地方創生

【地方創生×SDGs】自治体や企業の取り組みを知ろう

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人口や経済の都市集中による地域格差や、過疎化による地方財政のひっ迫などは日本でも喫緊の課題のひとつです。

現在、住民の半数以上が65歳以上となる集落は全集落のうち32.2%といわれており、四国圏・中国圏に限定すると40%以上にものぼります。

また、454集落が今後10年以内に消滅するおそれがあり、2743集落が将来的に消滅すると予測されています。

出典:「過疎地域における 集落の現状把握調査(中間報告)」(総務省)

他方、高齢化率は令和2年で28.8%。令和47年には38.4%まで上昇する予測のため、このままでは日本全体で経済が悪化し、地域コミュニティの機能が低下してしまいます。

出典:「令和3年版高齢社会白書(全体版)」(内閣府)

今回は、SDGsと地域創生の関連性や、日本で行われている取り組み例について紹介します。

日本における「地方創生」って?

日本における「地方創生」の目的や現状について解説します。

【目的】地方経済の活性化のため

日本では、少子高齢化によって今後人口減少が見込まれており、2050年代には総人口が一億人を下回るともいわれています。

とくに地方の人口減少や少子高齢化が顕著になると、地方経済の衰退や地方自治体の財政逼迫につながります。

ひいては、私たちの生活環境に以下のような影響を及ぼします。

サービス産業の縮小

人口減少によってサービス産業の撤退が進むと、生活に必要な商品・サービスが手に入れにくくなるおそれがあります。

行政サービス水準の低下

人口減少や経済活動の縮小によって行政の税収入が減ると、行政サービスの廃止や有料化が進むことが考えられます。

また、インフラの老朽化への対応も難しくなるでしょう。

公共交通機関の廃止

通勤・通学者が減れば、公共交通機関のサービス提供が困難になることが考えられます。

空き家・空き地の増加

人口減少が進む一方、空き家や空き地は増加しています。

空き家が放置されれば、景観や治安の悪化、倒壊や火災など防災上のリスクが高まるでしょう。

地域コミュニティの能力低下

町内会や自治会といった共助機能が低下したり、地域活動の減少によって地域に対する愛着が低下したりが考えられます。

現在、現役世代の都市集中による地方在住者層の高齢化がますます深刻化している状況です。

税収が落ち込むなか、地域の財政基盤を維持するには市町村合併が必要として取り組んだのが「平成の大合併」でした。

この大きな目的は、地方分権により行財政基盤の強化と行政の効率化を図ることです。

体制強化のため、合併特例債や合併算定替といった優遇策も講じました。

しかし同時に、合併によるデメリットも浮き彫りになります。

地方に住んでいた人が中心地へ移動してしまうことで、地区の人口が合併前よりも減ってしまうのです。

約半数まで人口が減少した地域もありました。

このような場合、地区へ残るのはほとんどが高齢者です。

【地方衰退の事例:夕張市】

国内における地方衰退の例としては、2006年に財政破綻した夕張市が挙げられます。

夕張市は国に対して300億円以上の借金があり、返済に追われて市民税が全国で最も高くなりました。

公共施設などに使うお金が回らず、「全国最低のサービス、最高の負担」と呼ばれるほどになりました。

また、夕張市は映画『幸福の黄色いハンカチ』のロケ地として有名で、毎年映画祭が開催されています。

しかし市内にはホテルが4つしかなく、コロナのあおりで赤字が続き、来訪者は隣町に泊まって車で現地移動する事態に陥っています。

地方の財政破綻は住民の生活に大きく関わる問題です。

このような課題を解決すべく、2014年に政府主導で地方の活性化を目指す「地方創生」の取り組みが始まりました。

【方針】都心部への一極集中を是正する

日本全体の総人口が減少している中でも、東京は人口が増加しています。

令和2年における日本の総人口は1億2,614万6千人で、2015 年と比較して 94 万9千人減少しています。

一方、東京は2015年の1,352人から令和2年までに1,395万人と、43万人の増加です。

出典:「令和2年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要」(総務省統計局)
出典:「-令和2年中の人口の動きと総人口の推移-」(東京都庁)

