マイクロプラスチックの発生原因は?環境を守るためにできること
プラスチックは、私たちの生活に欠かすことのできない製品のひとつです。
プラスチックは便利な反面、プラスチックが原因となる環境問題も存在します。
本記事にて紹介する「マイクロプラスチック」も、プラスチックが原因となって引き起こされている環境問題のひとつです。
本記事ではマイクロプラスチック問題について、海洋生物への影響、削減に向けた各国の取り組み事例を解説します。
マイクロプラスチックとは?
私たちの身の回りには多くのプラスチック製品があります。周りを見渡してみると、プラスチック製品があなたの周りにもあるでしょう。
プラスチックの特徴として以下の3つが挙げられます。
- 紫外線に弱い
- 自然分解されない
- 軽く風に乗って流されやすい
プラスチックが自然環境に晒され、時間経過と共に劣化し小さな破片と変わっていきます。小さな破片(マイクロプラスチック)となり、最終的に辿り着く場所の多くは海です。
マイクロプラスチックとは、環境中に存在する直径5mm以下の微細なプラスチックの総称を意味します。マイクロプラスチックは単なるゴミ問題にとどまらず、環境問題にも大きく関わっています。
マイクロプラスチックの種類
マイクロプラスチックには以下の2種類があります。
一次的マイクロプラスチック | ・マイクロサイズで製造されたプラスチック
(レジンペレットなど) ・洗顔料や歯磨き粉などのスクラブ材に利用されているマイクロビーズなど |
二次的マイクロプラスチック | ・大きなサイズで製造されたプラスチックが、自然環境中で破砕・細分化したもの |
参照:「マイクロプラスチック調査及び発生源対策」(埼玉県)より
一次的マイクロプラスチックは、洗顔剤や歯磨き粉に使用されているスクラブ剤が良い例です。マイクロサイズのとても小さなプラスチックであり、生活排水と一緒に流れてしまう問題があります。
二次的マイクロプラスチックは、ペットボトルやスーパーの袋などが、自然環境に晒されて劣化し、小さな破片になったものです。プラスチックゴミを適切に処理しなかったことによって、発生します。
発生原因は異なるものの、一次的マイクロプラスチックと二次的マイクロプラスチックのどちらも環境問題、特に海洋環境に大きな影響を及ぼしています。
世界の海洋プラスチック問題について
具体的にマイクロプラスチックが環境や生物にもたらす影響を紹介する前に、マイクロプラスチックを含めた海洋プラスチックごみの現状について解説します。
上記のとおりプラスチックごみの問題は、特に海の生態系に大きく影響を及ぼしています。海にあるプラスチックのゴミを海洋プラスチックと呼んでいます。
現在少なくとも毎年8万トンの新たな海洋プラスチックゴミが発生しているといわれています。この数値は1分間に大型トラック1台分のペースでプラスチックごみを海に捨てているのとおおよそ同じ数値です。
もしこのまま私たちが何も行動を起こさなければ、2030年までには1分間に大型トラック2台分 のペースでゴミを海に捨てる量になり、2050年までには1分間に大型トラック4台分 のペースでゴミを海に捨てるのと同じ量になるといわれています。
加えて、2050年までには海洋プラスチックごみの量が海の魚よりも多くなるともいわれています。
参照:「The New Plastics Economy Rethinking the future of plastics」(WORLD ECONOMIC FORUM)より
以上のデータを見るだけでも、私たちがどれだけ多くの海洋プラスチックごみを排出しているのかがわかると思います。
マイクロプラスチックが及ぼす影響
マイクロプラスチックが及ぼす影響について、以下のふたつの観点に分けて紹介します。
- 海及び海洋生物への影響
- 人間への影響
マイクロプラスチックによる海及び海洋生物への影響
マイクロプラスチックは非常に小さく、回収は極めて困難です。そのためマイクロプラスチックの量は増える一方です。
プラスチックの表面には細かな凹凸があり、そこに有害物質が付着しやすいです。マイクロプラスチックに付着した有害物質が海洋汚染を引き起こす原因のひとつにもなっています。
