食品廃棄削減!世界・日本のおもしろいアイデアを紹介
食品廃棄(食品ロス)は、資源の無駄遣いや、運搬・処理時の温室効果ガス排出など、地球にさまざまな影響を及ぼします。
2023年6月、農林水産省は2021度の国内での食品廃棄量は523万トン(推計値)におよぶことを発表しました。
そのうち、食品製造や飲食店で出る食品廃棄量は279万トン、家庭から出る食品廃棄量は244万トンです。
参考:農林水産省「最新の食品ロス量は523万トン、事業系では279万トンに」
世界中で問題となっている食品廃棄を解決するために、私たちはどのようなことができるでしょうか?
今回は、食品廃棄を減らすおもしろいアイデアや日本国内外の企業が始めた新しい取り組みを紹介します。
食品廃棄(食品ロス)とは?
食品廃棄とは、まだ食べられるにもかかわらず、捨てられてしまう食品です。
「食品ロス」または「フードロス」と呼ばれることもあります。
食品廃棄は、製造業者や飲食店などの食品関連事業者から発生する「事業系食品ロス」と家庭から出る「家庭系食品ロス」に分類されます。
事業系食品ロスが出る原因は、主に以下の3つです。
- 規格外品や運搬時・小売店での破損
- 仕込みすぎ(業者)、注文しすぎ(消費者)
- 3分の1ルールの遵守(賞味期限の3分の1以内に食品を搬入する商慣行)
家庭系食品ロスの場合は、以下の原因が挙げられます。
- 作りすぎ、食べ残し
- 消費しないうちに賞味期限・消費期限を切らす
- 皮や茎、ヘタなどの過剰除去
上記は、主に日本においての理由です。
国や地域によっては、物流・保管の設備不足などが原因で食品廃棄が発生している場合もあります。
食品廃棄を減らすおもしろい3つのアイデア
では、食品廃棄を減らすにはどうすれば良いのでしょうか?
買いすぎや過剰除去を減らすなどの方法は有名ですが、他にもさまざまなアイデアがあります。
- フードドライブに寄付する
- 廃棄食材を使った料理を食べる
- 廃棄される食品をアップサイクルする
今回は、おもしろさや新しさから注目を集めているアイデアを紹介します。
フードドライブに寄付する
「フードドライブ」とは、家庭で使い切れない食品を学校や企業などに持ち寄り、寄付する活動です。
集められた食品は、地域のフードバンク(寄付された食品を提供する団体)を通して福祉施設や子ども食堂、生活困窮世帯に無料で提供されます。
フードドライブは1967年にアメリカで生まれ、その後世界中でフードバンクが設立されました。
日本では2013年に日本フードバンク連盟が設立。
その後、フードバンクやフードドライブという取り組みが広がっていきました。
フードドライブで回収されるのは、一般家庭で発生した消費しきれない食品です。
未食であることや賞味期限が切れていないことを確認してから、寄付しましょう。
廃棄食材を使った食べる
近年、廃棄食品を使った料理を提供する「廃棄食品レストラン」が増えています。
オランダ・アムステルダムにある「Instock(インストック)」というレストランでは、食べられるのに捨てられてしまう食材をスーパーや生産者から仕入れ、調理して提供しています。
また大阪市のフードロス専門料理店「Hi,KI(ハイキ)」では、捨てられる鯛のアラを使用したラーメンや、規格外野菜、未利用魚を使ったイタリア料理などが楽しめます。
参考:フードロス専門料理店「Hi,KI」
美味しい料理を食べるだけで社会貢献できるため、外食がもっと楽しくなりますよ。
廃棄される食品をアップサイクルする
「アップサイクル」という言葉を聞くと雑貨や素材などを思い浮かべるかもしれませんが、近年では食品をアップサイクルする取り組みも注目されています。
「アップサイクル」とは、捨てられるはずだったものに価値をつけて、新しいものに生まれ変わらせること。
食品から別の食品を作ったり、紙や衣類にしたりとさまざまな取り組みが行われています。
例えば、パンから作ったクラフトビール「upcycle(アップサイクル)」。
これは、ベーカリーで出た廃棄されるパンの耳を使ってつくられたクラフトビールです。
パン由来のコクとすっきりとした酸味や香ばしさがあり、何杯でも飲みたくなるビールなのだとか。
参考:upcycle
海外の食品廃棄削減への新しい取り組み
次に、海外で行われている食品廃棄削減の新しい取り組みを2つ紹介します。
- 誰でも自由に利用できる「セルフサービス冷蔵庫」(スイス)
- AIで食品廃棄を減らすプログラム「Winnow’s analytics platform」(アメリカ)
誰でも自由に利用できる「セルフサービス冷蔵庫」
スイスのジュネーブには「セルフサービス冷蔵庫」が設置されています。
この冷蔵庫は「地域の冷蔵庫」として、余った食材や使い切れない食材などを自由に置けたり、欲しいものがあれば自由に持ち帰ったりすることができます。
