SDGs3とは?世界や日本での現状と取り組み、私たちにできることを紹介

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」は、すべての人が健康的に暮らせる社会の実現を目指す目標です。
世界中では多くの課題があり、医療サービスの充実、感染症の予防、心の健康支援などのほか、日本でも高齢化やメンタルヘルスの問題が深刻化しています。
本記事では、SDGs3の内容や世界と日本の現状についてわかりやすく解説します。また、私たち一人ひとりが日常生活の中で実践できる行動を通じて、誰もが安心して暮らせる未来を一緒に考えましょう。
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」について
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」は、あらゆる世代におけるすべての人々に健康的な生活を確保し、福祉が向上することを目的としています。
主なポイントは、以下のとおりです。
- 妊婦や新生児の死亡率減少や、5歳未満の子どもの予防可能な死の根絶
- 感染症(エイズ、結核、マラリアなど)や非感染性疾患(生活習慣病など)、精神疾患の予防と治療
- タバコの規制や薬物乱用の防止、条約を強化
- 有害物質や環境汚染による健康被害の減少や、交通事故による死傷者の大幅な削減
- 家族計画や性と生殖に関する教育、保健サービスの提供
- 医療サービスや必須医薬品・ワクチンへの支援
- ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(※)の達成
- 開発途上国における保健医療人材の採用・育成・定着の拡大
これらを通じて、すべての人が差別されることなく、最高水準の健康と適切な保健医療サービスを受けられる社会の実現が目標です。
※ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ:すべての人が適切な健康増進・予防・治療・機能回復に関するサービスを支払い可能な費用で受けられること
参考: SDGSジャパン「目標3」
参考:JICA「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」における現状
世界には、健康や福祉の観点でさまざまな問題が存在しています。日本ではあたりまえとされていることも、開発途上国では未整備であったり、深刻な問題となっていたりします。また、日本国内でも課題がまったくないとはいえません。
ここでは、世界と日本がそれぞれ直面している課題を解説します。
世界の現状
世界では、今なお救えるはずの生命が救われていない状況が続いています。貧困や地理的要因で十分な医療サービスやワクチン、必須医薬品が受けられない人々が多くいます。全人口の2人に1人が医療サービスを受けられず、年間約150万人の子どもがワクチンを接種できないまま命を落としているのが実情です。
また、医療環境も未整備で、エイズ・結核・マラリアなどの感染症が蔓延し、終息していない国々もあります。中でもアフリカはマラリアによる感染・死亡率が96%を占めており、ワクチンの普及と接種が急務です。
さらに、これらの課題を解決するための医師や看護師・保健人材も不足しています。日本では医師1人が抱える住民は414人ですが、アフリカのマラウイでは約6万人です。
一方、先進国であっても、がんや心臓病、糖尿病などの非感染性疾患による死亡、うつ病や薬物依存などの精神疾患が増加しています。これらの予防と治療体制の強化も求められています。
参考:ethicame「SDGs3『すべての人に健康と福祉を』とは?世界と日本の現状や取り組み事例、私たちにできること」
参考:SDGs media「SDGs目標3 すべての人に健康と福祉を|世界と日本の課題とは」
参考:green growers「SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」世界の現状と対策」
参考:EARTH NOTE「SDGsの目標3とは?人々の健康と福祉を実現するために」
日本の現状
上述のとおり、日本では住民1人あたりの医師の数が多く、医療が整備されてワクチンの普及や接種も行われていますが、課題がないわけではありません。
2025年には、人口の30%以上が65歳を超えるとされており、医療や介護の社会保障費が急増する見込みです。そんな中、働く世代の減少による社会保障制度の維持が大きな課題となっています。
日本は世界一の長寿国であり、2024年のデータによると女性の平均寿命は87.13歳、男性の平均寿命は81.09歳です。女性にいたっては、40年連続で世界第1位となっています。
そのため認知症患者も多く、2025年には65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になると推定されています。この数は今後も増加が予想され、2050年には約1,000万人に達するともいわれているほどです。医療・介護費用の増大や介護人材の不足、家族の負担増加など多方面での対応が課題です。
また、世界一の長寿国である反面、日本はG7の中で最も自殺率が高く、特にコロナ禍以降は女性や若者の自殺が増加しています。心の健康を支える体制の強化も求められています。
参考:green growers「SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」世界の現状と対策」
参考:JOINT介護ニュース「日本人の平均寿命、女性が40年連続で世界1位 男性は6位に 厚労省が生命表を公表」
参考:東京メディカルクリニック「認知症コラム Vol.0『認知症2025年問題とは』」
世界と日本での取り組み事例
ここまで、世界と日本の現状について見てきました。SDGs目標3達成のために、さまざまな団体や企業が活動を始めています。以下では、世界や日本での具体的な取り組み事例を紹介します。
ビル&メリンダ・ゲイツ財団
ビル&メリンダ・ゲイツ財団は、2000年にマイクロソフト創業者のビル・ゲイツと妻メリンダによって設立された世界最大の慈善基金団体です。
