ESG

環境問題に力を入れるスタートアップ事例10選

はじめに

インパクトスタートアップ育成支援プログラム 「J-Startup Impact」をご存じですか。

2023年度に経済産業省によって設立された官民によるインパクトスタートアップ支援のための制度です。

初年度の今年は、ロールモデルとなり得る30社が選定されました。

本記事ではその中から、環境問題に積極的に取り組んでいるスタートアップを10社ご紹介します。

インパクトスタートアップ育成支援プログラム 「J-Startup Impact」とは

「J-Startup Impact」には詳しくないけれど、「J-Startup」プログラムならご存じの方も多いのではないでしょうか。

「J-Startup」プログラムは、「J-Startup Impact」の前身として2018年6月にスタートしたスタートアップ育成のための取り組みです。

「世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を生み出し革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供する」をビジョンとしています。

選定企業には、以下のような支援が実施されます。

  • 大規模イベントへの出展支援
  • 海外現地支援
  • 入札機会の拡大
  • 民間企業とのマッチング

現在、約200の企業が選定されるなど、年々注目が高まるスタートアップ。

その中で、特に社会・環境課題の解決と持続的な経済成長の両立を目指す企業をインパクトスタートアップといいます。

このインパクトスタートアップの集中支援を行うために設立されたのがインパクトスタートアップ育成支援プログラム「J-Startup Impact」なのです。

企業選定にあたっては、設立初年度にもかかわらず、実に500社もの企業から応募がありました。

その中から30社が選定され、選ばれた企業には「J-Startup」プログラムでの支援に加えて次のような支援が実施されます。

  • 専門家相談窓口の活用推進
  • 国内外に向けた発信・PR

専門家への相談では、企業活動が社会や環境に与えた影響の可視化や管理、グローバル認証取得のための支援などが行われます。

まだ始まったばかりの取り組みですが、インパクトスタートアップの増加や世界的な活躍を後押しする制度として、期待が高まります。

参照:官民によるインパクトスタートアップ育成支援プログラム
参照:J-Startupインパクトスタートアップ育成支援プログラム – J-Startup Impact

環境問題に取り組むスタートアップ10選

社会・環境問題の解決が企業活動やサービスの根幹を成すといっても過言ではない「J-Startup Impact」選定企業。

今回は、その中でも特に環境問題に特化した以下の企業をご紹介します。

  • 自然電力株式会社
  • 株式会社坂ノ途中
  • WOTA株式会社
  • 株式会社アストロスケール
  • 株式会社TBM
  • 株式会社ファーメンステーション
  • KAPOK JAPAN株式会社
  • エレファンテック株式会社
  • 株式会社Synspective
  • 株式会社ユーグレナ