ジュネーブの非営利団体「FREE-Go」によって2022年に1台目が設置され、2023年末までには5台設置する予定だそうです。
また「FREE-Go」では、ボランティアが集合住宅などで回収をおこなっています。
冷蔵庫に入れることができるのは、開封済みや調理済みの食品、冷凍食品です。
アルコール類は入れることができません。
冷蔵庫の中身は、日や時間によって異なり、何が入っているのかワクワクしちゃいますね。
参考:FREE-Go
AIで食品廃棄を減らすプログラム「Winnow’s analytics platform」
「Winnow’s analytics platform」は、AIを使った食品廃棄物分析プログラムです。
個人店から大型店舗、船内レストランなど、アメリカを中心に世界中で利用されています。
このプログラムには、大きく分けて3つのタイプがあります。
- vision control(ヴィジョン・コントロール):カメラで食品廃棄を記録。日ごと・月ごとに定期的なレポートの提出。
- vision AI(ビジョン・AI):AIを利用した食品廃棄物追跡機能、自動記録機能により、どのような流れで廃棄されるのかを記録。
- vision AI+(ビジョン・AI+):vision AIの機能に加え、メニューやレポートのカスタマイズなど。
多忙な飲食店では、いつどれだけ何が廃棄されているのか記録するのは大変です。
しかし、このようなプログラムを使えば、自動的に記録が残るため、食品ロス削減の改善点を見つけやすくなります。
日本の食品廃棄削減への新しい取り組み
次は、日本の食品廃棄削減への新しい取り組みをみてみましょう。
- 廃棄食材から作る「食べられるセメント」
- 食品ロス&物流問題解決に!ローソンの「冷凍おにぎり」
- 家庭の未開封食品が寄付できる「ファミマフードドライブ」
日本でも新しい取り組みが続々と始まっています。
廃棄食材から作る「食べられるセメント」
東京大学発のベンチャー企業「fabula(ファーブラ)」が開発したのは「食べられるセメント」です。
食べられるセメントは、粉末状にした規格外の野菜やコーヒーかす、加工時に発生する食品の端材などを粉末状にし、それらを熱圧縮することで作られます。
高い強度があり、その強さは建材に使用可能なほど。
白菜でできたセメントは厚さ5mmで30kgの重さに耐えられるそうです。
使用する素材によって色や柄はさまざま。
100%天然素材でできており、世界に一つだけのものが作成可能です。
金型次第で建材や小物、家具などにも生まれ変わります。
参考:fabula
食品ロス&物流問題解決に!ローソンの「冷凍おにぎり」
ローソンでは8月22日から11月20日までの3ヶ月間「冷凍おにぎり」を販売する実験を実施しています(2023年現在)。
販売している店舗は東京都内と福島県内の一部店舗。
販売状況次第で、販売店舗を増やすそうです。
種類は全6種、価格は税込138円〜税込268円です。
コンビニで販売されているおにぎりの賞味期限は2日程度ですが、冷凍おにぎりの場合は120日まで延びます。
賞味期限が短いうえ、大量仕入れされやすい冷蔵のおにぎりより、廃棄される可能性は減ると考えられます。
また冷凍おにぎりは、2024年4月から始まることが懸念されている、トラック運転手の人手不足問題(2024年問題)の解決策としても注目を集めています。
家庭の未開封食品が寄付できる「ファミマフードドライブ」
ファミリーマートでは、家庭で消費し切れなかった食品を持ち寄る活動「ファミマフードドライブ」が行われています。
2021年4月に一部店舗で始まり、2023年8月には47都道府県に拡大。2023年10月27日の時点で実施している店舗数は、2,533店舗です。
受付可能な食品の条件は「賞味期限が2ヶ月以上」「常温保存が可能で未開封」であること。
生鮮食品やアルコール類は対象外です。
これまで集まった食品は、2021年4月〜2023年9月までで92.2トンにおよびます。
身近なコンビニで気軽に食品ロスを減らせるのは、私たち一人ひとりの環境意識を高めることにつながります。
お買い物ついでに、家庭の不要な食品を寄付してみてはいかがでしょうか。
まとめ
毎日のように、世界のどこかで発生している食品廃棄。
食品廃棄は、地球温暖化や飢餓などにもつながります。
またSDGsでは「目標2.飢餓をゼロに」や「目標12.つくる責任つかう責任」などにも関係しており、世界中で解決に向けて取り組まれている問題です。
食料廃棄をなくすためには、一人ひとりが買いすぎや使い切り・食べきりなどを意識することが大切です。
また、個人の取り組みと併せて、今回紹介したユニークな取り組みを利用してみると、もっと楽しく食品廃棄を削減できるかもしれませんよ。
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