SDGsの目標11と私たちにできること!海外事例も解説

「住み続けられるまちづくり」と聞いても、「私たちに何ができるのだろう?」と、すぐに具体的なアクションが思い浮かばない方もいるのではないでしょうか。
本記事では、SDGsの目標11について解説するとともに、私たち一人ひとりができることを分かりやすく紹介します。この記事を読むことで、今日から始められる行動が見つかり、自分らしい形でまちづくりに関わる第一歩を踏み出せるでしょう。
SDGs11「住み続けられるまちづくり」とは
SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」とは、子どもから高齢者まで、誰もが安全・安心に暮らせる、災害に強いまちづくりを目指すという目標です。
現在、世界中で都市への人口集中が進む一方、地方では過疎化が深刻です。そのため、住む場所によって交通の便利さや公共施設の充実度など、生活しやすさに大きな差が生じています。また、防災対策や大気汚染、ごみの問題、自然遺産や文化遺産の保護など、私たちの暮らしを守るために解決すべき問題が多くあるのです。
たとえば、日本の地方では「食料品アクセス」が問題になっています。高齢化や単身世帯の増加、地元小売業の廃業、公共交通機関の脆弱化などにより、食料品の購入や飲食に不便を感じる割合が、特に高齢者を中心に増加しているのが現状です。
こうした深刻化する「買い物難民」を救おうと、さまざまな企業が取り組みを行っています。「セブン-イレブン」の移動販売サービス、「とくし丸」の移動スーパーなどが、社会問題の解決に努めています。
SDGsの目標11が取り組む社会課題は多岐にわたり、私たちの暮らしに与える影響は大きいでしょう。
参照:セブン&アイホールディングス|いつでもお客様の近くにセブン&アイグループの「お買物支援」の取り組み
参照:移動スーパーとくし丸
なぜ私たち一人ひとりの行動が大切なのか
SDGsの目標11の達成には、まちで暮らす私たち一人ひとりの小さな行動が非常に重要です。ごみの分別や交通手段の選び方、自然災害への備えなど、私たちの行動は、地域社会やコミュニティに直接的な影響を与えます。
たとえ一人ひとりの行動は小さくても、市民全体の意識が高まれば、政府や企業も持続可能な開発に向けた政策をより強化する動機付けとなります。行動の積み重ねが、最終的には政策決定にも影響を与える力になるのです。
SDGs11が取り組む社会課題とは
SDGs目標11においては、適切な住宅の提供や交通アクセスの向上、環境保護、災害対策、そして地方活性化などが重要なテーマとされています。ここでは、どのような社会問題があるのか具体的に解説します。
都市の人口集中
日本では、全国民のうち約9人に1人が東京に住んでおり、東京とほかの地域との格差は今も広がり続けています。
また、都市で暮らす人口は、世界全体の人口の半数にあたる「約35億人」です。今後もこのまま増加すれば、2030年までに、都市で暮らす人は50億人に達すると予測されています。
「都市化が進む」と言われても、都市部に暮らす多くの人々は、特に大きな問題をあまり感じないかもしれません。しかし、都市の自然な成長を放置すると、巨大なスラムの発生や交通の混乱、温室効果ガスの排出などが起こりやすくなり、社会不安や治安の悪化を招く恐れが高まります。
スラムとは、都市の中で貧しい人たちが集まって暮らす地域のことです。多くの人が仕事を求めて都市部に人が集まるものの、家賃や物価の高騰、生活環境の整備不足などにより住む場所や仕事がなく、結果的に犯罪が増加し、スラム化が悪化します。
都市への人口集中を放置すると、安全・安心な暮らしが失われてしまう可能性があります。
参照:『世界がぐっと近くなる SDGsとボクらをつなぐ本』池上彰著
参照:日本ユニセフ協会|住み続けられるまちづくりはなぜ大切か
参照:スラム街はどこにある?世界三大スラム街をはじめとした地域の危険性と女性や子供の被害状況
都市の大気汚染・交通渋滞の問題
都市の急速な開発や車から出る排気ガスの増加などに伴い、大気汚染や廃棄物の管理が深刻な課題となっています。世界保健機関(WHO)の調査によると、世界の人口の約9割は汚染された空気を吸っていると報告されました。都市の大気汚染は、異常気象や地球温暖化を助長するだけではなく、私たちの健康を損ねることにもつながります。
