人工肉の種類やメリット・デメリットとは?日本のスタートアップ企業もご紹介
「人工肉」とは、植物性の肉や培養された肉のこと。
環境問題や動物愛護、将来予想される食料不足の解決策として今注目を浴びています。
数十年後には当たり前になっているかもしれない人工肉。人工肉にはどのような種類があるのでしょうか。
また何を使ってどのように作られているのでしょうか。
今回は人工肉の種類や作り方、メリット・デメリットなどを解説します。
日本の人工肉スタートアップ企業も紹介しますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
人工肉とは?
人工肉は名前のとおり「人工で作られた肉」です。
牛肉や豚肉、鶏肉などの食感や風味を本物の肉に似せて作られています。
「代替肉」と呼ばれることもあり、英語では「artificial meat」や「fake meat」と表記されます。
日本でも徐々に認知されているものの一般的ではありません。
しかし欧米では当たり前になりつつあり、スーパーなどの食料品店では「人工肉(プラントベース)専用コーナー」を設けていることも多く、消費者が自由に選択できるようになっています。
人工肉の研究は1960年代から始まった
人工肉の研究は1960年代から始まっていたといわれています。
研究を行っているのは日本をはじめ、イギリスなどの先進国です。
しかし当時のバイオテクノロジー技術が低かったこともあり、開発や商品化は進んでいませんでした。
その後、技術の進歩や環境問題・社会問題への興味関心の広がりにより、人工肉の開発は急速に進みます。
2010年ごろからは本格的な商品開発が進められていきました。
20~30年後には肉の半分以上が人工肉になるかも
人口増加が進む今、「2040年には世界人口が90億人を超える」といわれています。
2020年時点では79.1億人なので、20年間で10億人が増える計算になります。
世界人口が増え、生活水準が高くなるにつれ、肉の消費量も増えます。
しかし供給できる量には限界があるため、次第に食肉が不足。牧草地を増やせば今度は森林破壊につながります。
人工肉は、そのような肉不足や環境破壊の解決策になり得ます。
人工肉を開発・製造するアメリカのビヨンド・ミートは2019年5月に株式上場しています。
ビヨンド・ミートは俳優のレオナルド・ディカプリオ氏やマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏から出資を受けていることでも有名です。
人工肉市場は今後ますます盛り上がりを見せるとともに、その需要も増えると予想されます。
日本で知られている人工肉の種類と作り方
人工肉には大きく分けて2種類あります。
- 代替肉
- 培養肉
それぞれの特徴と作り方を解説します。
代替肉
代替肉は植物性の原料でできた肉です。
動物性原料を使用していないため、ヴィーガンの方にも人気です。
代替肉の主な原料は豆類や小麦など。
海外ではエンドウ豆やひよこ豆などを使った代替肉がありますが、日本では大豆を使った「大豆ミート」がよく知られています。
代替肉の作り方は以下のとおりです。
- 原料となる食材から植物性タンパク質を取り出す
- 食感を肉に寄せるため、繊維状に加工する
代替肉にはミンチやブロック、フィレなど様々なタイプがあり、用途に合わせて使い分けることができます。
また代替肉は手作りも可能です。豆腐を凍らせてから解凍し、水を絞ることで大豆ミートの完成です。
参考:「豆腐ミート(ソイミート)の作り方★ベジタリアン向け レシピ・作り方」(Rakutenレシピ)
代替肉(大豆ミート)の商品を実食レビュー
下記記事で、日本で購入できる大豆ミートの商品を『10個』を食べ比べしています。
ぜひ参考にしてみてください。
培養肉
培養肉は牛や豚、鳥などの細胞を培養して作る肉です。
動物を殺さなくても動物の肉を作るため「clean meat」と呼ばれることもあります。
代替肉に比べて科学的技術が必要であるため、研究は進められているものの日本での商品化はまだ行われていません。
しかし、シンガポールでは2020年12月から培養された鶏肉の販売が開始され、今後、世界中で販売されることが期待されています。
培養肉の原料は幹細胞で、幹細胞がもつ機能に着目して作られています。
幹細胞は分裂して増える能力をもち、さらに別の細胞への分化も可能です。
この機能により1つの幹細胞から筋肉や内臓系の細胞が作り出せるのです。
具体的な作り方は、以下のとおりです。
- 牛や豚の筋肉の素「筋芽細胞」を抽出する
- 抽出した「筋芽細胞」を培養液で育て、筋線維を作るための培地へ移動させる
- 数日放置し繊維状の組織ができたら、集めてミンチ状にする
現在はミンチタイプの肉のみが完成しており、フィレやブロックは研究中です。
人工肉のメリット・デメリット
研究や開発が進められており、世界中で選択肢の一つになりつつある人工肉。
世界で注目されているのは、冒頭にお伝えした食料問題以外にも理由があります。
