【シェアサミット2025】「所有」から「共有」へ ~シェアリングエコノミーが拓く令和のサステナブルインフラ~

2025年11月25日(火)、東京ミッドタウン八重洲カンファレンスにて、「シェアサミット2025」が開催されました。
本イベントは、「令和のインフラを再定義する」をテーマに、日本が直面している人口減少や気候変動、地方の過疎化といった複雑な重要課題に対し、シェアリングエコノミーを「新インフラ」と位置づけて解決策を探る、国内唯一の国際的な会議兼展示会です。
会場には、政府、自治体、企業、個人といったマルチセクターのリーダーや専門家が一堂に会しました。
また、「シェアが社会を支える”あたりまえ”になる未来」を描き出すため、4つの重要分野を含む専門フォーラムも同日開催されました。
本記事では、記念すべき10回目を迎えたサミットの中から、シェアリングエコノミーが生み出した未来のインフラや、新しい暮らしに向けた挑戦の一部をご紹介します。
1.シェアリングエコノミーとは?サステナブルな経済への転換点

今回のシェアサミット2025の根幹をなす概念が「シェアリングエコノミー」です。そもそもシェアリングエコノミーとは、インターネット上のプラットフォームを介して、個人や企業が持つ遊休資産(モノ、スキル、空間、時間など)を、必要とする人たちと共有・交換(シェア)することで成立する経済活動の総称を指します。
この経済モデルは、従来の「所有」を前提とした大量生産・大量消費・大量廃棄による直線型経済(リニアエコノミー)から脱却し、資源を効率的に循環・活用する循環型経済(サーキュラーエコノミー)の実現に不可欠なものとして、世界的に注目されています。
近年、社会全体で人口減少や人手不足が深刻化する一方、インフラやサービス格差が拡大し、気候変動対策が喫緊の課題です。
このような複合的な社会課題に対し、シェアリングエコノミーは、所有から利用への転換を促し、眠っていた資源を流通させることで、課題解決の新たなインフラとして機能し始めています。
「シェアが社会を支える”あたりまえ”になる未来」を目指すことは、単なるサービスの利便性向上に留まらず、日本が直面する社会課題を克服し、豊かさと持続可能性(サステナビリティ)を両立させるための具体的な道筋です。
今回のシェアサミット2025は、このシェアリングエコノミーを「令和のインフラ」として再定義し、企業、行政、生活者が共に新たな価値を創造していくための、まさに最前線の議論の場となりました。
2. シェアサミット2025における「インフラ再定義」の実践
シェアサミット2025の中でも特に注目を集めたのが、日本の社会課題を深掘りし、シェアリングエコノミーによる解決策を議論する専門セッション群です。
ここでは、AIとテクノロジーによる社会システム変革、そして資源の循環という、インフラ再定義の二つの柱に焦点を当てた議論が展開されました。
2.1 【キーセッション】「共創」とAIが拓く令和のインフラ

キーセッションでは、シェアリングエコノミーを社会変革の核とするリーダーたちが集結し、人口減少や格差拡大といった「新たな複雑性」に対し、どう向き合うかについて議論が交わされました。
まず、株式会社AsMamaの甲田恵子氏は、子育てや暮らしの「スキルや時間のシェア」を通じた「共助の仕組み」こそが、行政や大企業だけでは追いつかない地域課題を解決するインフラになると強調し、この仕組みが愛着形成や出産意欲の向上にもつながるデータを示しました。
次に、ZVC JAPAN(Zoom)の下垣典弘氏は、AIの進化がシェアリングの可能性を拡大させる一方、広域での医療連携や学校教育などにおいて、技術は本来、自治体や地域の「暗黙知」や「閾値(しきいち)」を超えたシェアを可能にすると指摘し、テクノロジーは、人間が分断を乗り越え、つながるための支援であると位置づけました。
さらに、経済学者の安田洋祐氏は、日本が苦手とする「デジタル活用」と経済成長を両立させるうえで、シェアリングエコノミーが重要な鍵になると強調し、デジタルノマドビザや国内留学の推進など、人の移動と多様なスキルをシェアする政策的具体的な策を提言しました。
議論の結果、シェアリングエコノミーという共通言語を使い、市民・経済・テクノロジーの垣根を越えて「共創」していくことこそが、持続可能な「令和のインフラ」の構築につながるという結論に至りました。
2.2 【Cコマース】「所有しない選択」とサステナブルなビジネス戦略