SDGsの目標11では、都市に住む一人ひとりが環境に与える影響を減らすために、さまざまな対策が提案されています。
- 2030年までに大気の質やごみの処理に特に注意を払い、都市に住む一人あたりの環境への影響を減らすこと
- 企業活動においても、温室効果ガス排出量削減や大気汚染物質の排出量削減などに取り組むこと
- 徒歩や自転車、誰でも利用しやすいバリアフリーな公共交通機関など、より効果的で持続可能な交通手段を提供すること
都市が抱える大気汚染や交通渋滞といった社会課題を解決するためには、「歩きたくなるまち」を実現し、人々が心地よく集える空間づくりが求められています。
- フランス・パリでは、自宅から徒歩または自転車で15分以内に学校や職場、食料品店、医療機関、公園など、日常生活に必要な施設へアクセスできる「15分都市」を目指している
- アメリカ・ニューヨークでは、2010年以降にブロードウェイを広場として整備した結果、タイムズ・スクエアの歩行者数は11%増加した
歩道や公園に芝生やカフェ、椅子などを設けて、誰もが滞在しやすい空間をつくる「歩きたくなるまち」の取り組みは、今後さらに重要になっていくでしょう。
移動の安全性とアクセス
SDGsの目標11では、2030年までに、性別や障害の有無に関係なく、誰もが安全に利用できる持続可能な交通手段を整えることを目指しています。
安心して移動できるまちづくりに必要なのは、交通の安全性やアクセスの良さだけではありません。子どもや高齢者、障害のある人々も安心して外出できる環境の整備が重要です。たとえば、道が狭くて車と人の距離が近かったり、エレベーターや多目的トイレが少なかったりすると、外出したくても不安を感じてしまうでしょう。
こうした問題を解決するために注目されているのが「ユニバーサルデザイン」です。ユニバーサルデザインとは、年齢や身体の状態に関係なく、すべての人が安全で快適に使えるように考えられたデザインを意味します。たとえば、以下のような例が挙げられます。
- スロープのある歩道
- 音や光で知らせる信号
- ノンステップバス
SDGsの目標11では、ユニバーサルデザインを取り入れながら、すべての人が安全で、手ごろな値段で移動しやすい社会の実現を目指しています。
参照:政府広報オンライン|知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」
参照:【2025年版】ユニバーサルデザインとは? 「誰ひとり取り残さない」を目指す7つの原則と具体例|SDGsにまつわる重要キーワード解説
高齢化・少子化によるまちの縮小
都市への人口集中が進む一方で、地方では高齢化や少子化による人口減少が進行しています。若い世代が減少することで働く人が減り、その結果、地域経済が衰退しやすくなります。こうした状況では、持続可能な経済の実現は困難です。
また、「空き家問題」も深刻な問題の一つです。適切な管理がされていない空き家は、倒壊の危険性、ごみの不法投棄や悪臭など衛生上の問題、景観の悪化など、地域住民の生活環境への悪影響が懸念されています。実際、日本では、1998年に約576万戸だった空き家総数が、2018年には約849万戸にまで増加しました。
こうした空き家問題を改善するために「空き家再生等推進事業」などの支援策が実施されています。居住環境の整備改善を図るため、空き家住宅もしくは空き建築物を活用すれば、改修費用などの助成が受けられる仕組みです。
- 町家を滞在体験施設として活用する
- 長屋住宅を交流・展示施設として活用する
など、地域の魅力を再発掘できるような取り組みも実施されています。
また、最近ではテレワークの普及により、空き家・空き地バンク制度の活用した地方移住への関心も高まっています。今後は、若い世代を呼び戻す取り組みや、高齢者が安心して暮らせる仕組みを構築していくことが重要です。
参照:政府広報オンライン|空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!
