地方創生

アグリツーリズムとは?特徴やメリット、課題とともに各地の成功事例も紹介

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旅の目的地で、ただ観光や風景を楽しむだけでは物足りないと感じたことはありませんか。

現代の観光でトレンドを占めるのは、観光地での“体験”や“つながり”です。

その中で今注目されているのが、農業や地域資源を活用した観光スタイルの「アグリツーリズム」です。

ヨーロッパを発祥とし、農場体験や地元の食文化を通じて地域の魅力を深く味わえるスタイルは、単なる旅行ではない新しい価値を提供します。

地域活性化や収益の柱を増やすメリットを持ちながら、環境や文化の持続可能性にも寄与できる点が大きいからです。

本記事では、アグリツーリズムの解説とともに、その魅力や課題、日本と海外の事例についても紹介します。

アグリツーリズムとは

アグリツーリズムとは

アグリツーリズムは、「Agriculture(農業)」と「Tourism(観光)」を組み合わせた造語で、農業と観光を融合させた新しい旅行スタイルです。

農場や農村を訪れ、農業やその周辺の出来事を体験する観光を指し、近年では日本を含む世界各地で注目を集めています。

日本では、1990年代の「農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律」が制定されて始まりました。

アグリツーリズムが注目されている背景は、以下のとおりです。

  • 「コト消費」志向の高まり
  • 人々の食や農業への関心の増加
  • 農村部の活性化や新たな収入源としての活用

アグリツーリズムでは、主に田植えや収穫など農業体験や農村の日常生活、地元の食材を使った食文化体験など、自然を満喫できるのが特徴です。

アグリツーリズムは、人々に農業や農村の魅力を伝えると同時に、農村地域の活性化や新たな収入源の創出にも貢献する観光形態として注目されています。

参考:KOMERU「アグリツーリズムとは|注目される理由や事例、国内における課題を解説」

参考:minorasu「アグリツーリズムとは? 注目される理由やメリット、成功事例」

参考:TOPCON「新たな旅の形「アグリツーリズム」で持続可能な農村を実現」

ヨーロッパが発祥のアグリツーリズム

ヨーロッパが発祥のアグリツーリズム

ヨーロッパにおけるアグリツーリズムの誕生は、約100年前にさかのぼります。

このとき、ドイツやフランスなどで休暇に関する法律が制定され、労働者層も休暇を取得できるようになりました。

労働者の多くは、高級ホテルなどに宿泊するのが難しかったため、代わりとなる宿泊先が必要でした。

そのため、都市から訪れる旅行者の受け皿として、農家が宿泊施設としての役割を果たすようになったのです。

20世紀後半になると、都市部に住む人々の間で自然に触れ、現地の人と交流する休暇の過ごし方が人気を集めるようになりました。

このような歴史を経て、現在のアグリツーリズムの形態へと発展していきました。

参考:SpaceshipEarth「アグリツーリズムとは?グリーンツーリズム・エコツーリズムとの違いと日本・海外の事例を解説」

参考:rootus「イタリア、トスカーナで体験。暮らすように滞在するアグリツーリズム【現地レポート】」

アグリツーリズムと他のツーリズムとの違い

アグリツーリズムと他のツーリズムとの違い

現在はアグリツーリズムのほかに、いくつかのツーリズムも存在します。

ここでは、アグリツーリズム以外の代表的なものを紹介します。

グリーンツーリズム

グリーンツーリズムは、都市部に住む人々が農山漁村地域に滞在し、その土地の自然や文化、人々との交流を楽しむ旅行スタイルです。

単なる観光ではなく、地域の生活や産業を体験することが特徴です。

グリーンツーリズムには、ファームステイ(農家滞在)や郷土料理づくり体験、漁業体験、星空観察など、豊かな自然と伝統文化に触れてリフレッシュできる機会があります。

グリーンツーリズムは、都市と農村の交流を促進し、地域活性化と都市住民の癒やしの場の創出を同時に実現する取り組みとして注目されています。

参考:自治体・公共week「グリーンツーリズムの事例やメリットを紹介!自治体の取り組みポイントも解説」

エコツーリズム

エコツーリズムは、「Ecology(生態学)」と「Tourism(観光)」を組み合わせた造語で、自然環境や地域の文化、歴史を尊重しながら行う持続可能な旅行スタイルです。

