いま注目【サーキュラーエコノミー】とは?大手企業の事例も紹介
今後の経済を支えるのは「サーキュラーエコノミー」と言われています。
実は、ヨーロッパを中心に世界中で注目されているビジネスモデルのひとつです。
けれども、「サーキュラーエコノミーとは何?」「どうして注目されているのか?」「企業の事例は?」など疑問に思う方も多いのではないでしょうか?
この記事では、サーキュラーエコノミーの意味や内容を分かりやすく解説します。
イメージが湧くように、日本の大手企業の事例も紹介しています。
サーキュラーエコノミーとは
「サーキュラーエコノミー」とは、日本語で「循環型経済」を意味します。
従来の大量消費・大量生産が当たり前の経済は、「リニアエコノミー」と呼ばれていました。
これは「生産して、売って、使って、捨てる」という直線を引くようなプロセスです。
資源を大量に使って、大量に捨てるのが当たり前でした。
一方「サーキュラーエコノミー」では、「生産して、売って、使って、捨てずに資源として利用する」というプロセスが基本です。
円を描くように資源が循環する経済システムで、廃棄物がほぼ出ないのが特徴といえます。
日本での認知度はまだ低いですが、環境省や経済産業省は、「サーキュラーエコノミー」がアフターコロナの経済発展の鍵になると期待しています。
3Rとの違いは?
けれども「循環型経済」と聞くと、「リデュース・リユース・リサイクル」の「3R」と何が違うのかを解説します。
「3R」と「サーキュラーエコノミー」の共通点は以下の通りです。
-
- 使う資源を減らす
- 一度使用した製品をくり返し使う
- 捨てられたものを資源として再利用するしかし、大きく違う点があります。
その違いとはスタート地点。
「サーキュラーエコノミー」は、そもそも廃棄物や環境汚染を最小限にすることが前提となっています。
既存のものを有効活用する点は似ていますが、「廃棄物・汚染物質を出さない生産」を重視する点が大きく異なります。
つまり、「サーキュラーエコノミー」はより環境に配慮した経済といえるのではないでしょうか。
サーキュラーエコノミーの3原則
世界のサーキュラーエコノミーを推進するエレンマッカーサー財団は、「サーキュラーエコノミー原則」を掲げています。
「サーキュラーエコノミー原則」とは、3つの原則から成り立っています。
原則 1: 廃棄と汚染を生まないビジネスデザインを行う
事業を始める前の準備段階が大切です。
廃棄物をなるべく出さない仕組みを整えたり、有害物質が出ない生産過程を設計したりすることがベースになっています。
経済を発展させながら、人の健康や自然環境への負荷を減らすビジネスです。
原則 2:製品と原料の循環
製品と原料を使い続けることが軸になります。
そのために
- 製品・部品・素材の高い耐久性
- リユースやリサイクルの推進
- 植物由来の素材を使った製品を自然にもどす
ことが必要です。
サスティナブル素材について下記記事で紹介しています。
原則 3:自然システムの再生
再生可能エネルギーの活用や環境保護を推し進めたり、プラスチックの使用を避けたりして、将来も豊かな自然があるよう尽力しなければなりません。
以上が「サーキュラーエコノミー原則」になります。
サーキュラーエコノミーの5つのビジネスモデル
「サーキュラー・エコノミー・アワード」をサポートする総合コンサルティング企業「アクセンチュア」では、サーキュラーエコノミーを5つのビジネスモデルに捉えています。
① 製品のサービス提供
製品を売り切るビジネスから、サービスを売るビジネスに転換することで、企業は再利用、長寿命化、信頼性の向上に注力でき、顧客価値と収益アップを期待できる
② シェアリング・プラットフォーム
あまり稼働していないモノ・設備などを広くシェアして活用
デジタル技術やSNSの進展によって互いにコミュニケーションをとる事業が拡大
③ 製品寿命の延長
有料の修理や回収サービスの提供で、製品寿命を伸ばす
④ 回収とリサイクル
生産から消費の全てで発生する廃棄物を最大限再利用したり、作り変えたりする
⑤ 循環型のサプライチェーン
リサイクル可能な原材料を使用して、原料不足などの危機に備える
コスト削減と環境への負荷軽減の両方を叶える
なぜサーキュラーエコノミーは注目されるのか?