参照:内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局|地方創生ガイドブック
参照:第1章 第3節 テレワーク等による地方への新たな人の流れ – 内閣府
自然災害と防災対策の必要性
洪水や台風、地震などの頻発により、世界中で多くの人々が被害を受けています。2023年には、災害によって家を失った人が2,640万人にのぼったと報告されています。
災害に強いまちづくりには、強靭なインフラの整備と迅速な復興体制の構築が必要です。特に、地震や台風、大雨などの自然災害が多い日本では、防災対策が非常に重要となっています。具体的な防災対策としては、次のような取り組みが行われています。
- 災害に備えた施設や避難所の整備
- 災害発生時に迅速に情報を収集し、住民に伝達するためのシステム整備
- 災害用伝言ダイヤル「171」の提供
- 防災訓練・教育の実施
- 地域版防災マップの作成・周知
このような防災対策は進められていますが、改善すべき点は多く残されています。
たとえば日本では、被災者自身が避難所の運営に携わることが多く、行政職員も被災者でありながら対応しなければならないのが現状です。一方、イタリアでは、被災者以外が避難所を運営し、被災した地元の自治体職員に運営を任せることはハラスメントにあたると考えられています。
イタリアでは、次のような体制や工夫が整えられています。
- 24時間の国土モニタリングにより、支援決定を迅速に行う体制
- 100時間以上の訓練を受け、認証・登録された30万人以上の職能
- 支援者が発災直後から活動できる体制
- テントやトイレ、シャワーなど必要な資材を、国が中心となって全国の拠点に整備
- シェフによる温かい食事提供
避難者が自宅にいるように感じられるような環境づくり
このように、イタリアでは被災者ができるだけ快適に過ごせるような工夫が施されています。日本も防災の先進国の事例を参考にしながら、質の高い復興体制の再構築が求められるでしょう。
参照:国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所|イタリアの避難所では、どのような生活支援・食事支援があるのか?~キッチンカー、食堂、トイレ、シャワー、ベッド、テントのパッケージ支援~
参照:NHK防災|“快適な避難所”の迅速な開設を目指して イタリアと台湾に学ぶ
私たちにできること!今すぐできる5アクション
誰もが安心して暮らせるまちづくりには、個人の行動が欠かせません。では、私たちにはどのような行動が求められるのでしょうか。今日から簡単に始められる行動を5つ紹介します。
各家庭で防災の準備を
政府や自治体による防災対策は重要ですが、個人の防災への備えも欠かせません。「今住んでいる場所は安全だから大丈夫」と過信せず、自分や家族の命を守るために、いざという時にどう行動すればいいかを理解し、必要なものをしっかり備えておきましょう。
災害発生後、最初の72時間はライフライン(電気・水道・ガスなど)が復旧するまでの特に重要な期間です。そのため、食料の備蓄は最低でも3日分、できれば7日分を備えておくことが望ましいとされています。
大人1人分の必要な3日分の一例
- 水 3リットル
- カップ麺 1個
- 肉や魚などの缶詰 5缶
- パン 1食
- 豆腐(充填) 1個
- レトルトご飯やアルファ米 7パック
- レトルト食品 2パック
- 乾物(桜エビ、煮干しなど) 適量
- カセットコンロ・ガスボンベ 3本
また、被災した人々からは、野菜や果物不足からビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が十分にとれなかったという声も多くあります。野菜ジュースやドライフルーツ、ナッツ類なども備えておくとよいでしょう。
しかし、忙しくてなかなか準備できない方もいるかもしれません。そんな方におすすめなのが、家庭で簡単にできる「ローリングストック」です。普段から食べている食品を少し多めに買い置きをし、日常の食事で消費しながら常に一定量を備蓄しておく方法です。
- 普段食べているカップラーメンやレトルト、お菓子などを多めに買って備蓄
- 普段の食事で食べる
- 食べた分を買い足して補充する
各家庭のニーズに合わせて、「蓄える・食べる・補充する」を繰り返しながら、もしもの時に備えましょう。
参照:政府広報オンライン|今日からできる食品備蓄。ローリングストックの始め方
地域とつながる活動に参加
地域の住民同士が協力して助け合うといった関係性の構築も重要です。災害時に、まず自分自身や家族の安全を確保した後、近所や地域の人々と協力して支援し合うことは「共助」と言われています。
そのためには、日頃から顔見知りになり、コミュニティの絆を深めておくことが求められます。たとえば、防災訓練や清掃活動、地域のお祭りや子ども向けイベントなどに積極的に参加してみましょう。子どもと一緒に参加できるものも多く、家族で楽しみながら地域との関係を築けます。
お互いの顔が見える関係ができると、精神的にも安心です。まずはあいさつをするなど、小さな一歩から始めてみてください。
サステナブルな移動や旅行を意識
徒歩や自転車、公共交通機関の利用など、環境負荷の少ない移動方法を選ぶことは、SDGsの目標11の実現につながります。毎日の通勤や買い物、旅行などの際に、少し意識を変えて移動方法を見直すことが重要です。
最近では、気軽に利用できるレンタルの自転車や電動自転車、電動キックボード、EVスクーターなどのシェアリングサービスも増えています。