東京には、人口だけでなく国の中枢機能が集中しており、災害リスクの高さが懸念されています。

たとえば、東京で首都直下型地震が起きると、生産性やサービス水準は著しく低下するでしょう。

噴火が起きると、長時間交通障害や停電などが発生するかもしれません。

大規模な水害によって、多くの死者が出るおそれもあります。

地方の人口が東京に流入する原因には、就職や修学、利便性の高さ、サービスの充実などが考えられます。

こうした背景には、

  • 大企業や本社が東京に集中していることや賃金水準の高さ
  • 地方のサービス水準の低さのほか
  • 地方における閉塞感や役割分担意識の強さ

なども課題です。

一極集中を是正するには、地方において以下のような取り組みが求められます。

1.就職や修学しやすい環境の整備

  • 地方大学の強みを生かした競争力の強化
  • 地方の賃金底上げ など

2.生活環境の向上

  • 文化や自然環境などの魅力の向上
  • 女性などに対する意識改革 など

3.新たな働き方の実現

  • 業務のデジタル化の推進
  • リモートワークなどの環境整備
  • 居住地を問わない採用といった人事制度の見直し など

地方創生をすすめるにはSDGsが必要

日本では、SDGs推進のための具体的な施策をまとめたアクションプランを毎年作成しています。

「地方創生」については、2018年から現在にわたってその重要性と取り組みの強化が推進されました。

地方における環境整備を実現するための具体的な取り組みは、SDGsの以下目標に該当します。

3.すべての人に健康と福祉を 福祉の促進、介護費用軽減
4.質の高い教育をみんなに 大学の競争力の強化、産学提携
5.ジェンダー平等を実現しよう 女性に対する意識改革
6.安全な水とトイレを世界中に 上下水道の維持管理
7.エネルギーをクリーンに 省エネ化、再生可能エネルギーの普及
8.働き甲斐も経済成長も 地方の賃金向上
9.産業と技術革新の基盤をつくろう 地域産業のイノベーション
11.住み続けられるまちづくりを 教育環境の整備、ジョブ型雇用・テレワークの促進
12.つくる責任 つかう責任 空き家の有効活用
13.気候変動に具体的な対策を カーボンゼロの実現
15.陸の豊かさも守ろう 自然環境の保全、緑地整備
17.パートナーシップで目標を達成しよう 地域のコミュニティ形成

このように、地方創生の推進には、インフラ整備や教育機関、企業体制の変革、介護・福祉サービスの促進、エネルギー消費の効率化など、産業や環境、医療、防災などあらゆる分野での取り組みが求められます。

さらに、住民だけではなく、事業者や行政、NPO団体や学校など、さまざまなステークホルダーとの連携・協力が必要でしょう。

地方創生によって持続的に経済を活性化させるためには、まさにSDGsが目指す「誰一人として残さない」の考え方が重要になります。

そのため、内閣府ではSDGsを原動力として地方創生の実現加速化を推進しているのです。

【自治体×SDGs】持続可能なまちづくり

このような考え方から、国では、地方創生とSDGsの促進に向けて各ステークホルダーが参加し、協力できるような「仕組みづくり」を整えています。

それが、「SDGs未来都市」と「自治体SDGsモデル事業」です。

ここからは、それぞれに認定されている都市や具体的な取り組みについて紹介します。

SDGs未来都市とは

国が地方創生の一環として、持続可能なまちづくりに向けた取り組みを行っている地方自治体を「SDGs未来都市」に選出しています。

SDGs未来都市は、2008年から行われている「環境モデル都市」と「環境未来都市」の選定基準をベースに、SDGsの17の目標に紐づいた評価基準で選出されているものです。

