日本におけるフェアトレード普及率は低い?その現状と私たちにできること
「フェアトレード」という言葉を聞いたことはありますか?
欧米諸国においては8割の人がYESと答えられる質問ですが、日本においてはまだ3割ほどの人しかわからない「フェアトレード」という貿易の仕組み。
日本においては相変わらずフェアトレードへの意識は低い現状が続いています。
この記事では、日本においてなぜフェアトレードの普及が進んでいないのかを考えた上で、私たちにできることとは何かをご紹介します。
多くのSDGs目標と複雑に絡んでいるフェアトレードを、もっともっと広めていきましょう。
フェアトレードとはどのような仕組みなのか?
より良い貿易のスタイルとしてSDGs目標との関連性が話題になることも多いフェアトレード。
具体的にはどのような仕組みなのでしょうか。
フェアトレードは貿易の仕組み
フェアトレードとは、日本語に訳をすると「公平・公正な貿易」です。
コーヒーや紅茶、果物やカカオなどの原材料は発展途上国で作られていることが多いとご存じでしょうか。
そんな原材料を先進国が、立場を利用しながら、 酷く安価で買いたたいているという現状が広まっていました。
そのようなフェアでない売買に対して、待ったをかけるのがフェアトレードです。
原材料の生産や加工に関わる労働者に対して、しかるべき公平な値段を支払うことがフェアトレードでは重要視されています。
フェアトレードを実施することで、 現地の労働者の生活水準を向上させたり、ビジネスの自立を目指します。
フェアトレードはなぜ大切なのか
いつも食べているチョコレートがどのような国の、どのような人たちによって作られたものか、考えたことはありますか?
チョコレートの原料であるカカオは、ガーナを始め、開発途上国と呼ばれるアフリカからきていることが多いです。
そんなカカオの産地であるガーナですが、実はカカオ生産業においては多くの問題を抱えています。
- カカオをできるだけ沢山生産するために必要以上の農薬が使われ環境破壊につながっている
- 原材料は安く買いたたかれるので、作っても作っても生産者の生活は豊かにならない
- 安い労働力を求めて、子供も農地で働いている(学校に行くよりも家業を優先)
世界から寄せられる「チョコレートを食べたい」という欲望のために、現地の生産者にしわ寄せがいっている現状です。
フェアトレードが取り入れられることで、農家の方々に適正な利益が落ちるようになり、必要以上の自然破壊や、劣悪なほどの労働環境を脱することができます。
フェアトレード認証ラベルとは
「国際フェアトレード認証ラベル」という黒字に青と緑の柄が入ったマークがあります。
この国際フェアトレード認証ラベルがついた商品は、厳しい認証プロセスを経て、社会的、環境的、経済的にフェアトレードのルールに乗っ取った商品ということです。
自分の買うものがフェアトレードであるかどうかを、このマークを見ることで簡単にチェックすることが可能です。
このマークを取得するのが難しい理由は、商品が出来上がるまでのすべての工程をチェックするからです。
原材料の生産、加工先への輸出入、加工、製造、最終製品になるまで…と細かくチェックし、認められたものだけに、この認証マークが許可されます。
日本ではフェアトレードが広がっていない現状
「フェアトレード」という言葉を聞いて、すぐにピン!と来る人は、まだまだ限られているというのが正直なところです。
一方で、欧米においてはスーパーなどで「国際フェアトレード認証ラベル」 を見かける機会も多く、マークを知っている人も多いそうです。
なぜ欧米と日本において、フェアトレードに対する認識のギャップが生まれているのでしょうか。
海外におけるフェアトレードの歴史は長い
フェアトレードという概念は、1940年代にアメリカの国際協力NGO団体が始め、そのあとヨーロッパのNGO団体でも似たような活動が始まりました。
原産国の方々の生活をサポートするという 慈善事業といったレベルから始まった活動ですが、1960年代に入ってからは本格的に貿易の仕組みとして取り組みが進みます。
1960年代頃から本格化したと計算しても、欧米においてはフェアトレードの歴史が60年以上となります。
現時点で、スーパーなどでの買い物をする世代は、 高齢層も若者も、生まれたころからこの仕組みがあるということ。
だからこそ、いつの間にか「フェアトレード商品」というものが身近になっているのでしょう。
一方日本での歴史はまだ30年ほどと短い
欧米においては歴史のあるフェアトレードですが、フェアトレードの概念が日本に入ってきたのは1990年代です。
つまり、まだ30年ほどと欧米の半分ほどの歴史です。
時間をかけて少しずつ広がってきてはいて、認証商品の数は増えてきています。
少し前のデータではありますが、フェアトレード・ジャパンによると2016年の市場規模は113億6千万円まで生長中です。
その中でも成長しているカテゴリーは、コーヒー、カカオ、コットンの3つです。
アンテナの高い方であれば、実際にお店などでフェアトレード商品として売られているのを見たことがあるかもしれません。
フェアトレード認知度は日本ではたったの3割ほど
SDGs意識やチャリティ意識の高いイギリスにおいては、フェアトレードの認知度は70-80%と「ほとんどの人がフェアトレードが何か理解している」という状況です。
その一方で、日本においてはどれくらい知られていると思いますか?
