SDGsを学ぼう!目標 13「気候変動に具体的な対策を」について
世界中に存在する課題を解決するための目標として、SDGsが掲げられています。
SDGsは17の目標でできており、社会問題に関するものもあれば、海や陸の環境保全など自然に関係するものも含まれます。
その中でも自然に関係する目標のひとつが、目標13「気候変動に具体的な対策を」です。
今回は気候変動の原因や、わたしたちが企業や個人でできる課題解決への取り組みについて紹介します。
SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」とは?
17の目標からなるSDGsの13番目に掲げられているのが、「気候変動に具体的な対策を」です。
地球温暖化による気候変動への影響を減らすために、世界的に取り組んでいくための目標です。
目標達成のために、以下のとおり5項目のターゲットが定められています。
13-1 | 気候に関する災害や自然災害が起きたときに、対応したり立ち直ったりできるような力を、すべての国でそなえる。 |
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13-2 | 気候変動への対応を、それぞれの国が、国の政策や、戦略、計画に入れる。 |
13-3 | 気候変動が起きるスピードをゆるめたり、気候変動の影響に備えたり、影響を減らしたり、早くから警戒するための、教育や啓発をより良いものにし、人や組織の能力を高める。 |
13-a | 開発途上国が、だれにでも分かるような形で、気候変動のスピードをゆるめるための行動をとれるように、UNFCCC※で先進国が約束したとおり、2020年までに、協力してあらゆるところから年間1,000億ドルを集めて使えるようにする。また、できるだけ早く「緑の気候基金」を本格的に立ち上げる。 |
13-b | もっとも開発が遅れている国や小さな島国で、女性や若者、地方、社会から取り残されているコミュニティに重点をおきながら、気候変動に関する効果的な計画を立てたり管理したりする能力を向上させる仕組みづくりをすすめる。 |
引用:「13.気候変動に具体的な対策を」(日本ユニセフ協会)
13-1、13-2など数字のターゲットは具体的な達成目標を示し、13-a、13-bなどアルファベットのターゲットは課題の達成を実現するための手段を表しています。
気候変動への対策へ向けて、各国で足並みを揃えて取り組むことは簡単ではありません。
国や地域ごとに技術力や経済力に格差があるためです。
そのため、目標13には、先進国が開発途上国の取り組みをサポートする仕組みも含まれています。
先進国が資金や技術など多角的にサポートすることで、世界中の国と地域の目標達成を目指します。
日本では2015年のCOP21(首脳会合)にてACE2.0を発表し、2020年に1兆3000億円の支援を行うことを表明しました。
また、2021年のG7コーンウォール・サミットでも、2021年以降の5年間で6.5兆円の支援を行うと表明しています。
また、これまでにも多くの途上国支援が行われており、代表事例としては
- 太平洋島嶼国における多様な災害の危険評価及び早期警報システム強化計画(出典:外務省)
- グアナカステ地熱開発セクターローン(出典:外務省)
などが挙げられます。
気候変動を引き起こす地球温暖化の実態
気候変動は、主に地球温暖化によって引き起こされています。
地球の気温は年々上昇傾向にあり、実際に昔よりも夏の暑さが厳しくなったと感じる方は多いでしょう。
2020年の時点で、世界の平均気温は産業革命前より1.2℃も高くなっています。
このまま対策をしなければ、地球温暖化はますます加速しかねません。
出典:「The State of the Global Climate 2020」(WMO)
2015年に国連気候変動枠組条約締約国会議で合意されたパリ協定では、温室効果ガスの削減における長期目標が定められました。
「産業革命以前と比べ、世界の平均気温の上昇を2℃以下へ、またできる限り1.5%に抑える」という内容です。
各国の削減目標は以下となっています。
- 中国:60~65%削減(2005年比)
- EU:40%削減(1990年比)
- インド:33~35%削減(2005年比)
- 日本:26%削減(2013年比)
- ロシア:70~75%抑制(1990年比)
- アメリカ:26~28%削減(2005年比)
ここでは気候変動につながる地球温暖化はなぜ起こっているのか、自然界にどのような影響を与えているのかを解説します。
地球温暖化の原因は「二酸化炭素」と「メタン」
地球温暖化は、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが増えることによって引き起こされます。
日本の温室効果ガス排出量は世界で5番目に多く、2018年で12億4000万トン、世界の二酸化炭素排出量のうち3.2%を占めています。
