エシカルライフ

イタリア発のスローフードとは?地方を活性化させる取り組みを紹介!

「健康的な食生活を送りたい」「環境に配慮した食事を心がけたい」と考えている方におすすめなのが「スローフード」です。

イタリアで生まれたスローフードは、健康・環境・生産者への配慮を重視しています。

しかし、「スローフードとは何か」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

今回は、スローフードの意味や具体例を詳しく解説します。

海外と日本の事例もそれぞれまとめました。

持続可能な暮らしに不可欠なスローフードの魅力を一緒に考えましょう。

スローフードとは

まずは、イタリアで生まれたスローフードの意味や歴史を解説します。

意味

スローフードとは、地域の食材や食文化を守りながら、環境や健康に配慮した食生活を目指す社会運動です。

現在、この運動は160カ国以上で実施されています。

具体的な例としては、地域特有の食材・各地の郷土料理・おせちや七草粥のような年中行事にまつわる料理などが挙げられます。

歴史

スローフードは、1986年にカルロ・ペトリーニとその仲間たちによって設立されました。

安さや手軽さ、提供時間のスピードなどを重視するファストフードへの反対運動がきっかけといわれています。

その後、1989年にパリにて行われた会議で「スローフードマニフェスト」が締結され、国際運動として始動しました。

日本では、2016年に発足しています。

当初は、地域の伝統料理や文化をゆるやかに楽しむライフスタイルを守るのが主な目的でした。

しかし、設立から30年たった現在は、健康・環境・生産者に配慮した食事を重視するアプローチが中心となっています。

「おいしい・きれい・正しい」を重視

日本スローフード協会では、「おいしい・きれい・正しい」というスローガンを掲げています。

  • GOOD“おいしい”
    美味しく、風味があり、新鮮で、感覚を刺激し、満足させること
  • CLEAN“きれい”
    地球資源、生態系、環境に負担をかけず、また、人間の健康を損なわずに生産されること
  • FAIR“ただしい”
    生産から販売及び消費にわたって、全ての関係者が適正な報酬や労働条件にある、社会的公正を尊重すること

引用:日本スローフード協会|スローフードとは

スローフードは、生産過程では環境への配慮がなされているか、生産者が正当に評価されているかを重視します。

また、調理では健康的でおいしいかどうかも大切にしています。

心とお腹を満たす食事を通して、持続可能な暮らしの実現を目指しているといえるでしょう。

参考:日本スローフード協会|スローフードとは
参考:slowfood

スローフードの4大メリット

ファストフードの対義語として使われるスローフードを取り入れると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

