サーキュラーエコノミー

アップサイクルでSDGsを実現!企業事例から学ぶビジネスチャンス

アップサイクルでSDGsを実現!企業事例から学ぶビジネスチャンス

「アップサイクル」と聞くと「手間がかかりそう」「身近ではあるが企業には関係ないのでは」と感じる方もいるかもしれません。しかし、廃棄物を資源に変える発想は、環境対策だけでなく新たな価値創造の手段として注目されています。

 

本記事では、アップサイクルの基本概念から業界別の最新事例、中小企業の具体的な取り組みまでわかりやすく解説します。

 

この記事を読むことで、自社の廃棄物を新しいビジネスチャンスへと活用するヒントが得られ、持続可能な経営への一歩を踏み出せるでしょう。

アップサイクルとは?

アップサイクルとは、使用済みや廃棄される資源を、新しい価値やデザインを加えて再利用することを指します。古着をバッグにしたり、壊れた家電をインテリアとして生まれ変わらせたりなど、創造的に再生する点が特徴です。

 

アップサイクルは、環境問題や大量廃棄への意識が高まる中、世界的に注目されている新しい循環の形です。

リサイクル・リメイク・リユースとの違い

アップサイクルと似た言葉として、「リサイクル」や「リユース」、「リメイク」があります。いずれも資源を循環させる点は同じですが、その手段には違いがあります。

  • リサイクル:使い終わったものを分解・加工して、原料として再び利用すること(例:ペットボトルを再生繊維にする)。
  • リユース:壊れていないものをそのままの形で再利用すること(例:リサイクルショップで古着を再販売する)。
  • リメイク:既存の製品に手を加えて新たな用途で再利用すること(例:着なくなった服をリメイクして子ども服にする)。

一方、アップサイクルは、再利用する際にその使価値を高め、廃棄物をより魅力的でより長く使える形に変える取り組みです。

参照:一般社団法人アップサイクル
参照:プラスチック・スマート|女性誌などでよく見る「アップサイクル」って 

なぜアップサイクルが今注目されるのか

ここでは、アップサイクルが注目されている背景について解説します。

廃棄社会の課題と環境負荷

アップサイクルが注目されている最大の理由は、使放置されがちな廃棄物を価値ある資源へと転換することで、環境への負荷削減が期待できるためです。

たとえば、東南アジアを中心とするパーム油生産地では、未利用バイオマスや廃棄物が大量に放置され、水質汚染温室効果ガスの排出などが問題となっています。これらの未使用バイオマスを、低コストかつ効率的に新たな価値ある資源に変換するアップサイクルの技術開発が進められています。

アップサイクルは、現代社会が直面する大量生産・大量消費・大量廃棄といった社会課題や、それに伴う地球規模の環境負荷を軽減し、循環型社会(サーキュラーエコノミー)へと移行を目指す上で必要な解決策です。

SDGsとの関係

アップサイクルは、国連が定めたSDGsの中でも、目標12「つくる責任 つかう責任」と深く関係しています。

この目標では、限りある資源を無駄にせず、持続可能な生産と消費の形を作ることが求められています。企業が商品開発の段階から、修理しやすく長く使える、再利用しやすいなどを意識したり、消費者が本当に必要なものを選んだりすることも目標12の一部です。アップサイクルは、目標を達成するための実践的な手段といえます。

世界や日本の動向

世界では、アップサイクルの国際的なニーズが高まっています。

たとえば、オランダでは、アップサイクルを通じて資源利用の最大化を目指しています。取り組みの一つとして、かつて造船業や金属加工などで栄えた重工業地帯を、循環型の地域へとアップサイクルすることに成功しました。土壌汚染が問題となっていた土地を植物によって浄化したり、放置されていた廃船をシェアオフィスとして活用したりすることで、空間に新たな付加価値を加えました。

