エシカルライフ

【解説版】ハラル認証とは?必要な理由や日本のお菓子を紹介!

世界的に多様性が尊重される中、フードダイバーシティーといわれる食の多様性も活発化しています。

この中で、誰もが食事を楽しめる環境をつくるために役立つ方法の一つが、ハラル認証です。

とはいえ、「ハラル認証って何?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

今回は、ハラル認証の意味や歴史を解説するとともに、なぜ必要なのかも紐解いていきます。

また、日本で購入できるハラル認証のお菓子や食品もまとめました。

最後まで読めば、ハラル認証と食の多様性のつながりが見えてくるでしょう。

ハラル認証とは

ハラル認証とは、生産や製造、輸送においてイスラム法に則っているかどうかを監査し、認証機関が保証する制度です。

認証されると、対象のものにハラル認証マークが与えられます。

ハラルとはイスラム法によって「許されたもの」という意味です。

神が創造したものとされています。

一方で「禁じられているもの」は、ハラムと言われます。

【ハラル:許されているもの】

  • 野菜
  • 果物
  • 穀物(米・小麦など)
  • 魚介類・海藻類
  • 豆類
  • 牛乳・卵
  • ルールに従ってと殺処理された牛肉や鶏肉 など

【ハラム:禁じられているもの】

  • 豚由来成分を含む調味料・添加物
  • アルコール
  • 動物の血液 など

ハラル認証を受けたものは、食品だけではなく、洗剤や化粧品なども該当します。

ハラル認証は、イスラム教徒だけでなく、非イスラム教徒にとっても重要な基準です。

参照:農林水産省|ハラール職人輸出に向けた手引き
参照:一般社団法人ハラル・ジャパン協会|ハラル認証について
参照:MPJA一般社団法人ムスリム・プロフェッショナル・ジャパン協会|ハラル認証の仕組みと認定

どうしてハラル認証が必要なのか

先ほど述べたように、イスラム法で禁じられている食材は古くから明確化されています。

にもかかわらず、なぜハラル認証が必要なのかと疑問に思った方もいるでしょう。

以下に、ハラル認証が必要な理由を3つにまとめました。

加工品は判断が難しいため

野菜や果物については、ハラルかどうか見て判断できるでしょう。

しかし、加工品の場合は消費者が判断するのが難しい場合があります。

例えば、「調味料や添加物に豚由来成分が含まれているか」「豚肉と同じ製造ラインではないか」などは、商品を見ただけではわかりません。

そのため、イスラム教徒の人々が安心して買い物できるように、ハラル認証は必要不可欠です。

市場拡大のチャンスだから

ハラル認証を必要とする国は、単にイスラム教徒の人口が多いかどうかだけではありません。それは、世界的に必要とされている認証制度です。

世界的に見ると、ハラル市場は急激に拡大しています。

2020年時点でイスラム教徒の人口は19億人となり、世界人口の約4分の1に達しました。

世界のハラル食品市場規模も2022年に2兆2,213億米ドルに到達しました。

一説によると、2023年から2028年の間に10.8%の成長率を示し、2028年には4兆1,773億米ドルに届くと予測されています。

日本の輸出拡大のためには、農林水産省もハラル市場の進出を重要視しています。

これまで、イスラム圏以外の国がハラル市場に進出する際、イスラム法に基づいた商品かどうかを証明することが障害となっていました。

しかし、ハラル認証があることで参入しやすくなりました。

海外進出を目指す場合、日本の商品もハラルの基準を満たすことが必要です。

食の多様性を普及させるため

日本でも外国人観光客が増えている中、食の多様性がますます重要視されるようになりました。

飲食店がハラル認証の基準を満たすには、食材や調味料を調達し、豚肉とは別の器具や保管場所を確保するなどの対応が求められます。

イスラム教徒の訪日観光客をもてなすためには、宗教による違いを尊重し、共通点を見出しながらみんなが食事を楽しめるよう配慮することが大切です。

また、SDGsの目標には「10.人や国の不平等をなくそう」が掲げられています。

具体的なターゲットとしては、「10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。」と明記されています。

つまり、食の多様性を後押しするハラル認証は、SDGsへの貢献につながるといえるでしょう。

多様性やダイバーシティについて詳しく知りたい方はこちらがおすすめです。

関連記事:すべての人のための社会を築こう!ダイバーシティとインクルージョンの基礎知識

参照:農林水産省|国内ハラール認証取得企業のハラール食品輸出取組事例
参照:観光庁|ムスリムおもてなしガイドブック|
参照:東京都|ムスリム旅行者おもてなしガイドブック
参照:外務省|10: 人や国の不平等をなくそう
参照:みずほ銀行|令和 4 年度輸出環境整備推進委託事業 (ハラール及びコーシャマーケットにおける、認証食品を 含めた日本産品の輸出環境実態調査)