ここでは、環境や経済、健康面における価値をまとめました。

地域の活性化

地域の食材を積極的に活用することは、生産者への経済的支援につながります。

また、その土地で受け継がれてきた郷土料理や農産物をブランド化することで、地域特産物や観光事業の需要が高まると考えられます。

イタリアでは、スローフードが地域食文化を再評価するきっかけとなりました。

地域の食文化や在来種をアピールした結果、都市住民や外国人がより人間らしい暮らしを求めて移住するケースが増加したという成果も報告されています。

スローフードと伝統的な食文化をかけ合わせることで、地域の活性化が期待できるでしょう。

環境保護

スローフードでは、有機栽培の採用や輸送距離の短縮による二酸化炭素排出量の抑制など、サプライチェーン全体で環境や生態系への負荷軽減を重視しています。

そのため、環境面でも大きなメリットがあります。

労働者の経済的自立

スローフードでは、生産者を正当に評価するフェアトレードを尊重しています。

労働者の経済的自立には、生産から消費に携わる全ての人が適切な報酬や労働条件のもとで働くことが欠かせません。

社会的公正は、持続可能な経済成長にもつながるでしょう。

健康的な食生活

ハンバーガーや牛丼など一般的なファストフードは、高カロリー・高脂質で栄養バランスが偏りやすく、ビタミン不足になりがちです。

一方、スローフードは味や風味だけでなく、鮮度や栄養面なども重視しています。

時間と手間をかけた分、健康的な食生活が期待できるでしょう。

スローフードのデメリット

持続可能な暮らしにメリットが多いスローフードには、デメリットもあります。

それは、環境に配慮した生産方法を採用するため、コストや時間がかかることです。

すぐに手に入り安価なファストフードと比較すると、ファストフードは劣るように見えるかもしれません。

スローフードの海外事例

35年以上の歴史を持つスローフードには、どのような事例があるのでしょうか。

ここでは、海外の取り組みを紹介します。

イタリア「伝統的な調味料の復活」

かつてのカンパーニャ州チェターラは、マグロ漁で栄えていました。

地域の活性化を目指し、町の支援で新たな魚醤工場を整備し、800年の歴史を持つ「イワシ魚醤(コラトゥーラ)」を復活させることに成功しました。

フランス「味覚の一週間」

1980年代のフランスでは、農産物流通の自由化や加工食品の開発などが進み、味覚の均質化や伝統的な味覚の衰退が問題視されるようになりました。

食の危機に対処するために始まったのが「味覚の一週間」です。

全国の小学校で、味覚教育を目的とする「味覚を目覚めさせる授業(ピュイゼ・メソッド)」を普及させる取り組みが行われています。

参考:農林水産省

地方に広がる!スローフードの国内事例

日本にも、伝統的な料理や固有な在来種などが多く存在します。

希少な食文化を守るために、各地でどのような取り組みが行われているのでしょうか。

群馬県

群馬県スローフード協会は、食を通して地域文化の継承と活性化に貢献しています。

また、書籍やYouTubeなどを通じて、地域の食文化やレシピを発信しています。

参考:群馬県スローフード協会

岩手県

「スローフード岩手」は、2002年に国際本部の認定を受けて発足しました。

環境保護や伝統的な食文化を守るために、これまでに勉強会や講演会、料理教室などを開催しています。

岩手県の地域活性化に貢献する食材としては、「日本短角種(短角牛)」と「安家地大根」が挙げられます。

いわいずみ短角牛を含む日本短角牛は希少な品種で、和牛全体の1%にも満たないほどです。

寒さに強く、放牧が適しています。低脂肪・高タンパクな赤身肉には、旨み成分のアミノ酸が豊富に含まれています。

安家地大根は、山深い安家地区で受け継がれてきた伝統野菜です。

一時は絶滅の危機にひんしていましたが、スローフードとして認知されるようになり、地域の宝として親しまれるようになりました。

参考:スローフード岩手
参考:日本スローフード協会

福井県小浜市

豊富な海産物に恵まれる福井県小浜市では、平成12年に食を重要な政策とする「食のまちづくり」を始めました。

地域の豊かな食を伝承するために「御食国若狭おばま食文化館」を設立し、料理教室や食育講座を開催しています。

小浜市のスローフードには「なれずし」や「谷田部ねぎ」などがあります。

なれずしは、魚介類・塩・米飯を混ぜて乳酸発酵させて作った伝統的な保存食です。

発酵食品特有の甘みと旨みがあり、高級なチーズに似た風味深い香りが楽しめます。

谷田部ねぎは、曲がった根元が特徴の伝統野菜です。一般的なねぎとは異なり、2回も別の畑へ植え替えます。

生産量に限りがあるなか、「谷田部ねぎ生産組合」が保存・普及活動に努めています。

参考:農林水産省

石川県

海の幸と山の幸を有する石川県は、歴史ある食材や発酵食品、加工品などを販売戦略の一環として海外進出に取り組んでいます。

海外向けにターゲットを絞ってイベントを開催し、石川県の食の魅力を発信したことで、国内外で広く認知されるようになりました。

その結果、4年間で石川県の外国人宿泊数が 7.8 万人から19 万人に増加しました。

参考:農林水産省

スローフードで未来を考えた食生活を

スローフードは、健康・環境・生産者に配慮した食生活を目指す社会運動です。

ファストフードの流行や加工品の大量生産などによって、健康的な食生活や伝統料理、固有の食材などが失われないようにするために生まれました。

また、スローフードは地域活性化の役割も担っています。

伝統料理やその地域でしか食べられない食材などに光を当てることで、持続可能なまちづくりが実現できます。

自分たちの地域に、スローフードが隠れていないか再検討することも大切です。

ファストフードよりも手間とコストがかかるスローフードには、未来をより良くする力があるといえるでしょう。

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