日本の魚の絶滅危惧種の数や種類とは?無限ではない海や川の豊かさ
日本の魚の絶滅危惧種にはどのような魚がいてどれくらいの数なのでしょうか。
日本は四方を海に囲まれ、多くの川が流れる水資源の豊かな国です。
しかし日本の川や湖などに住む魚たちにも、絶滅を危惧されている種が多く存在します。
このままでは姿を見られなくなってしまう可能性は決して小さくありません。
まずは現実をしっかりと見つめることが大切です。
事実をきちんと受け止め、絶滅危惧種の増加を食い止める努力へと、是非つなげてください。
絶滅危惧種とは何かを知ろう
絶滅危惧種やレッドリスト、レッドデータに関して簡単に解説します。
絶滅の恐れのある生物たち~絶滅危惧種とは~
絶滅危惧種とは、簡単に言ってしまうとこのままでは近い未来に絶滅する危険性の高い野生生物のことです。
原因はさまざまありますが、人間の経済活動によって生じる自然の乱開発や環境汚染、食料のための乱獲、気候変動などが生息数を大きく減少させたことが挙げられます。
レッドリスト・レッドデータブックとは
「レッドリスト」と「レッドデータブック」はどちらも絶滅危惧種の生物に関わるものですが、違いがあります。
以下にそれぞれどのような内容なのかを解説します
絶滅の危険性のある野生生物をリストにしてデータ化したものを「レッドリスト」と言います。IUCN(国際自然保護連合)や日本では環境省や自治体が、おおむね5年ごとに見直しをかけながら作成されるものです。
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- レッドデータブック
レッドリストに掲載した種について、生息状況や絶滅しそうな原因などを取りまとめた解説書になります。レッドリストより詳しい情報の記載がなされており、およそ10年後ごとに見直しが行われています。
食卓から魚が消える危険性
身近に食べている魚の種類にも絶滅危惧種がいるのをご存じですか。
マグロやマアジ、マサバなどは絶滅予備軍と言われています。
日本は古くから豊かな海産物に恵まれ、食卓にはおいしい魚が並んできました。
また和食の代表でもある寿司はいまや世界的に食べられています。
しかし、そのおいしい魚や海産物が食卓から消えてしまう危険性が高くなっています。
日本ですでに絶滅した魚と海洋生物は?
ここではすでに絶滅した魚をご紹介します。
どのような魚が絶滅してしまったのかをしっかりと学びましょう。
ミヤコタナゴ
ミヤコタナゴは体長10cmほどの小魚です。
タナゴ類は生きた貝に卵を産むという特殊な習性があります。
卵を生みつける貝は非常に水質汚染に弱い種類なため、都市化による川の汚染から貝が死に絶え、そのせいでミヤコタナゴも絶滅したと言われています。
参照:東京都島しょ農林水産総合センター「絶滅した魚たち ミヤコタナゴ」
チョウザメ
今現在日本で見られるチョウザメはすべて外来種であり、日本に生息している本来のチョウザメではありません。
かつては北海道の川に大量のチョウザメが生息していました。
しかし河川の改修や開発工事により、2007年以降は姿を見ることができなくなったため絶滅種として指定されています。
オガサワラサンゴ
オガサワラサンゴは、世界的にも稀な種のサンゴです。
1935年に小笠原で記載された新種ですが、記載後の調査では一度も確認されたことがないため、国内では絶滅した種として選定されました。
日本の絶滅危惧種の魚類と海洋生物は?
