現在、世界ではフードロスによる影響が問題視されており、日本でも多くの取り組みが行われるようになっています。
フードロスは、私たちの身近な生活にも深く関わりがあるため、日頃から食材に関して問題意識を持つことが重要です。
この記事ではフードロスについて、現状や問題点、フードロスを削減するための取り組みについて紹介します。
SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」とフードロス
SDGs(持続可能な開発目標)で掲げている12番目の目標「つくる責任つかう責任」は、持続可能な生産・消費を実現することがテーマです。
目標12「つくる責任つかう責任」 の中に、11項目のターゲットが設けられており、フードロスに関しては次のように言及されています。
【目標12・ターゲット3】2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食糧の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食糧の損失を減少させる。
引用:「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ(仮訳)」(外務省)より
つまり、2030年までには個人や企業に関わらず、世界全体の食品廃棄を現在の半分にするということです。
まさに、目標の言葉どおり、作る側は必要な分を生産するように心がけ、使う側は無駄にならないように責任を持って消費することが求められます。
フードロス問題の現状
ここでは、フードロスの問題について詳しく解説します。
フードロスへの理解を深めて現状について考えていきましょう。
フードロスとは?
フードロスとは、まだ食べられる食品や食材が捨てられてしまう損失のことです。
さまざまな場面でフードロスが起こっており、大きくふたつの種類に分けられています。
・事業系フードロス
・家庭系フードロス
事業系フードロスとは、食品の製造や卸売、外食産業などで生じるものを指し、スーパーやコンビニの廃棄商品、お店での食べ残し、作る過程で出た廃棄物などが該当します。
一方、家庭系フードロスは、私たちが生活する中で無駄にしてしまっているものです。
買い過ぎて使い切れずに腐らせた食品や食材、作り過ぎて捨てられた料理、嫌いだからと食べなかった野菜など、誰にでも身に覚えがありませんか。
これら、食べられることなく捨てられていった食べ物は、すべてが世界的に問題視されているフードロスです。
ただし、もとから食用とされていない魚の骨や果物の種などは、この概念には含まれません。
フードロスの現状
世界では、1年あたり約13億トンの食糧が廃棄されています。
これは、生産された食糧の約3分の1に当たる量です。
大量生産や賞味期限切れによるフードロスが毎日のように起こっています。
出典:「Global food losses and food waste」(FAO)より
食品を作り出すのも、無駄に捨ててしまうのも、日本を含めた先進国が中心となっているのが現状です。
日本では、食品ロス量は、令和元年で570万トンでした。
前年度と比べると30万トン削減できていますが、それでも世界の食糧援助量の約1.4倍にあたる多さです。
その約半数の261万トンは家庭から発生したもので、主に食べ残し、手つかずの食品(直接廃棄)、皮の剥きすぎなどが理由となっています。
毎日ひとりがおおよそ茶碗1杯分のご飯を捨てている計算になります。
さらに近年は、新型コロナウイルスによるパンデミックでイベントの中止や学校の休止など、大量に準備されていた食品が廃棄されることになりました。
さまざまな対策が行われましたが、フードロス問題は依然として改善されていません。
出典:「食品ロス量(令和元年度推計値)」(農林水産省)より
フードロスの原因
フードロスがなかなか改善に向かわないのには、ビジネス要素と消費者意識のふたつがあります。
まずは、事業系食品ロスの発生要因について見てみましょう。
事業系食品ロスは、「食品製造業」「食品卸売業」「食品業」「外食産業業」の4つに分けられます。
それぞれの廃棄量と発生要因をまとめたものが以下です。
食品ロス量(単位:万t) | 発生要因 | |
食品製造業 | 128 | 製造工程でのロス/返品 |
外食産業 | 103 | 食べ残し/仕込みロス |
食品小売業 | 64 | 返品/納品期限切れ/売れ残り |
食品卸売業 | 14 | 返品/納品期限切れ/売れ残り |
出典:「食品廃棄物発生抑制推進事業報告書(平成22年度)」(一般社団法人日本有機資源協会)より
最も多い食品ロスが発生しているのは食品の製造業であり、発生要因は製造工程におけるロスがほとんどです。
「製造工程におけるロス」は、以下に分類されます。
- 原材料の不可食部分、副産物
- 可食部分の端材
- 規格外品、試作品
- 生産計画に伴わない生産
製造工程を辿ると、はじめに加工前の原材料を規定の形にするためのカット工程が存在し、その後の加工段階で切れ端などが除去されます。
商品として市場へ出る前には規格外品をはじく作業もあるため、それらがロスとして発生します。
また、新商品開発の際の試作品や、需要を超えた生産した余剰分もロスになるでしょう。
ただし、製造工程において、ロスを完全に減らすことはほとんど不可能といえます。
新商品における販売予測は難しく、生産計画を立てにくい特徴があるためです。
また、常に販売予測以上の生産をしなければ、販売機会を損失するリスクが発生するでしょう。
あらかじめ、一定のロスを想定しておかなければ、事業として成り立たないのが実情です。
また、日本の食品製造は高い品質が求められるため、あらゆる加工段階で適さないと判断されて廃棄されるものが多いです。
厳しい基準を満たした食品でも、3分の1ルール(※)により、流通の段階で賞味期限切れや売れ残りとして廃棄される場合もあります。
