サーキュラーエコノミー

【サーキュラーデザイン】とは?基本となる6つの戦略や海外企業の事例についても紹介

「サーキュラーデザイン」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。

サーキュラーデザインは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を目指すうえで欠かせないものです。

サーキュラーエコノミーは、「生産して、売って、使って、捨てずに資源として利用する」というプロセスが基本となります。

廃棄物や環境汚染を最小限に抑えることが前提であり、本質的には「廃棄物」という概念をなくすことを目指す考え方です。

サーキュラーデザインは、資源を使い捨てにせず、うまく循環させるために製品やサービスに組み込まれたデザインを指します。

この記事では、サーキュラーデザインの意味や6つの戦略について、大手海外企業での取り組み事例とあわせてわかりやすく解説します。

参考:環境省_令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第2章第2節 循環経済への移行 (env.go.jp)

サーキュラーデザインとは?

 

サーキュラーデザインとは、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を実現するためのデザインやその考え方です。

資源を使い捨てるのではなく、うまく循環させるために製品やサービスに組み込まれたデザインを指します。

従来まで広く認知されてきた3R(リデュース・リユース・リサイクル)と、サーキュラーエコノミーとの間には大きな違いがあります。

3Rは、廃棄物の発生をできるだけ抑え、廃棄物をリサイクルする方法を考えるという視点で取り組んできました。

しかし、サーキュラーエコノミーでは、そもそも廃棄物という概念をなくすことが目標です。

経済活動のあらゆる段階で循環型へシフトしつつ、モノやエネルギーの消費を減らし、新たな経済的価値の実現を目指すデザインが新たな潮流となっています。

サーキュラーエコノミーがデザインによって推進される理由

廃棄物をなくすために中心的役割を果たすのは、製品のデザインです。

デザインという言葉には、製品の設計のみならず、私たちが食べるものや着る服、建物などを提供するための「仕組み」という意味も含まれます。

現在、食品・ファッション・プラスチック包装などの業界では、ほとんどの材料が埋め立てや焼却、または自然環境に流出する運命にあるような仕組みになってしまっています。

そのため、廃棄物が発生しないようなデザインにするだけでなく、製品の使用後、どのような用途で使われるかもあらかじめ決定しなければなりません。

デザインが循環経済の基礎となる理由は、このように廃棄物や汚染の発生を最初から防ぎ、計画的に自然を再生できるためです。

サーキュラーエコノミーへの移行をビジョンとして活動するエレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーを支える要素はデザインだとしています。

サーキュラーデザインがサーキュラーエコノミーの基礎を担っているといえるでしょう。

参考:Design and the circular economy (ellenmacarthurfoundation.org)

エコデザインとの違い

 

エコデザインは、製品やサービスにおけるサイクル全般で資源やエネルギーの消費を抑え、環境への影響が最小限になるような設計やデザインを指します。

例えば、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の観点から取り組むこともエコデザインの一環です。

  • Reduce(リデュース):無駄な材料(資源)を減らし、必要最低限の設計を行う
  • Reuse(リユース):繰り返し再利用できるロングライフな設計を採用する
  • Recycle(リサイクル):使用済みの製品(廃品)を資源として分解し、再び活用できるよう設計する

一方、サーキュラーデザインは、サーキュラーエコノミーの3原則に基づいたデザインの実践です。

  • 製品の設計段階から廃棄物や汚染を排除すること
  • 製品や資材を使用した後も循環させて使い続けること
  • 資源を有効利用して自然を再生させること

エコデザインでは、廃棄物を減らして資源を有効活用する考えがベースとなっていますが、サーキュラーデザインは、廃棄物という概念を根本的になくし、資源の循環利用に焦点を当てています。

