マリメッコ(Marimekko)のリュックやマグカップがサステナブルで優れている理由
リュックにマグカップ、ハンドバッグに食器やカーテンなど、北欧独特のシンプルでスタイリッシュなデザインが魅力のマリメッコ。
インテリアや小物以外にも、Tシャツやワンピース、ジャケットなど多彩な衣服も取りそろえており、お正月の福袋としても人気です。
マリメッコは単にお洒落なだけでなく、タイムレスなデザインやリサイクル素材を使用するなど、サステナビリティにも優れています。
今回は、次世代のライフスタイルブランドであるマリメッコの製品やSDGsへの取り組みについてご紹介します。
マリメッコ(Marimekko)とは?
マリメッコは、北欧デザインを代表するフィンランドのライフスタイルブランドで、シンプルでユニークかつ斬新な色彩とデザインが特徴です。
Marimekkoの“Mari”は、「マリ」「マリー」というフィンランドや北欧によくある女性の名前です。
“mekko”とは、フィンランド語で「ドレス」のこと。
日本語風にいうと、「マリのドレス」という意味になります。
たった1枚のドレス(Marimekko)が、人の心をポジティブで豊かにすることを起点にしています。
北欧フィンランドのライフスタイルブランド
北欧の洗練されたシンプルな家具やインテリアは世界的に有名で、日本でも人気があります。
北欧は寒冷地であり、日照時間も短いので、自宅で過ごす時間が長くなりがちです。
そのため、寒い冬を快適に過ごすために、シンプルで心地よいデザインのインテリアが発達しました。
マリメッコは北欧独特のテイストに、プラスアルファで斬新な色彩とデザインを加え、オリジナル性を高めています。
ライフスタイルブランドとは、商品を通じてライフスタイルを豊かにすることを目指すブランドのことです。
ライフスタイルプロダクトとも呼ばれます。
マリメッコの前身はテキスタイルメーカーのPrintex(プリンテックス)社で、同社の専属テキスタイルデザイナーであるアルミ・ラティア(Armi Ratia)によって、1951年に創設されました。
マリメッコは、バッグや装飾品、服飾、雑貨、キッチン、インテリアなど幅広いライフスタイル製品の開発・生産を行っています。
製品を通じて、「公正で平等な未来」に向けて人々の生活や社会に貢献することを目的としています。
マリメッコの製品は、美しい北欧的なデザインだけでなく、SDGsやエシカル理念に基づいているのが大きな特徴です。
製品のサステナビリティには特に強く意識されています。
フィンランドのSDGsへの取り組み
フィンランドは、SDGsやエシカルな分野で世界をリードする存在です。
2021年度より、フィンランドのSDGs達成度が3年連続で1位を維持しています。
国民の自由と平等への意識が高く、国会議員の46%が女性です。
また、男女格差が極めて小さい国の一つです。
社会保障負担率は高いものの、子育てや教育などの各種支援制度が充実しており、美しい自然や自由な風潮も国民の満足度を高めています。
SDGs17の目標
SDGsの17の目標について詳しくはこちら
2015年に開催された国際連合の「SDGsアジェンダ」を経て、フィンランドは2017年に独自のSDGs開発目標である「AGENDA 2030 AND FINLAND」を設定し、その目標に向けて着実に進んでいます。
フィンランドが掲げた目標は、17の相互関連する目標を基に大きく2つの分野に集約されています。
- カーボンニュートラルと資源を賢く活用するフィンランド
- 差別のない平等で有能なフィンランド
以上2つの目標は互いに補完しあい、両方を実現することで総合的なSDGsの目標達成につながり、社会生活を幸福に導くと考えられています。
2050年カーボンニュートラルに向けて、フィンランドの2030年の目標は、資源を効率よく賢明に使うための基盤づくりです。
そのためには、企業の競争力を高め、国民の能力・技能・知識を向上させることが必要です。
フィンランド政府は、無料で受けられる教育制度を整えるとともに、エネルギーに関する投資プロジェクトや研究・開発に対して「Energy aid」と呼ばれる支援金を交付しています。
特に、バイオ燃料・バイオエネルギー・ヒーティングソリューションなどのエネルギー・テクノロジーの分野において、フィンランドは世界をリードしています。
サステナビリティに優れたマリメッコ(Marimekko)のプロダクト