また、マイクロプラスチックを餌と間違えて食べてしまう海洋生物も多くいます。体内に入ったプラスチックによって内臓を傷つけられてしまうことやプラスチックに付着した有害物質の影響を受けてしまうこともあります。
マイクロプラスチックによる人間への影響
マイクロプラスチックが人体へ何かしらの影響を及ぼすことを証明するデータは、現在のところ出ておりません。しかし、マイクロプラスチックによって汚染された魚を食べることで、何かしらの影響が起きる可能性がないとはいえません。
ほかにもマイクロプラスチックを含む、海洋プラスチックごみによって経済活動にも大きな影響が出ています。
アジア太平洋圏において、海洋プラスチックごみによる観光や漁業、ショッピング業界の被害額は約1.3億ドルに上ります。海洋プラスチックごみの影響が少ないヨーロッパ地域でも、海岸やビーチの清掃費用は約695万ドルに達するといわれています。
参照:「The New Plastics Economy Rethinking the future of plastics」(WORLD ECONOMIC FORUM)より
マイクロプラスチック・プラスチックごみ削減に向けての取り組み
マイクロプラスチック問題については、2019年開催のG20大阪サミットでも話し合われ、マイクロプラスチック削減に向けて取り組むことで合意しました。
そこで、日本と世界各国で行われているマイクロプラスチック及びプラスチックごみ削減に向けた取り組みを紹介します。
日本の取り組み事例
日本ではプラスチックゴミを削減するために、以下の取り組みが行われています。
対策分野 | 概要 |
廃棄物回収・適正処理 | 国内の廃プラスチック処理・リサイクル施設整備支援 |
ポイ捨て、流出防止 | 専用リサイクルボックスの設置
漁具の流出防止のため漁業者による適正管理を要請 |
陸域でのごみ回収 | 2019年から「海ごみゼロウィーク」の実施
全国一斉清掃アクションの展開 |
流出ゴミの回収 | 海岸漂着物や海洋ゴミの回収・処理を支援 |
イノベーション | ロードマップに基づく技術開発、代替素材の生産設備支援
技術実証の支援 |
国際貢献・実態把握 | ASEANのナレッジセンター設立など廃棄物に関する能力構築支援
モニタリング調査の国際調和の推進、漂着物・浮遊プラスチック類の調査など |
参照:「海洋プラスチックごみ対策アクションプランの概要」(環境省)より
日本では日本国内だけの支援だけでなく、持っている知識を海外にも広げることによって世界のプラスチックごみ削減に貢献する取り組みも行っています。
上記に加えて私たちの身近なところでは、レジ袋の有料化が行われています。レジ袋を有料化することで、マイバッグの持ち歩きを促進し、不要なプラスチックゴミを削減する狙いです。
世界の取り組み事例
世界各国ではプラスチックごみの削減に向けて様々な取り組みをしています。一例として、EU(欧州連合)が行っているプラスチック戦略を挙げます。
2030年までにEU域内における全てのプラスチック包装材をリユースまたは、リサイクルすることを目指すことに加えて、使い捨てプラスチックの量を減らし、マイクロプラスチックの使用を制限することを目指しています。
具体的には以下の5つの目標実現を狙っています。
- 企業にとってプラスチックのリサイクルが利益となるようにする
- プラスチックの廃棄を抑制する
- プラスチックごみの海洋投棄を阻止する
- 問題解決に向けた投資とイノベーションを促進する
- 世界各地で同様の変革を起こす
参照: 「循環型経済に向けたEU初のプラスチック戦略」(EU MAG)よりEUのプラスチック戦略の中にもマイクロプラスチックの記載があることから、EU諸国でもマイクロプラスチック問題は、重要な問題だと捉えられていることがわかります。
そのほか、各国独自のプラスチックごみ削減に向けた取り組みを一覧でまとめました。
国名 | プラスチックごみ削減に向けた取り組み |
フランス | 使い捨てプラスチック容器を原則使用禁止 |
