脱プラスチックのために必要な取り組みとは?企業の事例も紹介
プラスチックは、私たちの日常生活に欠かせない存在となっています。
しかし、同時に深刻な地球環境問題を引き起こしているのが現状です。
使い捨てプラスチックへの依存は、地球温暖化や海洋汚染などの環境問題を悪化させており、「脱プラスチック」への取り組みが世界的に加速しています。
本記事では、脱プラスチックに注目が集まっている背景や、プラスチックごみによる環境問題について詳しく解説します。
また、脱プラスチックを実現するための必要な取り組みや、日本の企業が進める具体的な事例も紹介しますので、ぜひご覧ください。
本記事をきっかけに、脱プラスチックへの理解を深め、私たちが今できる小さな行動から始めてみましょう。
脱プラスチックとは
「脱プラスチック(本文内以下、脱プラ)」とは、地球環境に重大な影響を及ぼしている使い捨てプラスチック製品の使用を減らし、再利用可能な素材や環境に優しい製品に切り替える取り組みを指します。
プラスチックは便利で安価なため、多くの製品や包装に使用されていますが、分解されにくく、海洋汚染や自然環境への悪影響が深刻です。
日本政府は2022年4月に「プラスチック資源循環促進法」を施行し、プラスチックごみの削減とリサイクル促進を推進しています。
この法律では、令和元年5月に政府が策定した「プラスチック資源循環戦略」に基づき、目指すべき方向性(3R+Renewableの基本原則)と6つのマイルストーンが定められました。
3R+Renewableの基本原則とは、Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)を推進する 3R 政策にRenewable(リニューアブル)が追加されたものです。
3R+Renewableを推進させるための具体的な方法は、買い物の際にレジ袋を購入せずマイバッグを持参する、プラスチックのストローではなく紙のストローを使うなどといった、プラスチック使用を減らす取り組みが挙げられます。
脱プラの目的は、プラスチックによる環境問題を解決し、持続可能な社会を実現することです。
企業だけでなく、私たち一人ひとりの行動が鍵となっています。
参考:日本容器包装リサイクル協会「プラスチック資源循環促進法の施行について」
参考:日本包装学会「用語-3R+Renewable」|
脱プラスチックが重要視された背景
脱プラが重要視される背景には、いくつか要因があります。
- プラスチックの増加
- 環境問題への対応
- 国際的な風潮
1950年以降、世界で生産されたプラスチックのうち、63億トンが廃棄され、その多くが自然に分解されずに環境に長期間残り続けている問題が深刻化しています。
また、毎年800万トンものプラスチックごみが海に流れ込み、2050年には海中のプラスチックごみの量が魚の量を超えると予測されています。
さらに、マイクロプラスチックの問題も深刻です。
マイクロプラスチックとは、⻭磨き粉や洗顔剤に含まれるビーズ状の小さなプラスチックのほか、ペットボトルなどのプラスチックごみが、紫外線や波によって5mm以下まで細かくなったものを指します。
これらのマイクロプラスチックは、海洋生物だけでなく、人間の健康にも悪影響を及ぼす恐れがあります。
さらに、プラスチックを焼却する際に発生するCO2は、地球温暖化を進める一因です。
深刻化するプラスチック問題を受け、世界中でSDGs(持続可能な開発目標)に向けた取り組みが強化され、ESG(環境・社会・企業統治)に対する投資家の関心も高まっています。
これにより、企業も環境への配慮として、脱プラに対する取り組みが求められています。
以上の背景から、プラスチック削減や環境に優しい素材への切り替えが、世界中で重要視されているのです。
参考:日本財団ジャーナル「2050年の海は魚よりもごみが多くなる?今すぐできる2つのアクション」
参考:環日本海環境協力センター「マイクロプラスチックって何?」
参考:ニホン・ドレン株式会社「脱プラスチックとは?提唱される背景と世界や日本の取り組み」
脱プラスチックを目指すために
ここまで、脱プラが重要視される背景を解説してきました。
では、脱プラのために私たちに何ができるのでしょうか。
ここでは、個人で取り組めることや企業での具体的な対策を紹介します。
個人の取り組み
個人ができる取り組みは、以下の通りです。
- 使い捨てプラスチックの削減
- 適切な分別とリサイクル
- 環境に配慮した消費行動
使い捨てプラスチックを使用せず、マイバッグやマイボトルを活用し、使い捨てプラスチックの使用を減らしましょう。
天然素材や再利用できる素材の製品を選ぶのも有効です。
また、ごみを出すときには、リサイクルしやすいようプラスチック製品を正しく分別してからリサイクルに出すようにしましょう。
正しく分別するために、地域のリサイクルルールを把握し、実践するのも大切です。
さらに、環境に配慮した消費行動も重要です。
例えば、環境に優しいオーガニックコットンや自然素材の製品を購入したり、不要な買い物を控えて本当に必要なものだけを購入したりするのも、環境保護につながります。