では、なぜサーキュラーエコノミーは世界中から注目されているのでしょうか。
そこには、持続可能な社会の実現に欠かせない大きな理由が2つあります。
① 気候問題の対策になるから
地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出削減に大きく貢献すると言われています。
サーキュラーエコノミーを推進する「Circle Economy」は、サーキュラーエコノミーの推進を2倍拡大することで、2032年までに、2019年の温室効果ガス排出量591億トンのうち、「39%」を削減できると発表しています。
② 市場規模が大きいから
アクセンチュアの調査によると、限りある資源などを効率的に利用するなどすれば、世界で「約500兆円」の経済効果があると言われています。
今まで破棄されてきたものが、自然や経済を豊かにするものに生まれ変わるというシステムはとても価値があるといえるのではないでしょうか。
サーキュラーエコノミーの日本の企業事例
サーキュラーエコノミーの内容については大体理解できたけれど、まだイメージするのが難しいという方も多いのではないでしょうか。
より身近に感じられるように、具体的なビジネスモデルをみていきましょう。
今回は日本企業の事例を紹介します。
資生堂
サーキュラーエコノミーに賛同した資生堂は、2025年までに化粧品容器を
- リユースできる
- リサイクルできる
- 生分解可能
のいずれかで、100%循環する容器包装を実現するという目標を発表しました。
リユースの取り組み
2020年に、東京銀座の旗艦店「SHISEIDO Ginza Flagship Store」限定で、空になった美容液ボトルを洗浄して、詰め替えるサービスを開始しました。
プラスチックのボトルの再利用は、環境の負荷軽減につながります。
リサイクルの取り組み
シャンプーやコンディショナーなどの容器に、リサイクルしやすい素材を使用するなど、環境に優しい製品設計に取り組んでいます。
さらに消費者が分別しやすいようなデザイン設計を目指していました。
さらに、プラスチックの問題解決に向けて、空き容器を回収し、リサイクルする活動にも尽力しているそうです。
生分解可能な商品開発
2020年に、自然の力で分解される「SHISEIDO アクアジェルリップパレット」を発売しました。
海水などの水があれば製品に使われている素材は分解できるそうで、海洋プラスチックごみの問題解決策として期待されています。
参照:資生堂
パナソニック
貴重な資源の有効活用と顧客価値の最大化を実現するため、サーキュラーエコノミー型事業に取り組んでいます。
モノのサービス化
モノのサービス化のモデルとして、コンビニやスーパーマーケットをターゲットとした「冷やす」にフォーカスした事業を開始しました。
冷やすサービスとして、ショーケースを売るのではなく、「冷やす」という価値を提供しています。
さらに、リファービッシュスキームでは、使用後のショーケースを修繕し、別の店で再利用する活動も行っていました。
廃棄物を価値あるものにアップデート
工場で廃棄される物をおしゃれなデザインと掛け合わせて、全く別のアイテムに生まれ変わらせる活動を進めています。
新たな価値へアップデートされる「リバリュープロジェクト」では、アイロンをブックスタンドに、炊飯器の釜を照明に、システムキッチンの製造過程で生じた排出物をテーブルにアップリサイクルしています。
このプロジェクトの活動が認められ、2020年度グッドデザイン賞を受賞しました。
参照:パナソニック
まとめ
今回はサーキュラーエコノミーについて解説しました。
日本ではあまり知られていませんが、世界のビジネス業界では注目されている経済システムです。
ポイントは下記の通りです。
- 「サーキュラーエコノミー」とは、循環型経済
- 大量生産・大量消費と違って、廃棄物を出さない仕組みを重視している
- 環境保護と市場拡大の両面を期待できる
用語の説明だけではイメージできなかった方も、日本の企業事例をみると少し身近に感じられた方もいるかもしれません。
個人としても、循環型経済が実現できるように、「環境にやさしい商品選び」「リサイクルへの協力」をより一層求められるのではないでしょうか。
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