【企業事例10選】フェアトレードとは?メリットやデメリットも解説
最近、「フェアトレード」という言葉をよく耳にするようになった、と感じる方も多いのではないでしょうか。
実は、国内のフェアトレード市場は増加傾向にあります。
その理由の一つは、フェアトレードを事業に取り入れる企業が増えていることが考えられるでしょう。
今回は、フェアトレードの企業事例を中心にフェアトレードを深く掘り下げていきます。
フェアトレードの意味、メリットやデメリットについてもまとめました。
持続可能な社会の実現を担うフェアトレードの魅力をみていきましょう。
フェアトレードとは
フェアトレードとは、公正な取引を行う貿易の仕組みのことです。
開発途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することで、開発途上国の生産者や労働者の生活改善と経済的自立を目指しています。
フェアトレード商品としては、コーヒーやチョコレート、紅茶、バナナ、ワイン、スパイス、ごま、はちみつ、バラ、化粧品類、スポーツボールなどが挙げられます。
たとえば、日本人にも愛されているチョコレートやコーヒー。
これらの原料の多くは開発途上国で生産されています。
消費者としては安く購入できるのはうれしいですが、その一方で社会的に弱い立場にある開発途上国が不当な扱いを受けている可能性があります。
しかし、フェアトレードの場合はこのような心配はありません。
なぜなら、フェアトレードは以下の原則に基づいているからです。
- 生産者に適切な報酬を支払う
- 児童労働や強制労働を禁止する
- 安全で健康的な労働条件を守る
- 環境に配慮する
上記により、適正な価格の支払いの保証に加えて、児童労働の禁止や環境に配慮した生産なども実現しています。
フェアトレードは、開発途上国の労働者を守る仕組みといえるでしょう。
フェアトレードの基礎知識を学びたい方はこちらをお読みください。
フェアトレードはなぜ必要?商品例とともに簡単にわかりやすく解説!
出典:フェアトレードジャパン|フェアトレードとは
出典:WFTO
フェアトレードのメリット
持続可能な社会の実現には、フェアトレードが欠かせません。
では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
フェアトレードがもたらすメリットを生産者、企業、消費者の視点でそれぞれまとめました。
生産者:経済的自立が実現できる
フェアトレードは、開発途上国の経済的自立や生産者の生活保護に貢献します。
安定した収入や安心・安全な労働環境を重視するフェアトレードは、社会的に弱い立場にある生産者やその家族を守る仕組みが整っています。
継続的に適正価格で取引することで、労働環境だけではなく、衣食住や健康的な生活を守れるといえるでしょう。
さらに生活が安定すれば、児童労働の必要性もなくなり、子どもたちへの質の高い教育も実現可能となります。
企業:社会的信頼が構築できる
フェアトレードによる持続可能な調達は、社会的信頼の構築が期待できます。
フェアトレードには、SDGsへ貢献する要素が多く含まれています。
世界全体がSDGsの達成を目指す中、持続可能な社会の実現を無視して事業活動を行うことは、企業にとっても大きなリスクです。
また、投資家も企業のESG経営を重視しているため、フェアトレードにより新たな資金調達も期待できるといえるでしょう。
出典:フェアトレードジャパン|SDGs
出典:経済産業省
消費者:安心安全な商品を購入できる
フェアトレードで取引された原料は、安全性や環境にも配慮して生産されています。
有機栽培で生産されているものが多いため、消費者にとっても安心できるでしょう。
フェアトレードのデメリット
持続可能な社会の実現に欠かせないフェアトレードですが、課題点も多く残っています。続いては、フェアトレードのデメリットもみていきましょう。
①価格が高い
フェアトレード商品は、相場と比べて価格が高い傾向があります。
しかし、ただ高いわけではなく、生産者の収入や高い品質が確保されているために生じるコストです。
価格設定の背景を知れば、消費者も納得できるのではないでしょうか。
②手軽に買えない
フェアトレード商品を手軽に買えない点も課題の一つです。
日本のスーパーマーケットやコンビニエンスストアでの取り扱いは限られており、2021年度のフェアトレード製品の一人あたりの年間購入額は、158億円である一方、ドイツは2,727億円となっています。