世界と日本のハラル認証

世界的に見て、統一されたハラル認証の基準はありません。

認証機関は300以上もあり、国によって異なる認証機関が存在しています。

消費者にとっての安心材料となるハラル認証は、混乱を招きやすい懸念を抱えています。

ハラル認証の歴史

ハラル認証は、イスラム教が国教であるマレーシアで誕生しました。

マレーシア政府は経済発展とともに加工品や輸入品が増加し、その成分の安全性を判断するのが困難になりました。

このため政府は、安全管理できるよう制度を設けたのがはじまりです。

認証機関

マレーシアやインドネシア、シンガポールのハラル認証機関は、政府直属型で国内には1つしかありません。

さらに、統一された基準が存在します。

一方、オーストラリアには政府が認めた認証機関が複数あります。

基準の統一化までは至っていないものの、政府が最低限のハラル認証基準を定めました。

日本では政府はハラル認証に関与しておらず、各任意団体が独自の基準を定めています。

ドイツも日本と同じように認証機関が乱立しています。

日本のハラル認証機関

日本にあるハラル認証機関のうち、東南アジアや中東からも認められているものをいくつか紹介します。

  • エミレーツ・ハラールセンター(EHC)
  • イスラミックセンター・ジャパン(ICJ)
  • 日本ハラール協会 (JHA)
  • 宗教法人日本イスラーム文化センター(JIT)
  • ムスリム・プロフェッショナル・ジャパン協会(MPJA)
  • NPO法人日本アジアハラール協会(NAHA)

これらの機関は、国内でハラル認証を取得できる点では共通していますが、対象品目や費用、更新期間などに異なる点があります。

申請する場合は、それぞれの手引きを確認してください。

参照:MUFG
参照:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/attach/pdf/Halal-2.pdf

ハラル認証を受けた日本の商品

では、日本においてどのような商品がハラル認証を受けているのでしょうか。

ショコラ・カフェ玄神

トリュフのような見た目の「ショコラ・カフェ玄神」は、バターミルクキャラメルを混ぜたモチモチのきな粉生地でチョコレートを包み、カフェ玄神(焙煎有機玄米パウダー)をまぶして仕上げています。

このカフェ玄神は、日本で唯一「モナコ公室御用達」と認められた玄米コーヒーです。

開発・販売は、日本のお供え文化を伝えるライフスタイルブランド「供TOMO(トモ)」(JAT株式会社)が行い、製造は、創業100年を迎えるきな粉菓子の製造・卸売業を営むワタトーが担っています。

この事例は、2つの会社がそれぞれの強みを生かしてハラル市場へ進出した典型的な例といえます。

参照:ショコラ・カフェ玄神

ガトー・ド・ボワイヤージュ

横浜馬車道に本店を構えるガトー・ド・ボワイヤージュは、定番商品の「幸せを呼ぶ馬車道馬蹄パイ」や、新商品である「キャラメルラテミルフイユ」のハラル認証を取得しました。

関東を中心に全国で30店舗以上展開している有名な洋菓子メーカーが、手土産として食の多様性を具現化した事例といえるでしょう。

参照:ガトー・ド・ボワイヤージュ

マジックライスシリーズ

サタケの非常食「マジックライスシリーズ」は、ハラル認証を宗教法人日本イスラーム文化センターより取得しました。

この認証取得には、国内におけるイスラム圏からの訪日観光客や留学生、在日者の急増が関係しています。

非常時でも、イスラム教徒の人々が安心して食事できるよう、イスラム法に基づいた非常食の開発に努めました。

地震大国である日本だからこそ、宗教を問わず誰もが利用できる非常食の必要性が指摘されています。

参照:サタケ|非常食「マジックライスシリーズ」がハラール認証取得

エフディアイ

香川県にある菓子メーカー、株式会社エフディアイは、オリジナルバウムクーヘンでハラル認証を取得しました。

現在のフレーバーはプレーン、チョコレート、抹茶、はちみつの4種類ですが、今後も新しいフレーバーを随時追加する予定です。

エフディアイはハラル市場での需要を見据え、日本のお菓子の輸出を東南アジアや中東などに開始しました。

地方の菓子メーカーが、地方創生食の多様性をかけ合わせて成功を収めた事例といえるでしょう。

参照:一般社団法人ハラル・ジャパン協会|イスラム市場向けに菓子メーカー3社がハラル認証取得!

どんど焼本舗

大分別府・湯布院などで親しまれている「甘太くんすぃーとぽてと」と「かぼすナッツサブレ」の2種の焼き菓子が、ハラル認証を取得しました。

コロナ禍により、インバウンドや日本人観光客が激減したことがきっかけとなり、新たな市場への参入することを決めました。

マレーシアでの輸出・販売をテストしたところ、日系流通バイヤーの目にとまったのです。

そこから、マレーシアやシンガポールなどへの輸出が本格的にスタートしました。

ピンチをチャンスに変える行動力と、マレーシアから着実に拡大していく成功例は、ハラル市場に参入を検討する企業にとって大きなヒントになるでしょう。

参照:一般社団法人ハラル・ジャパン協会|イスラム市場向けに菓子メーカー3社がハラル認証取得!

食の多様性を尊重するハラル認証

ハラル認証は、イスラムのルールに則って生産された商品であることを保証し、イスラム教徒の人々が安心して買い物や食事を楽しめるようにします。

世界的に見ると、ハラル市場は急拡大していて、新規開拓する価値が高いとされています。

そのため、ハラル認証はイスラム圏だけではなく、海外進出を目指す非イスラム圏の国にとっても必要な存在といえるでしょう。

企業や飲食店がハラル認証の基準を満たすことは容易ではありませんが、食の多様性を広げる重要な役割を担っています。

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