ボディポジティブとは?自分らしさを認める運動や日本人の声を紹介
ダイバーシティの意識が高まる中、容姿や美の多様性を認める動きも活発化しています。
その中で知っておきたい言葉が「ボディポジティブ」です。
自分の身体を好きになれない方もいるかもしれません。
体型のコンプレックスやダイエットに悩む人たちにとって、ボディポジティブは、ありのままの自分を認めるヒントになる価値観といえます。
今回は、ボディポジティブの意味や社会問題を分かりやすく解説します。
美の基準を再定義する運動や日本人の声もまとめました。
ボディポジティブの価値観を通して、「本当の美しさとは何か」を一緒に考えましょう。
ボディポジティブとは
ボディポジティブとは、ポジティブボディともいわれ、自分の容姿を否定するのではなくありのまま受け入れようという考え方です。
Instagramには、「#Body positive」の投稿が1,900万件以上も投稿されています。(編集部調べ:2024年1月24日時点)
テレビやSNSなどで理想とされる美しさを評価基準にするのではなく、どんな体型やサイズもプラスのイメージをもつことを大切にしています。
どうしてボディポジティブが注目されるのか
ボディポジティブの反対語としてよく用いられるのがボディジェイミングです。
ボディジェイミングとは、体型に対する批判を意味します。
SNSを中心に、容姿を馬鹿にしたり、批判したりするなどの誹謗中傷が問題視されています。
影響力のあるモデルや歌手、俳優などが容姿のあり方を呼びかけ始めたこともあり、ボディポジティブの価値観がより重要視されるようになりました。
「痩せているのが美しい」という固定概念をなくす動きも活発化しているのも、ボディポジティブが注目される理由といえるでしょう。
1970年頃から、世界的にファッション誌やショーなどで、痩せているモデルの起用やダイエット特集を取り入れ、雑誌やアパレルブランドの売り上げを伸ばしました。
けれども「痩せ型=理想的な体型」という考えが広まると同時に、欧米では拒食症の患者も増加しました。
心身ともに健康で暮らすためにも、社会や他人が決めた価値観に苦しむのではなく、自分が心地よくいられる体型を受け入れる生き方が重要といえるでしょう。
人の外見・身体的な特徴で人を判断する言葉である「ルッキズム」についての記事も参考にしてください。
関連記事:見た目が9割?SDGsに関わるルッキズム「外見至上主義」にある社会問題
参考:ボディシェイミング | SDGs用語集 | 一般社団法人 日本ノハム協会 (noharm.or.jp)
参考:やせすぎモデルが禁止されるワケ : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
著名人が考えるボディポジティブ
日本でもシンデレラ体重やモデル体重など痩せ型を美とする発信をSNSでよく見かけます。
自分の心身を守るためにも、これまで刷り込まれてきた価値観から脱却し、ありのままの容姿を受け入れる努力が大切です。
では、表舞台に立つ著名人はどのような考えをもっているのでしょうか。
今回は、日本人の声を中心にまとめました。
渡辺直美
世界で活躍する渡辺直美さんは、「太りたくても太れない人でも背が低い人でも同じ。どんな体形も素敵なんだ」と発信し続けています。
10代の頃は周りからの声を気にして、本当の自分を出さずに我慢ばかりしていたそうです。
けれども、他人のものさしで生きることはおかしいと気づき、ありのままの自分を受け入れるようになりました。
「ダイエットは否定しないけど、自分を責めるようなダイエットはしないで。日本の女性たちはそこに陥りがち。自分らしい体形は人それぞれだし、とにかく自分を好きでいることが基本」というメッセージに励まされる人も多いのではないでしょうか。
参考:ボディ・ポジティブな渡辺直美が語る「ボディについて、思うこと」|ハーパーズ バザー(Harper’s BAZAAR)公式 (harpersbazaar.com)
ゆりやんレトリィバァ
ゆりやんレトリィバァさんは、45kgの減量に成功して話題となりました。
けれども、ダイエットの目的は、画一的な世間の美の基準に寄せたいからではなく、自己満足のためでした。
今でも体型にコンプレックスはあるものの、「誰かになろうと思ったってなれない」と考える彼女は、最高の自分になるために努力を続けているそうです。
SNSでは「二重じゃないからブスや」とか、「痩せてもまだ太っていてキレイじゃない」などの周りからさまざまな声が届いても、自分の身体を自分の手で大切に育てることを惜しまない姿勢は、まさにボディポジティブの考えといえるでしょう。