参考:持続可能な製品・サービスのための 「エコデザイン(環境配慮設計)」に関する JIS 制定

サーキュラーデザインでの6つの戦略

主要企業も持続可能性を重視し、廃棄物や汚染を最小限に抑えるか、製品の長期利用を促進するために意欲的な目標を設定しています。

製品やサービスのデザインには、唯一無二の正しい方法はありません。

しかし企業において、成功したプロジェクトには共通の戦略があります。

それは、エレン・マッカーサー財団が掲げる6つの戦略です。

ここでは、エレン・マッカーサー財団の公式サイトから6つの戦略について紹介します。

製品の長寿命化

製品の長寿命化とは、製品を耐久性の高いものにしたり、修理しやすいデザインにしたりする戦略です。

また、製品を長く使い続けられるよう、ユーザーが自身でメンテナンスできるような配慮も必要とされています。

現在、市場では次々と高性能な新製品が生まれ、買い替えを促す直線型経済(リニアエコノミー)が浸透しています。

そのため、製品の長寿命化を意識した取り組みには十分に目が向けられていないのが現状です。

製品の長寿命化の実現には、将来的な人々のニーズの変化に対応することも想定し、アップデートしやすくする必要があります。

製品からサービスへ

製品からサービスへの移行とは、製品を所有するのではなく、共有するシステムへの移行を指す戦略です。

例えば、サブスクリプションやシェアリングサービスなどがこれにあたります。

近年、音楽配信サービスや家電品のレンタル、カーシェアなどが増えつつあるのもその一環です。

個人が製品を保有するのではなく、製品を提供する企業が製品を保有することで、メンテナンスが容易になり、廃棄の防止や製品の長寿命化も期待できます。

また、製品を共有することで、維持費などの管理コストが削減されるメリットもあります。

循環型原材料の利用

循環型原材料の利用とは、利用が終わった後に再生できる素材を使ったり、できるだけシンプルな素材を使ったりする戦略です。

製品を製造する際には、人体や環境に有害な物質ではないか、どのような素材を使えばユーザーや製造者の双方にとって良い製品かを検討することが大切です。

具体的には、以下のような素材や材料を使用します。

  • 菌類やバクテリアなどの微生物の働きによって分解できる生分解性のある素材
  • リサイクル可能な材料

これらもサーキュラーデザインにおける取り組みの一つといえます。

脱物質化

脱物質化とは、実用性を保ちつつ可能な限り最小限の材料を使用する解決策を模索する戦略です。

具体的には、物理的なモノの消費や所有にこだわらず、製品の利用価値をオンライン化させることが考えられます。

例えば、FAXからメールへの送信に変更したり、レシートをオンラインの明細として受け取ったりすることがその一例です。

ただし、オンライン化により電力の使用が増加し、別の環境負荷が生じる懸念もあるため、全体的な視野での取り組みが求められます。

モジュール化

モジュール化とは、製品の修理やアップグレードを容易にするデザイン手法を模索する戦略です。

製品の一部が壊れたり修理が必要になったりした場合、その部分を簡単に取り外せるようにすると、製品の廃棄を防ぐことができます。

また、製品の一部が取り外せると分解が容易になり、カスタマイズが可能なことでユーザーのニーズに応えやすくなるなど、商品の陳腐化までも防げる利点があります。

生物資源化

生物資源化とは、製品の原材料を生物資源に置き換えることで、生分解を可能にする戦略です。

生物資源化には、二酸化炭素の排出を削減できるメリットもあります。

日本では、レジ袋などにバイオマスを配合して生分解性を高める取り組みが行われています。

生物資源化の実現のためには、単に生物資源への置き換えだけでなく、生態系を破壊せずに短期間で土に還すことも重要です。

参考:How to Build a Circular Economy | Ellen MacArthur Foundation

大手海外企業におけるサーキュラーデザインへの取り組み事例

画像引用:BMW「DESIGN FOR RECYCLING

ここまでサーキュラーデザインの戦略について解説してきましたが、今回は海外企業におけるサーキュラーデザインへの取り組みに焦点を当てて紹介します。

各企業が具体的にどのような取り組みを行っているか見ていきましょう。

NIKE

NIKEでは、製造工場の床に落ちている廃棄物やくずを「宇宙ごみ」と表現し、これらを使用して作られた「スペースヒッピー」というスニーカーが誕生しています。

スペースヒッピーのアッパーは、エンジニアードニットと呼ばれる素材で作られており、リサイクルされたプラスチックのボトルやTシャツ、糸くずなどの100%再生素材が使用されています。