日本でもアップサイクル技術の開発が進んでいます。その例の一つが、次世代バイオマスアップサイクル技術の開発です。

国際農研は、さまざまな種類のパーム由来バイオマスを燃料や家具用ペレットに転換する「原料マルチ化プロセス」や、微生物培養のみでセルロース繊維を糖に変える「微生物糖化法」といった基盤技術を開発しました。

社会全体にアップサイクルを広げるためには、異なる業界や、政府や自治体などが連携することが求められています。

参照:一般社団法人アップサイクル
参照:農林水産省|次世代バイオマスアップサイクル技術の国際展開
参照:大和ハウス工業株式会社|オランダに学ぶ。「社会全体の質の向上」を目指すサーキュラーシティのつくり方
参照:環境省|環境ビジネスの先進事例集

業界別アップサイクル事例

アップサイクルが実際にどのような場面で活用されているのか、疑問に思う方もいるかもしれません。ここでは、ファッション、食品、建築の業界ごとに具体的な事例を解説します。

ファッション業界

ファッション業界では、衣服以外の廃棄物を染料や繊維原料として活用するなど、多様なアップサイクルの取り組みが進められています。

たとえば、プロジェクト「TSUMUGI」では、使用済みの紙資源や間伐材を活用して紙糸を製造し、アップサイクルによる衣類の商品化に成功しました。株式会社艶金では、未利用繊維や食品加工残渣などを活用し、衣料品のアップサイクルを実現しています。

関連記事:洋服のアップサイクルについて|おすすめのアイデア・日本で買えるブランド10選

食品業界

食品ロス削減への意識が高まる中、食品業界では食べられない部分や規格外品を活かしたアップサイクルが注目されています。

たとえば、資源循環型社会の実現を目指すプロジェクト「Enz Koji」では、通常廃棄される抽出後のコーヒー豆をアップサイクルしています。食品発酵技術に特化した企業「フジワラテクノアート」が持つ固体培養技術により、この抽出後のコーヒー豆を麹として生まれ変わらせ、「ポリフェノールたっぷりパン」の製品化に成功しました。

発酵アップサイクルは、日本の強みを活かした技術として注目を集めています。

関連記事:食品のアップサイクルが話題!日本や海外の事例とともに紹介

建築業界

解体やリフォームで発生する廃材を再利用することで、廃棄コストと環境負荷を減らせるため、建築分野でもアップサイクルが注目されています。

石川県能美市にある「小松マテーレ」は、繊維・染色工程で発生する余剰汚泥を建築資材である保水性ブロックとしてアップサイクルすることに成功しました。この取り組みには、地元の名産である九谷焼の製法や、地域資源の珪藻土が活用されています。

地域の職人技とアップサイクルを結びつけた先進的な事例です。

参照:環境省|環境ビジネスの先進事例集
参照:消費者庁・経済産業省・環境省|サステナブルファッションの推進について(案)
参照:農林水産省|発酵アップサイクル技術を用いたプラントベースフード向け風味改良素材の紹介
参照:農林水産省|【KH3】廃棄のアップサイクルの促進
参照:TSUMUGI
参照:環境省|No.13 株式会社艶金(1/2)
参照:フジワラテクノアート|Enz Koji Coffee grounds
参照:環境省|19.小松マテーレ株式会社(1/2)

関連記事:日本伝統のアップサイクル!金継ぎとは?メリットや事例を解説

アップサイクルを活用した企業事例

ここでは、アップサイクルと社会問題の解決に同時に取り組んでいる企業の事例を紹介します。

リファインバース

リファインバースは、廃漁網を再利用し、再生ナイロン樹脂ペレットを製造する素材変換の専門企業です。北海道の地元企業「山本漁網」と連携し、海洋ごみを高品質なナイロンに再生しています。

 

完成した素材は、モリト株式会社の関連工場で糸や布などに加工され、最終的に鞄として流通しています。

 

廃棄物を原料として再定義し、海洋プラスチック問題の解決と新市場の創出を両立させた事例です。

 