主な目的は以下のとおりで、他のツーリズムとは意味合いが少し異なります。

  • 対象地域の自然環境や歴史文化の保全に貢献すること
  • 観光活動が環境に与える影響を最小限に抑えること
  • 地域の経済振興を図ること

エコツーリズムは、環境保全と観光振興のバランスを取りながら、持続可能な観光の実現を目指すのが目的です。

参考:NATURES「エコツーリズムに潜む表裏一体のメリット・デメリット」

アグリツーリズムのメリットとは

アグリツーリズムのメリットとは

アグリツーリズムは、提供する側にとって収入の確保などのメリットがあります。

ここでは、アグリツーリズムを提供するメリットを紹介します。

①本業以外の収入源が確保できる

アグリツーリズムの提供で、農家などは本業以外の収入源を確保できます。

アグリツーリズムを実施する人は、従来の農作物の生産・販売に加えて、以下のようなサービスの提供で収益が得られます。

  • 農家民宿の運営
  • 体験農園の提供
  • 地元食材を使用したレストランの経営
  • 農産物の直売所の開設

農業などの収入は天候や季節に左右されやすいですが、このようなサービスの提供で、年間を通じてより安定した収入を得られるでしょう。

農業収入以外の収入で農業を継続できるのもメリットです。

アグリツーリズムは、農家などにとって本業以外の収入源を確保する有効な手段となり、多角化経営と安定化に貢献します。

参考:KOMERU「アグリツーリズムとは|注目される理由や事例、国内における課題を解説」

②地域の活性化につながる

アグリツーリズムで、地域の経済が循環し活性化につながります。

体験プログラムなどの提供で、地域の雇用創出に貢献するからです。

また、観光客による地元特産品の購入で地域経済も活性化させるだけでなく、農産物や水産物の新たな販路の開拓も見込めます。

さらに、工芸や郷土料理体験を通じて伝統を維持できたり、耕作放棄地や空き家の再活用が促進されたりすることで、地域の存続・維持に貢献します。

アグリツーリズムは、地域経済や文化・環境などの多方面からも地域の活性化に貢献する可能性を秘めているスタイルです。

参考:PATCH THE WORLD「アグリツーリズムとは?農業体験や地域住民との交流を図る新しい観光スタイル」

アグリツーリズムにおける課題

アグリツーリズムにおける課題

アグリツーリズムはメリットがある一方で、まだまだ課題もあります。

アグリツーリズムは、地域活性化のために事業者が収益を上げることが目的ですが、採算を取るのが難しい現状です。

農村部などに観光客を呼ぶには設備投資や宣伝が必要なため、コストがかかります。

特に日本のアグリツーリズム市場では、農家や漁業を本業とする方たちが経営していることも要因です。

なぜなら、経営力やマーケティング力が低いため、収益があまり得られにくい状況だからです。

これらの課題を解決するためには、経営力を身につけ、適切な料金設定やコンテンツの拡大などが鍵となります。

参考:minorasu「アグリツーリズムとは? 注目される理由やメリット、成功事例」

海外のアグリツーリズムの事例

海外のアグリツーリズムの事例

ヨーロッパ発祥のアグリツーリズムですが、今では世界各地に広がっています。

ここでは、特徴的なアグリツーリズムを提供している事例を紹介します。

オーストリア フォアアールベルク州「ブレゲンツの森」

ブレゲンツの森は、オーストリア最西端のフォアアールベルク州北西部に位置する山岳・丘陵地帯です。

1991年に立ち上げられた「チーズ街道プロジェクト」は、同地域のアグリツーリズムの中心的な取り組みです。

このアグリツーリズムの主な目的は、以下のとおりです。

  • チーズ生産を中心とした関連産業の高収益化
  • 観光業と農業の連携で持続可能な産業の構築
  • 自然、文化、人的資源の保護の推進

ブレゲンツの森地域全体では、これらの目的を意識しながら、農業と観光の共生を目指した総合的なアグリ・マーケティングを展開しています。