どのスタートアップも環境や未来への熱い思いがあふれる魅力的な企業ばかり。

詳しく見ていきましょう。

「自然エネルギー100%の世界へ」:自然電力

地球環境を守るため、自然エネルギーへの転換を1日でも早く実現しようとする会社です。

具体的には、自然エネルギーによる発電事業脱炭素化に向けたソリューションの提案を行っています。

収益の一部を地域に還元することで、地域活性化にも貢献しています。

注目すべきはその信念の強さ

「自然エネルギー100%の世界を共につくる」というはっきりとしたビジョンのもと、同じ思いを抱く世界中の仲間たちを巻き込んで、最短距離で突き進んでいます。

創業メンバーが抱く「自分たちの未来は自分たちでつくる」という強い思いに共感する方も多いでしょう。

また、自然電力は自然エネルギー100%の世界という大きな目標を「第一歩」と述べています。

今後、彼らが描き挑んでいく未来に、より一層、期待が高まります。

参照:自然電力株式会社

「地球にも体にもやさしい農業を」:坂ノ途中

持続可能で環境負荷の小さい農業を目指し、多くの農家さんに寄り添う企業です。

環境への負担が小さい農業を行う新規就農者の育てた野菜の販売を主に行っています。

取り扱う野菜や加工品には独自の基準があり、栽培方法、品質などにこだわる新規就農者や小規模農家が主なパートナーです。

従来の大規模かつ画一的な農業の常識を打ち破る、小規模で多様性に富んだ農業のあり方を追求する事業形態。

流通コストや供給の不安定さから、創業当時は不可能といわれることもあったといいます。

そんな不可能を可能にしたのは、坂ノ途中のメンバーや農家さんの自然や野菜への熱い思いです。

こだわりや思いが詰まった野菜はとても品質が良く、「しみじみとおいしい」ものばかり。

機会があったら、ぜひ味わってみてください。

参照:株式会社坂ノ途中

「柔軟な発想で水問題を解決へ」:WOTA

気候変動や人口増加によって水問題は、日々その深刻さを増しています。

そのような水問題の解決に全力をかけるWOTAは、自らを「世界の水問題解決のためだけに存在する会社」と言い切ります。

WOTAは独自技術の「小規模分散型水循環システム」により、水供給と排水処理に全く新しい構造を築き上げました。

このシステムによって、個々の住宅における水の再生利用が可能になります。

水不足・水質汚染・水道財政悪化という多面的な問題を一挙に解決できる画期的なシステムです。

すでに複数の自治体で実証実験が行われており、2040年までの普及を目指しています。

水問題に立ち向かう強い思いと柔軟な発想、それを支える確かな技術に期待が高まります。

参照:WOTA株式会社

「持続可能な宇宙開発のために」:アストロスケール

環境問題は、もはや地球上だけにとどまりません。

地球軌道上には5,000基を超える衛星がありますが、その中で稼働しているものはわずか1,950基。

小さすぎて追跡できないものを含めると、数千万個以上ものスペースデブリ(運用を終えた衛星や打ち上げロケットの上段などの不要になった人工物)が存在するといいます。

アストロスケールはそうしたスペースデブリの発生を抑え、除去を進める事業を行う民間初の企業です。

各国政府や国際機関と密接に連携を取りながら、イネーブラーとして政府や国際機関を支援しています。

市場が未発達な領域において、「宇宙のアフターサービス」市場の創造に取り組む先駆的な企業の動向から、目が離せません。

参照:文部科学省|良く聞かれる質問:スペースデブリ(仮訳)
参照:株式会社アストロスケール

「環境・社会問題に一直線」:TBM

世界中で採取可能な石灰石を主原料とした新素材「LIMEX」の開発を行っています。

LIMEXは、プラスチックや紙の代替製品として多くの企業や自治体で使用されています。

  • 既存の設備で成形できる
  • 世界中に存在する石灰石を原料としているため、輸送による環境負荷が抑えられる
  • マテリアルリサイクルに適している

などの特徴から、プラスチック代替製品や再生素材へのニーズの高まりに呼応して、さらなる躍進が期待できるでしょう。

経営面では「TBM Pledge 2030」を策定。カーボンネガティブなど、2030年までの目標を掲げています。具体的な目標を設定し、達成のためのプロセスを逆算して事業活動に反映しているのです。

また、ビジョンやガバナンスに至るまで誰もが分かるよう、明示・開示するとともに、スタートアップ業界におけるサステナビリティ推進のための活動も行っています。

まさに、環境・社会課題解決型スタートアップをけん引する企業の1つです。

参照:株式会社TBM

「発酵の力でゴミを出さない循環を」:ファーメンステーション

発酵の力で、未利用資源を再生・循環させる循環型社会の礎をつくっています。

食品ロスなどの未利用資源の再生に加えて、再生過程で生じる発酵かすや、通常廃棄されてしまう副産物も別の用途で再利用。

徹底したゴミを出さない循環を地域社会や多くの企業とのコラボレーションによって実現しています。

未利用資源を持っていない企業とも天然由来原料の開発やOEMによってコラボレーションしています。

サーキュラーエコノミー分野では、事業規模の拡大が難しいといわれています。

多くの企業との積極的な協業が事業成長の鍵といえるでしょう。

独自の技術と柔軟な事業形態によって、眠っている未利用資源に新たな魅力を与えるファーメンステーション。

アップサイクル市場をけん引し、循環型経済を発展させる企業として、注目を集めています。

参照:株式会社ファーメンステーション (FERMENSTATION)

