生分解性プラスチックは普及しない?メリットや問題点をわかりやすく解説

生分解性プラスチックとは、微生物の働きにより水とCO2に分解される性質を持つプラスチックです。最近では、生分解性プラスチックが海洋汚染の原因とされるプラスチックごみ問題の解決策の一つとして注目されています。
本記事では、生分解性プラスチックの原料や構造をはじめ、環境にもたらすメリットや普及に向けた課題をわかりやすく解説します。ぜひ最後まで読んで、生分解性プラスチックへの理解を深めていきましょう。
生分解性プラスチックとは?

生分解性プラスチックの「生分解性(せいぶんかいせい)」とは、微生物の活動により分子レベルまで分解され、最終的には水とCO2となる性質のことです。
一般的なプラスチックは自然界では分解されにくく、数百年もの間そのまま残るとされています。一方で、生分解性プラスチックは水とCO2まで分解されるため、自然に還ります。
生分解性プラスチックの歴史は、1920年ごろのフランスから始まりました。1980年代には生産プロセスが確立し、環境問題への関心と共に生分解性プラスチックの研究・技術開発が活発化しました。そして、1990年代には食品包装や医療機器など、さまざまな用途に使われるようになります。
その後も技術開発はさらに進展し、現在ではさまざまなバイオマス由来の生分解性プラスチックが開発されています。
生分解性プラスチックの原料
生分解性プラスチックの原料は「バイオ由来」「バイオ由来と化石由来(混合由来)」「化石由来」の3種類に分類されます。原料の違いによって、以下のように分けられます。
| バイオ由来 |
|
| 化石由来 |
|
| 混合由来
(バイオ+石油) |
|
参考:生分解性プラスチック入門|一般社団法人日本バイオプラスチック協会
混合由来の素材は、バイオ素材由来と石油素材由来、それぞれの特性を組み合わせて開発された生分解性プラスチックです。
また、生分解性プラスチックとよく似たものとして「バイオマスプラスチック」があります。バイオマスプラスチックは、サトウキビなどの植物由来の再利用可能な有機資源が原料です。石油由来のプラスチックよりも環境への負荷が少ない点が特徴ですが、生分解性を持たないものもあります。
生分解性プラスチックの製造から分解までの流れ
生分解性プラスチックの製造方法にはさまざまなものがあり、代表的なものは「発酵法」と「化学合成法」です。
「発酵法」は、植物由来の糖やデンプンを原料として、微生物の働きで発酵させる方法です。発酵によって中間原料を作り、その後ポリマー化していきます。一方、「化学合成法」は、化石由来や植物由来の原料を用いて、化学的に合成・重合を行う製造方法です。
生分解性プラスチックは製品として使用された後、畑などの土に混ぜたりコンポストされたりします。微生物が分泌する酵素によって、プラスチックは水に溶けやすい状態に分解されます。さらに、その分解物を微生物が体内に取り込むことで、最終的に水とCO2となるのです。
生分解性プラスチックのメリット

環境にやさしいイメージのある生分解性プラスチックですが、実際にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここでは、生分解性プラスチックのメリットを具体的に解説します。
プラスチックごみ問題の軽減につながる
生分解性プラスチックが広く普及すれば、プラスチックごみ問題の軽減につながります。
プラスチックごみ問題とは、プラスチックごみが自然環境や社会、そして人に悪影響を与えていることを指します。
プラスチックは、私たちの生活のあらゆる場面で使用されており、もはや欠かせない存在です。しかしその一方で、適切に回収・処理されずに自然界に流出するプラスチックごみが多く、これが大きな問題となっています。
2025年7月、OECD(経済協力開発機構)は東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国と、日本、韓国、中華人民共和国におけるプラスチックごみに関する報告書を公表しました。この報告によると、2022年にこの地域で使用されたプラスチックは1億5,200万トンにのぼり、そのうち840万トンが自然界に流出したとされています。自然界に流れ出たプラスチックごみは、海洋環境の悪化や生態系の破壊、漁業や観光など、さまざまな問題を引き起こします。
一方、生分解性プラスチックは土や水の中で分解されるため、自然界にいつまでも残り続けることがなく、環境負荷も軽減できるのです。
参考:Regional Plastics Outlook for Southeast and East Asia Report|OECD
関連記事:プラスチック問題とは?現状・原因・私たちにできる対策まで、わかりやすく解説
石油資源の使用量を削減できる
生分解性プラスチックの原料にバイオマスを使用すれば、化石燃料の使用量を減らせます。
化石燃料の形成には、数千年から数億年もの年月がかかります。今地球上にある化石燃料は有限であり、使い続ければいずれは枯渇してしまうでしょう。しかし、バイオマスは植物由来の原料であり、再生可能な資源です。こうした理由から、化石燃料の代替としてバイオマスが注目されています。
生分解性プラスチックの問題点

