サーキュラーエコノミー

バタフライダイアグラムに学ぶサーキュラーエコノミーの仕組みと実践法

画像:iStock | Khanchit Khirisutchalual

バタフライダイアグラムは、サーキュラーエコノミーを説明する際によく用いられる図解のようなものです。

サーキュラーエコノミーをイメージしやすくする重要かつ簡便なツールですが、構造や意味を理解していないと活用が難しいでしょう。

そこで本記事では、バタフライダイアグラムの構造や、サーキュラーエコノミーにおける役割を分かりやすく解説します。

カスケード利用やサーキュラーエコノミーの3原則、サーキュラーエコノミーと3Rとの違いなど、関連する内容も盛り込みました。

今日から実践できる循環型の取り組み例も紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

バタフライダイアグラムとは

画像引用:Circular Economy Hub

バタフライダイアグラムは、サーキュラーエコノミーの根幹をなす概念図のことです。

限りある資源を循環させ、大切に使うための考え方を表しています。

蝶のような図形をしていることからバタフライダイアグラムと呼ばれますが、正式名称は「システムダイアグラム」です。

バタフライダイアグラムが示す2つの循環サイクル

バタフライダイアグラムに描かれているのは、「技術サイクル」と「生物サイクル」の2つの循環です。

左側の生物的サイクル(再生資源フロー管理)は、木材・綿・食品といった分解可能な自然資源のサイクルです。

一方、右側の技術的サイクル(ストック資源管理)は、化学燃料や鉱物資源などの枯渇性資源およびそれらで生産された自動車やプラスチックなど製品サイクルを表しています。

枯渇性資源を自然界に戻すと、環境に悪影響を及ぼす可能性があります。

しかし、技術的サイクルにより再利用されれば、環境に悪影響が及ばないだけでなく、限りある資源を守ることにもつながります。

参考:Circular Partners|サーキュラーエコノミーについて
参考:産総研マガジン|サーキュラーエコノミーとは?

バタフライダイアグラムとサーキュラーエコノミー

iStock | Ratana21

サーキュラーエコノミーは日本語で「循環経済」と呼ばれ、資源の回収と再利用を前提とする概念です。

バタフライダイアグラムを用いることで、サーキュラーエコノミーの理解がより容易になります。

サーキュラーエコノミーと混同されることの多い言葉に3Rがあります。

3RはReduce(ごみを減らす)・Reuse(繰り返し使う)・Recycle(資源として再利用)の頭文字をとったものです。

製品の一部をリサイクルし廃棄物を減らすための取り組みですが、3Rでは廃棄物が出ることを前提としています。

これに対しサーキュラーエコノミーは、製品設計の段階から廃棄物が発生しないことを前提としており、そもそも廃棄物の概念がありません。

この点が3Rとは大きく異なります。

参考:東京都環境公社|サーキュラーエコノミー

サーキュラーエコノミーの3原則

サーキュラーエコノミーを推進するエレンマッカーサー財団は、サーキュラーエコノミー3原則を掲げています。

サーキュラーエコノミー3原則の内容は以下のとおりです。

  1. 廃棄と汚染を生まないビジネスデザインを行う
    製品設計の段階から、廃棄物をなるべく出さない仕組みや、有害物質が出ない設計にする
  2. 製品と原料の循環
    製品と原料を使い続けるために製品そのものの耐久性を確保したり、原料に戻して再利用したりする
  3. 自然システムの再生
    再生可能エネルギーの活用や環境保護に尽力する

サーキュラーエコノミーは、以下の記事でも詳しく解説しています。

バタフライダイアグラムを理解するための根幹となる考えですので、ぜひご一読ください。

関連記事:いま注目【サーキュラーエコノミー】とは?大手企業の事例も紹介

サーキュラーエコノミーにおけるバタフライダイアグラムの役割

バタフライダイアグラムの真ん中には、リニアエコノミーが示されています。

「リニア」は「直線的な」を意味する単語です。

リニアエコノミーとは、原材料から製品を製造し使用したら廃棄する、一方通行の経済活動を指します。

以前の直線的なリニアエコノミーから、円の中を循環し資源を持続的に使い続ける循環型モデルへの移行、およびその必要性を可視化したものがバタフライダイアグラムです。

バタフライダイアグラムによって、資源を廃棄せず循環させることを目指したサーキュラーエコノミーの概念がより明確になりました。

カスケード利用とは

iStock | oodandstyle

バタフライダイアグラムの左図の中に「カスケード利用」という言葉が出てきます。

カスケード(cascade)には、「段階的に連続してく状態」という意味があります。

カスケード利用は、バタフライダイアグラムやサーキュラーエコノミーを理解するうえで不可欠な概念なので、併せて覚えておきましょう。

カスケード利用の定義と具体例

通常、資源やエネルギーは再利用するたびに品質が下がっていきます。

品質劣化に応じて、より低品質の原材料でも構わない製品に段階的にリサイクルするのがカスケード利用です。

カスケード利用には、例えば以下のようなものがあります。

  • コピー用紙→使用済みコピー用紙から新聞紙→古くなった新聞紙を段ボールへ再利用
  • テーブル→合板(ベニヤ)→木くず→木炭にして焚き付けや消臭に活用→灰を堆肥化

