エシカルライフ

パーム油とは?持続可能な生産を目指すRSPO認証や企業事例も解説

スナック菓子やパン、洗濯洗剤やシャンプーなどを買うときに「持続可能なパーム油を使用しているか」を確認していますか。

パーム油に意識を向けた行動は、環境や人権を守ることにつながります。

この記事では、パーム油の意味やパーム油が抱える社会問題、企業事例を解説します。

またRSPO認証の社会的意義についてもまとめました。

持続可能なパーム油の必要性を学び、環境や社会に配慮した選択を積み重ねましょう。

パーム油とは?

パーム油は、アブラヤシという植物の果房(かほう)から採れる植物油です。

汎用性が高い特長があり、食品や日用品、化粧品などに幅広く活用されています。

また、近年ではバイオマス発電の燃料としても注目されています。

なお、ココナッツオイルは「ヤシの実」から採取される植物油で、パーム油とは異なります

パーム油は世界で最も生産されている油脂

アブラヤシは1年を通して実をつけるため、効率よく収穫できる植物です。

他の植物油原料よりも安く、かつ安定した供給ができる特長があるため、パーム油は世界で最も生産されています。

認定NPO法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン『2022「パーム油白書」』の「主要17油脂別生産量(2022)」のデータを基に編集部作成

「主要17油脂別生産量(2022)」によると、年間の生産量は2021年時点で、パーム油7589万トン、大豆油6015.3万トン、菜種油2685.9万トン、ひまわり油1896.5万トンとなっており、その生産量は2002年から右肩上がりで増えています。

パーム油は、2億トンの油脂総生産量に対して、3割近くを占めているのです。

主な生産地

アブラヤシは熱帯地方で育つ植物です。

原産国は西アフリカや中南米ですが、現在、世界で供給されているパーム油の約85%は、インドネシアとマレーシアの2カ国で生産されています。

利用される製品

世界で一番生産されているものの、パーム油をお店で見たことがない方もいるかもしれません。

パーム油は、主に食品や洗剤などの原料として使われています。

食品表示にはパーム油ではなく植物油脂と明記されていることもあります。

  • 食品例:ポテトチップス、カップラーメン、マーガリン、冷凍食品の揚げ油、パンなど
  • 生活用品例:洗剤、化粧品、シャンプーなど

このように、加工しやすいパーム油はさまざまな製品に使われており、わたしたちの日常生活に欠かせない存在です。

参考:認定特定非営利活動法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン|2018パーム油白書
参考:認定特定非営利活動法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン|2015パーム油白書
参考:認定特定非営利活動法人ボルネオ保全トラスト・ジャパン|2022パーム油白書