「サーキュラーエコノミーが拓く未来 〜企業・生活者が共創する循環社会へ〜」と題したセッションでは、シェアリングエコノミーが牽引する新しい経済圏「Cコマース(サーキュラーエコノミー・コマース)」の可能性が議論されました。
このセッションでは特に、企業が「所有から利用」へと意識を改革、同時に持続可能なビジネスモデルを両立させる方法に焦点が当てられました。
まず、耐久消費財と利益の両立について、株式会社クラスの久保裕丈氏は、家具・家電レンタルを通じた「売らずに循環させ続ける」ビジネスモデルが、長期的には売り切り型を上回る利益を生む可能性を示唆し、企業が「圧倒的な改善力」をもってコストを吸収し、ユーザーメリットを追求することが、サステナブルなビジネスの鍵だと語りました。
また、エアークローゼットの天沼聰氏も、自社の物流ノウハウを他社に提供するBtoB事業を紹介し、この「仕組みのシェア」によって、より多くの企業がCコマースに参入できる環境を作ることが重要であると説明しました。
次に、グローバル規制と「共助」について、総務省の三牧純一郎氏とB Market Builder Japanの溝口由樹氏は、サーキュラーエコノミーへの対応が国際的に「任意から義務」へと移行している現状を指摘しました。
溝口氏は、B Corp認証が「サーキュラリティ」を必須項目とすることで、ビジネス上の競争力に直結していると述べました。
さらに、サントリーホールディングスの鈴木健氏は、飲料容器の「水平リサイクル」における企業の努力を共有し、リサイクル効率を高めるためには、生活者が飲み切って分別するという「小さな共助」が不可欠であると訴え、企業・行政・生活者の共創が循環型社会構築に不可欠だと結論付けました。
2.3 【二地域居住】人口とライフスタイルのシェア最前線

「制度と現場をつなぐ「二地域居住」の現在地」のセッションでは、単なるモノの共有に留まらず、シェアリングエコノミーを軸とした「人口のシェア」が、地方の課題と個人のウェルビーイング向上をどう両立させるかについて、活発な議論が展開されました。
まず、「ふるさと難民」と関係人口の創出について、株式会社雨風太陽の高橋博之氏は、「帰るふるさとがない」「ふるさと難民」という課題を提起し、住居や移動手段をシェアすることで、二地域居住のコストを下げ、関係人口を創出することが、地方の担い手不足解消の切り札であると強調しました。
次に、行政による人のシェアリングインフラについて、総務省の小林広生氏が、来年度導入予定の「ふるさと住民登録制度」について説明しました。
この制度は関係人口を可視化し、自治体が観光だけでなくテレワークや子育てといった多様な切り口で地域を支援するためのインフラとなるものだと述べました。
また、国土交通省の日下雄介氏は、二地域居住が「地方の担い手確保」や「地域活性化の触媒」として機能している現状を共有しました。
さらに、「二つの人格」とウェルビーイングの向上について、株式会社ソトコトの指出一正氏は、二拠点生活によって「二つの人格」を持つことで、個人の生きづらさを解消し、ウェルビーイングを向上させることができたと指摘し、「自己のシェア」が、現代の若者に希望を与える可能性を説きました。
そして、地域に求められる「人間力のシェア」について、埼玉県横瀬町の田端将伸氏は、地域が求めるのは都心でのスキルや経験よりも「挨拶ができる」「人の話を謙虚に聞ける」といった人間力(ヒューマン・スキル)であり、この「人間力のシェア」が、多拠点居住者が地域に溶け込むうえでの最重要要素だと語りました。
最終的に、登壇者らは、シェアリングエコノミーが「固定意識」という障壁を突破し、行政の柔軟な制度設計と、民間のイノベーション、そして個人の「変わりたいという意志」が一体となることで、「人口をシェアする未来」が実現するという力強いメッセージを送り、セッションを締めくくりました。
3. 持続可能な社会インフラの再定義を目指して

人口減少や気候変動といった社会課題の解決と、豊かでサステナブルな未来の実現。
この二つの大きな目標を、シェアリングエコノミーという新しいインフラによって両立させることこそが、日本社会が目指すべき持続可能な未来のビジョンです。
その実現には、多拠点居住を可能にする「ふるさと住民登録制度」のような大胆な政策的転換と、遊休資産やスキルを循環させるデジタル技術を駆使した社会システム全体の変革が不可欠です。
本レポートで紹介した議論やデータからも、行政がルールを作り、企業がCコマースやサブスクリプションで経済を変革し、そして個人が「共助」として参加する「共創」の姿勢が強く求められていることが分かります。
「シェアサミット2025」は、まさにこのビジョンを共有し、その実現に向けた戦略や具体的なソリューションがマルチセクターから集う、非常に貴重な場となりました。
今回のサミットで生まれた新たな協力関係や示された未来像が、議論だけで終わることなく、シェアリングエコノミーを「令和のインフラ」として社会に定着させる確かな一歩となることに、今後ますます期待が高まります。
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