2019年に日本フェアトレード・フォーラムが実施した調査によると「フェアトレードの内容まで理解している認知率は32.8%」と3割に留まりました。
少しずつ増えてきているとはいえ、まだまだ理解までできている人は一握りというところでしょう。
なぜ日本でフェアトレードが広がらないのか
歴史の長さが違うとはいえ、欧米と日本を比較するとフェアトレードの認知率が異なるのはなぜなのでしょうか。
3割ほどの人しか「フェアトレードのメリット」まで答えられないというのは、 少し寂しい現状です。
安い方が良いという価格競争が激しい市場
日本においては、今でもなお「できるだけ安いものを買うのが良い」とする文化が根強く残っています。
主婦向けの雑誌をパラパラとめくれば「節約」「倹約」といった単語が飛び交い、いかに「安いもの」でやりくりするかといった特集が常に組まれているほどです。
そんな市場とあって、原材料の仕入れから適正価格で取引されているフェアトレード商品は「比較的高いもの」といったイメージが先行するのかもしれません。
100円のチョコレートと、500円のチョコレートが並んで発売されていたら、つい100円の方に手を出してしまうというのが現状ではないでしょうか。
環境や倫理面への意識が低い現状
SDGs目標が叫ばれるようになり、少しずつ意識改革は進んできていると言えるかもしれませんが、日本の市場は相変わらず「大量生産・大量消費」の呪縛から抜けていません。
買い物をするときには「自分が気に入るか」「値段はどうか」などの視点の方が先行し、「どのような環境で作られたものか」「どのような環境負荷があるか」といったエシカル意識は、まだまだ乏しいというのが正直なところではないでしょうか。
とはいえ、昨今のパンデミックの影響を受けて、多くの人の意識が変わりつつある過渡期。
これからは日本においても「安さ」「見た目」などの過去の評価軸から、よりグローバルな視点を持ったエシカル視点を持つ消費者が増えていくと期待されています。
フェアトレードへの理解が進んでいない
フェアトレードという単語が日本にやってきてから30年以上たちました。
それなのに、相変わらず3割の人しか理由を含めてフェアトレードのメリットを答えられないというのは、それだけ理解が進んでいないということです。
自分にとってのメリットだけでなく、現地の方へのメリットなどの理解が進めば、なぜこのフェアトレード商品が、隣の安い商品よりも値段が高いのかを理解できるはず。
そんな学ぶ機会が欠けているからこそ、相変わらず日本においては「安さ重視」の買い物スタイルが定着しているのでしょう。
フェアトレードのメリットは生産者だけじゃない!
