古着の再利用はSDGsの何番目?古着を活用するメリットや企業事例を解説!
「いらなくなった古着を捨てられない」と悩んでいませんか。
しかし、古着を捨てるのはもったいないこと。
売る・買う・寄付する・リサイクルするなど、さまざまな活用方法があるのです。
これまで大量生産や大量消費が当たり前であったファッション業界において、古着がSDGsに貢献すると再注目されています。
この記事では古着の再利用はSDGsの何番目に該当するのか、また、古着がいかにSDGsに貢献するのか、わかりやすく解説します。
さらに、古着を有効活用している企業事例もまとめました。
古着を捨てない未来も、そう遠くないかもしれません。
古着はSDGsの何番目?
古着を活用することは、SDGs「12.つくる責任つかう責任」に大きく貢献します。
「12.つくる責任つかう責任」とは、持続可能な生産消費形態の確保についての目標です。
生産者は生産において、消費者は買い物において、豊かな環境や人の命を守れるような責任ある行動を心がけることです。
目標12のターゲットの中には、以下の項目が記載されています。
2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
引用:外務省
つまり、ごみを減らしたり、リサイクルやリユースをしたりして、ごみの発生を減らすことが求められているのです。
リサイクルとは、古着をある製品の原材料やエネルギー源として有効利用することで、リユースとは、古着を繰り返し利用することです。
リユースとリサイクル、両方で活用できる古着は、SDGs「12.つくる責任つかう責任」に関わっています。
古着が注目される背景にあるものとは
SDGsへの意識が高まるとともに、古着の注目度も上がっています。
それには、ファッション業界が抱える世界的な問題が深く関係しているといえるでしょう。
生産にかかる環境負荷
ファッション業界のこれまでの傾向として、大量生産と大量消費が当たり前でした。
しかし、最近では服の生産における環境負荷が指摘されるようになりました。
新たに服を生産するためには原材料調達、紡績、染色、裁断と縫製、輸送など、さまざまな工程が必要です。
そして、どの段階においても、大量の水やエネルギーを使用しています。
環境省のサステナブルファッションのページによると、原材料調達から製造段階までに排出される環境負荷の年間総量は以下のとおりです。
- 二酸化炭素の排出量:約90,000kt
- 水:約83億㎥
- 端材などの排出量:45,000t
これらの数値だけみても、生産にかかる環境負荷が大きいのは一目瞭然です。
ごみ処理の問題
普段、服をどのように手放していますか。
服は生産だけではなく、廃棄においても問題視されています。
環境省の2022年度調査によると、手放された服のうち約68%がごみとして廃棄されています。
1日あたり、約1,200tの服が焼却や埋め立てなどの方法で処分されているのです。
焼却処理するためにもエネルギーや資源が欠かせません。
さらに、二酸化炭素の排出量も増やしてしまいます。
持続可能な生産や消費を行なうためには、不要になった服の手放し方を見直す必要があるといえるでしょう。
古着を活用するメリット
古着にはファッション業界が抱える問題を解決する力があるといわれています。
では、具体的に古着を活用することで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。
①エネルギーや資源の節約
先述したとおり、服を一着作るだけでも大量の二酸化炭素を排出し、大量の水を消費しています。
服1着の製造につき、二酸化炭素の年間排出量は約25.5kg。
これは、500mlペットボトルを255本製造する場合の環境負荷に相当します。
水は約2,300L、浴槽約11杯分も消費しているのです。
最近は、製造から環境に配慮したエシカルファッションやスローファッションも増えています。
しかし、古着の場合はそもそも製造不要。
より環境負荷が少ないといえるのです。
こちらの記事も参考にしてください。
「エシカルファッションとは?取り組み事例と有名ブランドからリーズナブルな商品を紹介」
「スローファッションとは?環境にやさしい持続可能なファッションを楽しもう!」
②ごみの削減
服をいまよりも1年長く着るだけで、日本全体で4万t以上のごみを削減するといわれています。
長く着用したり、次の人へ譲ったりすることは環境負荷の軽減につながるのです。
とはいえ、「古着をすべてリユースするのは難しいのでは?」と思う方もいるでしょう。
そこで最近では、古着を資源として活用する取り組みも増えています。
不要になった古着を捨てないという選択肢が増えれば、焼却や埋め立ての量もより減らすことができるでしょう。
③新たな市場を開拓できる
製造費用が不要な古着はその分コストを抑えられるため、企業にとっても経済的なメリットが大きいといえます。
たとえば、フリマアプリ。この市場規模は2020年で1兆147億円、2021年は1兆2,433億円でした。
この1年だけでも22.5%上昇するほど伸びている市場です。
しかし、不用品をリユースする文化が拡大する一方で、1年間に一度も着ていない服を1人あたり約25枚も所有していると推測されています。
つまり、クローゼットやタンスに眠る服の再流通に、さらなるビジネスチャンスがあるといえるのです。
また、古着を活用したサービスを提供することで、新たな顧客獲得も期待できます。
その理由の一つは、環境に配慮したファッションを好む消費者も増加しているからです。
GREEN NOTEが実施したアプリ内アンケートによると、全世代を通して6割弱がエシカルファッションアイテムの購入経験があるということが明らかになりました。
