【保存版】海洋汚染とは?私たちにできること7選

海洋汚染と聞いて「自分はポイ捨てをしないから関係ない」と思っていませんか。実は、日々の食器洗いや服の洗濯など、何気ない生活の中にも海を汚す原因が潜んでいます。
本記事では、海洋汚染のしくみと、私たちにできる7つの具体的なアクションを紹介します。読めば、自分の暮らしの中でできることが見つかり、今日から海を守る一歩を踏み出せるはずです。
海洋汚染とは?
海洋汚染とは、ごみや汚れた水、化学物質などが海の中に流れ込むことで海の環境が悪化する現象です。海が汚れると、海の生き物や生態系、さらには人間の健康にも悪影響を与える危険性があると懸念されています。
特に「海のごみ」と呼ばれる海洋ごみは、海洋汚染の主要な要因の一つです。環境省の調査によれば、令和4年度(2023年度)に全国で回収された漂着ごみは約5万トンにのぼりました。種類別に見ると、最も多いのはプラスチックごみで、これらのほとんどは陸上から流出したものです。たとえば、ポイ捨てや屋外に放置されたプラスチックごみは、雨や風、海水の流れによって遠くまで運ばれ、最終的に海に漂着します。
参照:政府広報オンライン|海洋プラスチック問題は海洋汚染の要因にも きれいな海と生態系を守る!「プラスチック・スマート」キャンペーン
海洋プラスチックごみがもたらす海の生き物への影響
海洋プラスチックごみは半永久的に環境中に残存するため、海洋環境や生物、生態系に与える影響は非常に深刻です。
釣り糸やロープなどが魚、ウミガメ、海鳥の首や手足に絡まったり、海の生物がエサと間違えてビニール袋などのプラスチックごみを誤飲したりなど、悲惨な事例が相次いでいます。
実際に、日本でも平成30年(2018年)の夏、神奈川県鎌倉市の浜辺に打ち上げられたシロナガスクジラの赤ちゃんの胃の中からプラスチックごみが見つかりました。専門家は「母乳しか飲んでいないクジラでさえ誤って飲み込んでしまうほど、海には多くのプラスチックが浮いている」と分析しています。
さらに、翌年の平成31年(2019年)3月には、フィリピンの海岸に打ち上げられたクジラの胃から40kgものビニール袋が出てきたというニュースもありました。このように、プラスチックごみにより海の生き物が命を落とす事例は、世界各地で報告されています。
参照:BBCニュース|死んだクジラ、胃に40キロ分のプラスチック
参照:神奈川県・由比ガ浜の海岸に打ち上げられたシロナガスクジラ赤ちゃん。胃の中からプラスチック片検出。母乳しか飲まないはずなのに、浮遊する廃プラを誤飲したか(各紙) | 一般社団法人環境金融研究機構
私たちの生活とマイクロプラスチック
家庭から出るプラスチック製品や生活排水も、海洋汚染に影響を与えています。
日本が「プラスチック大国」と呼ばれているのをご存知でしょうか。ペットボトルや食品容器などのプラスチック製品は軽くて便利である一方で、日本では毎年約800万トンもの廃棄プラスチックが排出されています。
また、各国の1人あたりのプラスチック容器包装の廃棄量を比較すると、日本はアメリカに次いで世界で2番目に多いというデータがあります。
特に「マイクロプラスチック」は、海の生き物や生態系への悪影響が心配されている要因の一つです。マイクロプラスチックとは、主に5mm以下の微細なプラスチックごみを指します。マイクロプラスチックには以下の2種類があります。
- 一次的マイクロプラスチック:最初からマイクロサイズで製造されたプラスチック。洗顔料や歯磨き粉に含まれるスクラブ剤(マイクロビーズ)、家庭用清掃製品、合成繊維の衣料品の洗濯、人工芝などが発生源とされている。
- 二次的マイクロプラスチック:日常生活で使われる大きなプラスチック製品が、自然環境の中で波や紫外線などの影響を受けてもろくなり、砕けて小さな破片になったもの。
私たちは、日々の掃除や洗濯、食器洗いなどのさまざまな場面で、知らないうちにマイクロプラスチックを排出しています。
参照:プラスチック循環利用協会|2022年廃プラスチック総排出量は823万t、有効利用率は87% 「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況(マテリアルフロー図)」を公表
参照:プラスチック循環利用協会|2023年廃プラスチック総排出量は769万t、有効利用率は89% 「プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況(マテリアルフロー図)」を公表