パーム油が抱える問題

1990年代以降、世界全体でパーム油の需要が増えたことで、無理な開発や不適切な農園経営などが問題になりました。

それに伴って、アブラヤシを栽培する熱帯雨林や生物多様性の問題が深刻化しています。

この章では、パーム油が抱える問題を解説します。

熱帯雨林の破壊

パーム油の需要が増加したことで、アブラヤシ農園が拡大し、大規模な熱帯雨林が伐採されています。

例えば、日本の約2倍の広さをもつインドネシアのボルネオ島は、急速にアブラヤシ農園が開発されたことで、島の面積の約1/3にあたる森が失われました。

熱帯雨林には大量の二酸化炭素を吸収する役割があるため、熱帯雨林の減少は、地球温暖化を加速させると懸念されています。

泥炭地の破壊

泥炭とは植物が土壌微生物に分解されずにできた土で、泥炭地とは、泥炭が積み重なってできた地下水位の高い湿地です。

泥炭地は地球の陸地面積のわずか3%しかないにもかかわらず、貯留している炭素の量は世界中の森林が貯留する量の2倍に相当すると推測されています。

つまり、地球温暖化を緩和させるためには、泥炭地を守ることが大切なのです。

しかし、アブラヤシを植えるために、泥炭地から水分が抜かれ、破壊されているのです。

森林火災

アブラヤシ農園を急速に開発したことで、生産地を中心に森林や泥炭地の火災が発生しました。

乾季の場合は雨量も少ないため、余計に燃え広がりやすく、雨季になるまで完全に消化するのは難しいとされています。

森林火災は森林の減少や二酸化炭素の排出だけではなく、近隣住民や野生生物の健康にも大きな被害を与えます。

生物多様性の影響

熱帯雨林が減少することで、その地域に生息する野生動物はすみかや食料を奪われます。

むやみなパーム油の生産拡大は、生物多様性にも悪い影響を与えるのです。

オランウータンボルネオゾウ、スマトラトラなどが、絶滅の危機に瀕しています。

児童労働や強制労働

全長20m以上になるアブラヤシの先端あたりから果房を30kgちかく収穫するのは、非常に重労働です。

また、果房は幹から切り離された瞬間から、酵素による分解が始まるため、品質を保つためにもすぐに大型トラックで搾油工場へ運ばなくてはいけません。

労働者への心身の負担が大きいにもかかわらず、低賃金や劣悪な環境で働かせたり、児童労働をさせたりなど、人権侵害が問題となっています。

持続可能なパーム油の生産を目指す!RSPO認証

RSPOは、2004年4月に「持続可能なパーム油のための円卓会議」として設立されました。

「持続可能なパーム油が標準となるよう市場を変革する」をビジョンに掲げています。

RSPO認証は、持続可能な方法で生産もしくはサプライチェーンを経たパーム油に与えられるエコラベルです。

RSPOでは各工程の認証制度として、生産段階で「原則と基準(P&C)」に則って持続可能な生産がおこなわれていることの認証(P&C認証)と、認証パーム油がサプライチェーンの全段階を通じ間違いなく受け渡されるシステムが確立されていることの認証(SC認証)という、2つの制度を設けています。
(引用:WWFジャパン「RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証について」)

環境や労働者に配慮して商品を選びたい消費者にとって、RSPO認証は重要なラベルになります。

参考:WWFジャパン|RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証について
参考:RSPO

パーム油の持続可能な調達に取り組む企業事例


 
深刻な環境や社会問題を受けて、ネスレ、P&Gなど、世界的に有名な企業が続々とRSPO認証のパーム油に切り替え、持続可能な調達に努めるようになりました。

国内においても、パーム油に配慮する動きが活発化しています。

明治ホールディングス

明治グループは、2016年にRSPOに加盟しています。

「明治グループ調達ポリシー」では、森林減少ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロにする方針を支持し、取引先とともに環境と人権に配慮したパーム油の調達活動に努めることを規定しました。

2023年に、調達しているすべてのパーム油を「RSPO認証パーム油」に切り替えました。

参考:明治ホールディングス株式会社|原材料調達

イオン株式会社

イオン株式会社は、2018年にRSPOに加盟しています。

2017年4月に、パーム油についても明記された「イオン持続可能な調達方針」を発表しました。

そこには「商品の原材料として使われるパーム油について、森林破壊の防止及び生物多様性に配慮した調達に努める」と示されています。

イオントップバリュの対象商品は、以下の通りです。

  • 8種野菜のポテトチップス(うすしお味)90g
  • ザクザクとした食感のポテトチップス(うすしお味、サワークリームオニオン味)100g
  • クセになる辛さ旨辛ヌードル
  • 爽やかレモン風味の塩焼そば
  • 濃旨ソースの焼そば

全国区のスーパーマーケットでRSPO認証の商品を購入できることは、国内のグリーン購入を後押しすると評価できるでしょう。

参考:イオン株式会社|イオン持続可能な調達
参考: イオンのプライベートブランド TOPVALU(トップバリュ)|RSPO認証

サラヤ株式会社

サラヤは、2010年に日本ではじめてRSPO認証パーム油を原料とする商品を開発・販売しました。

そして、2012年4月より自社生産で使用するパーム油をRSPO認証のものに100%切り替えています。

台所洗剤や洗濯洗剤などの生活用品を通して、持続可能なパーム油の生産に貢献しているといえます。

参考:サラヤ株式会社|日本企業の認証パーム油の取り組み 日本の製造業でサラヤが1位
参考:サラヤ株式会社|サステナビリティ

パナソニック 「PALM LOOP(パームループ)」

パナソニックは、アブラヤシの廃材から再生ボードを開発しました。

高品質で加工しやすいため、家具や建材へと活用できると高く評価されています。

二酸化炭素の排出量を減らすことに加えて、木材の代替品になるエコな材料といえるでしょう。

参考:Panasonic|PALM LOOP

創健社

創建社では、国内ではじめてRSPO認証のパーム油を原料とするマーガリンを販売しました。

「べに花ハイプラスマーガリン」「発酵豆乳入りマーガリン」などの主力商品の原料を、持続可能な調達に切り替えた点は高く評価できるでしょう。

2018年10月に東京で開催されたJaSPOC実行委員会主催の「持続可能なパーム油会議2018~ポストオリンピック、2030年のパーム油調達を見据えて~」では「持続可能なパーム油の調達ベスト・プラクティス」も受賞しています。

参考:創建社|RSPO

持続可能なパーム油が未来を豊かに

パーム油は、私たちの生活には欠かせない植物油です。

しかし、世界全体で需要が増えたことで、緑豊かな熱帯雨林が破壊され、野生生物は食料やすみかを奪われました。

企業にできる解決策の一つは、RSPOに加盟し持続可能なパーム油を調達することです。

消費者は、パーム油の問題を知り、RSPO認証があるか確認して商品を購入することが大切です。

RSPO認証のパーム油を選択し、自然や生物多様性が豊かになる社会を目指しましょう。

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