エコビューティスコア導入開始!変容する消費者行動と企業への影響とは

近年、環境問題への意識が高まり、化粧品や日用品を選ぶときにもサステナブルな視点が求められるようになりました。その流れの中で登場したのが「エコビューティスコア」です。
エコビューティスコアは、各化粧品や日用品が環境に与える影響を見える化する仕組みで、消費者が環境にやさしい製品を選ぶ手助けとなります。2025年7月から実際に一部製品で表示が始まっており、今後注目すべき制度といえるでしょう。
本記事では、エコビューティスコアの概要や評価方法、企業と消費者双方にとってのメリットや影響を解説します。導入企業の紹介や今後の動向にも触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
エコビューティスコアとは

エコビューティスコア(EcoBeautyScore)とは、化粧品やパーソナルケア製品を対象に、環境へ与える影響を分かりやすく数値化したものです。消費者はスコアを見るだけで、その商品がどの程度環境に配慮されているのかを判断できます。
これからの社会では、便利な商品をただ選ぶのではなく、地球にやさしく、持続可能な商品を選ぶことが大切になります。エコビューティスコアは、そのためのガイドとなる存在です。
エコビューティスコア開発の背景と目的
エコビューティスコアが開発された背景には、環境問題への関心の高まりがあります。「製品の環境負荷を知りたい」とのニーズの高まりに応じて、各企業は「エコ」を訴求した製品を次々と発売しました。ところが業界において、共通の指標がなかったため、「どの製品が本当にエコなのか」が不明瞭になり、グリーンウォッシュ(※)も問題になっています。
(※)グリーンウォッシュ:企業が環境配慮を行っているように見せかけて、実態が伴っていない、またはその程度を誇張しているマーケティング手法や行為
こうした流れを受けて2022年2月、大手化粧品企業とパーソナルケア企業が専門家団体と協力し、「エコビューティースコア・コンソーシアム」を設立しました。業界全体で共通の、環境への影響を評価するスコアリングシステムの開発を目指したことがきっかけです。
参考:日本ロレアル|エコビューティースコア・コンソーシアムに36の業界関連企業が参加 消費者のよりサステナブルな選択を可能にする画期的な取り組みが始動
エコビューティスコア・コンソーシアム参画企業は70社に拡大
2022年のエコビューティスコア・コンソーシアム発足時点では36社だった参画企業も、現在は70社にまで拡大しました。ロレアルやユニリーバ、ニベアといったグローバルメーカーのほか、日本からは資生堂や花王が参画しています。
こうした世界各国の企業が協力し、3年の歳月をかけて、エコビューティスコアの評価方法を開発しました。この先も参画企業は増えていくことでしょう。
参考:WWWJAPAN|欧州で化粧品の環境スコア開示がスタート 70社以上参画の「エコビューティスコア」、包装材表示へ
エコビューティスコアの評価方法

エコビューティスコアは、明確な基準に基づいて評価されています。評価の根幹となるのは、「ライフサイクルアセスメント(LCA)」とEUの「製品環境フットプリント(PEF)」と呼ばれる手法です。
LCAとは、製品やサービスを作る際、材料の調達から廃棄・リサイクルまでのすべての工程で生じる環境負荷を数値で評価する方法です。
LCAは、以下の記事で詳しく説明しています。難しい概念なので、ぜひ参考にしてみてください。
関連記事:環境評価の新常識LCAとは?導入メリットと課題・企業事例を紹介
一方のPEFはEUにおける評価方法で、LCAとよく似ています。「同製品カテゴリー間での評価方法や表示ラベルを欧州で統一する」目的のため策定されました。LCAはあくまで「その製品における環境負荷」を示すものなので、例えばA社のBという化粧品と、C社のDという化粧品のLCAは同じ基準での比較が困難です。化粧品カテゴリーにおける特有の要素を統一して評価するために、PEFが採用されています。
製品の環境負荷をA~Eの5段階スコアにより表示
では、実際どのようにエコビューティスコアが表示されるのでしょうか。エコビューティスコアは、製品の環境負荷をA~Eの5段階で表示します。Aが「最も環境にやさしい製品」を意味し、Eに近づくほど負荷が大きいことを表します。
スコアを決めるのは、ライフサイクル全体におけるCO2排出量、水使用量、土地利用などの要素です。
エコビューティスコアは、サステナビリティに関する専門知識の有無にかかわらず活用できます。大小関係なくあらゆる規模のブランドが、自社製品の環境負荷を可視化できる革新的な仕組みです。
2025年7月より一部製品でスコア表示がスタート

