ステークホルダーについて分かりやすく解説!企業事例も紹介
ビジネスの場面でよく耳にする「ステークホルダー」。
みなさんはこのビジネス用語の意味をご存知ですか?
「ステークホルダー」とは、企業の活動に利害関係を持つすべての人を指します。
「ステークホルダー」は行政機関や地方自治体でも使われている言葉ですが、意味や使い方を知らないという方は多いのではないでしょうか?
ビジネスでは非常に重要な概念であるため、正確な意味や使い方を把握しておく必要があります。
今回は「ステークホルダー」の意味や使い方、関連する言葉、企業の実例も紹介します。
ステークホルダーとは?
まずはステークホルダーの基礎知識をご紹介します。
ステークホルダーを理解するためのポイントは、全部で3つあります。
- ステークホルダーを言い換えると「利害関係者」
- 英語のstakeholder(利害関係者)が語源
- ステークホルダーとストックホルダーは違う
それぞれを詳しくみていきましょう。
ステークホルダーを簡単に言い換えると「利害関係者」
ステークホルダーを辞書で調べると、次のように説明されています。
”企業の利害関係者のこと。株主や債権者・取引先・顧客など。地域住民・地域社会を含めていう場合もある。
出典:デジタル大辞典(小学館)”
上記でも記載されている通り、ステークホルダーを「利害関係者」と呼ぶこともあります。
しかし場合によっては、ステークホルダーと利害関係者の意味が異なる場合があるので注意しましょう。
例えば、会計学では「利害関係者」は株主や証券会社、銀行などの金銭的な関係者を意味することがあります。
このような違いから、取引先や顧客、従業員など企業に関係する幅広い人々を指す場合は「ステークホルダー」と呼ばれるようになりました。
ここで注意しなければいけないのが「利害の不一致」です。
ステークホルダーの立場によって、利害は異なります。
ステークホルダー全員の利害は一致しない、と認識しておきましょう。
ステークホルダーの語源は英語の「stakeholder」
ステークホルダーという言葉は英語の「stakeholder」が語源で、日本語に訳すと「利害関係者」です。
もう少し詳しく見るとステーク(stake)は「掛け金」、ホルダー(holder)は「保有者」を意味します。
掛け金を保有する人、つまり投資家を指します。
「ステークホルダー」という言葉は、1980年代にR/エドワード・フリーマン氏により理論が展開され、主唱されるようになりました。
ストックホルダーとの違い
「ストックホルダー」はステークホルダーと間違われる言葉のひとつです。
ストックホルダーとは「株主」を指す言葉です。
ステークホルダー(利害関係者)の中にストックホルダー(株主)があるという関係図になります。
ちなみに、ストックホルダーに似た言葉に「シェアホルダー」があります。
シェアホルダーも株主を指す言葉ですが、ストックホルダーと並んで使う場合は大株主を指します。
違いをまとめてみましょう。
- ステークホルダー:利害関係者すべてを指す
- ストックホルダー:利害関係者の中の「株主」だけを指す
- シェアホルダー:「株主」もしくは「大株主(議決権を持つ株主)」を指す
混合しないよう、違いを理解しておきましょう。
2種類のステークホルダー
ステークホルダーは企業活動の利害関係者を指す言葉ですが、どの範囲まで含めるのかが難しいところ。
そこでステークホルダーを
- 直接的ステークホルダー
- 間接的ステークホルダー
の2つに分類してみましょう。
直接的ステークホルダー
「直接的ステークホルダー」とは、企業経営や活動結果によって直接的に影響を受ける人を指します。
日常的に深い関わりがある人や団体と考えると覚えやすいでしょう。
具体的には以下のような人・団体です。
- 従業員
- 株主
- 取引先
- 消費者
- 金融機関
間接的ステークホルダー
「間接的ステークホルダー」は、企業活動が直接影響を及ぼさないものの影響を受ける人を指します。
企業活動が直接影響を与えないため見極めが難しいですが、間接的ステークホルダーへの影響も考慮すべきでしょう。
間接的ステークホルダーには、以下のような人が当てはまります。
- 従業員の家族
- 労働組合
- 所属する地域社会、行政
- 公的機関
ステークホルダーを使った例文
意味や語源を理解した上で、実際の例文を見ていきましょう。
- 企業の持続的成長のためには、ステークホルダーからの評価を高めることが必要不可欠である
- 企業のグローバル化は、ステークホルダーの規模を物理的にも大きくした
- ステークホルダーの意見が、企業の構造変化を促すことがある
「ステークホルダー」という言葉は、名詞として使われます。
- 株主総会で使用する資料は、ステークホルダーへの分かりやすさを重視して作成した
上記の場合、ステークホルダーは「株主」という意味で使われます。
一般的に、株主を指す場合は「ストックホルダー」が使われますが、場合によっては「ステークホルダー」と呼ばれることもあります。
ステークホルダーに関連した言葉
続いて「ステークホルダー〇〇」という言葉を3つ紹介します。
- ステークホルダー分析
- ステークホルダーマネジメント
- ステークホルダーエンゲージメント
それぞれの言葉には、どのような意味があるのでしょうか?