スペースヒッピーのアッパーと他の部分を合わせると、スニーカーの90%もの部分が再生素材による構成です。

また、スペースヒッピーは、再利用素材を使用した輸送用のシューズボックスも採用しています。

このシューズボックスには、直接伝票を貼付でき、使用するボックスを減らす配慮がされています。

さらに、宛名の印刷には植物由来のインクを使用するなど、製造から発送まで環境保護にこだわった、NIKE史上最も二酸化炭素排出量が少ないコレクションです。

参考:ナイキ スペース ヒッピー 常識を変えてより良い未来に挑む (nike.jp)

IKEA

IKEAは、サーキュラービジネス(循環型ビジネス)の実現に積極的に取り組んでいる企業の一つです。

循環性を向上させるため、日々新しい方法を模索しています。

IKEAでは2030年までのサーキュラービジネスの目標として、以下を掲げて取り組んでいます。

  • 顧客が商品を入手・手入れ・譲渡する際に、より循環型な方法を提供する
  • すべての商品を最初の段階からリユース・改修・再製造・リサイクルできるようデザインする
  • 再生可能素材とリサイクル可能素材のみを使用する
  • サーキュラーエコノミーを推進するために、ビジネスパートナーシップを提唱・協働・構築する

また、2019年には、回収した3,900万個の製品に第二の人生を与え、3,200万個の製品をアウトレットで再販売しました。

参考:サーキュラービジネス実現に向けた道|IKEA【公式】 – IKEA

BMW

BMWにおけるサーキュラーデザインの原則は、Re:think、Re:duce、Re:use、Re:cycleの4つが重要なカギとなっています。

  • すべてに循環を意識した車づくり(Re:think)
  • より少ない資源で、より多くのことを(Re:duce)
  • 製品の価値を最大限に高める(Re:use)
  • 資源を可能な限り長くリサイクルし続ける(Re:cycle)

また将来的にリサイクル率が最大化できるよう、課題解決のための施設も設立しています。

その中心となるのがリサイクル・解体センターです。

リサイクル・解体センターでは、日々新しい解決策に向き合っています。

BMWでは、できる限り再利用しながら、自動車業界の最先端を超えた新しいユースケースを生み出すことを目標としています。

参考:BMW i Vision Circular:すべてのハイライト | BMW.co.jp
参考:DESIGN FOR RECYCLING (bmw.com)

私たちに求められるサーキュラーデザイン

ゴミを資源と捉え、製品にデザイン性を持たせて循環させるサーキュラーデザインが今、求められています。

これまでは「大量生産・大量消費・大量廃棄」の直線(リニア)型の製品開発が主流でした。

しかし、この考えは地球環境に危機をもたらしているとされ、見直しを余儀なくされました。

見直しのために、自然や人間・社会がどのような世界で存在し、機能しているのか本質を捉えなくてはいけません。

私たちはあくまで自然の一部であると捉え、人間もまた同じように完全に循環するかたちにしようとする「Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごへ)」の考えが必要です。

これまで作り上げてきた既存概念や方法に疑問を抱き、自然をより深く理解しながら根本から見直さなくてはいけないという認識を持つことが、私たちの課題といっても過言ではありません。

まとめ

今回はサーキュラーデザインについて解説してきました。

サーキュラーデザインとは、サーキュラーエコノミーを実現するためのデザインやその考え方です。

ポイントは以下のとおりです。

  • 資源を循環させるために組み込まれたデザイン
  • エコデザインと異なり、サーキュラーデザインは廃棄物という概念をなくすことを目指す
  • 海外ではサーキュラーデザインへの取り組みがすでに始まっている

サーキュラーエコノミーだけを意識するのではなく、生み出す製品やサービスにデザイン性をもたせることで、地球への配慮がより加速します。

企業だけでなく製品を利用する私たちにおいても、廃棄しない、必要なものだけ購入するといった意識が必要なのではないでしょうか。

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