バイオプラスチックを総まとめ!原料からメリット・デメリットまで解説
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私たちの生活に欠かせないプラスチックですが、近年プラスチックごみによる環境汚染などが問題になっています。またプラスチックの主な原料は石油であるため、二酸化炭素の排出なども大きな課題となっています。
このようなプラスチックをめぐる課題を解決するために注目されているのが、バイオプラスチックです。環境負荷の軽減や、循環型社会への貢献が期待されるバイオマスプラスチックとはどのようなものなのか、普及にあたってどのような取り組みがあるのかを学びましょう。
バイオプラスチックは再生可能な資源が原料
バイオプラスチックとは、植物や微生物などの再生可能な資源を原料として作られるプラスチックです。従来の化石燃料由来のプラスチックとは異なり、環境負荷が少ないことから、持続可能な社会の構築に重要な役割を果たすものとして期待されています。
360iResearch社が2024年に発行したレポートによると、バイオプラスチックの市場規模は年々拡大傾向にあることが伺えます。2023年に141億米ドルと推計され、2024年には159億4,000万米ドルに到達、さらに2030年には337億2,000万米ドルに達すると予測されています。
バイオプラスチックの種類と特徴
バイオプラスチックは主に、原料や分解性の観点から以下の2つに分類されます。
- バイオマスプラスチック:植物由来の原料を使って作られるもの
- 生分解性プラスチック:一定の条件下で、微生物によって自然に分解されるもの
それぞれの特徴やメリットやデメリット、使用されている商品などを見てみましょう。
バイオマスプラスチック
バイオマスプラスチックは、主にトウモロコシやサトウキビの澱粉・トウゴマのひまし油・サトウキビから取り出される糖類など、植物由来の原料から作られます。バイオマスプラスチックは化石燃料を使用せずに製造できるため、二酸化炭素の排出を抑えることができます。
耐久性も高く加工がしやすい点が特長で、従来のプラスチックに近い性質を持ち、食品包装・レジ袋・衣料繊維・OA機器など、幅広い商品に利用されています。
バイオマスプラスチックには、すべてがバイオマスプラスチックの「全面的バイオマス原料プラスチック」と、原料の一部がバイオマスプラスチックの「部分的バイオマス原料プラスチック」があり、2020年7月から実施されているレジ袋の有料化ではバイオマス素材の配合率が25%以上のものは有料化の対象外であるため、レジ袋を無料で配布することが可能となっています。
一方でバイオマスプラスチックの多くは自然環境下では分解されないため、廃棄物としての管理が重要です。
参考:日本バイオプラスチック協会|バイオマスプラスチック入門
参考:経済産業省|バイオ製品の普及に向けた取り組み
生分解性プラスチック
生分解性プラスチックは、微生物によって自然環境下で分解される性質を持つプラスチックです。この特性により、プラスチック廃棄物の問題を軽減し、環境汚染防止に貢献すると期待されています。
主な用途として、ごみ袋・農業資材・食品トレイ・カトラリー(フォークやスプーン、ストロー)などが挙げられます。
一方で、生分解が進むためには特定の温度や湿度などの条件が必要です。そのため、適切に処理されない場合には分解されず、通常のプラスチックと同様に環境問題を引き起こす可能性があります。
バイオプラスチックが求められる理由とは?