温室効果ガスと呼ばれる二酸化炭素やメタンなどは、存在自体が悪いものではありません。
温室効果ガスが太陽光によって温められた地表から放出される熱を吸収してくれるおかげで、地球が過ごしやすい気温に保たれているためです。
温室効果ガスがなければ、地球の平均気温はマイナス19℃にまで落ちてしまうともいわれています。
しかし、近年は多くの温室効果ガスが 化石燃料 の燃焼など産業活動によって発生しており、地球環境全体に悪影響を与えるほど大気中の濃度を上げています。
なかでも、石炭などの不完全燃焼やディーゼルエンジンの廃棄ガスなどで発生するブラックカーボンは、地球温暖化の原因物質のひとつとも言われています。
化石燃料を扱う会社の動きとしては、2021年5月、イギリス・オランダ系石油会社のロイヤル・ダッチ・シェルの定期株主総会にて、エネルギー転換の長期戦略が88.74%の賛成によって承認されました。
一方、オランダの環境系投資ファンド「フォロー・ディス」は、2年前からロイヤル・ダッチ・シェルの取り組みに対して、さらなる対策を求めて訴えを起こしています。
今回の長期戦略に対しても、意欲的な目標を示すよう強く要請しました。
しかし、この議案に対しては株主の69.53%が反対。
「今後10年において排出量を劇的に削減し、大幅に投資計画を変更する必要がある」と述べています。
出典:「シェル株主、圧倒的多数で気候変動戦略を支持」(REUTERS)
また、産業活動のうち、ほとんどが製造業で、特に排出量が多いのは鉄鋼業(1.7億万トン)、化学工業(0.6億万トン)、機械製造業(0.4億万トン)などです。
結果、熱の吸収量も増加することで、地球温暖化を引き起こしているのが現状です。
地球温暖化が世界へ及ぼすあらゆる影響
地球温暖化が問題視される理由は、気温が上昇して過ごしにくくなることだけではありません。
政府間パネル(the Intergovernmental Panel on Climate Change: IPCC)の第5次評価報告書によると、このまま気温上昇が続くリスクとして以下のような項目を挙げています。
- 海域の生態系、生物多様性への影響
- 陸域や海水の生態系、生物多様性が支えるサービスの損失
- 高潮や洪水、海面上昇による健康被害や生計崩壊
- 極端な気象現象による インフラ機能停止
- 熱波による死亡、疾病
気候変動による生物多様性への影響は、特に山岳部、島嶼、沿岸部などの絶滅リスクを高めます。
近年、島国では浸食の影響によって砂浜の木々が倒れ、環境ストレスによってサンゴ礁が死滅しています。
現在は、以下の島国への影響が問題視されています。
- モルディブ諸島
- チャゴス諸島
- ツバル
- キリバス
- マーシャル諸島 など
これからの島国では特に観光業が主産業になっていることから、経済力が低下し、人がいなくなってしまうことも予想されているのです。
出典:「「自然な」適応は、サンゴ礁の島を 気候変動と海面上昇による破壊から救えるか?」(環境省)
ホッキョクグマは生活できる場所が少なくなり、サンゴ礁などデリケートな生物は生きにくくなるなど、生態系への影響も起こります。
わたしたちの生活に直結するところでは、異常気象の増加があるでしょう。
ハリケーン、熱波などによる被害が増加しています。
2017年に北米大陸へ上陸したハリケーン「イルマ」は、その損害額が13兆にものぼったとされています。
また、気候変動によって雨量が増えたり最高気温が上昇したりすることで、蚊の発生数や自然宿主(ネズミ、家畜など)が増えます。
病原体が体内へ侵入する確率が高くなることから、地球温暖化による感染症拡大も示唆されています。
地球温暖化に対して世界中で対策が急がれている
温暖化への対策をより具体的に進めるために、SDGsの目標として「気候変動に具体的な対策を」が設けられました。
近年の「グローバルリスク報告書」(※)によると、「今後10年において発生する可能性が高い環境リスク」として、環境に関する項目が1~5位のすべてに挙げられています。
最新版(2022年版)では、1位に気候変動対策の適応が挙げられました。
出典:「<報告書発表> グローバルリスク報告書2022年版」(WORLD ECONOMIC FORUM)
対策の立案や取り組みの評価に役立てられているのが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書です。
IPCCは1988年、世界気象機関(WMO)や国連環境計画(UNEP)によって設立された、世界中の科学者が協力する政府間組織です。
科学的根拠にもとづき、中立的な立場で各国の政策立案における助言として機能するよう、あらゆる情報を提供しています。
2020年以降の地球温暖化対策について、国際的枠組みを定めたパリ協定では、2015年に以下のとおり策定されました。
出典:「パリ協定の長期目標に関する考察」(環境省)
