食品のアップサイクルが話題!日本や海外の事例とともに紹介
廃棄予定だったものを加工するなどして価値をつけ、新しい製品に生まれ変わらせる「アップサイクル」。
街中では、アップサイクルされた商品を見かける機会も増えました。
アップサイクルは、食品でも行われています。
食品のアップサイクルは、食品ロスを減らす方法の一つとして、世界中で注目されています。
今回は、食品のアップサイクルについて解説するとともに、日本や海外での食品事例も紹介しますので、参考にしてください。
アップサイクルとは?
アップサイクル(Upcycle)とは、本来は廃棄される予定だったものに、新たなデザインや技術を施して付加価値をつけ、新しい製品に作り替えることです。
「アップサイクル」の言葉が生まれたのは、1994年です。
ドイツ企業「ピルツ」のレイナー・ピルツ氏がメディアに向けて、アップサイクルとダウンサイクルについて語ったのが始まりとされています。
近年、新品の素材を使った大量生産が当たり前となっていた世の中から、持続可能な社会への転換を迫られています。
そんななか、「アップサイクル」というサステナブルな取り組みが注目を集めています。
参考:不用品の価値を向上させる【アップサイクル】とは?意味や取組事例も解説
以下の記事では、洋服のアップサイクルについて説明しています。ぜひ参考にしてください。
食品のアップサイクル方法とは?
食品のアップサイクルは、食品ロスを削減するうえで非常に有効な手段の一つです。
農林水産省の発表によると、2022年度の食品ロス量は523万トンでした。
前年度と比べると+1万トンで、多くの食品が食べられるにもかかわらず捨てられているのが現状です。
参考:農林水産省「最新の食品ロス量は523万トン、事業系では279万トンに」
食品のアップサイクルでは、以下の2つの方法があります。
- 食品から食品へのアップサイクル
- 食品から工業製品へのアップサイクル
食品から食品へのアップサイクル
「食品から食品へのアップサイクル」は、本来であれば廃棄されるはずの食品を、別の食品に作り替える取り組みです。
例えば、不揃いな野菜や規格外品などは、見た目が悪いために廃棄されてしまいます。
しかし、味や品質には問題がないものがほとんどです。
このような野菜をカットして乾燥させたり、粉末にしたりして、スナック菓子や出汁パックなどに加工することで、別の食品に再利用できます。
「こんな味になるんだ!」「食べてみたらおいしかった」など、新たな発見につなげられるでしょう。
食品から工業製品へのアップサイクル
近年、食品から食品以外の製品へのアップサイクルも増えており、食品を使って作られるレザー(ヴィーガンレザー)なども注目を集めています。
廃棄野菜を、建築材料やプラスチックの代替品となる新素材に作り替える企業があります。
コーヒーのカスやココナッツの殻など、食べられないものもアップサイクルして再利用することが可能です。
食品から工業製品へのアップサイクルは、食品100%で作られる場合と、化学薬品などほかの素材と組み合わせて使う場合の2通りあります。
【日本】アップサイクル食品の事例
次に、日本国内のアップサイクル食品の事例を4つ紹介します。
- 野菜の茎や皮をスナックに「Upcycle by Oisix」
- さまざまな廃棄食材から作られたビール「UTAGE BREWING」
- 廃棄されるお米からできた紙「kome-kami」
- りんごの皮から作られたレザー「RINGO-TEX」
野菜の茎や皮をスナックに「Upcycle by Oisix」
食材宅配サービスを提供するOisix(オイシックス)は、「Upcycle by Oisix」というアップサイクル食品専門のブランドを立ち上げています。
商品は、スナックやチョコレートなどのお菓子、スイーツ、お惣菜などさまざま。
今まで捨てられていた部分や、商品の製造加工で出た搾りかすなどを使った食品を販売しています。
以下の「捨てるにはもったいない ここも食べられるシリーズ」では、野菜の茎や皮、ヘタを使ったお菓子が人気です。
- ここもおいしく ブロッコリーの茎チップス
- ここもおいしく だいこんの皮チップス
- ここもおいしく なすのヘタチップス
- ここも食べられるチョコクランチ くき&かわ
ブロッコリーの茎やだいこんの皮、なすのヘタなどは、家庭でも捨てられがちな食材です。これらの食材をチップスなどのお菓子にすることで、おいしく食べられるだけでなく、フードロスの削減にも貢献しています。
さまざまな廃棄食材から作られたビール「UTAGE BREWING」
クラフトビールの販売とプロデュースを手がけるBeer the Firstが2023年8月に立ち上げたのが、サステナブルなブルワリーブランド「UTAGE BREWING(ウタゲ・ブルーイング)」です。
UTAGE BREWINGでは、さまざまな廃棄食品を使ったビールを販売しています。
- Loop Marunouchi:災害備蓄菓子で作られたビール
- 華麺舞踏会:ラーメンの麺で作られたビール
- Thumb Series:廃棄間近の乾パンとアルファ米で作られたビール
どのような味なのか、気になるものばかりです。
2023年8月には、ラーメン店「一風堂」の麺製造過程で出る端材を使用したクラフトビール「KAEDAMA ALE」を販売。一風堂の一部店舗と一風堂公式オンラインストアで購入可能です。
