パナソニックの環境教育プログラムに迫る!地球温暖化について学ぶ小学校の授業に潜入
地球温暖化の対策として、子どもへの教育に注目が集まっています。
なぜなら、地球温暖化問題は長期にわたる対策が必要であり、世代を超えて取り組まなければならない問題だからです。
パナソニックグループは長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を掲げ、2030年までにグループの事業に伴うCO2排出量を実質ゼロに、また2050年に向けて現時点の全世界の排出総量約330億トンの約1%にあたる3億トン以上の削減を目指し、取り組んでいます。
「Panasonic GREEN IMPACT」の一環として、株式会社ARROWSと共同で小学生向けの教育プログラム「ストップ温暖化!カーボンニュートラルで地球を守ろう」を開発しました。
プログラムではどのような授業が行われるのでしょうか。
今回はプログラムを実施している小学校に潜入し、授業の様子や、児童や先生の感想などを紹介します。
小学生に光を:パナソニックとARROWSの共同開発プログラム
パナソニックグループは、学校教員向けオンラインプラットフォームを開発・運営する株式会社ARROWSと共同で、小学6年生を対象に「Panasonic GREEN IMPACT」をベースとしたプログラムを2024年1月より全国の学校で展開しています。
小学校の環境教育では、環境問題についてさまざまな教科で取り組みがされています。
一方で、「適切な教材が少ない」「主体的な行動に結びつけることが難しい」などの課題があるのが現状です。
パナソニックグループは課題を解決し、教育現場における教員負荷を低減するため、「ストップ温暖化!カーボンニュートラルで地球を守ろう」と題した、スライドや動画、ワークシート、事例集、授業進行台本などをパッケージにした小学校6年生の授業向けプログラムを制作しました。
プログラムでは自宅で家族と学習することが可能な、パソコンやスマートフォンを使ったクイズも用意しており、具体的な行動を通じて環境教育の定着を図っています。
未来のエコリーダー育成現場に潜入!
小学生向けプログラム「ストップ温暖化!カーボンニュートラルで地球を守ろう」を導入した授業を行っている横浜市立別所小学校に潜入取材してきました!
プログラムを導入した6年生の家庭科の授業の様子を紹介します。
授業が開始すると、先生が「地球温暖化を知っていますか?」と問いかけます。
児童は温暖化のイメージを「南極と北極の氷が溶けて海水が増えてしまうこと」「工場の煙が原因」「雨が少なくなる」など思い思いに発表しました。
その後、間違い探しクイズも行われました。
地球温暖化が進むと、今は当たり前だと思っていることが変わってしまうかもしれないということを、児童たちに理解してもらうことが目的です。
第1問目は入学式のイラスト。1枚目は小学生が着ている服が長袖で、背景には桜が咲いています。対して2枚目は半袖を着て、木は緑の葉っぱで生い茂っています。
第2問目はサンタクロースのイラスト。1枚目は雪が舞い散るなか、サンタクロースがそりに乗っています。2枚目は落ち葉が舞うなか、走っています。
クイズの後、先生が「地球温暖化が進むと、みんなが年をとった時に、『半袖の入学式』や『秋のクリスマス』になっているかもしれません」と伝えたところ、児童たちは衝撃を受けた様子。
「なんだか嫌だな」と声が上がりました。
続いて、アニメーション動画で地球温暖化やカーボンニュートラルについて、学んでいきます。
登場人物は小学生の「ソラ」、地球儀のキャラクター「地球丸」、わかりやすく解説してくれる「博士」。
児童と同じ立場の「ソラ」が、日常生活が地球温暖化にどう関わっているのかを学んでいくというストーリーです。
先生が途中で動画を止めながら、大事なポイントを児童たちと一緒に振り返っていく流れで授業を進めました。
動画のなかでは、パナソニックグループの取り組みも紹介。世界30カ所以上にあるCO2ゼロ工場や家電リサイクル工場などが取り上げられました。
なかでも先生と児童から注目を浴びたのが、インク型の太陽光発電であるペロブスカイト太陽電池です。
建物の壁や窓に取り付けて、発電ができるとのこと。ぜひ学校や家で使いたい、という声が上がりました。
そして、先生が「みんなのライフスタイルが原因で排出される温室効果ガスが、日本全体の排出量の6割です。つまり私たちの生活と地球温暖化が強く関係しています」と伝え、CO2削減をグループで考える「CO2減らそうサミット」に突入。
児童のタブレットには、CO2を削減するために日常でできるアクションがリストアップされ、自分ができそうなアクションに丸をつけていきます。
各アクションの横に「1日あたりのCO2削減量」が記載されているので、合計すると1日で削減できるCO2削減量がわかる仕組みです。
1人の削減量を出したところで、グループのメンバーの削減量を計算。最後にクラス全体の削減量を計算します。
このクラス全員でアクションすれば1日当たり37kg、年間で13tのCO2を減らせることがわかりました。
これは小学校にある25mプール、13杯分に相当します。
授業の最後には、授業で学んだことや今後取り組みたいことを発表。「エアコンの設定を下げる」「リビングの部屋の照明をLEDに替える」「省エネの家電を使う」などのアイデアが出ました。
プログラムには、児童が帰宅してから復習できるようにクイズを用意しています。
編集部も実際そのクイズに挑戦してみました。
授業の内容を総括するような内容で、最後には両親が回答する箇所もあるので家族で環境問題を意識する機会になりそうです。
授業を受けて終わりではなく、保護者と一緒に復習でき、また保護者にとっても学びの場となる仕組みですね。
「たのしい!」が児童のモチベーションを上げる
授業後は「たのしかった!」という感想がちらほら聞こえて、子どもたちの生き生きとした様子が伺えました。
先生もそんな声を聞いて明るい笑顔に。先生の感想を伺いましたので紹介します。
先生にインタビュー:わかりやすい教材が子どもの理解を促進する
編集部:授業をしてみて率直な感想を教えてください。
先生:教材がわかりやすく、とても素敵だと思いました!