「サステナブルで機能的なファッション」:KAPOK JAPAN

老舗アパレルブランドのノウハウを生かし、環境負荷の小さな新素材「カポックシート」を利用したファッション事業を展開しています。

具体的には自社ブランドでの製品販売や、パートナー企業への素材の提供を行っています。

カポックシートは、カポックという木の実からできています。

この素材とリサイクルされたポリエステルでつくったダウンジャケットは、「木に実るダウン」とも呼ばれ、とても軽くて暖かい優れものです。

木の実からつくられるので森林伐採の必要がなく、カポックシートの需要の増加は森林を増やすことにつながります。

世界第2位の汚染産業といわれるアパレル業界において、KAPOK JAPANは「本当にサステナブルなのか?」を常に自問し続けます。

環境への真摯な姿勢から生まれる、地球環境だけでなく、生産者や消費者にも無理のない、サステナブルなファッション。

ぜひ、一度手に取ってみてください。

参照:KAPOK JAPANN株式会社

「発想の転換でプリント基板産業を持続可能に」:エレファンテック

プリント基板産業において、環境負荷の小さい世界初の技術を開発し普及のための事業を展開しています。

もともと、プリント基板は生産過程で多くの銅廃液や温室効果ガスが排出される、環境負荷の大きい産業の1つです。

エレファンテックでは発想の転換と高い技術で銅使用量を70%、二酸化炭素排出量を75%削減することに成功しました。

基板製造業者に独自開発の製造装置を提供し、産業全体の脱炭素化を目指そうとしているのも注目したいポイント。

日本から世界に、大きなインパクトをもたらすことが期待されます。

参照:エレファンテック株式会社

「データで持続可能な未来を支える」:Synspective

持続可能な未来に向けた挑戦を支えるスタートアップです。

独自に製造・開発した地球観測衛星によって地球上のあらゆるデータを取得し、さまざまな社会・環境問題解決に貢献しています。

具体的には、衛星が取得したデータの販売や、データ解析をもとにしたソリューションの提案を行っています。

地球規模の人口増加や環境破壊が進む中、環境保全には地球全体を俯瞰しての対策が求められています。

Synspective事業や技術は、持続可能な未来の実現を目指す多くの企業や人々を支えているのです。

今後の事業拡大や成長によって、環境保全や地球規模での社会問題の解決に大きな影響を与えていくことでしょう。

参照:株式会社Synspective-JP

「ミドリムシの力で社会課題を解決する」:ユーグレナ

栄養問題の解決を目的として創業し、持続可能な社会実現のための事業を展開しています。

具体的には、ミドリムシを原料とした食品やバイオ燃料の開発を進め、売り上げの一部や技術をさまざまなソーシャルビジネスに転換する活動を行っています。

事業が成長するほど社会問題が縮小していく、夢のような事業モデルを構築しているユーグレナ。

グループの仲間全員が「自分たちの幸せが誰かの幸せと共存し続ける方法を常に考え、行動している」といいます。

事業の目的、活動の隅々にまでサステナビリティ精神が満ちた社会です。

また、インパクトに関する取り組みの数々を可視化・公開することで、持続可能な未来を目指す多くの企業の手本となっていくことが期待されています。

参照:株式会社ユーグレナ

スタートアップが注目されるわけ

2022年の岸田首相による「スタートアップ創出元年」宣言に続くさまざまな支援政策の発表など、近年のスタートアップへの注目は高まるばかりです。

実際、日本のスタートアップ1社あたりにおける資金調達額の平均はここ3年ほどで、約2倍に増加しています。

このようなスタートアップへの注目の高まりの背景には、以下のような要因が考えられます。

  • 社会・環境問題への意識の高まり
  • スタートアップへの投資の拡大
  • スタートアップならではの強み

詳しく見ていきましょう。

参照:経団連|スタートアップ躍進ビジョン レビューブック2023

社会・環境問題への意識の高まり

社会問題や環境問題への意識は年々高まっています。

特にこれから消費の中心となる若い世代は、7割以上が「買い物で環境に負荷をかけない商品を選びたい」と考えています。

また、職場選びの基準の1つに企業の環境への取り組みが含まれるようになってきています。

環境への取り組みは、優秀な人材の確保にも欠かせないものとなっているでしょう。

このように社会・環境問題への意識が高まる中、革新的な技術やアイデアで多様化する問題に取り組むスタートアップに大きな期待と注目が集まっています。

スタートアップ投資拡大

消費者だけでなく投資家も、企業の環境への取り組みを重要視するようになっています。

2022年の調査では、企業が優先して成果を上げるべき事柄について、約45%の投資家が「温室効果ガス排出量の削減」と回答している他、「自然や生物多様性への影響を最小限に抑制」することについても、30%近い投資家が優先すべきと考えています。

参照:PwC|企業のサステナビリティへの取り組みに対する投資家の見解 図表1-1

このような投資家の意識の変化から、環境・社会問題解決のための独自技術を持つスタートアップへの投資が拡大していると考えられます。

また、クラウドファンディングなど、より気軽に投資できる環境が整ったことも、スタートアップ投資拡大の要因でしょう。

国内スタートアップの資金調達額の推移データによると、年間調達額は年々増加しています。

一方で、アメリカや欧州に比べてまだまだその規模は小さく、スタートアップの増加や投資の拡大が依然として課題となっています。

参照:PwC|企業のサステナビリティへの取り組みに対する投資家の見解
参照:JVCA|ベンチャーキャピタル最新動向レポート(2022年度)

スタートアップならではの強み

スタートアップの強みの1つに臨機応変さがあります。

地球規模で日々変動する情勢やニーズの変化を敏感に感じ取り、機敏に対応・変化していけるフットワークの軽さは大企業にはない武器といえるでしょう。

社員やグループの仲間全員が1つの志に向かって突き進む姿勢は、事業成長の大きな推進力となっています。

さらに、特筆すべきは他者を巻き込むエネルギーではないでしょうか。

特に今回ご紹介したスタートアップのように、環境問題に力を入れる企業はさまざまな企業・団体・人々との協業が多く見られます。

掲げるビジョンに向かって突き進むエネルギーが、投資家をはじめ、多くの人々をひきつけるのかもしれません。

高まる環境系スタートアップへの期待

インパクトスタートアップ育成プログラムに選出された企業の中から、特に環境問題に力を入れる企業をご紹介しました。

スタートアップを取り巻く現状については欧米と比べて規模も小さく、国際競争力の弱さなどの課題もあります。

しかしながら、どの企業も革新的な技術やアイデアを武器に、自らのビジョンに向かって突き進んでいます。

地球を救う一手となるだろう彼らの今後の躍進に、期待は高まるばかりです。

GREEN NOTE
GREEN NOTE編集部

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