「SDGs12「つくる責任 つかう責任」|目標や課題、日本企業の取り組みを紹介」

SDGsの目標12は「つくる責任 つかう責任」です。この目標は、生産者と消費者が地球をより良くするために責任ある行動をするという意味です。
しかし、具体的にどんな課題があるのか、また、どうすれば解決につながるのか分からない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」の具体的な課題と現状、そして私たちができることを紹介します。
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」とは
SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」は、生産者と消費者が、持続可能な社会を実現するために責任を持って行動することを目指しています。
この目標に関する具体的な達成目標(ターゲット)は全部で8つあり、以下の内容が掲げられています。
- 持続可能な消費と生産を目指す
- 天然資源の適切な管理と効率的な利用
- 食品ロスの削減
- 廃棄物による環境破壊を減らす
- 3Rによるごみの削減
- 持続可能な開発や暮らし方の情報を発信
もし今ある資源を有効に活用しなければ、いつか枯渇してしまうかもしれません。そうならないために、リサイクルや再利用により新たな資源の利用を減らしていく必要があります。生産者はサービスや製品の製造方法や素材を見直し、消費者は環境や社会への影響を考慮して選択することが重要です。
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」で実現したい世界
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」が目指すのは、資源の消費と環境への負荷を最低限に抑えつつ、社会と経済の両方を発展させることです。
産業革命以降、先進国を中心に大量生産・大量消費が広まりました。この社会システムにより、企業はさまざまな新商品を製造・販売することで、人々の生活は豊かになりました。その一方で、資源の枯渇や環境汚染が問題視されるようになったのです。
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」で重要なのは、大量生産・大量消費のサイクルを見直し、必要な分だけ生産して廃棄を最低限にすることです。そして生産者だけでなく消費者の意識も変え、実際に行動する必要があります。
SDGs目標12の日本の現状と課題
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」には、食品や衣料品の廃棄、エネルギー消費など幅広い内容が含まれています。
その中から、以下の5つの分野をピックアップしてみていきましょう。
- 食品ロス
- 海洋プラスチックごみ問題
- 衣料品の大量廃棄
- 電子廃棄物(電子ごみ)
- 天然資源の消費
各分野の現状と課題を説明します。
食品ロス
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」における大きな課題となっているのが「食品ロス」です。
食品ロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。食品ロスの発生源は事業系と家庭系の2つに分かれ、事業系は外食での食べ残しや過剰生産、家庭系は料理の作りすぎや賞味期限切れによる廃棄が当てはまります。
日本の2023年度の食品ロス量は、約464万トン(推計)とされています。国民1人あたりに換算すると毎日約102g、年間約37kgの食品を廃棄している計算です。日本の食品ロス量は、減少傾向にあるものの、今も多くの食べられる食品が捨てられています。
海洋プラスチックごみ問題
「海洋プラスチックごみ問題」も、早急に解決すべき課題の一つです。
海洋プラスチックごみとは、海に流れ出たプラスチックごみのことです。ポイ捨てや風などで飛ばされてしまったプラスチックごみが海を汚染したり、海洋生物に悪影響を与えたりしているとして問題となっています。
なお、海洋プラスチックごみの流出量については、国際的に認められた推計方法はありません。しかし、環境省はマクロ統計を用いた「河川を経由して海洋へ流出するプラスチックごみ総量」を公表しています。最新の報告では、年間2,300~24,000トンものプラスチックごみが海へ流れ出ていると予想されています。
参考:令和5年度検討結果日本の海洋プラスチックごみ流出量の推計|環境省
プラスチックごみには、製品自体や包装容器だけでなく、人工芝や農業資材、漁業の道具、塗料など幅広い種類があります。しかし、プラスチックの種類が異なるとリサイクルが難しく、回収後の分別や技術開発なども課題になっています。
衣料品の大量廃棄
ファッション業界では、トレンドの移り変わりが早く、気候の影響も受けやすいため、「衣料品の廃棄量」が多い傾向にあります。また、多くのブランドは、あらかじめ製造量が決められており、それらを在庫としてストックしています。このような仕組みも、衣類の大量廃棄が発生する原因の一つです。
日本での衣類の新規供給量は81.9万トンであるのに対し、廃棄される量は51.2万トンです。この廃棄量には、事業所からの廃棄と家庭からの廃棄が含まれています。この結果から、供給量の6割以上が何らかの形で廃棄されていることが分かります。