このようにして、資源価値が劣化しても段階に応じて再利用すれば、無駄を減らし資源を循環させることが可能です。

参考:日本有機資源協会|バイオマス利用に関する3つのキーワード

日常生活で実践できる循環型の取り組み

iStock | MurzikNata

サーキュラーエコノミーを促進するために、私たちが日常生活で実践できるアクションにはどのようなものがあるでしょうか?

「サーキュラーエコノミー」や「循環経済」などと聞くと、難しい話のように聞こえてしまいますよね。

「一個人ができることなどないのでは」と思う人もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。

個人でも今日からすぐに始められる、サーキュラーエコノミーの取り組みを紹介します。

生ごみを有効活用して廃棄物削減

料理の際は、できる限り食材を丸ごと使うよう心がけましょう。

野菜や果物は食べきれる量のみ購入し、茎・皮・葉なども最大限活用してみてください。

じゃがいもの皮は、剥かずにそのままジャガバタやフライドポテトにすると良いでしょう。

大根やにんじんの皮は炒めればきんぴらに、葉はみそ汁の具としておいしくいただけます。

りんごは皮ごと食べるように意識してみましょう。

柑橘類の皮は、砂糖で煮詰めればデザートにもなります。

どうしても出てしまった生ごみは、コンポストで堆肥にしましょう。

できた堆肥で野菜や果物を育てれば、無駄なく資源を循環でき、家庭菜園も楽しめます。

フリマアプリの活用

「以前つい買ってしまったけど使わないもの」「もう使わないけれどまだ使えるもの」が自宅に眠っていませんか?あなたにとっては不用でも、誰かにとっては必要なものかもしれません。

このようなシチュエーションで活躍するのが、メルカリラクマのようなフリマアプリです。

写真を撮って必要項目を入力するだけで、手軽に不用品を出品できます。

新たにものを買うときは一度立ち止まって、「新品を買う必要があるかどうか」を考えてみましょう。

多くの人がフリマアプリを使ってものを売買すれば、それだけで資源の無駄が減り、循環型社会に貢献できます。

参考:メルカリ|循環型社会の実現/気候変動への対応
参考:楽天ラクマ|サステナビリティメッセージ

修理して長く使う

ものが壊れたりうまく動作しなくなったりしたとき、あなたはどうしていますか?

メーカーの修理サービスを利用すると思ったより高くついてしまい、結局新しいものに買い換えた経験がある人も多いのではないでしょうか。

これまで消費者には修理の選択肢こそあるものの、非常に限定的なため利用する機会を狭められていました。

しかし、持続可能な社会や循環型モデルへの関心の高まりを受け、欧州や欧米を中心に修理する権利の法制化が加速しています。

こうした動きは今後、日本でも浸透していくでしょう。

修理する権利の法制化により、消費者が自分で修理したりメーカー公認の修理業者を探したりする必要がなくなり、料金の安い修理業者に持ち込むことが可能になります。

壊れたもの・使いにくくなったものを買い換える時代から、修理して長く使う時代へシフトしていきましょう。

参考:修理する権利

以下の記事では、サーキュラーエコノミー先進国であるオランダを例に、「修理」をキーワードにしたサーキュラーエコノミーの事例を紹介しています。

関連記事:修理から考える!サーキュラーエコノミーの海外事例を紹介

まとめ

バタフライダイアグラムとサーキュラーエコノミーとの関係性や、関連する言葉を紹介してきました。

少し難しい内容だったかもしれませんが、バタフライダイアグラムを意識し資源の使い方を見直すことで、廃棄物を削減し環境にやさしい生活を実現できます。

商品は捨ててしまえば自分の前からなくなります。

しかし、物質的に消失するわけではありません。商品や原料が循環して使われるのか、ごみになるかはあなたの行動にかかっています。

購入前に本当に必要かを考えたり、商品を使い終わったあとに循環させられる素材なのかを意識したりすることが大切です。

一人ひとりがサーキュラーエコノミーの概念を意識して行動することで、より良い地球を次世代につなげられるでしょう。

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