たとえば「LUUP」というサービスは、スマートフォン一つで好きな場所へ簡単に移動できる新しい移動手段です。駅前やコンビニなどに設置された「ポート」から電動マイクロモビリティを借りて、目的地近くのポートまで乗っての移動が可能です。現在は東京・大阪・横浜・京都・神戸・名古屋などで展開しています。
また、SDGs目標11には「世界の文化遺産や自然遺産を保護し、保っていくための努力を強化する」と明記されています。旅行を通して文化遺産や世界遺産を観光することも、社会貢献になるのです。
観光によって遺産の価値や歴史に対する人々の認識が高まることで、保全の支援が促進されます。さらに、観光客からの収入は、重要な財源として遺産の維持管理や修復、保護活動に役立てられます。文化遺産や自然遺産を「観て楽しむ」だけでなく「未来を想像しながら守る」という意識も持ってみてください。
移動や旅行を楽しみながら、環境にやさしい選択をしていきましょう。
参照:LUUP|サービス
参照:11.住み続けられるまちづくりを | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)
さまざまなユニバーサルデザインやシンボルマークを知る
まちの中にあるユニバーサルデザインやシンボルマークを知ることは、誰もが安心して暮らせる社会の実現への第一歩です。すべての人が暮らしやすい環境を整えるには、まず「気づくこと」が求められています。たとえば、次のような工夫があります。
- 車いす対応のトイレ
- 視覚に障害のある人のための点状ブロックや音声案内装置
- 文字が読めない人にも分かりやすい図記号(ピクトグラム)
- ノンステップバスや福祉タクシー
これらは特別な人のためだけでなく、誰にとっても安心できる空間づくりにつながっています。
また、シンボルマークの意味を理解しておくことも重要です。自分自身が困った時に役立つだけでなく、周りの人を思いやる行動にもなります。
障害者のための国際シンボルマーク
障害のあるすべての人が利用できる建物や施設を示す世界共通マーク。
画像引用:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 | 政府広報オンライン
視覚障害者のための国際シンボルマーク
視覚に障害のある人のための世界共通マーク。
画像引用:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 | 政府広報オンライン
ベビーカーマーク
ベビーカーを安心して利用できる環境であることを示すマーク。
画像引用:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 | 政府広報オンライン
ほじょ犬マーク
身体障害者の補助犬同伴の啓発のためのマーク。交通機関、スーパーやレストランなどの民間施設では、身体障害者の補助犬の同伴を受け入れる義務がある。
画像引用:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 | 政府広報オンライン
オストメイト用設備/オストメイトを示すマーク
オストメイト(人工こうもん、人工ぼうこうをつけた人)を示すマーク。
画像引用:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 | 政府広報オンライン
ハート・プラスマーク
身体の内部に疾患のある人のためのマーク。
画像引用:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 | 政府広報オンライン
ヘルプマーク
外見から分からなくても、周囲の人に配慮を必要としていることを周知するマーク。
画像引用:知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」 | 政府広報オンライン
このように、ユニバーサルデザインやシンボルマークについて私たちが知ることは、心温かいまちづくりにつながると考えられます。
参照:内閣府|平成25年度 高齢社会対策 第2 4 (2)ユニバーサルデザインに配慮したまちづくりの総合的推進
参照:政府広報オンライン|知っていますか?街の中のバリアフリーと「心のバリアフリー」
投票でまちづくりに参加する
選挙に参加することは、自分の考えを社会に伝える大切な手段です。私たちの一票は、まちのよりよい未来をつくる力になります。
たとえば、避難所が充実したまちに住みたいと思うなら、防災に力を入れる政策を掲げる人を応援できます。意志を持って投票所に足を運ぶだけで、自分の声をまちに届けられるのです。
自分の生活だけでなく、子どもたちや未来の世代のためにも、積極的に選挙に参加することが大切です。
SDGsの目標11を達成するために私たちにできること
SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」は、私たちの暮らしや地域と密接に関係した目標です。以下に、大切なポイントをまとめました。
- 一人ひとりの防災意識を高め、最低3日分の食料を確保する
- 食料の備蓄には「ローリングストック」の活用がおすすめ
- 地域のイベントや避難訓練に参加し、人とのつながりを深めることが大切
- 徒歩や自転車、公共交通を使い、環境に配慮した移動を心がける
- ユニバーサルデザインやシンボルマークを知り、思いやりのある視点を育む
SDGsの目標11を実現するためには、まず身近な暮らしを少し見直すことが大切です。私たち一人ひとりが未来のまちづくりを支える存在です。できることから、ぜひ一歩を踏み出してみてください。
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