参考:Society for Advanced Global Education「オーストリアのグリーンツーリズム調査(1)」

アメリカ フロリダ州マイアミ「ザ・ベリーファーム」

フロリダ州マイアミにあるザ・ベリーファームは、アグリツーリズムを体験できる家族経営の農場です。

農場では、以下の体験ができます。

  • ベリーの摘み取り体験
  • 持続可能な農業技術について学べる
  • 敷地内でピクニックランチを楽しみながら、さまざまな種類の植物や動物の観察

ザ・ベリーファームにはフレンドリーで知識豊富なスタッフがいるので、ベリーの摘み取り体験をしながら、農業について学べます。

ガイド付きツアーでは近隣の農場を巡り、持続可能な農業技術が学べます。

農園内には広大なひまわり畑や美しいイチゴ、干し草乗り物などのアクティビティが豊富です。

ザ・ベリーファームは、カップルや友人・家族など、幅広い世代が楽しめる農業観光地としても有名です。

参考:グレーター・マイアミ&Miami Beach「ザ ベリー ファーム」

日本のアグリツーリズムの事例

日本のアグリツーリズムの事例

日本でも、アグリツーリズムを提供する自治体が増えています。

日本のアグリツーリズムの事例を紹介します。

北海道網走市

北海道網走市は、豊かな自然資源を活かしたアグリツーリズムとして知られています。

網走市では、以下のようなアグリツーリズムを提供しています。

  • 動物と触れ合えるファーム
  • 滞在型の農業体験
  • 羊毛を使ったぬいぐるみや小物作り
  • 季節に応じたアクティビティ(さくらんぼ狩り、ジャガイモ掘り、スキーなど)

市内の大きな牧場内には「ファームイン・マニアの里」という農家民宿があり、滞在中は農家の手料理を楽しめます。

また、網走市のアグリツーリズムの特徴は、農業体験だけでなく動物との触れ合いや自然体験など、多様なメニューを組み合わせた総合的な農村観光の提供です。

都市部の人々に農村の魅力を伝え、地域の活性化にも貢献しています。

参考:KOMERU「アグリツーリズムとは|注目される理由や事例、国内における課題を解説」

参考:SpaceshipEarth「アグリツーリズムとは?グリーンツーリズム・エコツーリズムとの違いと日本・海外の事例を解説」

愛媛県内子町

愛媛県内子町(うちこちょう)は、日本のアグリツーリズムの成功事例として知られています。

内子町では、以下のようなアグリツーリズムを提供しています。

  • 多様な体験施設と宿泊施設
  • 豊富な体験アクティビティ
  • 地域の特色を活かした観光

町内全域に農家民宿や農業体験宿泊施設が点在しており、「石畳の宿」は築100年を超す古民家で、内子町在住の40~60代のお母さんたちが運営している宿泊施設です。

みかん狩りや山菜採り・こんにゃくづくり・そば打ちなど、愛媛県ならではのアクティビティが体験できます。

また、摘み草の天ぷらや水車小屋で精米した米など、地元の食材を活用した料理が楽しめます。

内子町は、交流農業を取り入れた独自の「内子ツーリズム」を推進している町として有名です。

参考:内子町公式HP「内子ツーリズム」

参考:うちこあそび「私たちについて」

参考:地方で「農」を楽しもう 里の物語「石畳の宿」

まとめ

アグリツーリズムとは?特徴やメリット、課題とともに各地の成功事例も紹介のまとめ

アグリツーリズムの魅力は、地域の自然や文化を深く味わいながら、地元の人々とのつながりを楽しめることにあります。

観光地としてだけでなく、農業体験や地域の食文化を通じてその土地の本質を感じる特別な時間を過ごせます。

そのようなあたたかい体験ができるのが、アグリツーリズムの魅力です。

ただの観光では得られない「人とのつながり」や「土地への感謝」が、心に深く刻まれるのではないでしょうか。

一度、旅の目的地を農村部などに変えて、印象深い旅を経験してみましょう。

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