2025年7月より欧州企業をはじめとする一部の製品で、エコビューティスコアの表示が始まりました。初期はウェブ上での表示が中心ですが、将来的には製品パッケージへ表示されます。
現在、エコビューティスコアが適用されている製品カテゴリーは、以下の4つですが、将来的には幅広い分野に拡大される見込みです。
- シャンプー
- コンディショナー
- ボディーウォッシュ
- フェイスケア
参考:WWWJAPAN|欧州で化粧品の環境スコア開示がスタート 70社以上参画の「エコビューティスコア」、包装材表示へ
エコビューティスコアを公表しているブランド例
すでにいくつかのブランドでは、エコビューティスコアの公表を始めました。以下は、スコアを公表している企業とブランドの一例です。
- バイヤスドルフ(ドイツ):ユーセリン、ニベアQ10
- ヘンケル(ドイツ):シャウマ
- ロレアル(フランス):ガルニエ、ロレアルパリ
- ケンビュー(アメリカ):ニュートロジーナ
欧州を中心に、グローバルブランドがエコビューティスコアを導入・開示し始めています。この動きは消費者が商品を選択する際に、エコビューティスコアを意識しながら買い物できる重要な一歩となるでしょう。
エコビューティスコアのメリットと影響

企業と消費者の双方にとって、エコビューティスコアは画期的な仕組みといえるでしょう。一方で、エコビューティスコアの対象カテゴリーに該当する企業にとっては、デメリットともとれる課題や影響もあります。
本項では、エコビューティスコアのメリットと影響を解説します。
企業・消費者双方のメリット
エコビューティスコアの登場は、企業と消費者双方にとって以下のようなメリットがあります。
- 環境負荷が可視化でき、透明性が向上する
- 企業と消費者が共通の指標をもてる
- 企業のブランドイメージが向上する
- 環境に配慮した製品の比較が容易になる
- スコアの高い製品の購入を通じて、環境保護に間接的に参加できる
このように双方に利益がある仕組みのため、普及が進めば社会全体の意識向上につながります。エコビューティスコアは単なる表示制度にとどまらず、持続可能な社会を築く一助となるでしょう。
企業への影響
一方でとりわけ企業にとっては、エコビューティスコアの導入は大きな障壁となる可能性があります。データコム社が2025年に実施したアンケートによると、「環境問題に働きかける企業の商品・サービスを利用したい」と回答した消費者は約7割にのぼりました。この結果からも伺えるように、消費者はより環境に配慮した、エコビューティスコアの高い商品を選ぶようになることが予想されます。企業は高い評価を得るために、素材の見直しや省エネ化など、新たな施策を検討せざるを得ません。
また、スコアの表示にあたってはデータ収集や担当部門の設置など、実務負荷が上がってしまいます。コストもかさむため、どうしても大手企業が有利になりやすい点も問題です。エコビューティスコアは、企業の経営戦略にまで影響を及ぼすでしょう。
とはいえ、今後エコビューティスコアの対象カテゴリーは拡大されることが見込まれます。日本を含め、スコアを開示する企業やブランドもさらに増加していくことでしょう。エコビューティスコアへの対応は、いずれ避けて通れない道となるはずです。
参考:PR TIMES|環境にやさしい消費行動は難しい?7割が”エコな商品を選びたい”と回答も、全体の約半数はエコな商品に追加コストを払うのが難しい現実
まとめ

エコビューティスコアは、長らく化粧品業界に欠けていた「ライフサイクル全体の環境負荷を透明化できる新しい指標」です。AからEまでのスコアで表示することで、誰でも直感的に理解できる仕組みとなっています。先駆けとなる欧州での導入は、今後私たちの生活に大きな変化をもたらすでしょう。
エコビューティスコアが普及し「環境にやさしい選択」が当たり前になれば、持続可能な社会の実現にも近づいていくでしょう。
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