フィンランドはサステナビリティ分野で優れた取り組みを行っており、マリメッコもさまざまなSDGsを実践しています。
サステナビリティが今後のファッション業界を大きく左右していくというのがマリメッコの見解です。
なかでも、商品の寿命の長さが、業界全体で重要なキーワードになると考えています。
マリメッコ(Marimekko)のSDGs 7つの目標
マリメッコはSDGsのゴールに向けて、以下の7つの目標に注力しています。
目標5:ジェンダー平等、女性・女児の能力強化
目標6:すべての人々の水と衛生の利用と持続可能な管理
目標7:すべての人々にクリーンなエネルギーを確保
目標8:すべての人が生産的で働きがいのある仕事に従事
目標12:持続可能な生産消費形態を確保
目標13:気候変動の影響を軽減するための緊急対策
目標17:パートナーシップで目標を達成する
参照:Sustainability Our goal – Marimekko
参照:持続可能な開発目標 – 国際連合広報センター
マリメッコが具体的にどのようにサステナビリティに取り組んでいるか、詳しく見ていきましょう。
長く使えるタイムレスなデザイン
マリメッコのサステナビリティは、まず、タイムレスで長く使えるデザインにあります。
「マリメッコが提案するのはトレンドに流されるファッションではありません。私たちが提案するのはタイムレスで長く使えるデザインであり、これが時にファッショナブルに見えるのです。」
以上のように創設者アルミ・ラティアは述べ、自社のファッション哲学を語っています。
マリメッコのプリントデザインは、このモットーに基づき、通算3500種類におよんでいます。
ウニッコ 1964年(Unikko)
例えば、日本でもよく知られている花柄のウニッコは、1964年に初登場しました。
60年前のデザインとは思えないほどポップでスタイリッシュなのが特徴です。
黒と牝馬 1954年(Musta Tamma)
こちらは、黒を背景に幾何学調のドット模様とシンプルな馬のデザインが、高尚ながらもカジュアルな雰囲気を醸し出しています。
親しみやすく可愛いデザインです。
イチゴの山1969年(Mansikkavuoret)
上のデザインは1969年のもので、北欧らしいシンプルさと鮮やかな色のコントラストが斬新です。
マリメッコのデザインは、トレンドにまったく左右されないモチーフが斬新なラインや色彩でアレンジされています。
そのため、いつの時代でもお洒落で新しいイメージを喜びとともに与えてくれます。
使い捨てられることがない一生ものの価値を提供することが、マリメッコの理念です。
一世代だけでなく、次の世代にも使えるサステナブルな製品を目指しています。
一生ものだから自然環境や未来に貢献できる
製品の寿命が伸びることで、CO2削減(GHG排出量の削減)など自然環境への貢献が期待されます。
具体的な効果としては、以下のような点が挙げられます。
- 材料などの必要な資源が低減 → 資源の使いすぎが防げる
- 生産時にかかるエネルギー費用が低減 → CO2削減につながる
- 包装資材の使用量が低減 → 資源・CO2削減につながる
- デリバリーにかかるエネルギー費用が低減 → CO2削減や交通渋滞の緩和
マリメッコによると、製品寿命が2倍に増えただけで、工場が排出するCO2は44%削減できるとのことです。
マリメッコのCO2削減目標(2025年)は以下のとおりです。
- 自社事業で発生するCO2を40%削減
- 物流におけるCO2を50%削減
- テキスタイルのマテリアルから発生するCO2を20%削減
- テキスタイルで使う水の使用量を50%削減
また、2022年には、CO2削減に関する国際認定イニシアティブであるSBT(the Science-Based Target)にも加盟しました。
マリメッコは、サプライチェーンを含めたCO2削減にも着手し始めています。
CO2削減を企業の義務として捉え、積極的な気候変動対策を推進しています。
参照:Sustainability at Marimekko
サーキュラーエコノミーとマテリアルへのこだわり
サステナブルなプロダクトとしてマリメッコが重視しているのは、未来への影響を削減する生産方法です。
マリメッコはサーキュラーエコノミーの原則に基づき、新しい技術や素材を採用し、マテリアルを持続的に活用する方法に取り組んでいます。
サーキュラーエコノミーのイメージ