人工肉のメリット
人工肉には以下のメリットがあります。
環境負荷が少ない
人工肉は地球温暖化を抑制するとされています。
一般的な肉の生産には、家畜の成長から加工において大量の温室効果ガスが発生します。
また、牛のゲップに含まれるメタンは二酸化炭素よりも温室効果が高いガスです。
人工肉は、これらの畜産における環境保護の解決につながるといえるでしょう。
動物たちを犠牲にする必要がない
代替肉は植物性原料なので、動物の命を犠牲にする必要がありません。
ヴィーガンやベジタリアンでも代替肉なら食べられます。
脂肪分が少ないためヘルシー
健康面から人工肉を選択する人もいます。
代替肉にはコレステロールが含まれていません。
また、日本の代替肉に使われることの多い大豆は栄養価が高いため健康的だといえます。
「肉を食べたいけど脂質が気になる」という方にも代替肉はおすすめです。
人工肉のデメリット
メリットがあれば、デメリットもあります。
人工肉には、以下のデメリットが考えられます。
コストが高い
人工肉の値段は徐々に下がっていますが、一般的な肉に比べると高いといえます。
コストを下げるためには大量生産が大切ですが、日本では認知の低さや肉の人気から、選ぶ人は多くありません。
選択肢が少ない
選択肢の少なさもデメリットのひとつです。
日本では大豆ミートが一般的ですし、種類もミンチ・フィレ・ブロックがほとんどです。
販売しているお店も少ないため、人工肉に興味があっても手が出せない人も多いかもしれません。
肉に含まれる栄養価は得られない
代替肉は動物性原料が使われていないため、動物由来のビタミンやアミノ酸、ミネラルなどは摂取できません。
代替肉はヘルシーですが、摂り過ぎると栄養が偏るので注意しましょう。
人工肉に取り組む日本のスタートアップ企業
「人工肉」というとアメリカのビヨンド・ミートが有名ですが、日本国内でも人工肉に挑戦しているスタートアップ企業はたくさんあります。
最後に、人工肉の開発・製造に取り組む代表的な日本のスタートアップ企業を3社紹介します。
Green Culture(グリーンカルチャー)
次に紹介するのは、大豆やエンドウを原料とする植物肉「Green Meet」を開発したGreen Culture(グリーンカルチャー)です。
2011年に設立し、植物性肉の開発・販売を行ってきました。
Green Meetは最新のテクノロジーを駆使し、肉のデータを細かく分析して開発。
食のプロが集まって行われた試食会では、95%の人が満足したんだとか。
大豆を脱脂した従来の大豆ミートとは異なりエンドウ豆などを使用することで、より一般のお肉に近づけました。
東京都を始め、全国のカフェ・飲食店で導入されています。
飲食店向けの公式仕入れサイトを運営しているので、メニューで使いたいという方におすすめです。
参考:「Green Meet」(グリーンカルチャー株式会社)
DAIZ(ダイズ)
DAIZ(ダイズ)は2015年に設立した植物肉の開発・生産・販売をおこなうスタートアップ企業です。
DAIZの代替肉は「ミラクルミート」と呼ばれ、イオンやライフコーポレーションなどの商品に使用されています。
スーパーマーケットだけでなく、フレッシュネスバーガーなどの外食チェーンにも利用されており、現在もその規模を拡大中の注目企業です。
ミラクルミートの美味しさは素材にあります。
従来の代替肉は大豆油の搾りかすが使われていました。
しかしDAIZは大豆を丸ごと使うため、大豆のもつ臭みをなくすことができ、より肉に近い代替肉になったそうです。
参考:「DAIZ」(株式会社DAIZ)
IntegriCulture(インテグリカルチャー)
2015年に設立したIntegriCulture(インテグリカルチャー)は、培養肉に力を入れているスタートアップ企業です。
汎用大規模細胞培養技術「CulNet System」を開発し、日本ハムとの培養肉開発も行っています。
IntegriCultureは培養肉の製造において重要な培養液に着目。
細胞にとって適切な環境は身体の中にあると考え、体内システムを真似た環境を構築しました。
これにより細胞培養の大幅なコストダウンに成功しています。
世界でも販売例の少ない培養肉。
IntegriCultureの培養肉が世界をリードするかもしれません。
参考:「IntegriCulture」(インテグリカルチャー株式会社)
まとめ
今回は、人工肉の種類や作り方について解説しました。
まだ日本では一般的ではないため、「人工の肉」と聞くと驚く方もいるかもしれません。
しかし未来の地球を守るための方法のひとつに「人工肉の選択」があります。
人工肉の研究は驚く速さで行われており、美味しさも向上しています。
日本でも大型スーパーなどで、人工肉を見かけることも増えました。
この機会に是非一度、挑戦してみてはいかがでしょうか。
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