産休育休はいつから?子育てにやさしい企業事例8選
日本でも男性の育休が増えています。これは国や企業、社員の意識が少しずつ変わって行ったといえるでしょう。
しかし子どもが生まれるのは嬉しいけれど、産休育休中の給与や職場復帰後のキャリアに不安を感じる方が多くいるのも現状です。子育ての不安を少しでも払拭するためには、国の経済的支援や企業の産休育休などのサポートが欠かせません。
この記事では、産休育休の制度や給与面についてわかりやすく解説します。さらに、子育てにやさしい企業事例もまとめました。ママパパが笑顔で育児と仕事を両立できるヒントが見つかるはずです。
産休育休はいつからいつまで?
そもそも産休とは、産前・産後休業のことを意味します。
妊婦のより安全な出産と産後のケアをサポートするための制度です。
パートやアルバイトを含め、出産をする女性労働者が取得できます。
産休が始まるのは出産予定日の6週間前からで、双子以上の場合は産前14週間からです。
出産後8週間まで取得できます。
育休は子どもが1歳になるまで休暇をとれます。
法律に定められた育児休業制度です。
開始時期でいうと、女性は産後休業が終わってから、男性は出産予定日から取得できます。
2022年10月からは、2回までは分割取得が認められるようになりました。
さらに以下の場合は延長が可能になります。
- 保育所などに入れないなどの事情があれば、1歳6ヶ月までの延長。
- 両親がともに育児休業を取得する場合は、原則1歳2ヶ月まで延長(パパ・ママ育休プラスの要件を満たす場合)
「パパ・ママ育休プラス」を利用するには、両親がともに育児休業をする場合に3つの条件を満たす必要があります。
- 配偶者が子が1歳に達するまでに育児休業を取得していること
- 本人の育児休業開始予定日が、子の1歳の誕生日以前であること
- 本人の育児休業開始予定日は、配偶者がしている育児休業の初日以降であること
引用:厚生労働省
このように、産休や育休は両親の状況によって期間が変わるので注意しましょう。
産休や育休中にもらえるお金や支援
仕事を休むときに心配になるのがお金ではないでしょうか。
産休や育休中に利用できる3つの経済的支援についてまとめました。
①出産育児一時金
健康保険や国民健康保険の被保険者等が出産した場合、出産育児一時金が支給されます。
支給額は50万円です。
令和5年4月よりこれまでの支給額の42万円から引き上げられました
②出産・子育て応援交付金
出産・子育て応援交付金では、令和4年4月以降に出産された家庭を対象に、育児用品や育児支援サービスを利用できる制度です。
支給額は1人の子どもにつき、最大10万円相当です。
妊娠届出時に5万円、出生届出時に5万円という名目で2回に分かれています。
出産・子育て応援交付金は各自治体の判断によって、実施方法が異なります。
現金、出産・育児関連商品の商品券、産後ケアや一時預かりの利用料助成などさまざまです。
自分の自治体がどのような交付形式なのかはホームページで確認してください。
③育児休業給付金
雇用保険の被保険者の方が、1歳未満の子を育てるために育児休業を取得した場合、一定の要件を満たすと「育児休業給付金」をもらえます。
育児休業給付金の割合は育休の開始から6ヶ月は休業開始時の67%、それ以降は50%です。遅くとも、育休に入る1ヶ月前から会社へ申請書を提出しましょう。
また子どもの出生後8週間の期間内に合計4週間分(28日)を限度として、産後パパ育休を取得した場合、一定の要件を満たすと「出生時育児休業給付金」の支給を受けられます。
出典:厚生労働省
日本人女性が抱える家事や育児の負担が大きい!
国内でも育休をとる男性が増えています。
厚生労働省の「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」によると、従業員1,000人超企業のうち男性育休等取得率は46.2%、男性の育休等平均取得日数は46. 5日でした。
とはいえ、世界と比べると、女性が抱える家事や育児の負担は大きいといえます。
6歳未満の子どもがいる夫婦の家事・育児関連時間についてみてみましょう。
日本では、平成28(2016)年における6歳未満の子供を持つ夫の家事・育児関連に費やす時間(1日当たり)は83分でした。
これは他国と比べると圧倒的に低いといえます。
世界でみると日本女性は育児の負担が非常に大きいといえるでしょう。育児の負担が大きいということは、働きづらい状況であると考えられます。
妊娠や出産を経験した女性が無理せずに働くためには、企業の子育て支援や男性の育休制度がますます重要になるでしょう。
子育て世帯にやさしい企業事例
ジェンダー平等を求められている今日、政府や企業の女性に対する経済的支援が欠かせません。
では、企業はどのような対策を実施しているのでしょうか。
①資生堂
株式会社資生堂では2007年と2013年に、資生堂ジャパン株式会社では2007年に「くるみんのマーク」を取得しています。
くるみんマークとは、次世代育成支援対策推進法に基づいて、厚生労働大臣が子育てサポート企業として認めたものです。
資生堂の育休は法定を超えて、子どもが満3歳になるまで休暇を取得できます。
通算5年まで可能です。
また職場復帰する場合は、不安を少しでも減らせるよう「チャイルドケアプラン」を実施。
復帰後のプロセスを上司とコミュニケーションを取りながら確認できます。
②ライオン
ライオンでは、だれもが仕事と育児が両立できるよう支援対策に取り組んでいます。