主に、以下の取り組みを行っています。
- マラリア・結核・ポリオなど感染症の撲滅に向けたプロジェクト支援
- ワクチン開発の研究や普及活動の推進
- 医療インフラの整備を支援
これらの取り組みによって、多くの地域で感染症の拡大が抑えられ、生存率もアップしています。
また、ビル・ゲイツは、2022年に200億ドル(約2兆2800億円)を一度に寄付することを表明しました。この金額は史上最高額の寄付金として話題になりました。
参考:STUDIO PRO ONE「SDGs 3 すべての人に健康と福祉を 医療・介護業界の取り組み事例」
参考:Forbes JAPAN「ビル・ゲイツ、財団に2.2兆円寄付『長者番付からは消えるつもり』」
グラクソ・スミスクライン
グラクソ・スミスクラインは、ロンドンに本社を置く世界有数のグローバル製薬企業です。疫病の予防や治療を目的とした医療用医薬品、ワクチン、一般医療品の研究開発・製造・販売を行っています。
主な取り組みとしては、以下の2点が挙げられます。
- 感染症予防と治療の促進
- 医薬品やワクチン接種へのアクセス拡大
グラクソ・スミスクラインは、感染症の予防と治療に重点を置き、特に低所得国における重症化リスクが高い病気の対策にも積極的に取り組んでいます。
また、世界中のより多くの人々がグラクソ・スミスクラインの治療薬やワクチンを利用できるようアクセス向上にも努めています。
さまざまな患者ニーズに応えるため、優秀な人材の確保と育成にも力を入れ、多様な研究を行うなど、倫理的な行動を重視する企業姿勢も特徴です。
ヤクルト
ヤクルトは、世界40カ国以上で「ヤクルト」ブランドの乳製品を製造・販売し、毎日約4,000万本が世界中で愛飲されています。今では、90年以上の歴史をもつ国民的健康飲料にまで成長しました。
創始者である代田 稔氏が提唱した以下の精神(代田イズム)をもとに、取り組みを行っています。
- 予防医学の提唱
- 健腸長寿
- 誰もが手に入れられる価格で
代田氏は、衛生状態が悪かった戦前の日本で「感染症で命を落とす人をなくしたい」という思いから、病気を未然に防ぐための研究を始めました。病気にかかってから治療するのではなく、病気にかからない身体をつくることを目指したのです。
彼は、自ら培養に成功した「乳酸菌 シロタ株」を使用し、腸を丈夫にして健康で長生きできる社会を実現したいとの思いがありました。
さらに、健康は誰においても平等であるべきという信念から、「1人でも多くの人に、手軽で安価に乳酸菌を届けたい」と考え、飲みやすく手に取りやすい乳酸菌飲料としてヤクルトを誕生させたのです。
現在もヤクルトは、この代田イズムの考えに基づき、活動の幅を広げています。2018年には、ジャパンSDGsアワードで特別賞である「SDGsパートナーシップ賞」を受賞し、社会的にも高く評価されています。
参考:ヤクルト東海「私たちのSDGs宣言 みんなの東海 Action for SDGs」
ミズノ
ミズノは、SDGs目標3の達成に向けて、主にスポーツを通じた健康増進や福祉の推進に積極的に取り組んでいます。
主に、以下の取り組みを行っています。
- 健康的な身体づくりの促進
- 子どもの運動発達支援「ミズノヘキサスロン」
近年、運動不足や体力低下が社会課題となる中、子どもや社会全体に対して運動の楽しさを伝えるプログラムを提供し、健康的な生活習慣づくりを支援しています。オンラインで参加できる運動遊びプログラム「ミズノ流忍者学校」も開始し、親子で気軽に参加できる環境を整えています。
また、ベトナムの初等義務教育において「ミズノヘキサスロン」を導入しました。このプログラムを通じて、子どもたちは楽しみながら36の基本動作を身につけることができます。ミズノは、子どもの健康増進と発達促進に貢献し、SDGs目標3の達成に寄与しています。
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」達成のために私たちができること
SDGs目標3を達成するためには、慈善団体や企業だけでなく、私たち一人ひとりにもできることがあります。
手軽に始められるものをいくつか紹介しますので、ぜひ日常生活に取り入れてみてください。
取り組み例 | 方法 |
---|---|
募金や寄付をする | ・店頭や募金箱に募金する ・インターネット募金を活用する ・フードバンクに食品を寄付する |
ボランティア活動に参加する | ・地域の清掃活動に参加する ・子ども食堂を支援する ・災害ボランティアへ参加する |
感染予防を心がける | ・手洗い習慣をつける ・咳エチケットを守る ・ワクチンを接種する ・食品の衛生管理を行う |
現代では、社会的弱者だけでなく、災害の増加によって支援を待つ人々も増えています。また、1年を通して感染症に罹患する人も多く、感染予防対策は必須です。
まずは、身近なことから始めてみましょう。
参考:DONATE MAGAZINE「SDGs目標達成に寄付で貢献するには?簡単な方法や寄付以外の方法も解説」
参考:日本財団ボラセン「SDGsの達成につながるボランティアとは。関連する活動を紹介」
参考:ベネッセ「正しい知識を得ることが感染症対策の第一歩!予防には【SDGs】でも推奨されている衛生管理が大切」
参考:なるほど SDGs「感染症の分類って?感染症の歴史や対策も理解しておこう!」
できることから始めてみよう
医療のひっ迫や福祉分野での人手不足、メンタルヘルスの問題など、私たちのまわりには「健康と福祉」に関する課題が数多く存在しています。
SDGs目標3の達成には、国や企業の取り組みに加えて、私たち一人ひとりの行動が欠かせません。例えば、募金やボランティア、感染症対策など、日常の小さな行動が大きな変化につながることもあります。医療や福祉の問題は、決して他人事ではなく私たち自身にとっても身近な課題です。
未来のために、まずは自分にできることから始めて、SDGs目標3の達成に貢献してみませんか。
『GREEN NOTE(グリーンノート)』は環境・社会課題をわかりやすく伝え、もっと身近に、そしてアクションに繋げていくメディアです。SDGs・サステナブル・ESG・エシカルなどについての情報や私たちにできるアクションを発信していきます!