SDGs2「飢餓をゼロに」|世界と日本の現状・取り組み・私たちにできることを解説

「SDGs2」は、2030年までに世界中の飢餓と栄養不良を根絶することを目指す国際的な目標です。現在も、世界の人口の約9%が慢性的な飢餓状態にあり、栄養不足や食の不平等といった問題が深刻化しています。
本記事では、「SDGs2」の 取り組みとして注目されている国際機関や企業の活動事例を交えながら、飢餓の現状や原因をわかりやすく解説します。さらに、私たちが日常生活でできる行動についても紹介しますので、ぜひ取り組んでみてください。
誰もが無関係ではいられない「食」の課題に向き合い、持続可能な未来に向けた第一歩をともに踏み出しましょう。
SDGs目標2「飢餓をゼロに」について
SDGs目標2「飢餓をゼロに」は、世界中からあらゆる飢餓や栄養不良を根絶し、すべての人が安全で栄養のある食料を十分に得られるようにする取り組みです。2030年までの達成を目指すべく、国際的な目標として掲げられています。
この目標の主なポイントは以下の3点です。
- 飢餓の撲滅:貧困層や子ども、社会的弱者を含め、一年を通じて食料を十分に確保できる世界を実現する
- 栄養状態の改善:5歳未満の子どもの発育遅れや栄養不足解消に加え、妊婦や高齢者まであらゆる年代の栄養状態を改善する
- 持続可能な農業の推進:農業の生産性を高めつつ、気候変動や自然災害にも強く、環境に配慮した持続可能な食料生産システムを構築する
SDGs目標2は「飢餓をなくす」だけでなく、「健康を維持できる栄養状態の改善」や「環境と調和した農業」「食料システムの構築」など、幅広い分野での改善を目指しています。
参考:World Vision「SDGs目標2「飢餓をゼロに」|現状と取り組み、私たちにできること」
現代における飢餓の現状と原因
現代では、多くの食料品が生産・販売されているにもかかわらず、飢餓で苦しんでいる人々が存在しています。これはほかの国々の問題だけでなく、日本も例外ではありません。
たしかに、日本では「絶対的な飢餓」こそ少ないものの、「相対的貧困」により、十分な食事がとれない世帯があるのが現状です。
ここでは、世界と日本の飢餓の現状と原因を紹介します。
世界の現状と原因
現在、世界では約7億3,300万人(約11人に1人)が飢餓に直面しています。特にアフリカでは、5人に1人が飢餓状態にあるとされており、状況は非常に深刻です。
また、飢餓人口は近年増え続けており、依然として高い水準が続いています。2019年以降増加したままで、2023年時点でも減少の兆しは見られませんでした。
さらに、2024年には53ヶ国で2億9,500万人以上が深刻な飢餓に陥っており、2023年と比べて1,370万人も増加しています。
以下が地域別の状況です。
地域 | 飢餓人口(2023年推定) | 飢餓率 |
---|---|---|
アジア | 3億8,450万人 | 8.1% |
アフリカ | 2億9,840万人 | 20.4% |
ラテンアメリカ・カリブ | 4,100万人 | 6.2% |
オセアニア | 330万人 | 7.3% |
主な原因は、紛争や気候変動による自然災害、経済格差、そして食料の不平等な分配などです。そのほかにCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行、物価高騰なども悪化の要因となっています。
参考:PR TIMES「飢餓人口、依然3年連続高止まり: 国連報告書」
参考:国際連合食糧農業機関(FAO)駐日連絡事務所「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)2024年報告」
参考:unicef「食料危機に関するグローバル報告書 急性食料不安が6年連続で増加『飢きん』に直面している人は過去最多」
日本の現状と原因
日本は社会保障や流通インフラが発達しているため、開発途上国で見られるような「絶対的飢餓」による死亡や、極端な栄養不足は非常に稀です。
一方で、「収入の低さ」や「栄養バランスの乱れ」「食事回数や量の少なさ」など、表面的にはわかりにくい飢餓が広がっています。
以下は、日本の現状を示しています。