その結果、2022年の女性正社員の育児休業取得率は93%。男性についても68%で、取得者が増加しました。
育休中もスキルアップできるよう「復職と育児の⽀援Webサイト」を開設し、キャリア開発を支援しています。
さらに制度を正確に理解するための個別育児制度説明会、復職前セミナーや復職前後の⾯談も実施しています。
くるみん認定企業の中でもより手厚いサポートをしたことを評価され、「プラチナくるみん認定」も受けました。
③アマゾン
アメリカに本社をおくアマゾンは女性だけではなく男性も育休が取れる体制が整っています。
子どもの出産または養子縁組前後において、全額支給される出産休暇や育児休暇オプションを実施。
国から育児休業給付金が月額で給与の3分の2程度(給付額には上限があり)が支払われますが、それにプラスしてAmazonからファミリーボーナスが給付されるのです。
お金の不安も手厚くサポートしているといえるでしょう。
育休を取得した男性社員からも、育休を取りやすい職場環境だったという声が多く上がっていました。
出典:Amazon
出典:Amazon|Amazonの男性社員に聞いた、子育ての楽しさと仕事のやりがいが増える育児休暇取得のコツ
④イオン
イオンもプラチナくるみん認定を受けた企業の一つです。
2017年には「女性が活躍する会社BEST100」において、対象4,300社の中で「女性活躍推進度1位」を獲得しました。
育休を取りやすい環境が整っているため、2021年度は63名の社員が育休を取得しました。
そのうち男性は36名。2019年度と比較して約2倍も増加しました。
育休体験者の話によると、育休を申請するときに理由は求められず、取得しない場合にその理由が問われるようになっているそうです。
出典:イオンモール|ダイバーシティ・働き方改革
出典:イオン株式会社
⑤ローソン
プラチナくるみん認定を受けているローソンは、育休を3歳まで取得可能です。
育休中の社員へのサポートに努めています。
最新の会社の情報提供や復職後のキャリア形成、ネットワークづくりを目的とする集合研修をオンラインで実施しました。
これまで女性の参加がほとんどでしたが、2022年度は男性が3名参加したそうです。
このような成果もあり、2000年度以降の累計で、育休から復職した社員の比率は94.5%(346名中327名)になりました。
この数字はこれから出産を控えた女性にとって心の支えになるのではないでしょうか。
⑥明治安田生命
明治安田生命もプラチナくるみん認定だけではなく、イクメン企業アワード「特別奨励賞」を2013年度に受けています。
男性の育休取得を後押しするために対象者への取得勧奨や、取得状況を組織業績評価に反映する運営に取り組んでいます。
その結果、2020年度以降に取得率100%を達成しました。
また2021年度に時間や場所にとらわれない働き方の支援として「リモート型」勤務を導入していることから、復帰しても働きやすい環境を整えているといえるでしょう。
⑦docomo
プラチナくるみん認定を受けているdocomoは、育児を担う社員が職場で活躍できる風土づくりに努めています。
その一つが育休中の職場とのつながりやキャリア継続をサポートする「ドコモ・スマイルリレー」です。
まず育休前に制度の説明や今後のキャリアについて話す三者面談を実施。育休中はコミュニケーションの場を提供し、上司と連絡できます。
復職後に二度目の三者面談を実施し、これからの働き方や不安について共有します。
このように、育児と仕事が両立できるような体制を整えているのです。
また男性の育休取得も100%を目指してサポートしています。
2019年度に育休を取得した女性は102名、男性は33名でした。
これに対して、2022年度は女性が92名、男性132名と男性の取得率増加が目立つ結果になりました。
出典:docomo|両立支援
⑧ギークス
IT人材事業などを展開するギークスは、今後ママやパパになる社員向けに『産休育休ガイドブック』の制作・Web公開をしました。
産休育休ガイドブックとは、妊娠、出産、産休育休、復帰という各フェーズにおいて活用できる制度、必要な申請をわかりやすくまとめたものです。
リアルな意見を反映させるために、先輩ママパパ社員のインタビューも掲載されています。
これから親になる社員が少しでも不安を払拭して、仕事を楽しめるよう制作されました。
これまでも社員の家族も大切にするために、ファミリーデーを設定し、社員の子どもがオフィスツアーできるイベントも開催しています。
ギークスの取材記事はこちら:【取材】ギークスメンバーに聞く『産休育休ガイドブック』とは?|長く働き続けるための取り組み
子育てママパパを社会全体で応援しよう
妊娠や出産は家族にとって幸せなできごとではありますが、生まれた日から子を育てる責任をママパパたちは任されます。
家族同士の協力も必要ですが、育休中のお金や職場復帰できる環境など、ママパパだけではどうしても乗り越えられない壁があるのです。
いま子育てに奮闘している方やこれから親になる方が、子育てと仕事を両立できるように、国や自治体、企業が心強くサポートすることが大切といえるでしょう。
まだまだ女性への家事や育児負担が大きい日本だからこそ、性別問わず育休をとれる風土づくりや、職場復帰しやすい体制の整備が求められています。
それぞれの企業がアイディアを出しながら、社会全体で子育てしやすい社会を築いていく必要があるのではないでしょうか。
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