廃棄されるお米からできた紙「kome-kami」
株式会社ペーパルは、食品ロス削減プロジェクト「Food Loss Paper」の企画・開発を行っています。
そのなかで注目するのは、古くなって食べられないお米(古米)や、廃棄される備蓄用のアルファ米、精米過程で発生する粉砕米などをアップサイクルした「kome-kami(コメカミ)」です。
廃棄予定だったお米を粉砕し、古紙と混ぜ合わせてkome-kamiを作ります。
kome-kamiは通常の紙よりもしっとりとした風合いで、強度もあるため、紙箱やカードに最適なのだそう。
パンフレットや封筒、名刺、紙袋などにも対応可能です。
古くから日本では、白さを増す目的や筆のにじみ防止として、紙にお米を混ぜることがありました。
伝統的な技術を、kome-kamiは新技術で生まれ変わらせています。
参考:Food Loss Paper「食べられなくなったお米で作った紙素材 kome-kami」
りんごの皮から作られたレザー「RINGO-TEX」
青森県にあるappcycle株式会社が開発したのは、りんご粉末配合の国産合成皮革「RINGO-TEX(リンゴテックス)」です。
使われているのは、りんごジュース等への加工時に出る皮などのかすの部分。
乾燥させたかすを使ってPVCレザー(ポリ塩化ビニル樹脂を使った合皮)を作ります。
RINGO-TEXは、全日空のサステナブルをテーマとした飛行機「GreenJet」のヘッドレストカバーに使用されたことで話題となりました。
また、青森発のアパレルブランド「What Is Heart(わいは)」で採用され、バッグや帽子などが販売されています。
参考:appcycle
【海外】アップサイクル食品の事例
海外でも、アップサイクル食品は注目されており、さまざまな取り組みが行われています。
今回は、そのなかから3つの事例を紹介します。
- オランダ:廃棄食材だけを使った食品ロスレストラン「Instock」
- アメリカ:廃棄食材をペットのおやつに変身「Shameless Pets」
- フランス:バナナの皮から作った化粧品「Kadalys」
オランダ:廃棄食材だけを使った廃棄食品レストラン「Instock」
オランダのアムステルダムにあるレストラン「Instock(インストック)」は、廃棄される食品を使ったレストランです。
食材は、オランダの大手スーパーや生産者から購入し、一流シェフがおいしい料理にして提供しています。
提供される料理に使われた食材のうち、80%が廃棄食材で作られています。
スーパーなどから回収された食材は、大型倉庫に保管される仕組みで、いつどのような食材が回収されるのかは推測可能です。
しかし100%予測は難しく、新しい食材が届けられた場合は、シェフのクリエイティビティにより新たなメニューとして提供されるのだそう。
世界中で、廃棄食品レストランが広まるかもしれませんね。
参考:INSTOCK
参考:IDEAS FOR GOOD「【欧州CE特集#7】クリエイティビティで食品ロスを解決。廃棄食材を使ったレストラン「Instock」」
アメリカ:廃棄食材をペットのおやつに変身「Shameless Pets」
海外でも、食品から食品へのアップサイクルが行われてます。
アメリカのサンフランシスコを拠点とするスタートアップ企業「Treasure8(トレジャー8)」は、犬用スナックの販売を行う「Shameless Pets(シェイムレス・ペッツ)」と協働し、ペットフードを開発・販売しました。
使用しているのは、さつまいもやにんじんなどの野菜、ロブスターなど。
余剰農産物や規格外の野菜などが使われており、各製品の原料のうちアップサイクルされた食品は30%を占めるそうです。
人間だけでなく、ペットフードでも食品ロスの削減に貢献できますよ。
フランス:バナナの皮から作った化粧品「Kadalys」
食品のアップサイクルによって、化粧品も作られています。
日本でおなじみのフルーツ、バナナは皮に傷が付いたり熟し過ぎてしまったりして、生産量の約半分が廃棄されているのが現状です。
そんな規格外のバナナを、フランス領マルティニーク島発のオーガニックコスメブランド「Kadalys(カダリス)」が、アップサイクルしています。
商品ラインナップは、リップバームやクレンジング、クリームなどさまざま。
マルティニーク島では、昔から怪我やニキビの薬としてバナナが使われており、ブランド創業者のシャーリー・ビロ氏は、バナナの持つ高い保湿力や美容効果に注目してブランドを立ち上げました。
Kadalysのコスメは、日本でも百貨店やオンラインショップなどで購入可能です。
参考:Kadalys
まとめ
食品ロスを削減する解決策の一つとして注目されている「食品のアップサイクル」。
日本国内外では、食品から食品へのアップサイクルだけでなく、他の素材や製品へのアップサイクルも行われています。
今回紹介した事例は、食品のアップサイクルの一部で、今後も新しい商品や技術が開発されていくでしょう。
また、SDGsやサステナビリティの認知の広がりにより、消費者もアップサイクル食品を選ぶ人が増えています。
今後は、廃棄される食品を減らすのはもちろん、食品のアップサイクルにも注目して商品を選んでいきたいですね。
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