ひとりができる3R の取り組みは?
最近、リサイクル素材のバッグや服が増えてきましたね。
2020年からはコンビニでもらうレジ袋も有料化されました。
身の回りでもゴミを減らす、リサイクルする、といった行動が一般的になってきているような気がしますが、どうしてなのでしょうか?
ゴミを減らす、リサイクルするといった話題でよく登場する“3R”とは一体どういうもので、一人ひとりにどんな取り組みができるのか、ご紹介します。
背景:大量生産・大量消費の悪影響
背景として、大量生産・大量消費の時代が終わりを迎えたことがあります。
産業革命以降、世界の経済発展と共に大量生産・大量消費が続けられてきました。
しかしその副作用として廃棄物が増加し、資源も枯渇してきてしまっています。
人間の自然資源に対する需要と環境負荷の関係を示す指標として、“エコロジカル・フットプリント”があります。
“エコロジカル・フットプリント”とは、ある特定の範囲の消費活動を面積に換算し、それを範囲内の人口で割ることで、人間の活動がどれだけ自然環境に依存しているかを示すものです。
この指標によれば、日本の割合を世界に置き換えると、地球2.9個分の資源が必要な計算になります。
これは言い換えれば、世界中の人類が日本人と同じ生活をし始めた場合、地球が2.9個必要だということです。
また人類全員の世界平均は、地球1.7個分となっています。
環境に負荷をかけることにはどんな問題があるのか、見てみましょう。
1.プラスチック
廃棄物にも色々ありますが、例えばプラスチックは海洋汚染や生態系破壊の大きな原因となっています。
日本では食品の個包装や自動販売機から出てくるペットボトルなど、至る所で使われていますね。
海に流出したプラスチックゴミは、海洋生態系の破壊や海洋汚染の原因となり、観光業や漁業に大きな経済損失を与えています。
また、マイクロプラスチックと呼ばれる小片化したプラスチックには汚染物質 (PCB、ダイオキシン、DDTなど)が付着しており、魚が餌と間違えて飲み込むと体内に取り込まれて残留します。
有害な化学物質は食物連鎖を通じて濃くなりながら蓄積していき、回りまわって魚介類を口にする人間の健康を害しています。
環境保護団体グリーンピースの調査では、食塩の9割にマイクロプラスチックが含まれているという結果が報告されています。
(海塩・湖塩・岩塩を対象とした世界規模調査)
ちなみに現在のペースでは、プラスチックゴミの量は2050年に魚の量を超えると予測されています。
2.水
現在人口は50憶人、2050年には100憶人になるといわれています。
そんな中、プラスチックのみならず水や食料についても大量に廃棄してしまっている現実があります。
実は地球上の水の約97%は海水であり、残り3%の淡水のうち実際に使える水は0.8%しかありません。
2030年には水の需要に対して供給が枯渇し、人口の4割が水不足の問題に直面するといわれています。
日本の水道水は飲み水として比較的安全といわれていますが、多くの人が海外から空輸されてきたペットボトル入りの水を飲んでいます。
例えばミネラルウォーター”ボルヴィック”を販売するダノン社は、フランス政府から1ℓボトルで年間28億本分の採水を許可されています。
これは毎秒89ℓ近くの水を汲みだしている計算になり、現地で供給可能な水の量を大幅に超えています。
現地では水源が枯渇の危機に瀕しており、水不足により湿度が下がって生態系が破壊されたり、植物や野菜が育たなくなったりしているといいます。
3.食料
世界で栽培される全食料の約1/5から1/3は、農場から食卓までのどこかの時点で、損傷や食べ残しによって廃棄されています。
大量の食糧が廃棄されている一方で、栄養不足人口は8億人以上存在するといわれています。
東アフリカでは人口の30.8%が栄養不足に苦しんでいます。
また南アジアでは飢餓人口が5億人となっており、その規模は世界最大です。
なお日本はカロリーベースで62%の食料を海外から輸入していますが、年間約650万トンの食品ロスが発生しています。
これは、日本人全員が毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てている計算になります。
捨てられる食料の生産の過程では膨大な量の水を消費し、同時に二酸化炭素も排出します。
そのうえ、食べ残しや生ゴミもまた焼却時に二酸化炭素を発生させているのです。
廃棄後の食料は灰となり、最終処分場や埋立地に埋め立てられます。
しかし酸素が欠乏している状況では、廃棄物の発酵が進む際に温室効果ガスのメタンガスが発生します。
これが地球温暖化の原因となっており、悪循環から抜け出せません。
埋立地に送られる下水処理物やゴミの分解の際に生じるメタンガスは、年間メタン発生量の11%を占めるといわれています。
ひとりひとりができること:3R
2015年に国連サミットで採択されたSDGs:Sustainable Development Goals (持続可能な開発目標)は有名ですが、ここまでで述べたさまざまな問題は、以下に掲げる多くの目標に関連します。
- 目標2:飢餓をゼロに
- 目標6:安全な水とトイレを世界中に
- 目標12:つくる責任、つかう責任
- 目標14:海の豊かさを守ろう
- 目標15:陸の豊かさも守ろう
人類が直面している環境問題について、今すぐにでも取り組めることはなんでしょうか?
具体的に、個人としてどんなことができるのでしょうか?
個人の取り組みについて、“3R”という考え方があります。
3RはRecycle (リサイクル)、Reuse (リユース:再利用)、Reduce (リデュース:減らす)の略です。
一つ一つ、例と共に具体的に見てみましょう!