とくに、経済・社会・環境の3つの分野において、新たな価値の創造を推進している自治体が評価されています。

SDGs未来都市は、2018年度から選出がスタートしており、各年度最大約30の自治体が選ばれています。

令和3年度に選出された自治体は、以下のとおりです。

  • 北海道上士幌町
  • 岩手県一関市
  • 山形県米沢市
  • 福島県福島市
  • 茨城県境町
  • 群馬県
  • 埼玉県
  • 千葉県市原市
  • 東京都墨田区
  • 東京都江戸川区
  • 神奈川県松田町
  • 新潟県妙高市
  • 福井県
  • 長野県長野市
  • 長野県伊那市
  • 岐阜県岐阜市
  • 岐阜県高山市
  • 岐阜県美濃加茂市
  • 静岡県富士宮市
  • 愛知県小牧市
  • 愛知県知立市
  • 京都府京都市
  • 京都府京丹後市
  • 大阪府能勢町
  • 兵庫県姫路市
  • 兵庫県西脇市
  • 鳥取県鳥取市
  • 愛媛県西条市
  • 熊本県菊池市
  • 熊本県山都町
  • 沖縄県

自治体ごとに特色があり、過去にSDGs未来都市に選出された自治体でも、継続して地方創生の実現に向けた取り組みが推進されています。

DX化に力を入れ、ニューノーマル化を目指す群馬県では、以下のような取り組みが勧められています。

【経済】

  • ものづくり産業のDX推進
  • スタートアップへの支援
  • 新たな観光の構築(マイクロツーリズム、長期滞在化など)

【社会】

  • 有識者会議モデル事業
  • ぐんま健康ポイント制度
  • オンライン教育の加速化
  • 教育現場でのICTの活用
  • 大学と連携した産業人材育成プロジェクト
  • 「インターネット上の誹謗中傷等の被害支援等に関する条例」の制定
  • 「多文化共生・共創推進条例」の制定
  • 「官民共創コミュニティ」の育成

【環境】

  • 「ぐんま5つのゼロ宣言」の表明
  • 上野村地域マイクログリッド構築事業
  • 水素の利用促進
  • 避難行動を促す情報拡充(河川の位置情報、ライブカメラの画像配信など)

出典:「群馬県_SDGs未来都市計画」(群馬県)

自治体SDGsモデル事業とは

SDGs未来都市に選出された自治体の中で、とくに優れた取り組みについて「自治体SDGsモデル事業」として選定し、国が支援を行っています。

自治体SDGsモデル事業は、SDGs未来都市の選定と同時にスタートしているものです。

各年度最大10の取り組みが選出されています。

自治体名 自治体SDGsモデル事業の名称
北海道上士幌町 「スマートタウンで弱点転変!かみしほろ幸せ循環」プロジェクト
千葉県市原市 化学×里山×ひと

SDGsでつなぎ、みんなで未来へ~

東京都墨田区 産業振興を軸としたプロトタイプ実装都市

~ものづくりによる「暮らし」のアップデート~

新潟県妙高市 みんなでつくる生命地域 Redesignプロジェクト
岐阜県岐阜市 山水と都市が育むWell-beingなライフスタイル創造事業

~「つかさのまち・シビックプライドプレイス」が繋ぐ人と人、人とまち~

岐阜県美濃加茂市 「ローカルSDGsみのかも」=地域循環共生圏の実現に向けたソーシャルビジネス創出モデル事業
京都府京都市 京都の文化が息づく3側面,みんなごとで取り組む レジリエンスモデル~SDGsのその先へ~
愛媛県西条市 LOVESAIJOポイントを介して「ヒト」と「活動」が好循環する持続可能なまち西条創生事業

(「西条市SDGs×西条市DX」の推進による地方創生の実現)

