ダイバーシティ

カームダウンスペースとは?効果や事例、手作りのコツを解説!

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カームダウンスペースと聞いて「特別な設備が必要なのでは?」と思う方もいるのではないでしょうか。実は、押し入れやダンボールなど、ちょっとした工夫で自宅にも簡単に設置できます。

本記事では、カームダウンスペースの効果、空港や万博などの事例、簡単な作り方をまとめました。。読めば、今日から子どもが安心して気持ちを整えられる空間づくりが始められます。

まず知ってほしい「カームダウンスペース」とは

まず知ってほしい「カームダウンスペース」とは

カームダウンスペースは、感情を落ち着けるための特別な避難所や休憩所です。外部からの音や光、視線を遮断し、利用者が安心して心を落ち着けられる環境を提供します。

「一般社団法人日本発達障害ネットワーク」は、何らかの理由でパニックが生じた際には「特に声を掛けず、静かなところで、一人または二人で黙って15~20分ほどすると落ち着くことが分かっている」と言及しています。

カームダウンスペースは、感覚が過敏な方が安心して暮らすために欠かせない社会的配慮です。

参照:エコモ財団|カームダウン・クールダウン Calm down,cool down について

カームダウンスペースの必要性と効果

カームダウンスペースの必要性と効果

カームダウンスペースは、空港や役所などの公共施設に設けられることが多く、利用者が必要に応じて自由にアクセスできるようにデザインされています。

外部の刺激を遮り一人になれる空間は、感情が高ぶったり不安を感じたりした際に、自分の感情をコントロールし、落ち着きを取り戻す効果が期待できます。

特に感覚過敏を持つ人々は、周囲の刺激が大きなストレス源となるため、感情を整理する空間があることは外出時の安心材料になるでしょう。

参照:感覚過敏研究所

なぜ今「カームダウンスペース」が注目されているのか

なぜ今「カームダウンスペース」が注目されているのか

国内であまり認知されていなかったカームダウンスペースは、東京オリンピック・パラリンピックの開催と「障害者差別解消法」の改正、この二つの出来事をきっかけに関心が高まるようになりました。それぞれの社会的背景を解説します。

東京オリンピック・パラリンピックの開催

日本政府は東京オリンピック・パラリンピックの開催だけではなく、開幕以降も、ユニバーサルデザイン化と心のバリアフリーを日本全国に広げることを目的に、2017年2月「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を閣僚会議において決定しました。

行動計画の中には、落ち着いたりクールダウンできたりする場所としてカームダウンスペースの設置も言及しています。これを受け、成田空港をはじめ、羽田空港で、カームダウンスペースが設置されました。東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場である新国立競技場にもカームダウンスペースが設けられています。

「障害者差別解消法」の改正

2024年4月1日に「障害者差別解消法」が改正され、努力義務であった事業者による合理的配慮の提供が義務化されるようになりました。これを機に、感覚過敏を持つ人々への手助けとなるカームダウンスペースを設置する事例が増えています。

このようにカームダウンスペースの設置を通して、社会的なバリアを軽減する取り組みが進められています。

参照:産経新聞|空港から広がる「カームダウン・クールダウンスペース」 大阪万博は国際基準の試金石に

参照:感覚過敏研究所オンラインストア|カームダウンスペース

【国内】カームダウンスペースの導入事例

【国内】カームダウンスペースの導入事例

国内にはどのようなカームダウンスペースが設置されているのでしょう。ここでは、空港や学校、万博での最新事例を紹介します。

成田空港

成田空港では、誰もが積極的に空の旅を楽しめることを目的に、第1〜3ターミナルに全7カ所のカームダウンスペースが設置されています。

場所:第1ターミナル 国内線2階(出発手続き後エリア)

カームダウンスペースの導入事例 - 第1ターミナル 国内線2階(出発手続き後エリア)

(画像引用:カームダウン・クールダウン | 成田国際空港

場所:第2ターミナル 国内線2階(出発手続き後エリア)

カームダウンスペースの導入事例 - 第2ターミナル 国内線2階(出発手続き後エリア)

(画像引用:カームダウン・クールダウン | 成田国際空港

場所:第3ターミナル 本館2階(出発手続き前エリア)

カームダウンスペースの導入事例 - 場所:第3ターミナル 本館2階(出発手続き前エリア)

(画像引用:カームダウン・クールダウン | 成田国際空港

参照:成田空港|カームダウン・クールダウン

川崎市役所

2023年11月に、神奈川県川崎市は、知的障害、精神障害、発達障害がある方などが安心して外出できる環境を実現するために、本庁舎でカームダウンスペースの運用を開始しました。

場所:2階

川崎市役所のカームダウンスペース。

(画像引用:かわさきパラムーブメント : 本庁舎にカームダウン・クールダウンスペースを設置しました!

設備は、次のような仕様です。

  • 遮音性に優れたパネルを採用
  • 入口に開閉式のロールスクリーンを設置
  • パネルには、ピクトグラムを掲示
  • スペース内には椅子が1脚

市内の他の施設では、2020年10月にとどろきアリーナ、2021年4月にカルッツかわさきに設置しています。

場所:とどろきアリーナ

とどろきアリーナのカームダウンスペース。

(画像引用:かわさきパラムーブメント|本庁舎にカームダウン・クールダウンスペースを設置しました!