指標 | 数値・現状(直近) |
---|---|
相対的貧困率 | 約15.7%(約7人に1人) |
子どもの相対的貧困率 | 約13.9%(子どもの人口の約7人に1人) |
相対的貧困率とは、ある国や地域の生活水準と比べて、経済的に貧しい状態にある人の割合を示す指標です。特に、ひとり親家庭や生活困窮者、高齢者でこの割合が高くなっています。中でもひとり親家庭の相対的貧困率は50.8%と顕著です。また、日本での子どもの相対的貧困率は、先進国の中でも高い水準にあるとされています。
参考:ロスゼロ「日本にも飢餓は存在する?飢餓人口とその背景」
参考:World Vision「SDGs目標2「飢餓をゼロに」|現状と取り組み、私たちにできること」
参考:プラン・インターナショナル「相対的貧困とは?貧困の種類や世界・日本の貧困率、起こりうる問題」
SDGs目標2「飢餓をゼロに」が目指すゴールとは
SDGs目標2「飢餓をゼロに」が目指すゴールは、2030年までに世界中の飢餓と栄養不足を根絶し、すべての人々が安全で栄養のある食料を十分に得られるようにすることです。特に貧困層や幼児を含む弱い立場の人々を対象にしています。
また、この目標には食料を確保するために、持続可能な農業の推進も含まれています。
目標番号 | 内容 |
---|---|
2.1 | 2030年までに飢餓を撲滅し、すべての人々が安全で栄養のある食料を一年中十分に確保できるようにする。 |
2.2 | 5歳未満の子どもの成長阻害や栄養不良を2030年までに解消し、妊婦や授乳婦、高齢者の栄養ニーズにも対応する。 |
2.3 | 小規模農家などの生産者の農業生産性と所得を倍増させる。 |
2.4 | 持続可能でレジリエントな農業を推進し、気候変動や災害に強い食料生産システムを確立する。 |
2.5 | 種子や遺伝的多様性を保護し、これらの資源の公正な利用を促進する。 |
2.a | 農村インフラや技術研究の強化によって開発途上国の農業生産力向上を支援する。 |
2.b | 世界の農産物市場の不公平な貿易制限や補助金の撤廃を目指す。 |
2.c | 食料価格の極端な変動を抑制し、市場の安定を図る。 |
これらの取り組みを通じて、社会的かつ経済的な発展にもつなげることを目指しています。
参考:農林水産省「SDGs(持続可能な開発目標)17の目標と169のターゲット」
世界や日本での取り組み事例
SDGs目標2の達成に向けて、国際機関やさまざまな団体、企業などが取り組みを始めています。ここでは、世界や日本で行われている具体的な取り組み事例を紹介します。
国連世界食糧計画(WFP)
WFPは、飢餓のない世界を目指して活動する国連の食料支援機関です。
主な活動内容は以下のとおりです。
- 緊急時の食料支援
- 栄養改善と社会的弱者の支援
- 小規模農家の支援
紛争や自然災害が発生した際、WFPは現場にいち早く駆けつけ、食料を届けています。また、必要に応じて現金給付やチケットを配布し、被災者自らが好みの食料を選べるよう配慮しています。
5歳未満の子ども、妊婦・授乳婦、高齢者など、栄養不足のリスクが高い社会的弱者に対して、栄養のある食品や補助食を提供。学校給食プログラムの推進などを通じて、子どもたちの健康も支えています。
さらに、WFPは、小規模農家や牧畜民の生産性向上のために農業研修や技術支援も実施。加えて、灌漑(かんがい)設備の整備や土壌の改善、気候変動に対応した栽培技術の普及も推し進めています。
参考:国際連合広報センター「WFP 国連世界食糧計画 日本事務所」
ユニリーバ
ユニリーバは、ロンドンに本社がある世界最大級の消費財メーカーです。世界190ヶ国以上で日用品などを販売しているグローバル企業として知られています。
主な活動内容は以下のとおりです。
- サステナブルな栄養製品の推進
- 栄養補助食品の提供
- 食品ロス削減
ユニリーバは、「おいしく、楽しく、よりよい未来のための力にする」というビジョンを持ち、世界的な栄養ガイドラインで最高の栄養基準を満たす製品の割合を増やしてきました。2018年末までに、その割合は2倍の約48%にまで高まりました。