バイオプラスチックへの関心が世界中で高まっている理由としては、石油資源の枯渇や環境問題の深刻化などが挙げられます。それぞれの背景を詳しく解説します。
環境問題への対応と脱プラスチックの動き
近年、海洋プラスチックごみによる生態系への影響が懸念されています。海洋ごみの80%以上はプラスチック製品であり、清掃コストや生態系への影響が問題になっています。
このような問題を受けて脱プラスチックの動きが世界中で加速し、環境負荷の低減に貢献でいるバイオプラスチックへの需要が高まりました。なお、EUでは2021年7月より一部のプラスチック製品が禁止されています。
参考:EU MAG
CO2排出削減と資源循環の推進
従来のプラスチックの原料である石油など化石燃料は、限りのある資源であり、使い続ければいずれ枯渇してしまいます。また、製造過程でCO2を排出するほか、プラスチックを焼却する際にもCO2が発生するため、地球温暖化の原因にもなります。
こうした背景から、植物などの再生可能資源を原料とし、製造や廃棄の過程でCO2排出を抑えられるバイオプラスチックへのニーズが大きくなっています。
バイオプラスチックのメリットとデメリット
バイオプラスチックの普及にあたっては課題も少なくありません。ここではバイオプラスチックに寄せられる期待と代表的なメリット、そして克服すべきデメリットについて解説します。
メリットはカーボンニュートラルへの貢献
バイオプラスチックには多くのメリットが期待されていますが、中でも社会的に重要なものの1つがカーボンニュートラルへの貢献です。
特にバイオマスプラスチックでは、廃棄・燃焼時に排出されるCO2が「ゼロ」としてカウントされます。バイオプラスチックは、その原料である植物が成長の過程で光合成によってCO2を吸収するため、廃棄・燃焼時にCO2が排出されても実質的なCO2排出量は「差し引きゼロ」とカウントされるのです。
こうした実質的なCO2排出量がゼロの状態をカーボンニュートラルといい、環境問題の解決に向けて重視される考え方となっています。
デメリットはコストや耐久性の課題
バイオプラスチックが抱えるデメリットの中でも、特に普及の足かせとなっているのが製造コストの高さです。
また、生分解性プラスチックの場合、耐久性や加工性が従来のプラスチックに劣ることもあり、特に工業用途での使用が難しいという課題もあります。
バイオマスプラスチックでも、原料となる植物を生育する過程では土地や水が必要となり、その確保をめぐって別の環境問題や社会問題が生まれる可能性もあります。
これらのデメリットや課題を克服するために研究開発が進められており、新しい技術や素材の開発に期待が寄せられています。
バイオプラスチック導入の取り組みの事例
令和4年に環境省から発行された「バイオプラスチック導入事例集」をもとに、バイオプラスチック導入に取り組む企業の事例を紹介します。
アステラス製薬:医薬品包装
アステラス製薬は、バイオマスプラスチックを用いた医薬品包装用PTPシートの実用化に、世界で初めて成功しました。
医薬品は製品の品質を長期間担保する必要があるため、非分解性のバイオマスプラスチックが採用されています。従来の化石資源由来のPTPシートに比べ、バイオマスプラスチックを用いたPTPシートは、二酸化炭素排出量が約40%低減される見込みです。
日清食品グループ:食品容器
日清食品グループは「カップヌードル」の容器にバイオマスプラスチックを採用しています。容器の81%をバイオマス化し、化石資源由来プラスチックの使用量をほぼ半減。商品ライフサイクル全体でのCO2排出量も大きく削減することに成功しています。
バイオマスプラスチックを使用するにあたり、バリア性・保存性・見た目が変わらないことにもこだわり、製造コストの上昇による販売価格への影響も最小限に留めるよう努めているとのことです。
レゴグループ:玩具
レゴグループでは、「製品により持続可能な素材を使用する」というサステイナビリティ戦略の一環として、レゴ®ブロックにバイオマスプラスチックを導入しています。
バイオマスプラスチックで作られたレゴパーツは2018年に初めて発売され、現在では約150のレゴパーツを、持続可能な方法で栽培・調達されたサトウキビを使用したバイオマスプラスチックから製造しています。
まとめ
今回は、化石資源由来のプラスチックに取って代わる次世代プラスチックとして、大きな期待が寄せられるバイオプラスチックを取り上げました。
医薬品包装から食品容器、玩具まで幅広い分野で実用化が進んでおり、持続可能な未来を築くための可能性が広がっています。
コスト面や耐久性などまだまだ課題も多いですが、私たち消費者もバイオプラスチックの特性や可能性を正しく理解し使っていくことが、普及を後押しとなることでしょう。
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