日本市場は拡大しているものの、欧米諸国に比べてまだまだ規模が小さいのが現状です。
企業が積極的にフェアトレードを取り入れると同時に、消費者もエシカル消費の意識を高める必要があるといえるでしょう。
日本のフェアトレードについて詳しく知りたい方はこちらをお読みください。
日本におけるフェアトレード普及率は低い?その現状と私たちにできること
フェアトレードの企業事例
では、企業はフェアトレードをどのように取り入れているのでしょうか。企業事例をまとめました。
①スターバックス
スターバックスは、フェアトレード認証コーヒーを取り扱っています。
毎月20日は「エシカルなコーヒーの日」であり、フェアトレードを含む啓発活動を実施。
各店舗では、フェアトレードイタリアンローストを提供しています。
スターバックスが買い付けるすべてのコーヒー豆の99%は、フェアトレードやC.A.F.E.プラクティス、その他の認証プログラムの基準を満たしています。
C.A.F.E.プラクティスとは持続可能な調達モデルです。
長期的に高品質なコーヒー豆の生産を実現するため、国際環境NGOコンサベーション・インターナショナルの協力により策定され、2004年に導入されました。
日本でも人気が高いスターバックスがフェアトレードの普及に積極的に取り組むことは、大きな影響力があるといえるでしょう。
出典:スターバックス|ETHICALLY CONNECTING DAY 想いをつなぐコーヒー
②小川珈琲
小川珈琲は、「おいしいコーヒーづくりには、農園の品質が大切。」という理念を大切にしています。
安定して良質な商品を届けるために、農園の品質を保ち、自然環境を守る活動を実施。
バイヤーは現地へ出向き、生産者との対話を通じて、良質な豆を持続的に調達しています。
さらに、フェアトレード強化月間も設け、一人でも多くの方にフェアトレードを認知してもらえるような機会も設けています。
③九鬼産業
九鬼産業は、ごまやごま油などの商品を手がける総合メーカーです。
実際、日本国内で消費されるごまの99%は輸入品であり、国内の食料自給率はわずか0.1%未満です。
九鬼産業は、アフリカやアジア、中南米などのごま生産者に対して何かできることはないかと模索し、その結果、フェアトレードのごまの商品化を決定しました。
2012年には「九鬼 フェアトレードいりごま 白」を発売しています。
商品発売に向けて、九鬼産業はニカラグア共和国を訪れ、現地の畑や工場などを視察し、生産者と品質管理体制やフェアトレードシステムの運用方法について直接話し合いました。
このような信頼関係を構築したからこそ、生まれた事例といえるでしょう。
④S&B
エスビー食品は、2009年から「有機スパイス」シリーズの一環として、フェアトレードの商品を発売しています。
品質だけでなく、香辛料の生産者の生活を守ることに努めています。
エスビー食品が販売しているフェアトレードの商品は、以下のとおりです。
- 有機クローブ
- 有機シナモン
- 有機ブラックペッパー
- 有機ホワイトペッパー
- 有機コショウ
- 有機ターメリック
- 有機ジンジャー
エスビー食品は、これらの商品を市場価格よりも高い価格での購入を保証するとともに原料の購入数量に応じて、生産者組合に奨励金を支払っています。
奨励金は、農機具や共同の水タンクの設置、子どもの教育費などに利用され、生産者やその家族の生活向上に寄与しています。
出典:S&Bエスビー食品株式会社|ORGANIC SPICE
出典:S&Bエスビー食品株式会社|フェアトレード・有機認証香辛料の取組み
⑤イオン
イオンは、自然資源の持続可能な社会の実現と事業の継続的な発展の両立を目指しています。
適正な価格で買い取った商品をイオンが販売し、商品として提供することで、継続的な支援が実現しました。
フェアトレードに取り組むきっかけは、消費者からの声です。
2002年に寄せられた要望は「日常生活を国際貢献と結びつけるパイプ役になってほしい」とのことでした。
それを受けて、現在では以下のような数多くのフェアトレード商品を取り扱っています。
- チョコレート
- 紅茶
- コーヒー
- ジャム
これは、フェアトレードを通して生産者と消費者のパイプ役としての成功事例といえるでしょう。
出典:フェアトレード | 社会の取り組み | イオンのサステナビリティ | イオン株式会社 (aeon.info)
出典:フェアトレード認証 | 環境への取り組み – イオンのプライベートブランド TOPVALU(トップバリュ)
⑥セブン&アイ・グループ