ステークホルダー分析
「ステークホルダー分析」とは、マネジメントにおける分析手法の一つです。
ステークホルダーを明確にし、プロジェクトを円滑に進めるための計画を立てることを指します。
ステークホルダー分析は次の手順で行います。
- 直接的・間接的ステークホルダーを明確にする
- 各ステークホルダーの影響度や決定権の強さから重要度を決める
- 各ステークホルダーの現状と理想を把握する
- 各ステークホルダーの興味関心、そしてその先にある目的を明確にする
ステークホルダー分析で得た結果をもとに、ステークホルダーマネジメントを行います。
ステークホルダーマネジメント
ステークホルダー分析の次のステップが「ステークホルダーマネジメント」です。
「ステークホルダーマネジメント」とは、プロジェクトに関わるすべてのステークホルダーを管理すること。
ステークホルダーと良い関係を築くことで、参加者や協力者が増え、プロジェクトを成功させることができます。
ステークホルダーマネジメントの計画を立てる際は、課題の予測を行い、仕様の確認や進捗チェックの方法と頻度などを決めましょう。
ステークホルダー分析を行い、ステークホルダーマネジメントの計画を立てたら、ステークホルダーエンゲージメントの管理を行います。
ステークホルダーエンゲージメント
「ステークホルダーエンゲージメント」とは、ステークホルダーの期待や満足度を管理することです。
エンゲージメント(engagement)とは「婚約」「契約」「約束」を意味する言葉ですが、ビジネスにおいては「従業員の愛着心、思い入れ」を指す言葉として使われます。
「ステークホルダーエンゲージメント」においては、ステークホルダーの愛着心ということですね。
ステークホルダーエンゲージメントが管理できていないと、当初のプロジェクト目標が達成できなかったりステークホルダーからの信頼を失うことになるかもしれません。
企業が考えるステークホルダーの例
では最後に、日本企業4社が考えるステークホルダーを見ていきましょう。
- 日清製粉
- 大和証券
- 豊田自動織機
- TOTO
日清製粉
日清製粉がステークホルダーと考えているもの、そしてそれぞれに対しての基本姿勢は以下のとおりです。
顧客 |
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株主 |
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社員 |
|
取引先 |
|
>社会 |
|
大和証券グループ
大和証券グループでは、ステークホルダーを「顧客」「社会」「社員」「株主等」に大きく分け、4グループの中でさらに細分化しています。
顧客 | 投資家:投資家のニーズにあった商品・サービスを提供し、顧客満足度を向上させる
発行体:株式や債権などを発行する企業や公共団体への全面的なサポートを行う |
---|---|
社会 | 投資先:積極的なコミュニケーションに努める
取引先:公正な関係を保ち、協働していく 政府:納税義務を果たすとともに政策提言などを行う NGO/NPO:復興支援などで協働し、社会課題解決の視点を経営戦略に反映させる 地域社会:地域に根ざした取り組みを進める |
社員 | 社員と社員の家族:社員が働きがいを実感できる環境づくりを進める |
株主等 | 株主等:透明性の高い情報開示、期待に応えられるよう努める |
参考:大和証券グループ本社「ステークホルダーコミュニケーション」
豊田自動織機
豊田自動織機では、ステークホルダーとの関わりを以下のように示しています。
顧客 |
|
---|---|
取引先 |
|
株主・投資家 |
|
従業員 |
|
地域社会 |
|
TOTO
TOTOでは、ステークホルダーとの信頼・協働関係を築く「ステークホルダーエンゲージメント」を重視しています。
また「TOTOグループコミュニケーション方針」を定め、ステークホルダーの満足構造にも取り組んでいます。
そんなTOTOがステークホルダーとして定めているのは、以下の5つです。
顧客 |
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---|---|
社会 |
|
社員 |
|
取引先 |
|
株主 |
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まとめ
ステークホルダーは、企業活動が影響する利害関係者を指します。
たとえ影響が直接的でなくても、ステークホルダーです。
企業が持続的な経営を行うためには、ステークホルダーの認識は必要不可欠。
ステークホルダーの認識や理解を怠ると、社会的信用を失う可能性もあります。
もしステークホルダーの理解ができていないなら、ステークホルダー分析から始めてみてはいかがでしょうか?
プロジェクトマネジメント研修を受けることでも、ステークホルダーとの関係の保ち方、マネジメント方法を身に付けることができるでしょう。
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