女性の悩みを解決するフェムテック。注目の理由や商品例を紹介
生理や妊娠、セクシャルウェルネス、更年期。
年齢やライフステージによって、多くの女性が体の悩みを抱えています。
中には生きづらさを感じてしまう人もいるでしょう。
そんな問題に寄り添ったサービスや商品が「フェムテック」です。
海外で2010年代に生まれた「フェムテック」という言葉。
日本で耳にするようになったのは2019年頃からで、まだ認知が広まっていないのが現状です。
この記事では、フェムテックについて簡単に分かりやすく解説します。
あわせて人気のフェムテック商品も紹介しますので、参考にしてください。
フェムテックとは?
「フェムテック(Femtech)」とは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を組み合わせた造語で、女性の抱える健康課題を解決するためにテクノロジーを活用するサービスや商品を指します。
テクノロジーといっても、アプリや電子機器だけでなく、製造過程でテクノロジーが活用されている下着や食品なども含まれます。
似た言葉に「フェムケア(Femcare)」があり、フェムケアは、女性の健康をケアする商品です。
フェムテックとフェムケアに明確な区別はありませんが、一般的にはテクノロジーを活用したものをフェムテック、テクノロジーを活用していないものをフェムケアと呼ぶことが多いです。
フェムテック注目の背景には女性の社会進出やSNSの発達がある
フェムテックが注目される背景には、次の2つの理由があります。
- 女性の社会進出
- SNSの発達
2015年9月に「女性活躍推進法」が施行され、2022年4月には改正が行われています。
この法律は、仕事で活躍したい女性が、力を発揮できる社会の実現を目指すためのものです。
しかし、働きたくでも健康課題などが原因で働けない女性もいます。
女性が社会で活躍するサポートの一つがフェムテックなのです。
女性活躍推進法については、以下の記事で詳しく解説しています。
参考:【2022年4月改正】女性活躍推進法とは?概要や効果をわかりやすく解説
また、SNSの発達もフェムテックが注目される理由の一つです。
これまで、女性の健康問題が発信されることは少なく、一人で抱えてしまう女性が多くいました。
しかし、SNSで個人が悩みや経験を気軽に発信でき、情報を共有できるようになりました。
個人の問題として見えにくかった女性の問題が、社会の問題として認知されるようになったのです。
フェムテックの市場は世界的に拡大している
フェムテックという言葉が誕生したのは、2013年のドイツでした。
月経管理アプリ「Clue」の創設者であるIda Tin(アイダ・ティン)氏が、自身のサービスを立ち上げた際に初めて使用したといわれています。
その後、世界中で女性の社会進出を後押しする制度や法律の誕生、そして#MeToo運動(女性のセクハラや性被害を告発する運動)などが起きたことをきっかけに、フェムテック市場は拡大します。
世界のフェムテック市場規模は、2022年の時点で57億9000万ドルでした。
2023年には66億9000万ドルに成長し、2030年までに205億9000万ドルに達するとの予測もあります。
投資額の増加やスタートアップ企業の参入により、今後ますます市場の拡大ペースは加速するでしょう。
経済産業省によるフェムテックの活用支援
経済産業省では、企業によるフェムテックの活用や、フェムテック事業への参入を後押しする動きもあります。
2021年度から、経済産業省は「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」を開始しました。
働く女性の妊娠・出産や更年期などが原因の望まない離職を防ぐため、企業や自治体、医療機関等が連携して実証事業を実施。
これにより、女性の健康課題の解決と就業継続の支援を目的としています。
2023年度は、公募によって選ばれた18のフェムテック等事業者に対し、事業費の3分の2(上限500万円)が補助されます。
国がフェムテックの推進を後押ししているのは、フェムテックが女性の健康や社会参加を促進する重要な技術であるためです。
フェムテックの6つのジャンル
フェムテックには、確立された分類やカテゴリはありません。
しかし、女性のライフステージに合わせて、大きく以下の6つのジャンルに分けられます。
- 月経:生理期間(ブルーデー)を快適にする
- 不妊・妊活:健やかな状態で妊娠できるようサポート
- ウェルネス(女性特有疾患):子宮や卵巣、乳房などの女性特有の疾患をサポート
- セクシャルウェルネス:デリケートゾーンのケアやプレジャーアイテムなど「性の健康」を維持する
- 妊娠・産後:妊娠中の体調管理や産後の心身のバランスをサポート
- 更年期:更年期障害など女性ホルモンのゆらぎによる不調をサポート
フェムテックには、1つのジャンルだけでなく複数のジャンルをカバーするようなサービス・商品もあります。
人気のフェムテック商品5選
フェムテックを活用した商品やサービスが続々と登場しています。