参考:朝日新聞SDGs ACTION!「脱プラスチックが必要なワケは?国内外の取り組みや今後の課題も紹介」
企業での取り組み
次に、企業ができる取り組みを見ていきましょう。
- 製品設計の見直し
- リサイクル技術の向上
- 環境配慮型ビジネスモデルへの転換
脱プラのために、企業は循環配慮設計を導入し、リサイクルしやすい製品の開発や、使い捨てプラスチック製品の削減、代替素材への切り替えを進める必要があります。
また、高度なリサイクル技術を開発し、リサイクル素材の品質向上と用途の拡大を図ることも大切です。
これにより、プラスチックの再利用がさらに推進されます。
さらに、環境配慮型ビジネスへの転換として、モノの所有からシェアへのシフトを促進したり、修理やリユースサービスを提供して製品の寿命を延ばしたりする取り組みも欠かせません。
このような取り組みは、資源や製品の価値を最大化し、資源消費を最小限に抑え、廃棄物の発生を減らす「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の考え方にも通じています。
脱プラを進めるためには、資源への投入や消費を抑え、既存のストックを有効活用しながら、新たな付加価値を生み出す経済活動を継続していくことが求められます。
参考:朝日新聞SDGs ACTION!「脱プラスチックが必要なワケは?国内外の取り組みや今後の課題も紹介」
参考:環境省「第2節 循環経済への移行」
脱プラスチックのための企業の取り組み事例
それでは、具体的に各企業がどのように脱プラに取り組んでいるのか、2つの事例を紹介します。
味の素
味の素では、脱プラに向けてさまざまな取り組みを進めています。
- 商品パッケージの紙化
- プラスチック包装の肉薄化による省資源化
- 紙パック素材の使用促進
味の素では、和風だしなどの個装パッケージや内袋包材を紙化し、風味調味料部門だけで、プラスチック使用量32トンの削減を図る目標を掲げています。
また、冷凍食品などの包装を薄くすることで資源を節約しています。
しかし、薄くしすぎると、運搬中に袋が破けてしまう懸念がありますが、創意工夫を重ねた結果、従来よりも130%高い包装性能を実現しました。
さらに、食用油の容器を約2年かけて紙パッケージに変更し、油の酸化や風味を損なわず、環境面にも配慮したパッケージの開発にも成功しました。
参考:味の素「プラスチックごみ削減へ〜味の素グループのプラスチック廃棄物ゼロ化への取り組み」
Bioworks
ベンチャー企業のBioworksは、植物由来で生分解性のある素材「ポリ乳酸(PLA)」の研究開発を行っている会社です。
改質ポリ乳酸「PlaX™」という素材を独自に開発し、この素材を使った製品の製造、販売も手がけています。
ミッションとして「あたらしい『豊かさ』の種を蒔く」を掲げ、地球と人類がともに健やかに生きられる未来の創出を目指しています。
Bioworksは、ファッションアイテムや日用品などを環境負荷の低い素材に変えながら、循環型社会の実現を目指すマテリアル・クリエイション・カンパニーです。
広がりを見せるプラごみ削減のための商品・サービス
プラスチックごみ削減のために、さまざまな商品やサービスの提供も増えています。
最近では、食べられるスプーンも登場しています。
管理栄養士が監修した野菜でできたスプーン型クッキーPACOON(パクーン)は、季節に応じた野菜を使い、無添加で身体にも優しい素材が特徴です。
ごみを減らせるだけでなく、SDGsや食育の観点からも注目されています。
また、MEGLOO(メグルー)は、地域共通のリユース容器をシェアし合い、テイクアウト時の使い捨て容器を削減する活動をしています。
テイクアウトする際には、密閉性に優れた容器で持ち帰り、食べ終えた空き容器は、テイクアウトしたお店だけでなくMEGLOOに参加している他のお店や返却スポットで返却可能です。
返却された容器は、お店で洗浄・消毒されて再利用されます。
他にも、量り売り専門店も増えています。
量り売り専門店「F」は、ナッツやドライフルーツ、オイルなどを量り売りし、持参した瓶などに入れて販売してくれるお店です。
120種類を超える商品を、20gから1g単位で購入できるので、フードロスも防げます。
このように、さまざまな取り組みが脱プラを加速させています。
まとめ
脱プラは、環境保護を目的にプラスチック使用を削減し、再利用可能な素材や代替品に移行する取り組みです。
プラスチックによる海洋汚染や地球温暖化の影響が深刻化する中、個人や企業の脱プラに向けた取り組みや行動が求められています。
個人では、使い捨てプラスチック製品を減らし、マイバッグやリサイクルの実践で環境負荷を軽減できます。
また、企業も代替素材の開発やリサイクル技術の向上に取り組んでおり、環境保護だけでなく持続可能な社会の実現に向けても欠かせないものです。
地球温暖化や海洋汚染を防ぐためにも、私たち一人ひとりができることを積極的に取り入れていきましょう。
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