気候変動・脱炭素

気候変動はコーヒーにも悪影響?コーヒー2050年問題とは

淹れたてのコーヒーの香ばしい香り。「毎朝のコーヒーから1日をスタートするのが日課」という人は多いでしょう。

しかし近い将来、そのような毎日を送れなくなるかもしれません。

コーヒー2050年問題は、コーヒー栽培に適した産地が2050年までに約半数になるという問題です。

今、コーヒーの産地で何が起きているのかを知り、おいしいコーヒーを飲み続けるために私たちにできることは何なのか考えてみましょう。

コーヒーの代表種はアラビカ種とロブスタ種

コーヒーは世界70カ国以上で生産されており、主な品種はアラビカ種とロブスタ種です。

このうちアラビカ種が全体の約60%を占め、ロブスタ種は約40%を占めています。

赤道を挟んでそれぞれ北緯25度、南緯25度の間に位置しているのがコーヒーベルトです。

コーヒーベルトはコーヒーの生産に適した土地といわれており、質のよいコーヒー豆が生産されています。

コーヒーベルトに位置する代表的な国としては、以下のような国があります。

  • アフリカ:ウガンダ・エチオピア
  • アジア:インド・インドネシア・ベトナム
  • 中南米:メキシコ・グアテマラ・ホンジュラス
  • 南米:コロンビア・ペルー・ブラジル

世界中に流通するコーヒーのほとんどがこれらの国々で栽培されていますが、アラビカ種の栽培に適した土地が、2050年までに半減する可能性が高いといわれています。

参考:CIジャパン|21世紀のコーヒー:気候変動と需要増加によるあらたな森林破壊の脅威
参考:日本経済新聞|コーヒー豆に「2050年問題」 気候変動で産地半減危機

コーヒーは非常に繊細な植物

コーヒーの木は非常に繊細で、良質なコーヒー豆を収穫するには雨量・日当たり・気温・土壌の4つの条件をすべて満たす必要があります。

成長期には多くの雨が必要で、逆に収穫期は乾燥していないといけません。

水はけのよさもポイントです。

日当たりのよい場所を好むものの、適度な日陰も必要です。

寒さには非常に弱いのですが、昼夜の寒暖差があるほうが良質なコーヒー豆に育ちます。

標高が高い地域は、コーヒーの生産に適しています。

気候変動によって記録的豪雨が発生したかと思えば、干ばつが起きる、雨季と乾季のバランスが乱れる、夜も気温が高い状態が続く、といった問題が起きています。

このまま異常気象が進めば、コーヒーの品質は低下の一途をたどっていくでしょう。

コーヒーの消費量は右肩上がりで伸びている

全日本コーヒー協会の統計を基にGREEN NOTE編集部が作成


 
全日本コーヒー協会が開示している統計データでは、コーヒー消費量は年によって多少のばらつきがあるものの、右肩上がりで推移しています。

2017年は51,575、2020年は52,518、2022年は55,369(単位:1000袋)でした。

なかでも、2022年・2023年における世界のコーヒー消費量は3年連続の増加傾向で、コロナ終焉による人流の拡大がコーヒーの需要・消費に大きく寄与したと考えられます。