「フェアトレードって、原産国の人にとってメリットがあるだけでしょ?」なんて思っていませんか。
フェアトレードが普及することによって、恩恵を受けられる人は沢山います。
このことを理解するだけでも、次にフェアトレード商品を見かけたときに「買ってみようかな」と背中を押されること間違いなしです。
フェアトレードにおける生産者のメリット
フェアトレードの始まりは、原産国の生産者の生活を向上させて、さらにはビジネスとして自立させること。
だからこそ、取引の段階では適切な価格を支払い、 労働に見合った対価が受け取れるような「フェア」な「貿易」としてフェアトレードが始まりました。
これによって、現地の方々の所得が増えて貧困から抜けだせたり、子供が労働する必要が なくなります。
また、労働環境も改善されるといわれています。
フェアトレードにおける消費者のメリット
フェアトレード商品を手にする消費者にもメリットがあります。
自分の買っているものは、世界の誰も傷つけることのない安心な商品ということ。
この点は、これからの消費行動において重要視されると期待されています。
また、そのような商品を積極的に買うことで、貿易の世界をよりよくしたいと考えている企業をサポートすることにも 繋がります。
加えて、作り手から売り手までのこだわりの詰まった質の高い商品を手にとることができます。
フェアトレードにおける企業のメリット
フェアトレード商品を作ったり扱うことは、企業にとってもメリットがあります。
透明性をもって商品ができるまでの過程を洗い出し、フェアトレード認証を 取得することは、企業のイメージ向上に繋がります。
今まではブラックボックス化されていて見えることのなかった「商品の裏側」について、昨今は多くの人が目を向けるようになりました。
今後はますます注目されていくポイントです。
フェアトレードにおける社会のメリット
フェアトレードが普及することで、グローバルに見たときに社会全体においてもメリットがあります。
まずは、発展途上国に適切なお金が流れるという、過去のゆがみを直すという点。
それに伴って、原産国の経済成長が進みます。
また、無理な生産活動を抑えることで、自然破壊や劣悪な労働環境を断ち切ることができ、 より持続可能なビジネスに切り替えていくことにもなります。
フェアトレードを広げるべく私たちが現状できることとは
フェアトレードをもっと多くの人に伝えるために、私たちができることは何かあるのでしょうか。
小さなことかもしれないけれど、より高い認識率に向けて、 SDGsへの関心が高まっているこのタイミングでできることを考えてみました。
積極的にフェアトレード製品を購入する
フェアトレードの普及に少しでも力になりたいと思ったら、まずは商品を買うところから。
お店で売られているフェアトレード商品をチェックして、 お気に入りのものを見つけてみましょう。
コーヒーや紅茶、チョコレートなどは比較的多く売られていますし、ファッション系ではコットンなどで目立ちます。
フェアトレードに力を入れている企業をサポートする 意識で、生活の中にフェアトレードアイテムを増やしていきましょう。
関連記事:フェアトレード商品とは?できることや問題点をわかりやすく解説!
フェアトレード商品の良さを広める
フェアトレードの商品を食べたり、使ってみて、良いなと感じたら、ぜひ周りの人にも広めていきましょう。
単純に「この商品よかったよ!」といった形でおすそわけしたり、SNSなどにアップするだけでもOKです。
また、父の日・母の日ギフトや、お誕生日プレゼントのタイミングにて、 フェアトレード商品を贈るというのも魅力的です。
会話のきっかけを掴んだら、少しだけフェアトレードの概念についてシェアすると良いかもしれません。
現状は3割の認知度|じわじわと広げたいフェアトレード
多くの人がSDGsへの関心を持ち、自分にできる小さな貢献は何かな?と考えるようになっている昨今。
そんな中で、ぜひ取り入れていきたいのが「フェアトレード」です。
フェアトレードとは、直訳すると「公平・公正な貿易」。
原材料を作る発展途上国の方々に、適正な対価を払って作られた商品には、 フェアトレードマークが付与されています。
このような商品を手にすることは、現地の方、そんなビジネスを行う企業、そしてより良い社会に向けたアクションに繋がります。
もちろん、質の高い商品を手にできるという個人のメリットにも繋がります。
コンビニやスーパーなどで買い物をするときは黒・青・緑の国際フェアトレード認証ラベルの貼られた商品がないか、ぜひチェックしてみてくださいね。
『GREEN NOTE(グリーンノート)』は環境・社会課題をわかりやすく伝え、もっと身近に、そしてアクションに繋げていくメディアです。SDGs・サステナブル・ESG・エシカルなどについての情報や私たちにできるアクションを発信していきます!