レジリエンスとは|変化の激しい時代に打ち勝つたったひとつの武器
SDGsの目標にも含まれているレジリエンス(もしくはレジリエント)は、最近ではビジネスの場でも注目を集めている言葉です。
しかし、意味をきちんと説明できる人はそう多くはないのではないでしょうか。
そこで本記事では、レジリエンスの意味や注目されている理由を分かりやすく説明します。
レジリエンスを高めるための取り組み事例やサービスは続々と登場していますが、今回はSDGs視点から、それらを紹介します。
変化の激しい時代を生き抜くためにはレジリエンスが必須です。
ぜひこの機会に、意味をしっかりと理解しておきましょう。
レジリエンスとは
レジリエンス(resilience)とは、回復力や復元力・弾力を意味する英語です。
もともとは物理学の分野で使われていました。
物質や物体は外から力が加わると変形しますが、外部からの力を吸収、もしくは取り除いてもとの形に戻ろうとします。
レジリエンスとは、この「もとに戻ろうとする力」を指します。
また、レジリエンスは心理学の分野でも使われており、ストレスを受けたときの精神的回復力を指す言葉です。
「レジリエンスが高い」といえば回復力や跳ね返す力が高いことを意味し、逆に「レジリエンスが低い」といえば力が弱いことになります。
レジリエント(resilient)はレジリエンスの形容詞で、「回復力や弾力のある」「しなやかな」「強い」「強靭な」といった意味です。つまり「レジリエンスが高い」と同義になります。
レジリエンスが注目される理由
レジリエンスが注目されたきっかけは、2013年に開催された世界経済フォーラム(通称ダボス会議)だといわれています。
2013年の世界経済フォーラムのメインテーマは「レジリエント・ダイナミズム」でした。
世界は今、自然災害やテロ、未知のウイルスといった予知できない危機に晒されています。
しかし、変化し続ける世界で危機を未然に防ぐことには、残念ながら限界があります。
そこで、予測不可能な危機に直面しても、困難を跳ね返し回復する力、すなわちレジリエンスが必要だと強調されました。
同年の世界経済フォーラムでは、アメリカやイギリス、EU諸国などの先進国と比較して日本のレジリエンスの低さが指摘されています
このようにして、レジリエンスは人々の注目を集め、普及しました。
SDGsにおけるレジリエンス
レジリエンスやレジリエントは、SDGsでも重要なキーワードとなっています。
SDGsにおけるレジリエンス/レジリエントとは、貧困や災害・気候変動といった困難な状況下に立たされた際に、外からのサポートに頼るのみではなく、強靭な自己回復力をもって立ち直るといった意味合いです。
持続可能な社会の実現のためにも、レジリエンスやレジリエントは不可欠な要素だといえるでしょう。
レジリエンス/レジリエントを含むSDGs目標は6つ
SDGsは持続可能でよりよい世界を目指すための国際目標ですが、レジリエンス/レジリエントはその17の目標のうち、以下の6つに登場します。
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- 目標1「貧困をなくそう」
ターゲット1.5「2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。」 - 目標2「飢餓をゼロに」
ターゲット2.4「2030年までに、生産性を向上させ、生産量を増やし、生態系を維持し、気候変動や極端な気象現象、干ばつ、洪水及びその他の災害に対する適応能力を向上させ、漸進的に土地と土壌の質を改善させるような、持続可能な食料生産システムを確保し、強靭(レジリエント)な農業を実践する」 - 目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」
「強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」
※ほか、ターゲット9.1・9.aにもレジリエンス/レジリエントが登場 - 目標11「住み続けられるまちづくりを」
「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」
※ほか、ターゲット11.b・11.cにもレジリエンス/レジリエントが登場 - 目標13「気候変動に具体的な対策を」
ターゲット13.1「すべての国々において、気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)及び適応力を強化する」 - 目標14「海の豊かさを守ろう」
ターゲット14.2「2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に関する重大な悪影響を回避するため、強靱性(レジリエンス)の強化などによる持続的な管理と保護を行い、健全で生産的な海洋を実現するため、海洋及び沿岸の生態系の回復のための取組を行う。」