従来は、リニアエコノミー(線型経済)と呼ばれる大量生産が主流でした。
この経済モデルでは、マテリアルは一度使用されたあと、エンドユーザーによって廃棄され、資源の大量消費と廃棄物の増加をもたらす仕組みです。
一方、サーキュラーエコノミーでは、使用済みのマテリアルをリサイクルなどで再利用し、次の製品に活用します。
これにより、資源の無駄を減らし、廃棄物の削減を促進します。
マリメッコが実践するマテリアルの新技術は以下のとおりです。
- 生産時の環境負荷が低いマテリアルを使う(ベターコットンなど)
- 生地の余りやハギレを次の製品に活用する(環境保全とオリジナリティの向上)
- リサイクルされたマテリアルを積極的に使う(追跡可能なマテリアルを採用)
- 天然染料の研究開発(植物性の染料や海藻由来の染料)
- バイオ原料ベースのプラスチックの代替素材(Marimade)
しかし、現在はダウンや羽、本革などの素材を採用しています。
これらの素材については、厳しい規制に基づいて入手しているものの、ファッション業界での植物由来素材の需要が高まる中、今後課題となる可能性があります。
参照:痕跡を残さないものづくりを目指してProducts of tomorrow – Marimekko
公平で平等な社会をデザインで支援
もう1つ、マリメッコのサステナビリティについて付け加えておきたいのは、「公平で平等な社会」に向けての支援です。
マリメッコの哲学では、人が幸福に生きるためには、公平で平等な社会であることが前提だと考えています。
創業以来、デザインや事業活動を通して「公平」や「平等」を重視してきました。
シンプルでスタイリッシュなデザインは、年齢や体型、性別を問わず、誰にでも似合うように設計されています。
マリメッコのデザインを通して、誰もがポジティブなライフスタイルを構築できるよう願いが込められています。
1950年代、戦後の混沌とした中で、マリメッコのテキスタイル工場は多くの女性に仕事の機会を与え、ジェンダー・イコーリティーに貢献しました。
現在でも、女性スタッフがメインで活躍しています。
また、サプライチェーンとのパートナーシップにおいても、コットン市場のコミュニティを支援する意味で「ベターコットン」が採択されています。
ベターコットンの農場は、貧困に苦しむエリアが多く、存続の危機に瀕しているのです。
マリメッコ(Marimekko)のグローバルな展開
マリメッコは、世界35か国で約150店舗とグローバルに展開しています。
本拠地であるフィンランドでは、航空機やバスのデザインにも採用されました。
また、AdidasやIKEAなど他ブランドとのコラボレーションも積極的に進めています。
例えば、フィンランドの航空会社である“Finnair” では、伝統的な花柄ウニッコと石を表したドット柄のキヴェットが航空機の外観に施されています。
マリメッコ(Marimekko)の日本での展開
マリメッコの直営支店は日本にはありませんが、アパレル関連の輸入・企画販売を行う株式会社ルックが公式サイトとショップ・通販を展開しています。
ウニッコ60周年アニバーサリーコレクション
2024年2月より、「ウニッコ60周年アニバーサリーコレクション」が開催され、日本限定の商品も多数販売されています。
マリメッコのショップは、公式サイトのショップリストから調べることができます。
まとめ
2022年、EU諸国とスイスで発生した衣服の廃棄は、約7.0~7.5億トンにおよび、そのうちの約35%がリサイクル、または海外輸出によって再利用されています。
ただし、繊維リサイクルされるのはわずか1%未満で、実質のリサイクル率は10%未満にとどまっています。
一方、日本では年間の衣服廃棄量は45万トンであり、そのうちリサイクルされるのはわずか5%です。
残りの大半はゴミとして焼却や埋め立て処分されています。
このように、日本では衣服の大量廃棄が持続可能な社会への課題となっています。
マリメッコの製品は、長く使えるだけでなく、環境に配慮した素材が使われています。
1つの製品を大切に使い続けることで、ライフスタイルそのものがポジティブに変化するかもしれません。
ぜひこの機会に、単にお洒落なだけでなく、マリメッコを通じてエシカルでサステナブルなファッションについて考えてみませんか?
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