SDGs4「質の高い教育をみんなに」日本や世界、企業の取り組み事例

誰もが平等に学ぶ機会を得て、質の良い教育を受けられる社会を目指すのが、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の目的です。
SDGsでは、さまざまなテーマのもと17の目標があります。中でも、日本は教育への関心が高く、企業や自治体がSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の実現に向けて、さまざまな方法で取り組んでいます。
本記事では、企業がSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」にアプローチする際のポイントや、日本・海外企業の取り組み事例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」とは
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」は、誰もが平等に質の高い教育を受けられる環境をつくること、そして生涯学習の機会を促進することを目的としています。
そして、目標4のターゲットには以下の内容が示されています。
- すべての子どもが、公平で質の高い教育を無料で受けられるようにする
- すべての子どもが、幼稚園や保育園に通うなどして、小学校に入る準備ができるようにする
- すべての人が、技術や職業に関する教育や高等教育を受けられるようにする
- 仕事に必要な技術や能力のある人を増やす
- 教育の中で差別をなくす
- 持続可能な社会をつくるための教育を進める
「教育」と聞くと、子どもに対する教育をイメージする人も多いかもしれません。しかし、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」では、小学校などの義務教育だけでなく、大人が仕事や生活に必要な知識・技術を身につけること、また文化の違いなどを受け入れるための教育も必要だとしています。
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の現状
2023年時点で、世界には学校に通えていない6〜11歳の子どもは約2億5,100万人、12〜14歳の子どもは5,700万人いるとされています。
読み書きができる人の割合を「識字率」といいますが、世界の識字率は過去数十年で改善されています。世界子供白書2023によると、ヨーロッパやアジアでは若年層の識字率はほぼ100%です。一方で、アフリカや後発開発途上国では90%を下回ります。また、性別ごとでは男性が93%、女性が91%となりました。
日本では義務教育が整備されていますが、地域による教育機会の差や不登校児童の増加などが課題です。また経済格差による進学率の影響もあります。特に大学への進学は、入学金や授業料などが必要なため、家庭の経済的事情で進学を諦めるケースもあります。
出典:
Global education monitoring report, 2024/5, Leadership in education: lead for learning|UNESCO
企業がSDGs目標4に取り組む際のポイント
企業がSDGs目標4「質の高い教育をみんなに」に取り組む場合、重要になるのが「アプローチ」です。アプローチの方法には「直接的なアプローチ」と「間接的なアプローチ」があります。
それぞれの特徴や具体的な方法を説明します。
直接的なアプローチ
「直接的なアプローチ」とは、教育を受けられなかった人や、十分な質の教育が受けられなかった人に対して、具体的な行動により教育の場や機会を提供する方法です。
例えば、以下のような方法があります。
- 教育プログラムの提供
- 障害者や難民、少数民族など、特別なニーズを持つ人への教育環境の提供
- 学校や公共施設への教材の寄付
- 教育ボランティア活動
企業が直接的なアプローチをする際は、自社のサービスや製品を活用して取り組むことが多いでしょう。そのため、企業イメージの向上につながりやすくなります。また、企業独自の方法で社会貢献ができるだけでなく、教育現場に直接関わることで、従業員の当事者意識が芽生えやすくなります。
間接的なアプローチ
「間接的なアプローチ」とは、自社のサービスなどは提供せず、資金援助などを通じて支援を行う方法です。
- 教育関連のプロジェクトや団体への資金援助
- 教育の重要性や世界の現状を伝えるなどの啓発活動
この方法のメリットは、企業が教育に関する事業を行っていなくても取り組める点です。また、寄付は比較的すぐに始められます。寄付先は、日本国内や海外の団体、子どもへの教育支援、貧困家庭へのサポートなどさまざまな選択肢があります。そのため企業の方針や関連のある団体を選んで支援するとよいでしょう。
【日本】SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の企業の取り組み事例
企業は、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」に対して、具体的にどのように取り組んでいるのでしょうか。
まずは、日本国内の事例から見ていきます。
株式会社公文教育研究会
- ヤマハ株式会社
- 株式会社Kaien
- 株式会社栄光
- 株式会社キズキ
- 株式会社大映
株式会社公文教育研究会
株式会社公文教育研究会では、公文式教室の学習をはじめ、児童発達支援や放課後デイサービス、企業、就労移行支援施設など、さまざまな場所で公文式を導入しています。公文式は、自分の力で問題を解く学習法であり、現在は世界60カ国以上の国と地域で利用されています。
また、デロイト トーマツ ウェルビーイング財団と協力し「子どもを未来につなげる奨学助成プログラム」を実施。このプログラムでは、こども食堂や無料塾等を対象に助成を行い、子どもたちが食事と学習の両方を支援してもらえる環境をつくり、生活に困難を抱える子どもをサポートしています。
ヤマハ株式会社
ヤマハ株式会社は、新興国での音楽教育を支援する「スクールプロジェクト」に取り組んでいます。ヤマハの持つノウハウを活用し、指導カリキュラムの構築支援や教材の制作、楽器の販売・提供、指導者育成などを公教育機関に提供しています。
スクールプロジェクトは世界10カ国の小学校で実施され、これまで425万人が利用してきました。学生は、ピアニカやキーボード、リコーダーなどの楽器演奏を通して、未来を生きる力を学んでいます。