参照:株式会社リファインバースグループ
参照:株式会社リファインバースグループ|海のごみを、宝物に変える。
参照:一般社団法人アライアンス・フォー・ザ・ブルー|廃棄漁網を活用した商品づくり

株式会社パンテック

パンテックは、電通グループと共同して「で、おわらせないPROJECT」に取り組んでいます。

 

オフィスで回収されたクリアファイルなどを再資源化し、バッグやかごを作れる「再生PPバンドキット loop+loop(ループリループ)」へとアップサイクルしました。

 

企業の廃棄物を新たな製品に変える先進的な事例といえます。

 

参照:株式会社パンテック
参照:株式会社パンテック|「で、おわらせないPROJECT」第2弾

ノオト

ノオトは、古民家や地域建築をリノベーションしたり、事業者をマッチングしたりするなど地方創生を支援している企業です。

既存の建築資源を地域の新しい文化拠点や宿泊施設として再生し、地域資源の価値を再発掘するとともに、人やお金の流れを新たに創出しています。

地域再生と空間のアップサイクルを融合させたモデルケースです。

参照:環境省|14.一般社団法人ノオト/株式会社NOTE(1/2)
参照:NIPPONIA

マテック

北海道を拠点とするマテックは、廃棄された金属や使用済みの自動車といった産業廃棄物を新しい原料へアップサイクルする企業です。

 

たとえば、北海道小樽市にある「深川硝子工芸」と連携して、自動車の廃棄ガラスをグラスやお皿などのガラス製品にアップサイクルしています。また、北海道滝川市にある「レザースタジオ Kazu」の協力を得て、自動車の革シートを使用した名刺入れの制作にも成功しました。

 

マテックは、廃棄物ゼロを目指す地域密着型企業として、地元企業と協力しながらアップサイクルの社会的価値を広げています。

 

参照:株式会社マテック|アップサイクル

ファーメンステーション

ファーメンステーションは、独自の発酵技術で未利用資源を再生・循環させる技術の研究開発を行うスタートアップです。

 

国内の休耕田で栽培されたオーガニック米や、規格外の野菜・果物などを活用して、天然由来の化粧品原料の開発に成功しました。また、オーガニック米から作られた「オーガニックライス・エタノール」は、国際的なオーガニック認証も取得しています。

 

アップサイクルした天然由来の原料は、大手化粧品メーカーに販売するほか、自社ブランドの商品開発にも活用されています。

 

農産物資源からエタノールを抽出・製造する技術は、世界的に見ても珍しい事例です。

 

参照:環境省|12.株式会社ファーメンステーション(1/2)
参照:株式会社ファーメンステーション|アップサイクル原料
参照:環境省|環境ビジネスの先進事例集

 

アップサイクルはごみを価値に変える知恵

アップサイクルはごみを価値に変える知恵

アップサイクルとは、廃棄物に新しい価値を与えて再利用する取り組みです。環境対応にとどまらず、企業のブランド価値を高める新たな経営戦略といえます。限りある資源を価値創造の源として捉えることで、ビジネスの競争力が期待できます。

最後に、押さえておきたい重要ポイントを整理しましょう。

  • アップサイクルは廃棄物を新たな資源に変える「価値創造型の循環モデル」
  • SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」を実践する効果的な手段
  • 廃棄コストの削減とブランドイメージの向上を同時に実現できる
  • 中小企業でも独自の素材・技術を活かして新市場を開拓できる
  • 社内外のパートナーと連携することで、持続可能なサプライチェーンを構築できる

アップサイクルを導入することは、環境対応から成長戦略への転換を意味します。古くなった資材や副産物も、デザインや技術によって新たな価値を与えることで、新製品や新ブランドの創出にもつながります。廃棄を減らし、価値を生むビジネスモデルを構築し、持続可能な未来をリードしていきましょう。

 

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