最後に、人気のフェムテック商品を5つ紹介します。
- 女性の健康情報サービス「ルナルナ」
- 不妊治療クリニックの検索サイト「婦人科ラボ」
- セルフプレジャートイ「iroha stick」
- 周産期遠隔医療プラットフォーム「Melody i」
- 骨盤底筋トレーニングアイテム「ケーゲルベル」
女性の健康情報サービス「ルナルナ」
「ルナルナ」は、生理日の管理、排卵日予測、ピルの服用記録、医療機関の受診サポートなど、女性全般をサポートするアプリです。
日本の元祖フェムテックとも呼ばれています。
ルナルナは、2000年にガラケー用の「女性の健康情報サービス」として始まりました。
2010年にスマートフォンアプリをリリースし、2023年10月時点で、アプリ累計ダウンロード数は2,000万を突破しています。
これまでに蓄積されたデータを元に、独自の予測アルゴリズムを確立し、より正確な排卵日予測の実現にも成功しています。
また、関連サービスである「ルナルナ おくすり便」では、低用量ピルの処方におけるオンライン診療と定期配送が利用可能です。
ルナルナは、女性の健康をサポートするサービスとして、多くの女性に利用されています。
参考:ルナルナ
参考:PR TIMES「『ルナルナ』アプリの累計ダウンロード数2,000万突破を記念して 「ありがとうキャンペーン」を11/24よりスタート!」
不妊治療クリニックの検索サイト「婦人科ラボ」
「婦人科ラボ」は、不妊治療クリニックの検索サイトです。
「婦人科ラボ」では、エリアはもちろん、不妊専用や体外受精の実施、刺激法の種類など、細かな条件で検索できるのが特徴です。
ライフステージやライフスタイルに合わせて、自分にあったサービスのクリニックを見つけることができます。
また妊活や不妊治療、卵子凍結に関するコラムや情報を定期的に発信。
自分では調べにくい情報や、情報が少ない卵子提供などについて知ることができます。
参考:婦人科ラボ
見た目がかわいいセルフプレジャートイ「iroha stick」
セルフプレジャーとは、自分の体を愛し、快感を追求する行為です。
この言葉は「自慰」などと同じ意味を持ちつつ、よりポジティブな表現として使われます。
以前は表立ってセルフプレジャーについて語られることはありませんでしたが、最近では「女性の性の健康」に焦点が当てられるようになりました。
そして今、セルフプレジャーをより快適に過ごすため、使い心地や見た目にこだわったグッズが増えています。
「iroha stick」は、リップのような見た目のセルフプレジャートイです。
口紅部分は、やわらかなシリコン素材でできているため身体のどの部分にもフィットし、スティックを回すと、振動の強弱を調整できます。
また、メイク道具のような見た目なので、ポーチに入れたり枕元に置いておいたりできます。
遠隔医療で通院が不要になる「Melody i」
「Melody i」は、ICTを活用し、遠隔で医師から受診推奨などのアドバイスを受けられる周産期遠隔医療プラットフォームです。
妊婦さんが測定した結果を、専用プラットフォームを通じてかかりつけ医師に送信できるほか、助産院や地方の病院からNICU(新生児集中治療室)のある病院へのデータ共有も可能です。
日本では、分娩施設が2006年から2021年の15年間で16%減少しています。
大都市圏での医師数は増加傾向にあるものの、日本全国の約3分の1近くの自治体では、医師数が減少しています。
これに伴い、近くに産婦人科がなく、通院が負担となっている妊婦さんが多いのが現状です。
「Melody i」と訪問助産などの組み合わせにより、妊婦さんに負担のない通院や出産が実現します。
更年期の尿漏れを予防・改善「ケーゲルベル」
出産や加齢などにより、ジャンプや走り、くしゃみなどで、腹圧がかかった時に起きる腹圧性尿失禁。
いわゆる尿漏れに悩む方は多くいます。
「ケーゲルベル」は、尿漏れの改善を目的とした医療機器で、膣内に挿入して使用します。
膣内に挿入する部分の反対側には、重りが付けられており、重りのサイズを変えることで膣内のトレーニングを行います。
このアイテムを使用すれば、ケーゲル体操(骨盤底筋を締めたり緩めたりする運動)も可能です。
更年期や産後の方だけでなく、運動習慣などによる尿漏れに悩む方も利用できます。
まとめ
女性の健康問題を解決するためのフェムテック。
フェムテックに関する情報を配信する人が増え、メディアで取り上げられることで、多くの企業や消費者が注目を集めています。
フェムテック市場は、世界中で今後ますます拡大していくと予想されます。
新しい技術やテクノロジーの登場も期待できるでしょう。
フェムテックの活用は、女性がより活躍しやすい、生きやすい社会を実現するために重要です。
企業はまず、女性の健康問題について知ることから始め、消費者は実際に商品やサービスを手にとってみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
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