この勢いは衰えることなく、将来的にもコーヒーの消費は拡大していくでしょう。

参考:全日本コーヒー協会

コーヒー2050年問題がもたらす悪影響

コーヒー2050年問題は、私たちの生活にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか。

大きく、以下の3つの影響があります。

  1. コーヒーの品質が低下する
  2. コーヒー農家が経営難に陥る
  3. コーヒーの価格が高騰する

順番に解説します。

コーヒーの品質低下

温暖化による気温の上昇によって、さび病と呼ばれるコーヒーの病気が起こりやすくなります。

さび病は高温高湿度の環境で発生し、空気感染するといわれており、感染した木はやがて枯れてしまいます。

コーヒー農家が最も恐れている伝染病です。

このまま温暖化が進行し続ければ、さび病による被害が増えるほか、害虫の発生も増えてしまうでしょう。

コーヒーの生育に最適な地域が減ってしまい、おいしいコーヒーが収穫できなくなってしまうかもしれません。

コーヒー農家の経営難

コーヒーの生産地を考えてみると分かりますが、おもに中南米やアフリカといった発展途上の国々です。

家族経営など小規模でコーヒーを生産している農家が大多数なので、コーヒーの品質が低下したり、生産量が減少したりすれば収入が減ってしまいます。

やがては経営を続けることが困難になるかもしれません。

さび病や虫害対策に使用する農薬価格も高騰しています。

農薬を買えない農家は、コーヒー栽培から撤退するほかありません。

コーヒー農家には買い取り価格の決定権がないことが多く、不当取引が横行している現実があります。

農家は貧困生活や児童労働を強いられ、大量に生産しても収入が一向に上がらないといった事態も起きています。

こうした問題には、フェアトレードコーヒーを購入することで対処できます。

フェアトレードコーヒーについては、以下の記事で詳しく解説しています。

ぜひ参考にしてみてください。

関連記事:【5選】おすすめオーガニック&フェアトレードコーヒー

コーヒーの価格高騰

農薬代の高騰に加え、コーヒー生産量の減少により、コーヒーの価格そのものが高騰することは避けられません。

カフェ業を営むコーヒーショップも、仕入れ価格の高騰や売上不振により経営困難になることも予想されます。

一方で、コーヒーの消費量は右肩上がりの状態です。

今後はコーヒーの需要と供給のバランスが取れなくなっていくでしょう。

持続可能なコーヒー生産に動き出した企業事例


 
このままではおいしいコーヒーが作れなくなり、コーヒー価格の高騰やコーヒー産業の衰退を招きます。

この先もおいしいコーヒーを私たちに届けるために、いち早くアクションを起こしたコーヒー企業があります。キーコーヒーネスレです。

2社の取り組みを紹介します。

キーコーヒー

コーヒー2050年問題に対処すべく立ち上がったのが、2022年に創業100周年を迎えたキーコーヒーです。

2016年よりWCR(WORLD COFFEE RESEARCH)と協業し、気候変動や病害虫に強く、かつ豊かな味わいを兼ね備えた新品種の開発に着手しました。

自社農園のうち約2ヘクタールもの土地を実験用として提供し、ブラジルで栽培されていた従来品種をインドネシアで栽培するなど、世界をまたいだ新たなコーヒー栽培に挑戦しています。

同社は2030年までにコーヒー栽培方法を確立し、ノウハウを共有、生産者を支援することを目標に掲げています。

参考:キーコーヒー|コーヒーの2050年問題 直営農園における気候変動適応の取り組み

ネスレ

ネスレは2010年に「ネスカフェ プラン」を発表し、コーヒー農家に対して高品質の苗木を提供したり、農業技術の支援を行ったりしてきました。

2022年10月には「ネスカフェ プラン2030」を発表しています。

同プランの内容は、再生農業の推進・気候変動対策、そしてコーヒー生産者の生活を豊かなものにするためのアクションといったものです。

取り組みの一環として、インドネシアにおいて気象保険プログラムの試験運用を発表しました。

気象保険は小規模コーヒー生産者を対象としたもので、降雨や干ばつといった被害を受けた場合、深刻度に応じて保険金が支払われる仕組みです。

ネスレは2030年までに、10億スイスフラン(約1,750億円)を「ネスカフェ プラン2030」の遂行のために投じるとしています。

参考:ネスカフェ公式サイト
参考:ネスレ ニュースリリース| コーヒー農業をさらにレジリエントに ネスレ、生産者に気象保険を提供するパートナーシップを締結、新たな再生農業ガイドブックに協力

まとめ

コーヒーのように輸入に頼っている食品は、生産地で起きている問題を身近に感じることは少ないかもしれません。

コーヒーに限ったことではありませんが、私たちの生活に欠かせない食品の生産現場で何が起きているのかを消費者も知る努力をすべきでしょう。

正しい情報を集め拡散したり、企業や政府の取り組みに賛同し支援したりするなど、一個人にもできることは多くあります。

おいしいコーヒーを飲みながら、家族や恋人・友人と談笑する。これからもそのような毎日を送るために、まずはコーヒーを取り巻く現状に関心をもつところから始めましょう。

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