Recycle (リサイクル)
- リサイクル素材のものを選ぶ
- バイオ素材のものを選ぶ
例:Addidas (アパレル・独)
Addidasは環境NGOであるParleyと協力し、海岸でゴミとなっているプラスチックを原料としたスポーツシューズを製造・販売しています。
Parleyが離島のビーチや海岸で回収したプラスチックゴミは、Addidasの工場へ届けられます。
回収されたプラスチックは選別・細断・洗浄・乾燥のプロセスを経て、熱でペレットに加工され、シューズの原料になります。
またAddidasは「作り直すために作られた」100%リサイクル可能な高性能ランニングシューズを、10年間かけて開発しました。
このシューズは1回目の使用が終わってアディダス社に返却されると、洗浄・粉砕されてペレットに戻り、廃棄物を出さずに再度新しいシューズとなるとのことです。
例:Toast Ale (飲料・英)
Toast Ale社は、パン屋やサンドイッチ製造工場で余ったパンを使用して、受賞歴のあるクラフトビールを醸造しています。
醸造に必要なモルト(麦芽)の27.2%を廃棄予定のパンで代替することで、これまで約2,500万スライスのバンを再利用し、仮にそれを積み上げたときの高さは標高8,848mのエベレストの3倍以上になるとのことです。
また、この取り組みは食糧廃棄を減らすのみでなく、42トンもの二酸化炭素削減と約26万ℓの水を節約することにも繋がっています。(2022年1月時点)
Reuse (リユース:再利用)
- 詰め替え商品などを利用する
- お下がりを使う
例:Loop (消費財、米)
テラサイクル社は、シャンプーや歯磨き粉といった日用消費財を一つの容器で複数回使用するLoopというサービスを提供して、容器に使用される資源の節約をしています。
従来使い捨てされる一般消費財容器を消費財メーカーと共同開発し、洗浄しやすく耐久性の高いデザインのものに変更しました。
消費者は容器を洗浄する必要はなく、買い物した際に入っている専用バッグで宅配業者に回収してもらうか、買い物した店舗の回収ボックスに返却するだけです。
回収された容器は洗浄して中身を補充したうえで再利用され、消費者の交換の手間を省きながら容器包装ゴミを削減しています。
例:パタゴニア (アパレル、米)
環境に優しい企業として有名なパタゴニア社は、登山家のイヴォン・シュイナードさんが自分のため、友人のために登山道具を作っていたことから始まったアウトドアブランドです。
販売した製品は全てに製品保証が付いており、多くを無料で修繕しています。
アメリカにあるパタゴニアの修理施設は北米最大で、毎年10万件弱もの修繕を行っているとのことです。
同社の展開するWorn Wear (ウォーンウェア)プログラムでは、衣類の長期使用と再利用のためのインセンティブとして、状態の良い商品を返品すると将来の購入に使えるクレジット(割引)がもらえます。
パタゴニアは返品された衣類をクリーニングし、ヴィンテージまたは古着としてウォーンウェアのサイト上で再販しています。
キャンペーンが始まった当初、最初の6か月でウォーンウェアの中古衣料売上は100万ドルを達成。
8万5000着近くの衣類が下取りに出されました。
さらにパタゴニア社は、回収した製品から集めた情報とデータを活用しながら研究開発を重ねることで、より高品質で寿命の長い製品を作り出しています。
Reduce (リデュース:減らす)
- 保有せずに共有サービスを利用する (カーシェア、自転車シェアリングなど)
- 資源消費の少ないものを選ぶ
- 長持ちするものを選ぶ
私たちの生活の中では、マイバッグ、マイボトルを利用することでプラスチックゴミを減らすことに繋がります。
例:Rent the Runway (アパレル、米)
Rent the Runway (レント・ザ・ランウェイ)社は、ブランド物のドレスやアクセサリーのレンタルができるオンラインサービスを提供しています。
高級ブランドのファッションアイテムを数日間、普通に購入した場合のほんの一部(10%から)の値段で借りることができます。
定額プランでは月額料金を支払うことで継続的に新しい衣服を借りることができるうえに、送料・ドライクリーニング・レンタル保険料による追加料金は発生しません。
同社は、服を商品ではなくサービスとして提供することで、消費者の衣服の購入費用を減らすとともに、新しく服を作ることによる資源の無駄や環境負荷の軽減に貢献しています。
例:Oddbox (小売、英)
Oddbox (オッドボックス)社は、見た目が悪くスーパーマーケットに置かれない果実や野菜への見方を変えるべく、「Wonky veg and freaky fruit(ガタガタ野菜とおかしなフルーツ)」の箱を販売して、食品廃棄物を減らしています。
消費者は地元でとれた季節の食品をより安く入手できるというメリットがあります。
この取り組みによって蘇った食品はこれまでで約2万2千トンで、その生産には約24憶ℓの水が必要です。
さらに約2万5千トンもの二酸化炭素も削減しています。(2022年1月時点)
最後に
いかがでしたか?
3Rの考え方とその背景、企業の取り組みや個人でできることをまとめてみました!
冒頭にリサイクル素材のバッグや服の話をしました。
我々は消費者として環境負荷の低いものを”選ぶ”ことで環境課題に貢献できます。
それは同時に、我々は選ぶ責任を負っているということですね。
リサイクル素材などが流行っているというより、環境にやさしいものを買うこと、環境にやさしい使い方をすることが世界的なトレンドになってきています。
3Rを実践するにあたり、本当にこれって環境に良いの?と迷うこともあるかもしれません。
そんなときは、世界的に信頼のあるCradle to Cradle (クレイドル・トゥ・クレイドル)の認証商品や、エコマーク・グリーンプラマーク・バイオマスマークなど、認証マークの付いたものを選んでみてください。
(出典:
https://www.c2ccertified.org/get-certified/product-certification
http://www.jbpaweb.net/wp-content/uploads/2021/06/Change_of_green_plastic_identification.pdf)
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