参照:環境省|一般向けマイクロプラチック発生抑制・流出抑制対策リーフレット
海洋汚染を防ぐために私たちにできる!7アクション
海洋汚染を防ぐために私たちにできることは、プラスチックごみを減らす、生活排水に気をつけるなどがあげられます。ここでは、具体的なアクションを7つ紹介します。
マイバッグ・マイボトルを持つ習慣を
2020年7月からレジ袋が有料化され、マイエコバッグを持ち歩くようになった方も多いのではないでしょうか。環境省によると、レジ袋の国内流通量は約50%も減少したと報告されました。
【レジ袋の国内流通量】 | |
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有料化前(2019年) | 約20万トン |
有料化後(2021年) | 約10万トン |
レジ袋をエコバッグに変える行動は一人ひとりにとっては小さいですが、国民全体で積み重ねていけば、大きな力になります。
ほかにも、外出時にマイボトルを持参すれば、ペットボトルを買わずに済みます。また、コーヒーショップなどで、飲み物を買うときにマイボトルを持っていけば、割引などの特典を受けられる場合もあるでしょう。
スターバックスでは、タンブラーを持参すると資源節約に協力したお礼として、店内利用の場合はドリンクが22円引き、お持ち帰りの場合は21円値引き(いずれも税込価格)になります。
さらに、旅行の際もマイ歯ブラシやマイヘアブラシを持参するのもおすすめです。アメニティの使用を減らすことで、プラスチックごみの削減のさらなる一歩につながります。気に入ったマイアイテムを使えば、自然と「環境を守ろう」という意識も高まっていくでしょう。
環境にやさしいプラスチックの代替品を選ぶ
紙ストローや竹製の歯ブラシ、竹素材の衣類、セルロース製スポンジなど、環境にやさしいプラスチックの代替品となる製品を選ぶことも重要な行動です。また、今すぐ何か始めたい方には、食品保存の際にラップの代わりにお皿でふたをする方法をおすすめします。
竹は生長のスピードが非常に早く、わずか数か月で立派に育つのが大きな特徴です。また、竹製品は生分解性があるため、廃棄後もプラスチックより環境負荷を軽減できると期待されています。
セルロース製スポンジは、植物由来のセルロース繊維から作られた製品です。これも生分解性があり、使用後は土に埋めることで微生物によって分解され、自然に還ります。
プラスチック代替品への切り替えは、プラスチックとの「賢い付き合い方」の一つです。
参照:セルロースから生み出されるプラスチック代替品とは?セルロースのメリット、デメリットまでご紹介
参照:林野庁|竹の性質
詰め替え製品・量り売りを利用する
詰め替え製品や量り売りを利用することは、プラスチックごみの発生を抑制し、持続可能な社会の実現に貢献します。たとえば次のような方法があります。
- 洗剤などをリピート購入するときは、ボトルよりも詰め替え用パックを選ぶ
- 自分の容器を持参して量り売りで購入する
特に量り売りの場合は、新たなプラスチックごみが発生せず、必要な分だけ買えるため、食品ロスも減らせて一石二鳥です。
最近では、プラスチックの削減を目指した商品開発やサービス提供をする企業も増えています。
- 「FaFa(ファーファ)」では、紙パック入りの洗濯洗剤を発売
- 「エコストア」では、店頭で洗濯洗剤などの量り売りを実施
- 「無印良品」では、一部の店舗で洗剤やお菓子の量り売りを開始
- フランス・パリ発のオーガニックスーパー「ビオセボン」では、ナッツやお菓子などの量り売りを実施
詰め替えや量り売りを利用することは、地球環境にも家計にもやさしい選択です。ぜひ、日々の生活に取り入れてみましょう。
参照:FaFa|ファーファ フリー&(フリーアンド) 超コンパクト液体洗剤
参照:ecostore|リフィルステーション -Refill Station-
参照:無印良品|洗剤量り売り
マイクロプラスチックを流さない洗濯習慣
合成繊維の衣料品を洗濯することは、マイクロプラスチックの発生源の一つと考えられています。洗濯の際に出る細かい繊維くずの一部は下水処理で完全に取り除けず、マイクロプラスチックとしてそのまま川や海へ流出してしまうためです。
この問題を防ぐためには、次のような工夫が効果的です。
- より細かい網目(0.05mm)の洗濯ネットを使用する
- 洗濯機のフィルターをこまめに掃除する
- 生分解性繊維など、環境負荷の少ない素材の服を選ぶ