持続可能な社会について授業をする時にわかりやすい教材がなくて困っていたんです。
内容がどんどん変わるトピックですし、この項目を取り扱う3月は教員にとっても忙しい時期なので、授業ではさらっと触れて終わりにすることがありました。
色々なメディアで「地球温暖化」や「温室効果ガス」などが取り上げられ、言葉が独り歩きしているような印象だったこともあり、日常生活とどうしたら繋げられるだろうとずっと考えていました。
プログラムの授業は通常1時間で行うものですが、私の授業ではワークをしっかり行い、2時間費やしてます。そのおかげか、生徒がしっかりと理解してくれたのが伝わってきました。
編集部:今回のクラスだけではなく、他の複数のクラスでも授業を行ったようですが、子どもたちの反応はいかがですか?
先生:子どもたちにとって、一番身近な地球温暖化の解決策は節電だと感じました。
授業でこれからのアクションを聞くと、「使ってない部屋の電気を消す」「テレビを見ながらスマホを触らない」などの声が多いのです。
大人たちはどちらかというと経済的な視点で、省エネ家電を買うように思います。
長期的に見てお得だから、省エネ家電を買おうという具合です。
今の小学生たちが大人になって、今日の授業を思い出し、「カーボンニュートラルに貢献できるなら省エネ家電を買おう」と思ってくれたら嬉しいです。
児童の感想:お父さん、お母さんにも授業の内容を知って欲しい
「感想を聞かせてくれる人はいますか」と声をかけるとたくさん手を挙げてくれました。
その中から一部抜粋して紹介します。
「普段の生活ではCO2をあまり意識しないので、これからは意識して生活していきたいです。使ってない部屋の電気を消すことなら、私にもできると思いました。お父さんやお母さんにも授業内容を伝えて、普段の生活で意識してほしいです」
「地球温暖化やCO2という言葉は知っていたけど、詳しくはなかったので、今回の授業を通して本質的に理解できました。みんなで協力したら、小さいことでも大きいものになるんだなと実感しました。小さなことに気をつけながら暮らしていきたいです」
「知らないことを知れて楽しかったです!私の家族はよく冷蔵庫を開けっぱなしにしてしまうので、気をつけようと思います」
教育効果:自分にも何かできると実感
2024年2月21日時点で、プログラムを受けた児童の授業満足度は、5.09ポイント(6点満点)と非常に高い結果に。
その理由は自分ごととして地球温暖化を捉えることができ、具体的なアクションがイメージできたからだといえます。
実際に児童からも以下のような声が寄せられました。
「地球温暖化の具体的な目標について知ることができ、クラスの削減の合計を見たことで、小さな積み重ねが本当に大事だと改めて深く実感することができたからです。」
「そりゃあーいっちまえば世界に少しでも希望があるってわかったら嬉しいだろ。」
授業前後における「環境を守るため」の行動の意識変化は26%も上昇しました。
誰でもできそうな取り組みについて児童が学びを通じて実感し、意識変化が生じたのだと考えられます。
開発者の想い:より多くの小学生に環境問題について伝えていきたい
授業が終わった後、この環境教育プログラムを開発したチームの一人である藤本さんにもお話を伺いました。
インタビューを通じて子どもたちへの熱い想いが伝わってきました。
編集部:小学生向け環境教育プログラムを開発するに至った経緯を教えてください。
藤本さん:元々、コーポレートショウルームのパナソニックセンター東京(東京都江東区)には子供が環境問題について学べる「Panasonic GREEN IMPACT PARK」※があるのですが、東京近郊など、限られた地域の人たちしか来館できないのが課題でした。
そのため、全国の子供たちにも届けられるようなプログラムを開発しよう、となったのがきっかけです。
また、「なぜ、子供たちの教育に取り組んでいるの?」という点についてもご説明したいので、弊社の経営理念、長期環境ビジョンと併せてご紹介させてください。
弊社の創業者 松下幸之助は、1932年に「物と心が共に豊かな理想の社会、すなわち物心一如の繁栄」を実現することが真の使命であると創業から14年後に確信し、250年をかけて「物心一如の繁栄」を実現することを宣言しました。
そして、今日に至るまで約90年、この使命を果たすために弊社は事業を通じて人々の幸せや豊かさを追求してきました。
しかし、ご承知の通り、現在の地球は地球環境問題をはじめ様々な社会課題が山積しており、弊社が目指す「物心一如の繁栄」には程遠い状況です。