世界的な平均気温上昇を産業革命前(1880年)よりも抑制するために、各国では具体的な削減目標も掲げられています。
主要国の例をあげると、目標は以下のとおりです。
国名など | 2030年までに進める削減目標 | 基準 |
中国 | GDPあたりのCO2 排出を60~65%削減 | 2005年比 |
EU | 40%削減 | 1990年比 |
インド | GDPあたりのCO2 排出を33~35%削減 | 2005年比 |
日本 | 26%(2005年度比では25.4%削減) | 2013年比 |
ロシア | 70~75%に抑制 | 1990年比 |
アメリカ | 26~28%削減 | 2005年比 |
出典:「各国の温室効果ガス削減目標」(JCCCA)
国ごとに基準としている年度や、削減量の提示方法が異なっている点に注意してください。
上記の先進国だけではなく、開発途上国を含めた合計190か国以上がパリ協定に参加しました。
国としてだけでなく、各企業でもカーボンニュートラル(※)を目指すなど、世界中が地球温暖化対策としてCO2削減に取り組んでいます。
(※)カーボンニュートラル…温室効果ガスの排出量をゼロにすること。日本では2050年までの達成が目指されている。
(※)グローバルリスク報告書・・・世界経済フォーラムに加盟している政府・企業の意見をもとに、世界全体で抱えるリスクについてまとめたレポート。
地球温暖化や気候変動に対して自分たちができること
最後に、地球温暖化や気候変動への対策として、わたしたち個人でできることを紹介します。
公共交通機関を利用する
日々の移動に公共交通機関を利用して、自動車の排気ガスの排出をできるだけ抑えることも、温暖化対策のひとつです。
日本では、自動車の排気ガスが特に問題視されており、規制については1966年から開始されています。
現在は、国内の二酸化炭素排出量のうち運輸部門が18.6%を占めており、うち約46%が自家用車となっています。
出典:「運輸部門における二酸化炭素排出量」(国土交通省)
電気自動車や再生可能エネルギーで動く自動車など、環境に配慮したものに乗り換えることも、温暖化対策となるでしょう。
冷暖房の使用を控える
冷暖房器具は電気消費量が多く、二酸化炭素を排出するため、必要以上の使用は控えましょう。
暖房を1℃下げるだけで、約10%の節電効果が期待できると言われています。
目安として、夏は28℃、冬は20℃を目指します。
快適に過ごせない場合には、衣服の工夫やフィルターの掃除などを行いましょう。
室外機を風通しが良い場所に設置したり、周囲に物を置かないようにしたりなどの工夫をすることで、エネルギーの循環をスムーズにすることもできます。
また、エアコンを省エネ機器に買い換えることも対策になります。
特にエアコンは電気代が多くかかるため、省エネのものにするだけで家計を助けてくれるかもしれません。
また、ウォームビズやクールビズを意識したファッションで過ごす方法もおすすめです。
日常生活でエコ活動を意識する
以下のような日常生活のちょっとした行動も、地球温暖化や気候変動対策につながります。
- こまめにコンセントを抜く
- 食べ残しをしない
- エコバックやマイボトルを使う
- 電力を再生可能エネルギーに切り替える
- 地産地消を心がける
- シェアサービス(車、自転車など)を活用する
- 冷蔵庫には食品を詰め込み過ぎない
- 網戸を通気性の良いものに交換する
使わないときはコンセントを抜いておくことで余計な電力消費を防げるため、エコ活動をしつつ節約もできます。
また、食品ロスを廃棄する際には二酸化炭素が排出されます。
それまでの生産プロセスで消費したエネルギーもすべて無駄になるため、多くの資源が無駄になってしまいます。
現在は、「フードバンク」(※)に取り組む団体もあります。
食品ロスが発生しそうなときは、このようなサービスを利用しても良いでしょう。
エコバッグやマイボトルなど、繰り返し使えるアイテムを選ぶことも、燃やすゴミを減らして二酸化炭素の発生量を抑えることにつながります。
(※)フードバンク…規格外品を福祉施設などに無償で提供する活動
関連記事:フードロスからSDGsを考える!自分たちができる取り組みを知ろう
まとめ
地球温暖化は気候変動を招き、農作物や畜産物、水産物にも大きな影響を与えます。
世界気象機関は、1970年から2019年までの50年間における経済的損失は約400兆円に達したと発表しています。
出典:「世界の気象災害、50年間で5倍に 経済損失は3.6兆ドル=世界気象機関」(BBC NEWS)
夏の暑さや冬の寒さが厳しくなるだけではなく、食料不足を防ぐためにも、世界中の人々が気候変動対策に取り組む必要があります。
必要以上に冷暖房を使用しないなど、わたしたち個人ができる活動も複数あげられます。
まずは日常生活のちょっとしたことから、地球に優しい行動を意識してみましょう。
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