このように、日常生活の中でのちょっとした工夫が、海洋汚染を防ぐことにつながります。
ごみの分別とリサイクルを徹底する
ごみの分別とリサイクルを徹底することは、持続可能な社会の実現に不可欠な行動です。特に「3R(スリーアール)」の中でも、リサイクルの重要性が強調されています。
3Rとは、次の3つの取り組みを指します。
- ごみの発生抑制(リデュース:Reduce):ごみ自体の量を減らすこと
- 再使用(リユース:Reuse):使い終わったものを繰り返し使用すること
- 再生利用(リサイクル:Recycle):使い終わったものを資源として再び利用すること
プラスチックは資源としてリサイクルできるため、正しく分別することが大切です。たとえば、ペットボトルの場合はキャップとラベルを外し、中身をすすいでから「資源ごみ」として出しましょう。こうすることで、ペットボトルは新しいペットボトルや衣類などに生まれ変わります。また、ラベルやキャップも自治体のルールに従って分別すれば、再利用されるのが一般的です。
正しく分別することでごみは資源に変わり、海洋汚染の防止にもつながります。
参照:リデュース・リユース・リサイクル推進協議会|3Rについて
生活排水を汚さないキッチン習慣|油・洗剤の工夫
使い終わった油や洗剤をそのまま流さないことは、川や海の水を守るのに効果的です。
排水口から流れた油や洗剤は、下水処理場ですべてをきれいにできるわけではなく、一部はそのまま川や海へ流れてしまいます。
たとえば、マヨネーズ大さじ1杯分(約15g)を排水口に流すと、その汚れを魚が住める水質に戻すには、お風呂約13杯分(300リットル×13=約3,900リットル)の水が必要です。また、天ぷら油20mlを流した場合は、お風呂約20杯分(300リットル×20=約6,000リットル)の水が必要になります。何気なく流している油や洗剤が、実は大切な川や海を汚しているのです。
こうした汚れを防ぐには、次のような工夫が大切です。
- フライパンやお皿を洗う前に、キッチンペーパーなどで油をふき取る
- 残った油は再利用したり、新聞紙に吸わせて捨てたりなど、なるべく排出口に流さないようにする
- 米のとぎ汁はすぐに流すのではなく、庭の植物への水やりに活用する
キッチンでのちょっとした工夫が、海の生き物たちを守る一歩になります。
参照:環境省|生活排水読本
通勤・通学・おでかけのついでに!ごみ拾いイベント参加
海洋プラスチックごみの多くは、陸から流れてきたものです。そのため、通勤や通学、おでかけのついでにごみ拾いに参加することで、海へ流れ込むごみを減らすことに貢献できます。ごみ拾いは少しハードルが高いと感じるかもしれませんが、イベントやアプリを賢く活用すれば、楽しく続けられます。
「SNS ピリカ」は、「ごみ拾いを楽しく、続けやすく!」を実現するために開発されました。このアプリでは、ごみ拾いの記録や発信ができるほか、ユーザー同士で「ありがとう」を送り合うこともできます。現在、世界130以上の国と地域で、累計4億個以上のごみが拾われているそうです。
毎日の移動のついでに少し行動するだけでも、未来の海を守る力になります。
参照:SNSピリカ
なぜ今?海の悲しい未来予測
おいしい魚が食べられたり、海水浴が楽しめたりするのだから、「何もしなくても大丈夫」と思う方もいるかもしれません。しかし、今のままプラスチックを使い続けて捨てていくと、2050年には海の中のプラスチックごみの量が魚の量を上回ると言われています。
海洋汚染は早急に解決すべき大きな問題です。未来の海を「たくさんの魚が泳ぐきれいな海」のまま守っていくためには、今、私たち一人ひとりがごみを減らす行動を起こすことが求められています。
【まとめ】私たちの“意識の変化”が海を救う
未来の海を守るために、私たちにできることを紹介しました。海洋汚染を防ぐ大切なポイントは次のとおりです。
- 海のごみの多くは、陸から流れ出ているものである
- マイボトルの使用や代替品でプラスチックごみを大幅に減らせる
- 洗剤・油・マイクロプラスチックの排出は、日々の生活習慣の見直しで防げる
- ごみの分別とリサイクルは、資源の再利用と海洋汚染防止に直結する
- ごみ拾いなどの地域活動は、小さな一歩で社会を動かす大きな力になる
海を守るために特別なことをする必要はありません。少しの意識と工夫で、未来の海を変える力になります。今日からできることを、ぜひ始めてみてください。
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