メリットの多い生分解性プラスチックですが、普及させるためにはいくつかの課題を解決しなければなりません。
ここでは、生分解性プラスチックの抱える主な問題点を解説します。
完全分解には環境条件が重要
生分解性プラスチックが完全に分解されるには、環境条件が非常に重要です。
土壌や水中、コンポストといった場所では分解が進みますが、ただ地面に置くだけでは分解されません。微生物が活動しやすい環境を整える必要があります。
また、周囲の環境や生分解性プラスチック自体の構造により、分解時間に大きな差があります。これらを正しく理解して処理をしないと、環境への負荷をさらに増やしてしまうかもしれません。
製造コストが高い
製造コストの高さも、生分解性プラスチックにおける課題の一つです。
生分解性プラスチックは製造プロセスが複雑なうえ、原料の調達にもコストがかかります。また、一般的なプラスチックとは使用する設備も異なるため、新たな設備投資が必要です。特に、バイオマスを原料とする場合は、バイオマス自体の製造コストも加わるため、より高価になります。
さらに、現時点では需要が十分でなく、大量生産が難しいのも製造コストが高い原因の一つです。ただし、今後生分解性プラスチックの認知拡大が進めば、製造量が増え、コストが下がる可能性があります。
ポイ捨てを助長する可能性
生分解性プラスチックは、土壌中の微生物により分解されます。しかし、この性質のために、ポイ捨てを助長するのではないかという懸念もあります。一般のプラスチックもポイ捨てされる可能性はありますが、生分解性であっても油断はできません。
また、生分解性プラスチックが分解されるには、適切な環境条件が必要です。そのため、捨てられた場所によっては分解しきれず、自然界に長く残る場合があります。
生分解性プラスチックへの理解を進めるだけでなく、適切に分別・回収できるような仕組みづくりが重要です。
生分解性プラスチックの製品例
生分解性プラスチックは、主に以下の製品に使用されています。
- 農業用マルチフィルム
- 害獣対策用ネット
- ごみ袋
- ストロー
- 食品用包装・カトラリー・容器梱包資材
また、樹木葬用の骨壷やサバイバルゲーム用のBB弾、マークテープなどにも使われています。
生分解性プラスチックは、原料や性質により使用用途は異なります。近年、さまざまなタイプの生分解性プラスチックが開発されており、今後はさらに幅広い分野で使われるようになるでしょう。
生分解性プラスチックに関する国内の企業事例

最後に、生分解性プラスチックに取り組む国内企業の事例を紹介します。
- カネカ
- アサヒユウアス
- キラックス
- 日本ストロー
- Green Science Alliance
カネカ
総合化学メーカーであるカネカは、生分解性バイオプラスチックの開発・販売を行っています。
カネカ生分解性バイオポリマー「Green Planet」は、海中で分解されるバイオマス由来の生分解性プラスチックです。同製品は、石油由来のプラスチックと同程度の性能を持ち、生分解性も兼ね備えています。
また、航空会社の機内やラウンジで使用されているバッグや食品包装、カフェのストローや持ち帰り用のカトラリーなど、さまざまな場所で活用されています。2025年には「2025年日経優秀製品・サービス賞 最優秀賞」を受賞しました。
参考:カネカ生分解性バイオポリマー Green Planet®|カネカ
アサヒユウアス
アサヒユウアスは、サステナビリティ事業を行うアサヒグループの企業です。リユーサブルカップの販売や、アップサイクル事業などに取り組んでいます。
2025年10月から展開しているのが、海洋生分解性プラスチックを100%使用した新ブランド「KAELOOP(カエループ)」です。このブランドでは、バイオマスを原料とし、植物由来の原料と酢酸によって作られる「酢酸セルロース樹脂」を使用しています。
野外フェスでの利用促進や企業のノベルティなど、さまざまな場面での展開が期待されています。
キラックス
包装資材メーカーであるキラックスは、約20年前から生分解性プラスチックの開発に取り組んでいます。
2005年に開催された日本国際博覧会「愛・地球博」では、同社の生分解性ごみ袋が採用されました。また、2020年には日本初の海洋生分解性プラスチックを用いたレジ袋を開発しました。さらに、ストローやコップ、ごみ袋、目印テープなど、さまざまな製品を展開しています。
参考:環境製品|キラックス
日本ストロー
日本ストローは、伸縮ストローで国内トップシェアを誇るストローメーカーです。一般的なプラスチック素材だけでなく、バイオマス素材、海洋生分解性プラスチック素材など、さまざまな種類のストローを販売しています。
また、日本ストローが販売する海洋生分解性ストローは、カネカの「カネカ生分解性バイオポリマー Green Planet®」が使用されています。
さらに、2025年2月には、海洋生分解性ストロー本体と包装フィルムが「海洋生分解性バイオマスプラ」認証を取得しました。この認証は日本バイオプラスチック協会によるもので、海洋での生分解性や安全性が確認されたものに与えられます。
参考:海洋生分解性ストロー|日本ストロー
参考:海洋生分解性ストローにおいて、「海洋生分解性バイオマスプラ」認証を取得|日本ストロー
Green Science Alliance
Green Science Allianceは、生分解性プラスチックをはじめ、バイオマスコーティングやインクなど、石油由来の化学製品をバイオマス由来に置き換える研究開発を行うスタートアップ企業です。
同社は、紙類をベースにした生分解性プラスチック素材「GS BP Paper」や、木材や竹など植物そのものを原料にした「GS BP Wood」などの開発に成功しています。
さらに、セルロースナノファイバー(CNF) と生分解性プラスチックを混合した複合素材は、日本バイオプラスチック協会からグリーンプラ、バイオマスプラとして認定されています。
まとめ
生分解性プラスチックは、微生物の働きにより最終的に水とCO2に分解されるプラスチック素材です。石油資源の節約に役立つだけでなく、海洋プラスチックごみの削減にもつながることから、大きく注目されています。
環境負荷の軽減というメリットがある一方、高コストや完全分解のための環境整備など、いくつかの課題もあります。
生分解性プラスチックは、持続可能な社会を実現するための方法の一つです。その普及には、企業や個人が生分解性プラスチックについて理解を深め、積極的に活用していくことが重要だと言えるでしょう。
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