また、飲食店や家庭系フードロスでは、主に作り過ぎや食べ残しが関わっていますが、調理せずに捨てる「直接廃棄」や調理段階で食べられる部位まで取り除く「過剰除去」も原因のひとつです。
(※)3分の1ルール…「製造した日から賞味期限までの期間のうち、3分の1を経過すると納品ができず、3分の2を過ぎると販売ができない」という商慣習的ルール
フードロスの問題点
フードロスの問題は、単純に食品が「もったいない」というだけではありません。
食材は自然からの恵みです。
作り続けたとしても消費量が多すぎると追いつかなくなります。
将来的にフードロスが改善しない場合、世界規模で食物が足りなくなる可能性もあるのです。
現段階では、世界的に大量の食品が廃棄されていますが、その一方で食糧不足で飢餓に陥っている人たちも多く、食の不均衡が起こっています。
フードロスによって発生する大量のゴミは、廃棄処理される過程で温室効果ガスを排出するため、地球環境にとても悪影響です。
また、廃棄食品の処理には多額の費用がかかり、そのお金は税金で支払われています。
また、日本においては、前述のとおり規格や商慣習によって発生するロスも多いです。
まだ食べられる商品が市場に出回らない問題を解決するには、消費者における鮮度志向も改善していく必要があるでしょう。
消費者一人ひとりの意識改革や正しい知識も必要とされます。
フードロス削減に向けた日本の取り組み
ここからは、フードロス削減に向けて行われている日本の取り組みを紹介します。
食品ロス削減推進法
日本では、2019年10月に「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行されました。
この法律は「食品ロス削減推進法」とも呼ばれ、食品ロス削減を進めるために、国や地方公共団体が果たす義務について明確にしたものです。
そして、総合的にフードロスへの取り組みが進められるように、削減施策の基本となる事項が定められています。
これによって、食品ロス削減への働きかけが具体的になり、国内でもより一層推進されるようになりました。
参考:「食品ロスの削減の推進に関する法律」(消費庁)より
食品ロス削減国民運動
農林水産省でも取り組みが開始され、食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)を立ち上げてフードロスについての情報を発信しています。
また、ロゴマークの「ろすのん」を公開して、一般的にもフードロスのイメージを普及させるような取り組みが開始されました。
このロゴマークは、申請すると企業や団体での取り組みに活用できます。
フードロスを解決するには、一人ひとりが意識をもって取り組むことが重要です。
農林水産省では情報発信やロゴマークを通して、取り組みを実施する企業や団体のネットワーク拡大を目指しています。
参考:「食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)」(農林水産省)より
フードバンク
フードバンクは、流通できない食品や食物を福祉施設や生活困窮者へ無償で提供する活動です。
日本では製造時の品質チェックが厳しく、食品自体の品質や安全性には問題がない場合でも、規格外や包装にトラブルがあると廃棄されることが多くあります。
そこで、食品として問題のないものは、フードバンクを活用することで子ども食堂や福祉施設などに寄付でき、廃棄を減らすと同時に多くの人の手助けになるのです。
食費の負担を軽減できるという点では、経済面をサポートすることにもなり、貧困問題の改善にも役立っています。
フードロス削減に向けて私たちができること
フードロス削減のためには家庭内で発生する廃棄物を削減することも重要です。
最後に、私たちが普段の生活で意識すべき、フードロスの削減方法について紹介します。
買いすぎないようにする
買いすぎや保存ミスをすると、食品が腐ったり傷んだりしてしまい、調理せずに直接廃棄することになります。
そのため、買い物前には必要な材料をメモするなど、適切な量を買う意識を持って廃棄を減らすことが大切です。
また、食品ごとに適切な保存期間・保存方法を知っておくと、フードロスを抑えることにつながるでしょう。
余った食材が出た場合は、レシピサイトなどを利用して具材を検索することでレシピを調べられます。
少しずつ工夫しながら食品を使い切るように努めることが、フードロス削減につながるのです。
作りすぎないようにする
調理する際は、食べ切れる量に調節することが大切です。
好き嫌いで食べ残しがないようにすることでも、廃棄する量が減らせます。
もし作りすぎたり食べ切れなかったりする場合には、冷凍保存などで対応して、できる限り消費するように心がけましょう。
過剰除去しないようにする
料理が苦手な方やまだ慣れてないうちは、必要以上に食材を捨てている可能性があります。
野菜の皮などは栄養豊富で美味しく食べられるものもありますので、食材についての知識を深めることも大切でしょう。
また、農薬などを気にしすぎている場合、表面などを必要以上に削っている可能性もあります。
しかし、実は危険性がほとんどなかったり、無農薬であったりするケースが多いため、正しい情報を得ることも必要です。
まとめ
フードロスは、世界中で多くの食品が廃棄されている問題のことを指し、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」にも関係しています。
日本でも改善の取り組みが進められていますが、それでも年間に約570万トンものフードロスが発生している状態です。
そのうち、約半数が家庭系食品ロスといわれているため、家庭内での廃棄量を減らすことも解決の一歩につながります。
食品廃棄は規格や商慣習も原因のひとつになっているため、ひとり一人が消費における鮮度志向を見直すことも重要です。

GREEN NOTE編集部

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