さらに「エシカルファッションアイテム購入の動機は?」と尋ねたところ、最も多い回答は「買いやすい価格帯だったから」でした。
参考:【市場調査レポート】2人に1人以上がエシカルファッションを取り入れている
参考:【市場調査レポート】エシカルファッションの購入は価格と認知が鍵
古着を活用したお手頃価格の商品やサービスには、新たな市場開拓のチャンスがあるといえるのではないでしょうか。
古着でSDGsに貢献する企業事例6選
では、古着を何かの役に立つように工夫したサービスや取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか。
最近ではリユースだけではなく、資源としてリサイクルしたり寄付したりなど、手段も広がっています。
古着の活用でSDGsに貢献する企業事例をまとめました。
古着deワクチン
古着を通して開発途上国へ医療支援を実施する取り組みです。
2023年9月末で、5,446,241人分のポリオワクチンが寄付されました。
3,300円の専用回収キット1口につき5人分のポリオワクチンが寄付されています。
古着で多くの子どもたちの命が救われているのです。
また、古着deワクチンは医療支援だけではなく、経済的支援も行っています。
国内外の障がいのある方に向けた雇用創出も積極的に取り組んでいるのです。
寄付するのにお金はかかりますが、家がスッキリすると同時に社会貢献ができるサービスとして注目されています。
参考:古着deワクチン
H&M
H&Mでは、循環型ファッションを目指すために2013年から古着回収サービスを世界中で開始しました。
各国の店舗に回収ボックスを設置し、ブランドや状態を問わず不要な衣料品や布地を集めています。
日本では、2013年に開始から2020年度末までに累計5,653tの古着が回収されました。
回収した衣類は300以上の独自基準に従い、古着として販売やリサイクル、エネルギーなどに仕訳けられます。
そのため廃棄される古着は一着もありません。
さらに、回収に協力した場合、3,000円以上の買い物で使用できる500円クーポンがもらえるなど、消費者にとってもメリットがあります。
参考:H&M|H&M、古着回収サービスの紙製クーポンをデジタルクーポンへと完全移行
BRING
BRINGは、リサイクルしたい人とリサイクルしたい企業をつなげ、古着のリユースを推進。
さまざまなブランドとパートナーシップを組み、古着を回収しています。
自社工場で開発した独自の技術で服の原料を再生し、再び糸、生地、服へ循環させるサーキュラーエコノミーを実践しているのです。
ポリエステルを減らしたり使うのをやめたりするのではなく、サステナブルな原料である「再生ポリエステル」に変える方法を生み出しました。
一度ではなく何度でもリサイクルする方法は非常に持続可能であるといえるでしょう。
メルカリ
フリマアプリを展開するメルカリは、物理的なモノやお金に限らずあらゆる価値が循環する社会の実現を目指しています。
古着だけでみると、年間約43万tの温室効果ガスの排出削減に成功しました。
これは、衣類の取引1件あたり、約9.3kgの削減に相当します。
事業が成長すればするほど、循環型社会の実現に近づく企業事例といえるでしょう。
参考:メルカリ
energy closet
エナクロと呼ばれるenergy closetは、CLOSETtoCLOSETという古着ショップを展開しています。
この古着ショップは、服を売らず、循環をつくるアパレルブランドとして多数のメディアから注目されています。
CLOSETtoCLOSETの利用システムは、古着を3着持参し、店内で選んだ3着を持って帰ることができる物々交換制。
完全予約制のため、利用するには事前予約チケットが必要です。
CLOSETtoCLOSETは不要になった古着を誰かに受け継いでいくことを大切にしています。
回収した古着の中でそのままでは着られないものは、アップサイクルして別の商品に作り変える活動も行っています。
古着を循環させるサービスとして、これからさらに企業価値が上がるのではないでしょうか。
参考:energycloset
木更津コンセプトストア
三井不動産は2023年6月に「木更津コンセプトストア」をオープンしました。
店内で販売している服は、すべて傷や汚れなどがある規格外品や、倉庫に眠っている服です。
よって、サステナブルファッションのテーマパークともいえるでしょう。
また、木更津コンセプトストアでは、回収した古着を肥料に変えて野菜を作ったり、バイオリサイクル燃料にしてエネルギーを作ったりするプロジェクトを支援しています。
店内には、リサイクルの仕組みを学んだり体験したりできるブースもあります。
買い物だけではなく、循環型ファッションを学べる場であるともいえるでしょう。
参考:木更津コンセプトストア
古着でSDGsに貢献しよう
古着を循環させることは、余計なエネルギーや資源の消費を抑えることにつながります。
古着をリユースしたりリサイクルしたりすることで、ごみを減らすことにも貢献できるのです。
消費者が古着を捨てない努力を、企業側が捨てさせない努力をすることはSDGs「12.つくる責任つかう責任」の目標達成に近づくといえるでしょう。
私たちにできることは、不要になった服を捨てない方法を知り、活用していくこと。
ファッションの楽しみ方は、服を買って着るだけではありません。
自分が着なくなった服の未来を考えることも楽しみの一つではないでしょうか。
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