株式会社Kaien
株式会社Kaienは、障害者雇用支援などを行っている企業です。
同社は、発達障害のある子ども向けのデイケアサービス「ティーンズ」を展開しています。このサービスは、発達障害やグレーゾーンと呼ばれる10代子どもたちを対象としており、学習や生活、将来のニーズに合わせたプログラムを用意しています。また、障害特性のある大学生や専門学生に向けた就職・自立サークル「ガクプロ」では、グループワークや職場見学、個別コーチングなどを通じて、社会参加をサポートするのが目的です。
このような取り組みにより、発達障害のある子どもや学生がそれぞれの能力に合った教育を受け、将来は社会に貢献できる大人になることを目指しています。
株式会社栄光
学習塾を展開する株式会社栄光は、化学実験室「栄光サイエンスラボ」という取り組みを行っています。
栄光サイエンスラボの対象は、年中〜中学生までの子どもたちです。科学実験を通して、創造力・表現力・論理的思考力・問題発見力・問題解決力の5つの力を養います。
また、株式会社栄光は学習塾ならではの教育ノウハウを活用した授業を行い、持続可能な社会の実現を目指しています。
参考:栄光サイエンスラボ
株式会社キズキ
株式会社キズキは、「事業を通じた社会的包摂」をミッションとし、生きづらさを感じる方々への学習の場や自立を支援するサービスを提供している企業です。
具体的には、不登校や中退などの経験がある人向けの個別指導塾「キズキ共育塾」や、うつや発達障害により離職した人のための就労支援事業所「キズキビジネスカレッジ」、そして不登校の小学生〜高校生を対象とした家庭教師事業「家庭教師キズキ家学」などの事業を展開しています。
株式会社キズキの直接的アプローチによって、すべての人に平等な教育の機会を提供しています。
参考:株式会社キズキ
株式会社大映
家庭用ミシンや工業用ミシンを取り扱う株式会社大映は、寄付活動を通じてSDGs目標4に取り組んでいます。「寄付ミシンプロジェクト」では、寄付された中古ミシンの再利用販売による売上の一部を、不登校に悩む子どもたちを支援する団体に寄付しています。
株式会社大映は、教育に直接関わる事業は行っていません。しかし、寄付という形で間接的にアプローチしています。
また、このプロジェクトでは、本来廃棄される予定だったミシンを修理して再利用することで、ゴミの削減にも貢献しています。
【海外】SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」の企業の取り組み事例
海外の企業も、SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」に積極的に取り組んでいます。
- Ericsson(エリクソン)
- UBS(ユービーエス)
- LEGO(レゴ)
- CAMFED(キャンフェッド)
Ericsson(エリクソン)
スウェーデンに本社を置く通信機器メーカー、Ericsson(エリクソン)は、2010年からグローバル教育イニシアチブ「Connect to Learn」を始めました。
このプロジェクトでは、奨学金授与による中等教育の就学機会の拡大、教師の人材育成、学校へのデジタル接続の加速、女性差別に対する就学機会の提供などが行われています。
2019年時点で、ミャンマーではこれまでに31校が「Connect to Learn」に参加し、3万人以上の学生が支援を受けています。また600人の女子学生が奨学金を授与し、310人の教師が人材育成プログラムに参加しました。
参考:
Technology for Good Impact Report|Ericsson
UBS(ユービーエス)
UBS(ユービーエス)はスイスを拠点とする投資銀行です。
UBSは、助成財団「UBSオプティマス財団」と協働し、社会課題の解決のための金融商品を開発しています。「The Quality Education India Development Impact Bond (QEI DIB)」はその一つで、インド全土での教育の質の向上が目的です。
これまで、4つの教育機関において、4年間で20万人以上の生徒に教育を提供しています。
LEGO(レゴ)
デンマーク発の玩具メーカーであるLEGO(レゴ)は「Learning through Play(遊びを通じた学び)」を届ける必要があるとし、世界中のさまざまな国の団体とパートナーシップを結んでいます。日本では、2019年からNPO法人フローレンスとパートナーになり、ワークショップなどを開催しています。
また、中国では、視覚障害がある子どもに向け、遊びを通して点字を教える「レゴ点字ブロック」を特別支援学校に提供。この取り組みにより、600人以上の教師や保護者が研修を受けました。
参考:
Inspiring children to learn through play|LEGO
Local Community Engagement|LEGO
CAMFED(キャンフェッド)
CAMFED(キャンフェッド)は、アフリカでの女子教育を支援している非営利団体です。
ガーナ、タンザニア、マラウイ、ザンビア、ジンバブエの5カ国で事業を展開しており、これまでに7,500校以上の公立学校の女子生徒への教育支援を実施してきました。具体的には、学費や学校生活、寄宿生活における日用品などの資金援助、教師の人材育成、保護者支援グループの運営などがあります。
学校卒業後は、CAMFED協会と呼ばれる卒業生のためのネットワークを通じて継続的に支援し、社会参加や女性リーダーの育成などを行います。
参考:CAMFED
まとめ
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」について、日本と海外の企業による取り組み事例を紹介しました。
企業がSDGs目標4に取り組む方法には、自社のサービスや製品を活用した支援、資金援助による支援などがあります。これらの支援は、一度きりでなく継続して行うことが重要です。持続可能な経営のためにも、自社に合った方法を見つけ、長期的なプランを立てて取り組む必要があります。
まずは、現状や課題を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。
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