参考:環境省 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務|日本総研
衣料品は廃棄だけでなく、製造時の水の大量使用や水質汚染、膨大なCO2の排出など、さまざまな環境問題を引き起こしています。
電子廃棄物(電子ごみ)
「電子廃棄物(電子ごみ)」とは、使用済みの家電やパソコン、携帯電話などの不要になった電子機器を指します。
これらの機器には、鉛や水銀などの有害物質が含まれているため、適切に処理しなければなりません。また、金や銀などの貴金属が使われている場合も多く、リサイクルされないまま捨ててしまうと貴重な資源が失われてしまいます。
国連グローバル電子廃棄物統計パートナーシップのレポート「The Global E-waste Monitor 2024」によると、日本の2022年の電子廃棄物は263.8万トンでした。しかし、リサイクルされたものは61.34万トンで、全体の2割ほどしか適切に回収・リサイクルされていません。
参考:The Global E-waste Monitor 2024
日本では、家電リサイクル法や小型家電リサイクル法が施行されていますが、消費者の認知不足などにより、多くの家電がリサイクルされずに廃棄されています。
天然資源の消費
日本には、水や森林などの天然資源が多くありますが、それらは無限ではありません。
2025年7月に林野庁から発表されたデータによると、現在日本の国土の66%は森林に覆われており、そのうち60%が天然林等、残りの40%が人工林です。そして人工林の6割が主伐期(木材として利用する時期)を迎えており、有効活用するとともに循環利用に向けて検討していく必要があります。また、人工林は適切な管理が重要で、放置すると土地の荒廃につながる可能性もあるため、国や企業、地域住民が協力して取り組むことが重要です。
SDGs目標12への日本企業の取り組み
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」には、日本政府だけでなく、多くの企業も積極的に取り組んでいます。
具体的にどのような取り組みをしているのか、ここでは2つの企業の事例を紹介します。
株式会社ロスゼロ
株式会社ロスゼロは、食品ロス削減を目指すスタートアップ企業です。
同社が提供するサブスクリプションサービス「ロスゼロ不定期便」は、メーカーから買い取った余剰食品や規格外品が不定期で送られてくるサービスです。メーカー側にとっては、食品廃棄の削減や廃棄にかかるコスト削減、新しい販路やファンの獲得につながります。一方、消費者側は、どんなものが届くか分からないワクワク感を楽しみながら、お得に食品ロス削減に取り組める点がメリットです。
また、アップサイクルにも取り組んでおり、規格外の野菜や果物などを活用したスイーツなどの開発や販売なども行っています。
参考:株式会社ロスゼロ
日本航空株式会社(JAL)
日本航空株式会社(JAL)は、SAFプロジェクト「Fry to Fly Project」に参加しています。このプロジェクトは、一般的に廃棄されてしまう家庭で使われた食用油を回収し、SAF燃料に作り替え、航空機の燃料として利用するものです。SAFは、持続可能な航空燃料として、国内外で普及の取り組みが広がっています。
また、JALでは2011年から、機内やラウンジで提供されるコーヒーにレインフォレスト・アライアンス認証を取得したコーヒー豆が使われるようになりました。さらに2025年度中には機内の全紙製用品を認証紙に切り替えることを目標に掲げるなど、さまざまな取り組みが行われています。
SDGs目標12のために私たちにできること
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」には、国や企業が目標達成や解決のために取り組んでいます。しかし、課題を解決するために最も重要なのは、消費者である私たち一人ひとりが問題意識を持って行動することです。
SDGsへの取り組みは難しいと感じるかもしれませんが、以下のように私たちにもできることはたくさんあります。
- 必要な食品を必要な分だけ購入する
- 使い捨て容器やカトラリーを断る
- ごみを分別する
- 落ちているごみを拾う
- 環境に配慮した素材のものを選ぶ
- 不要なものはリユースやリサイクルを考える
- 欲しいものはセカンドショップで探してみる
- 節電・節水を心掛ける
これらの行動によって、食品ロスやプラスチックごみ、電子ごみを減らしたり、天然資源の消費を抑えたりすることができます。難しく考える必要はなく、まずはできることから始めてみてください。
まとめ
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」には、食品ロスや海洋プラスチックごみをはじめ、さまざまな課題があります。これらの課題は、複雑な社会の構造によって発生しているため、すぐに解決できるものではありません。
しかし、国や企業、そして消費者である私たちが協力して取り組むことで、解決に向けて少しずつ前進できます。地球を守りつつ、経済と社会がともに発展できる未来に向けて、できることから取り組んでみてはいかがでしょうか。
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