参考:「頑張れば、最高バージョンの自分になれる」──ゆりやんレトリィバァの体の愛し方。【私とからだと社会の関係】 | Vogue Japan
バービー
「自分のカーヴィーな身体が大好き」と公言したり、プラスサイズの下着もプロデュースしたりするバービーさんは、「ボディポジティブの人」と高く評価されています。
学生時代はニキビ跡や太った身体など、コンプレックスを多く抱えていたそうです。
しかし、芸人として活躍する今は、痩身の呪縛から解き放たれたそうです。
より自分の容姿と向き合えるようになったことで、自分のベストな体重やボディラインが分かるようになりました。
そして、「自分の身体をありのまま愛そう」というより「自分の身体を否定したり卑下したりしないでほしい」というメッセージを発信し続けています。
ボディポジティブな生き方には、自分の身体をすべて愛せない部分も受容することも大切といえるでしょう。
参考:バービー「自分のからだを否定しないで」“ボディポジティブ”ではない本音を吐露|インタビュー – FASHION BOX (tkj.jp)
竹脇まりな
宅トレYouTuberとして人気がある竹脇まりなさんも、ボディポジティブのムーブメントを起こす一人といえるでしょう。
2023年に出産した後、産後の体重や体型を公表して話題となりました。
これまでの概念だと「トレーナーはスリムでなければいけない」という考えがあるかもしれません。
けれども、竹脇まりなさんは、周りからどう思われるかではなく、今の自分を愛することを重要視しています。
Instagramの投稿でも「無駄についた脂肪ではなく安全安心な出産をするためについた脂肪なので全く無駄ではない!!表情も柔らかくなったっていわれるし、今は今でとても誇らしいボディなのでこの身体に感謝です」と語っていました。
今の自分にとって最高の身体になるために努力する大切さを発信しています。
ポディポジティブを普及する運動
続いては、ボディポジティブを広めるためのムーブメントを見ていきましょう。
企業事例を以下にまとめました。
プラスサイズの人形「バービー」
米国マテル社のブランドであるバービー(Barbie™)は、2016年1月に、トール(長身)・カービー(曲線美)・プチ(小柄)の3タイプの体型を新たに発表しました。
肌の色・瞳の色・髪型もさまざまで、人形を通して容姿の多様性を伝えています。
プラスサイズの下着「TomboyX」
シアトル発の下着ブランドのTomboyXは、サイズがXS から4X まで幅広く展開していて、ユニセックスなデザインが人気です。
着る人が自分らしさを表現できるかどうかを重視しています。
容姿や性の多様化に柔軟に対応した取り組みといえるでしょう。
参考:シアトル発!自分を自由に表現するための下着ブランド 『TomboyX』CEO フラン・ダナウェイさん|JUNGLECITY.COMシアトル日本語情報サイト
プラスサイズのスポーツウェア「ナイキ」
ナイキは、1Xから3Xまでだった従来のプラスサイズを、0Xから4Xまでのサイズ展開を拡大させました。
これまでは、商品開発の際に必ずしも幅広い体型やサイズを考慮していませんでした。
そこから、サイズの問題を解決するためにデザインプロセスを再定義します。
そして、あらゆるサイズ・身長・体型であっても、ウェアがよりよくフィットするように改良しました。
プラスサイズのモデルの起用
世界的なファッション雑誌「VOGUE」は、積極的にプラスサイズのモデルを起用しています。
2022年の11月号の表紙を飾ったナタリー・ヌーテンブームは、VOGUEのInstagramで「あらゆる体型、サイズ、肌の色をした若者たちが、自分は今のままで十分だと理解することは成長に不可欠だ」と語っています。
多様性にあふれたモデルが活躍することで、本当の美しさを再構築しているといえるのではないでしょうか。
ボディポジティブは自分らしさと向き合うこと
ボディポジティブとは、多様な容姿を評価する言葉です。
ダイバーシティに欠かせない価値観である一方で、ボディポジティブに違和感を覚えたり批判的な声があがったりしているのも事実です。
けれども、ボディポジティブの本来の目的は、他人の判断基準やこれまでの概念にとらわれず、自分らしい生き方を尊重することではないでしょうか。
とはいえ、他人と比べて落ち込むこともあるかもしれません。
最も大切なことは、自分の身体がどう見られているかではなく、どのような体型でいることが自分にとってベストなのかを見つけ出すことです。
ボディポジティブの考え方は、ありのままの自分を大切にして生きるヒントになるのではないでしょうか。
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