東京理科大学

東京理科大学では、感覚過敏等の理由から、相談室で気分を落ち着かせたいと学生相談室に来室する学生がいることを受け、カームダウンスペースを導入しました。学生の学ぶ機会の障害となるさまざまなバリアを取り除くために、今後は他のキャンパスでの導入も検討しているそうです。

場所:神楽坂地区学生相談室

東京理科大学神楽坂地区学生相談室のカームダウンスペース。

(画像引用:カームダウンスペース|キャンパスライフサポート|TUS LIFE|東京理科大学

EXPO2025

大阪万博では、場内に8カ所のカームダウンスペースを設置しています。利用時間は9:00~21:30で、利用者および同伴者が自由に利用できます。

大阪万博のカームダウンスペースのマップ。

(画像引用:各種施設について | EXPO 2025 大阪・関西万博公式Webサイト

2025年の大阪万博を機に、国内のカームダウンスペースの拡大がさらに期待されるでしょう。

参照:EXPO2025

【海外】カームダウンスペースの導入事例

【海外】カームダウンスペースの導入事例

世界全体でも、カームダウンスペースは、徐々に設置が進んでおり、日本同様に公共施設や空港での導入が目立っています。ここでは、海外の設置事例もまとめました。

イギリスのサッカースタジアム

イギリスでは、音や光、周囲の視線など、外部の刺激が苦手な子どもたちのために、センサリールーム(Sensory room)が設置されています。センサリールームとは、直訳すると「感覚室」で、カームダウンスペースと同様の役割を果たしています。

イギリスのプレミアリーグでは、2020年6月時点で、20チーム中12チームがセンサリールームをスタジアムに設置しました。大きな特徴は、防音ガラス越しにサッカー観戦を楽しめる点です。誰もが観戦を楽しめるように配慮されています。

イギリスのサッカースタジアムのセンサリールーム。

(画像引用:カームダウン・クールダウン Calm down,cool down について

アメリカのポートランド国際空港

アメリカのポートランド国際空港では、倉庫として使われていたスペースを活用して、センサリールームを設置しました。導入に向けて、オレゴン州自閉症協会をはじめ、ボランティア団体や企業が協力しています。

センサリールームは24時間365日利用可能で、床にはビーズクッションやソファなど安らげるスペース、壁には木のおもちゃなど、快適に過ごせる工夫が施されています。

アメリカのポートランド国際空港のセンサリールーム。

(画像引用:「ポートランド国際空港(PDX)」のセンサリールーム【ケーススタディ】 – 感覚過敏研究所 | 感覚過敏研究所

参照:FLYPDX

自宅用カームダウンスペースの作り方

自宅用カームダウンスペースの作り方

自宅用のカームダウンスペースは、家庭にあるものや100円ショップの身近なアイテムで、手軽に作れます。高価な設備や広いスペースは必要ありません。重要視すべき点は「子どもが安心できる小さな場所を用意すること」です。

クッションやブランケット、椅子などを用意し、リラックスできる雰囲気を作りましょう。

カームダウンスペースは、子どもが感情的になったり不安になったりしたときに、自分の気持ちを落ち着けつかせるための練習の場でもあります。「ここに行けば安心できる」と感じられる経験を積み重ねることで、感情のコントロール力も少しずつ育まれます。

家にある静かな場所を活用する

周囲の音や光の刺激が少ない環境を選びましょう。狭くても問題ありません。
部屋の隅やカーテンの裏、押し入れなど、隔離された空間がカームダウンスペースに適しています。

テントで代用

カームダウンスペースは、室内用テントで代用できます。IKEAフライングタイガーなどで、購入可能です。

IKEA「子ども用テント」

シンプルなデザインから遊び心があふれるデザインまで、幅広く展開しています。

参照:IKEAのオンラインストア

フライングタイガー「テント」

北欧らしいユニークでポップなデザインのテントを多数取りそろえています。

参照:フライングダイガーのオンラインストア

ダンボールや100均のアイテムやで簡単DIY

ダンボールや100均のアイテムやで簡単DIY

カームダウンスペースは、ダンボールや布、100均でも購入できるガムテープやランタンなどを使って、手作りすることも可能です。

1個のダンボールでは小さい場合は、2〜3個ダンボールをつなげて、過ごしやすいスペースを確保しましょう。天井に布やブランケットをかけると、暗さも調節できます。

「罰の部屋」にならないように注意する

子どもたちがカームダウンスペースを罰の部屋や反省する部屋ではなく、安心できる場所として認識できるように工夫することも必要です。

お気に入りのぬいぐるみやおもちゃを置いたり、子どもと一緒に作ったりしながら、心地よい空間を目指しましょう。

心の拠り所「カームダウンスペース」を社会の当たり前に

心の拠り所「カームダウンスペース」を社会の当たり前に

カームダウンスペースは、子どもが自分の気持ちを整えるための心の拠り所です。しかし、まだまだ日本の学校や公共施設、企業などでの認知度は十分とはいえません。

もっと多くの場所にこの取り組みが広がれば、子どもたちだけでなく、親や教育者にとってもより良い環境が整っていきます。

まずは「知ること」「作ってみること」「利用すること」から始めてみませんか。小さな一歩が、家庭の空気を変え、社会の理解を広げる大きな力になります。

カームダウンスペースがもっと当たり前になることが、誰もが安心して暮らせる社会の実現につながるでしょう。

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