イタリア | マイクロプラスチックを含む洗い流せる化粧品の製造、マーケティングの禁止 |
イギリス | プラスチック製ストロー、マドラー、綿棒の配布及び販売禁止 |
台湾 | 2019年から2030年にかけて段階的にプラスチック製ストローの使用を完全禁止、無料のプラスチック製レジ袋、使い捨て容器の提供禁止 |
サウジアラビア | 厚さ250ミクロン以下のポリエチレンまたは、ポリプロピレンを使用した使い捨てプラスチック製品の製造・輸入を禁止 |
ケニア | プラスチック製レジ袋の輸入・製造・使用・販売を禁止 |
参照:「世界はどんな対策をしているの?」(昭和産業 株式会社 HP)より
マイクロプラスチックごみ削減に向けて私たちができること
マイクロプラスチックを減らすには、プラスチックごみ自体の削減が必要です。日頃の生活の中で私たちが簡単にできることとして、以下の3点が挙げられます。
- レジ袋の代わりにマイバッグを持ち歩く
- 環境に優しい商品を買う
- 3R(リデュース・リユース・リサイクル)を実践する
レジ袋の代わりにマイバッグを持ち歩く
レジ袋はプラスチックごみの代表的な例です。街中でもレジ袋が捨てられている、風に流されている光景を見る機会があります。
レジ袋は便利ではありますが、各国の取り組みを見て分かったとおり、減らすべきプラスチックごみの代表格です。
レジ袋は有料化されましたが、1枚数円と安いことからついついレジ袋を購入してしまうといった人も多いのではないでしょうか。
レジ袋の購入による、1人当たりのプラスチックごみの排出量は少なくても、人数が増えれば大きな影響を及ぼします。
言い換えると、一人ひとりが意識して、レジ袋を買わずにエコバッグを持ち歩くことで、減らせるプラスチックごみの量も多いといえるでしょう。
外出するときは、エコバッグを持って外出する習慣をつけましょう。
環境に優しい商品を買う
環境に優しい方法で作られた商品を購入することも、プラスチックごみを間接的に削減可能です。
環境に優しい商品の代表例として、環境省のホームページでも紹介されている株式会社アダストリアで開発された洗濯ネットを紹介します。
従来の洗濯ネットの網目は約0.7mm程度ですが、同社が開発した洗濯ネットの網目は0.05mmとなっています。これにより、洗濯ネットの外にマイクロプラスチックを含む微細な繊維くずが出ないような仕組みとなっています。
洗濯ネットを使用しない場合と比較して、約80%の流出抑止効果があることも同社の実験で確認されています。
参照: 『「作る責任、使う責任」海洋汚染を防止する洗濯ネットを開発。』(株式会社アダストリア HP)
値段や量だけで製品を選ぶのではなく、環境への影響も考慮して製品を選ぶようにしましょう。
3R(リデュース・リユース・リサイクル)を実践する
3Rを実践することによって、プラスチックごみの量を減らすことが可能です。まだ使えるものを捨ててしまうことは、ごみの量を増やすだけでなく、プラスチックの使用を促進することにも繋がります。
プラスチックはレジ袋やペットボトルだけでなく、電化製品や生活用品にも多く使われています。そのため新品を買うのではなく、リサイクル品を購入することや、使わなくなったものをリサイクルに出すことでもプラスチックごみの量を減らすことに貢献できます。
購入する前・捨てる前に一度、以下のような問いかけをしてみましょう。
「新品を買う必要があるか?」
「捨てずにリサイクルできるのではないか?」
まとめ
本記事では、マイクロプラスチック問題及び、関連して海洋プラスチックごみ問題について紹介しました。
マイクロプラスチックをはじめとした海洋プラスチックごみは、世界全体で抱えている深刻な問題であり、削減に向けて各国で様々な取り組みを行っています。
私たちの日常生活の中でも、マイクロプラスチックの原因となるプラスチックごみを削減するためにできる取り組みは数多くあります。
私たちの子どもや孫、その先の世代に美しい海洋環境を残していくためにも、本記事で紹介した取り組みを実践していきましょう。
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