熊本県山都町 有機農業を核とした有機的な繋がりが広がる町の実現
沖縄県 誰一人取り残さない持続可能な美ら島

「沖縄モデル」推進プロジェクト

出典:「令和3年度自治体SDGsモデル事業 選定事業一覧」(内閣府地方創生推進事務局)

地方創生SDGs金融の促進

持続可能なまちづくりを実現すべく、地方公共団体と地域の金融機関の連携による取り組みの加速化を推進する目的で「地方創生SDGs金融表彰」が2021年11月に創設されました。

地方創生SDGs金融表彰は、地域における資金の循環や再投資が繰り返されることで、外部からの支援を受ける必要がない「自律的好循環」を目指すことが目的です。

SDGsの実現と地方創生に取り組んでいる事業者を見える化し、地域活性化や連携の強化を促進する狙いがあります。

選考対象となるのは、地方公共団体や地域の金融機関などです。

地方公共団体には、自治体だけではなく国や自治体が出資する外郭団体や第三セクターも含まれています。

成果を挙げた事業者を表彰することで、地方創生SDGs登録・認証等制度への登録を加速化させ、地域活性化につなげることも狙いのひとつです。

【日本×SDGs】行政と民間をつなぐ官民連携プラットフォーム

地域創生に向けた取り組みは、各自治体だけでなく日本政府による支援も行われています。

そのひとつが「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」です。

ここからは、行政と民間をつなぐ「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」について解説します。

地方創生SDGs官民連携プラットフォームとは

「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」とは、国や自治体だけでなく、さまざまな関係機関の連携を強化するための枠組みのことを指します。

普及活動の促進や、関係機関同士のマッチング支援、知見や情報交換の場となる分科会の開催などが主な活動例です。

「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」によって、官民連携の機会創出を支援すれば、よりシームレスに連携を取ることが可能になるでしょう。

さいたま市では、地方創生SDGs官民連携プラットフォームの取り組みとして「CSパートナーズ」への支援を実施しています。

市民満足度(CS)が90%以上を目指す「CS90運動」に賛同する企業や団体をCSパートナーズとして、SDGs達成のための活動を発信したり、市のイベント情報を事業所内へ周知したりするアクションを促しています。

出典:「CS・SDGsパートナーズチラシ」(さいたま市)

地方創生SDGs官民連携プラットフォームは、SDGs達成に向けた取り組みを加速化させるだけでなく、複数の関係機関の相乗効果を引き出す狙いもあります。

地方創生SDGs官民連携プラットフォームでできること

地方創生SDGs官民連携プラットフォームは、2021年12月末日時点で全国6,183団体が会員登録しています。

地方創生SDGs官民連携プラットフォームでできることは、以下の3つです。

  1. イベント情報の収集・発信
  2. 会員同時のマッチング
  3. 分科会の開催

会員は、別の会員が主催している地方創生SDGsのイベントにまつわる情報を受け取ることができます。

また、会員同士のマッチングもサポートしてもらえます。

悩みを抱えた事業者と、その課題を解決できる会員とがマッチングできれば、課題解決に向けた新たな連携強化につながるでしょう。

これまでのノウハウが蓄積されたデータベースを閲覧することもできます。

さらに、プラットフォーム主催のマッチングイベントへの参加も可能です。

地域資源活用や人材育成など各課題に関する分科会への参加や、新たな分科会を提案することもできます。

連携強化によって、複数の事業者が連携した新たなプロジェクトの創出につながるのもプラットフォームならではの特徴です。

まとめ

現在、日本の全集落のうち32.2%が限界集落(※)といわれています。

そのなかで、都市部への一極集中や人口減少は未だ解決していません。

(※)限界集落・・・人口の50%以上が65歳以上の高齢者となった集落のこと

2018年のアクションプランから言われ続けているとおり、地方創生は我が国の重点課題であり、官民一体となって推進していく必要があります。

今後は、連携や共同による課題解決や情報共有がより求められていくでしょう。

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GREEN NOTE編集部

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