また、クノールブランドを中心にWFPと連携し、2022年までに五大微量栄養素(※)のうち少なくとも1つを含む栄養補助食を、2000億食以上提供する取り組みも進めています。
さらに、2025年までに食品廃棄物を半減させることを約束し、その実現に向けて活動を強化しています。
※五大微量栄養素:健康維持に必要なビタミンとミネラルなどの栄養素を指す。
TABLE FOR TWO International
TABLE FOR TWO Internationalは、2007年10月に設立された日本のNPOです。Table for Twoとは「二人分の食卓」を意味しています。このTable for Twoを通じて、地理的にも社会的にも離れた人々が互いの食を分かち合う仕組みを作ることで、飢餓解消と健康支援の両立を図っています。
このプログラムは、先進国で増えている肥満や生活習慣病の問題解決を図りつつ、開発途上国の子どもたちの飢餓・栄養不良解消にも貢献するものです。具体的には、先進国でカロリーを抑えた食事の提供とともに、その食事1回につき約20円を開発途上国の学校給食に寄付する活動を行っています。
参考:TABLE FOR TWO International「table for twoとは」
参考:SDGsSCRUM「『飢餓』と『肥満』を同時に解消! 『1食を分かち合う』TABLE FOR TWOプログラムとは」
カルビー
カルビーは、国内での馬鈴しょ(じゃがいも)の調達割合を高めることを目標に掲げ、日本の農業に貢献している企業です。自社での栽培ノウハウを活かし、新品種の開発や農作業支援を進めることで、生産性の向上に取り組んでいます。馬鈴しょの新たな利用方法を広げることで需要の拡大を図り、国産農業の持続と活性化も支援しています。
また、健康的なくらしへの貢献として、食塩無添加や減塩商品、たんぱく質の多い商品の拡大を目指すKPI(重要業績評価指標)を設定。これらの取り組みの実績は、ホームページ上でも公開しています。
関連記事:人気スナック「Jagabee」と「ムーミン」が「Green Project」でコラボレーション。カルビー流の楽しいサステナビリティを取材!
参考:カルビー「人々の健やかなくらしと多様なライフスタイルへの貢献」
SDGs目標2「飢餓をゼロに」達成のために私たちができること
国際機関や団体・企業だけでなく、私たち一人ひとりにもSDGs目標2「飢餓をゼロに」を達成するためにできることがあります。
ここでは、手軽に取り組めるものをいくつか紹介しますので、ぜひ実践してみてください。
取り組み例 | 方法 |
---|---|
食品ロスを減らす | ・買い物の前に冷蔵庫の中身を確認し、同じ商品の購入や廃棄を防止する ・消費期限が近い商品を選ぶ |
地産地消を意識する | ・食品自給率向上のため、地元で生産された野菜の購入や直売所を利用する |
食料支援活動や地域ボランティアに参加する | ・フードバンクや子ども食堂への食材寄付や調理、配膳ボランティアなど、地域での支援活動に参加する |
身近な行動の積み重ねが、やがて世界規模の飢餓解決につながると考えられます。まずは、自分にできることから少しずつ始めてみましょう。
参考:SDGs MAGAZINE「【解説】SDGs目標2「飢餓をゼロに」とは?解決すべき課題や現状」
参考:サステナブルな社会「貧困を解決!SDGs目標3『すべての人に健康と福祉を』」
まとめ
SDGs目標2「飢餓をゼロに」は、世界中のすべての人々が安全で栄養のある食事を安定して得られる社会の実現を目指すものです。
飢餓の背景には、紛争や気候変動、経済格差といった複雑な要因が絡み合っており、国際的な支援や企業の取り組みが不可欠です。しかし、私たち一人ひとりにもできることがあります。食品ロス削減や地産地消、フードバンクへの協力といった行動も、SDGs2の達成に大きく貢献します。
今こそ、身近なことから始めて、誰一人取り残さない世界の実現をともに目指しましょう。
『GREEN NOTE(グリーンノート)』は環境・社会課題をわかりやすく伝え、もっと身近に、そしてアクションに繋げていくメディアです。SDGs・サステナブル・ESG・エシカルなどについての情報や私たちにできるアクションを発信していきます!