そのような状況を踏まえ、弊社は「物心一如の繁栄」を実現するために、現時点の喫緊かつ最重要な社会課題は地球環境問題の解決であると認識し、事業を通じてこの社会課題解決に貢献していくことを長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」として発信しました。
今ではグループ全体で、地球環境に、社会に、ポジティブな“インパクト”を与え、それを実際に“アクト”していくことに挑戦しています。
今回のプログラムについても小学校に環境問題の教材を提供することで、より良い未来が実現できるのではないかと思い、開発に至りました。
次世代を担う子どもたちが緊急性を増す地球温暖化問題の現状と課題解決策を学び、アクションを起こすきっかけづくりの場です。
「CO2削減」と「資源循環」の2つの軸で具体的な事例と併せて紹介し、それらを実現する最先端技術とともに、地球温暖化問題に取り組むパナソニックグループの姿を体感できます。
編集部:プログラム開発にはどんな思いを込めたのでしょうか?
藤本さん:エネルギーは有限であることを意識してもらい、効率の良いエネルギーの使い方について考える機会にしてほしいと思っています。
特に、コンセントの電気はどこから来ているのか?や、どんな発電方法の電気なのか?などの裏側を知る機会がほとんどないので、その裏側について少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいなと思います。
また、子どもたちと話すと、環境問題については両極端の考えを持っているようです。
環境問題は意識したことがないか、または環境問題を意識して必要以上の節電をして、我慢した生活をしようとするんです。
それらのどちらでもなくて、社会の構造を変えて、より合理的に環境問題を解決できるような考え方を身につけてもらいたいですね。
編集部:プログラム開発で大変だったことはありますか?
藤本さん:子どもたちにわかりやすく、誤解のないように伝えることに苦労しました。
例えば、テキストを作っている最初の段階では、温室効果ガスは雲のような色で表現していました。
しかし実際には温室効果ガスは雲ではないので、色を変えるなどして少しでも違う印象にすることを意識しました。
イラストや図を使って分かりやすく、かつ誤解なく理解してもらえるように注意しました。
編集部:印象に残った小学生のコメントはありますか?
藤本さん:授業で「Panasonic GREEN IMPACT」では全世界のCO2排出総量約330億トンの「約1%」にあたる3億トン以上の削減を目指していると説明があった際に、ある子が「それでも1%か」と呟いたのが印象的でした。
今は目標に向かって取り組んでいますが、それで満足してはいけないんだなと思わせてくれましたね。
編集部:プログラムを実施した授業を見学されてみて、率直な感想を教えてください。
藤本さん:我々の教材が教育現場で通用することが確認できて非常に良かったです。
先生から「とてもわかりやすい」「こういうのが欲しかった」とコメントをいただき、提供したものに、きちんと需要があったことがわかりました。
また同時に、環境問題について伝えていきたいという気持ちがさらに強まりました。
持続可能な社会を実現するためには、一人ひとりが知識を持つ必要があります。
それには今回のように企業が貢献できると思いますし、個人的にも携わらせていただきとても楽しかったです。
編集部:最後にプログラムの展望を教えていただけますか?
藤本さん:一番の想いは、より多くの小学生に環境問題について伝えていきたいということです。
さらに教材の需要があることがわかったので、もっと教育現場と連携し、教材を使ってもらいたいなと思っています。
子どもたちのために今私たちができること
パナソニックとARROWSが共同開発した教育プログラムについて、実施している小学校の授業の様子や、開発者の思いなどについて紹介してきました。
日本は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを掲げています。
「ストップ温暖化!カーボンニュートラルで地球を守ろう」のような教材を活用し、地球温暖化対策につながる子どもたちのアクションを引き出せれば、より多くの人たちにそのアクションが広がり、これまで以上に温暖化対策が加速することでしょう。
子どもたちが普段の生活で取り組んだり、環境問題を意識した進路選択をしたりすることで、これからの状況が大きく変わることを期待しています。
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