セブン&アイ・グループは、持続可能な社会を実現するためにフェアトレードコーヒーを開発しました。
開発途上国の雇用や社会的地位の向上に貢献することを目指し、その思いを形にしました。
「セブンプレミアムフェアトレードコーヒードリップ10P」は、フェアトレードだけではなく、環境保全にも力を入れています。
包装資材のパッケージの印刷には植物由来の原料を一部使用し、箱には森林認証紙を採用するなど、環境に配慮しました。
これにより、環境負荷軽減を実現しました。
さらに、コーヒーの味にもこだわっています。
酸味と苦味のバランスを絶妙にするために、試行錯誤を重ね、良質な一杯を楽しめる商品に仕上げました。
出典:セブン&アイ・グループ|持続可能な社会を実現する「フェアトレードコーヒー」を開発
⑦ゼンショー
すき家やモリバコーヒーなどを手がけるゼンショーは、「世界から飢餓と貧困を撲滅する」という企業理念のもと、フェアトレードの取引に尽力しています。
店内で提供するフェアトレードメニューは、主にコーヒーや紅茶です。
フェアトレードを通じて、生産者の経済的自立を支援し、生産者組合と協力して子どもたちの医療支援や教育支援を行っています。
コーヒー鑑定士(ブラジル・サントス商工会議所が認定する、コーヒー豆の品質の評価や格付けを行うための資格)が所属するスペシャリストチームが直接取引を実施しており、有機栽培をはじめとする持続可能な循環型農業を通して、環境に配慮した生産も続けています。
さまざまな飲食店を手がけているからこそ、幅広い世代の人にフェアトレードを知ってもらえる機会を提供しているといえるでしょう。
出典:ゼンショーのフェアトレード | フェアトレード | サステナビリティ | ゼンショーホールディングス (zensho.co.jp)
⑧パタゴニア
パタゴニアは、2014年よりフェアトレードの衣類の提供を開始しました。
これまでに、フェアトレードのプログラムの恩恵を受けたアパレル労働者は、世界各国で7万5千人以上にのぼります。
パタゴニアは、工場で製造された製品1点ごとに賞与を支給。
この賞与は工場の労働者に直接送られ、彼ら自身が使い道を決定できます。
これまでには、地域事業や物品購入などに活用されました。
今後は、パタゴニアの衣類を作るすべての労働者が生活賃金を稼ぐことを目指しています。
出典:パタゴニア|フェアトレード
⑨タオル美術館
コットン貿易では、開発途上国の生産者が劣悪な環境で働かざるを得ない状況が多く見られます。
その原因は主に、低価格での取引と栽培で使用される農薬による健康被害です。
タオル美術館グループは、フェアトレードのコットンを原料としたタオルづくりに努めています。
特に、「未来を支えるタオル -MiRAi-」のシリーズ商品は、開発途上国の生活や環境を守ることを重視して開発されました。
フェアトレードのコットンを使用することは、経済面だけではなく、環境面にも大きなメリットがあるといえるでしょう。
出典:タオル美術館|fairtrade cotton towel
出典:フェアトレードジャパン|なぜフェアトレード?
⑩ピープルツリー
ピープルツリーは、フェアトレード専門ブランドです。
「人も木も地球に生きるすべてがフェアに暮らせる世界に。」という思いを大切にしながらものづくりに励んでいます。
以下のような、多種多様なフェアトレードアイテムを取り扱っています。
- コーヒー
- 紅茶
- チョコレート
- ドライフルーツ
- ジャム
- 洋服
- バッグ
- ストール
- アクセサリー
一部の商品ページには、生産者の名前と写真が掲載されており、エシカルな消費をより身近に感じられるのではないでしょうか。
出典:ピープルツリー
開発途上国の生産者を守るものがフェアトレード
フェアトレードは、公平で持続可能な世界の実現に不可欠です。
今回紹介した企業事例を見ると、コーヒーやチョコレートだけではなく、香辛料やファッションなど、幅広い商品を取り扱っていることがわかります。
商品の種類は異なりますが、事例すべてに共通するのは「人と環境を最優先にしよう」という思いではないでしょうか。
消費者もフェアトレードの意味を理解し、フェアトレード商品を購入することで未来を変える行動が求められています。
フェアトレードは、企業と消費者が協力し合ってはじめて成り立つものです。
フェアトレードの普及を応援したいと思ったら、ぜひ自分の生活に合ったフェアトレード商品を購入してみてください。
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