絶滅危惧種に指定されているのは魚ばかりではありません。
現在国内で絶滅危惧種に指定されている魚や海洋生物をいくつかご紹介します。
ニホンウナギ
日本人が大好きなウナギ。
土用の丑の日にはスーパーにたくさんの商品が並ぶのに絶滅危惧種なんて、と驚かれるかもしれません。
しかしウナギは過度の乱獲と生育環境の悪化が原因でその数を減らしています。
今後は過剰にウナギを食べることを控えなくてはいけません。
イトウ
イトウは別名「幻の魚」とも呼ばれています。
淡水魚の一種で、現在では北海道にのみ生息が確認されている魚です。
イトウは河川の上流で産卵するという特徴があるため、河川の改修工事や上流のダム建設の影響で個体数が減っているという報告があります。
ウミガメ
大きな甲羅を持ち、悠々と海を泳ぐ姿が人気のウミガメ。
しかしそのウミガメも世界に7種いるうち6種が絶滅危惧種です。
原因は海の汚染や乱獲の他に「混獲」が挙げられます。
これは目的以外の生物を捕獲してしまうことです。
魚を捕る目的の網にウミガメも捕まってしまい、多くのウミガメが犠牲になっていると言われています。
ハイガイ
ハイガイは国内では絶滅危惧種に指定されているので市場に出回ることはありません。
古い貝殻は海に良く打ち上げられるためおなじみの貝殻ですが、ハイガイ自体は河川開発や海岸開発、水質汚などの理由で生息数が激減しています。
参照:福島県の希少野生生物
ハナサンゴモドキ
ハナサンゴモドキは種子島や屋久島に分布しています。
サンゴは非常にデリケートで、水温や塩分濃度などの生息環境の制約が多い生物です。
そのため、地球温暖化による気候変動の影響を大きく受けてしまい、生息数を大きく減らしています。
なぜ絶滅危惧種は生まれるのか
それではこのような絶滅危惧種はどうして存在するのでしょうか。
絶滅危惧種が生まれてしまう原因を解説していきます。
深刻な海洋汚染問題
年間800万トンは海に流れ込んでいると言われているプラスチックゴミは自然に分解されることはありません。
さらに数ミリサイズのマイクロプラスチックとなって、海洋生物に深刻な悪影響を及ぼしています。
マイクロプラスチックを餌と勘違いし、飲み込んだ魚はやがては人の口に入ります。
その他にも海に流れ出る家庭排水や工場排水などの汚水も、深刻な海洋汚染の原因のひとつです。
河川の開発や護岸による環境破壊
日本の高度成長期には公共事業の一環として、自然に対する乱開発が多くされました。
河川の改修工事や開発事業もそのひとつです。
不必要な護岸工事や川の流れを人為的に変化させる河川の改修は、川に住む生物たちの住処を奪い生態系を破壊しました。
外来種による被害
外来種とは本来その国には生息していない生物が、偶然または人為的に運ばれ定着したものです。
さらに在来種に対して害をなすものを「侵略的外来種」といいます。
水生生物でいえば「アメリカザリガニ」が代表的な例でしょう。
食用として飼われていたウシガエルの餌として、1927年に持ち込まれたアメリカザリガニは、あっという間に日本全国に繁殖し日本固有の水生生物の生態系を脅かす存在になっています。
人間の安易な生物の持ち込みが生態系のバランスを破壊しています。
海や水辺に住む生物を守るための取り組み
これ以上海や川に住む生き物たちを犠牲にすることのないようにどのような取り組みを行えばいいのかを考えることが重要です。
ここではどのような取り組みがあるかをご紹介します。
MSC「海のエコラベル」
WWFの『Living Blue Planet』によると、海洋生物個体群の規模は、1970年から2012年にかけほぼ半分にまで減っています。
また、国連食糧農業機関(FAO)の『世界漁業・養殖業白書 2022年』によれば、現在、世界の水産資源の3分の1以上は持続可能なレベルを超えて漁獲されていると言われています。
MSC「海のエコラベル」とは、おいしい魚たちをいつまでも食べることができるように、水産資源と環境に配慮し、適切に管理された持続可能な漁業で獲られた水産物につけられるラベルのことです。
MSCラベルがついた商品を選ぶ消費者が増えることで、需要が高まれば、より多くの漁業者が持続可能な漁業に向けた改善に取り組みます。
水産資源は回復に向かい、消費者は安心感をもっておいしい魚を食べることができます。
参考:MSCウェブサイト「危機に直面している海」より
川や海の水質改善・環境保全
かつて東京の多摩川は、生活排水の泡で覆いつくされ異臭を放ち「死の川」と呼ばれていました。
高度成長期に多くの汚水が流されたからです。
しかしその後下水処理が整備され20年かけて再び魚の住む美しい川に戻りました。
国内では東京湾の水質改善に向けて2002年「東京湾再生推進会議」を開き、「東京湾再生のための行動計画」を策定しました。
また川の護岸に関しても生態系を破壊しない自然工法で行うなどの取り組みが全国的に開始されています。
身近にできることは?
海や川に住む魚や生物たちを守るために何ができるでしょうか。
些細なことでも始められることはたくさんあります。
いくつか例を挙げていきましょう。
- 川や海にゴミを捨てない・ゴミがあったら拾う
- 合成洗剤を使用しない
- プラスチック製品の使用を減らす
- MSC「海のエコラベル」は付いた水産物を買う
- 海や川の生物たちについて学ぶ
- 飼っている魚などを川や海に逃がさない
まとめ:美しい日本の海や川に住む魚たちを守っていこう
ほとんどの方が川や海で魚釣りをしたり水辺で遊んだりした経験があるのではないでしょうか。
日本人にとって、海や川はそれだけ身近な存在です。
おいしい魚が食卓にあがっていたからこそ、日本人は常に海や川の豊かさを実感できていたのです。
日本の海や川の美しさや豊かさを守るためにも、魚や水生生物、海洋生物の絶滅危惧種を知ることは大切です。
しっかりと事実を受け止め、できる努力を考えてみてはいかがでしょうか。
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