- 目標1「貧困をなくそう」
貧困や気候変動への対応、住居、産業技術など、あらゆる目標においてレジリエンスやレジリエントの必要性が謳われています。
レジリエンスを高めるための取り組みやサービス
ここからは、SDGs視点におけるレジリエンスを高める取り組みやサービス例を紹介します。今回は目標2、11、13をピックアップしました。それぞれの目標に対する以下の取り組みを詳しく説明します。
- 目標2「飢餓をゼロに」:干ばつ・塩害に強いイネの開発
- 目標11「住み続けられるまちづくりを」:ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)
- 目標13「気候変動に具体的な対策を」:ポータブル水再生プラント「WOTA BOX」
干ばつ・塩害に強いイネの開発
世界人口の増加と昨今の気候変動による干ばつにより、食糧不足が危惧されています。
農業のレジリエンスを高める対策として、不良環境下でも生産性の高い作物の開発が急務です。
国際農林水産業研究センター(JIRCAS)と理化学研究所は、アブラナ科の一年草である「シロイヌナズナ」由来の遺伝子を導入することによって、干ばつ耐性が向上した遺伝子組み換えイネの開発に成功しました。
このイネは、さまざまな干ばつ条件下に置かれても、原品種よりも高い収量を示すと実証されています。
主に開発途上国における食料の安定供給に貢献しています。
また、地球温暖化による影響で、干ばつと並んで問題視されているのが塩害被害です。
塩害は、海水面の上昇で海抜の低い国の農業に深刻な影響をもたらしており、塩による作物への直接的な悪影響だけでなく、土壌が酸欠状態になってしまうことが問題です。
農研機構と東北大学、産業技術総合研究所は共同研究によって、地表根遺伝子を発見しました。
地表根遺伝子はその名のとおり、地表に根を伸ばす遺伝子です。
本遺伝子を用いた根の改良により、塩害に強いイネの開発に世界で初めて成功しました。
塩害で酸欠状態になった土中には根を伸ばさないため、塩害による収量の減少が約15%軽減したとのデータを公表しています。
参考:国際農林水産業研究センター |バイオテクノロジーを利用した干ばつに強いイネの実証栽培に成功
参考:産業技術総合研究所|世界初、根の改良により塩害に強いイネを開発
Net Zero Energy Building(ZEB)
ZEBとはNet Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称です。
消費エネルギーを減らし(省エネ)、エネルギーを創り出す(創エネ)ことによって、エネルギー消費量を正味ゼロにすることを目指しています。
ZEBでは太陽光発電やバイオマス発電といった再生可能エネルギーを活用してエネルギーを創ります。
ZEBは災害時にも自家発電のエネルギーを供給できるため、レジリエンスを高める設備といえるでしょう。
国も補助金制度や支援制度を各種用意しており、ZEB化の推進を図っています。
日本は地震や台風が多い国です。
自然災害とは隣り合わせであるため、レジリエンスを高めるためにホテルやホームセンター、各企業でもZEBの導入が進んでいます。
参考:環境省 ZEB PORTAL|ZEBとは?
参考:環境省 ZEB PORTAL|支援制度
ポータブル水再生プラント「WOTA BOX」
WOTA BOXはポータブル型の水再生プラントです。
「水問題を構造からとらえ、解決に挑む」を掲げるスタートアップ、WOTA株式会社が開発しました。
最先端の水処理の自律制御技術によって、排水の98%以上を再生し循環利用を可能にしました。
災害時の災害現場や避難所など、水道からの水が遮断された場所でも、雨水や河川水などを利用してシャワーを使うことができます。
緊急時の持ち運びや保管が簡単なテント方式を採用しており、わずか15分ほどで設営が可能です。
実際の災害現場で合計13自治体、合計20か所の避難所により利用された実績があります。
災害を防ぐことは残念ながらできませんが、WOTA BOXのような製品を使うことで、災害時における被災地の暮らしを改善できるでしょう。
まとめ
レジリエンスの意味や注力される背景、SDGs視点からレジリエンスを高めるための取り組み事例やサービスを紹介しました。
記憶に新しい例では、新型コロナウイルスの発生が各国や各企業のレジリエンスを測る良い契機となったのではないでしょうか。
現代は、困難な状況に屈せず、ピンチをチャンスに変えて成長できる国や企業が勝ち残っていく時代です。
レジリエンスを高めるための取り組みやサービスは、ますます拡充していくでしょう。
持続可能な社会を築くうえで切り離せないレジリエンスへの動向に、今後も目が離せません。
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